快楽マンション1号室 シンとタキ 「一夜のご褒美」

快楽マンション1号室 シンとタキ 「一夜のご褒美」

恋人だと思っていた男は、だんだんその本性を現すようになってきて。気がついたら、もう逃げることも適わずに、彼に従う日々となっていた。そんなタキが彼に引き合わされた男達は、その一夜のご褒美を必ず与えてくれるのだ。 だがそれは、タキの決して望むモノでは無かった。
 
 攻めの一方的狂愛がテーマ。
 他人、複数、淫具、絶対服従、射精制限、肛虐

「快楽マンション」のオーナーとその恋人の話です。まだマンションはできたてで、他の入居者も全員そろっていない頃。
今回はマンションの話は一つもでてきていません。こんな攻めが作ったマンションなんだと思っていただければ、です。




 身体が跳ねるような衝撃を何度も感じ、雁字搦めになっていた闇に光が差してきた。
 ああ、眠っていたのだと気がついたときには、今いる場所が車の中で、聞こえているのはエンジン音なのだと言うことにも気が付いた。
 それが判れば、次いでこの突き上げはタイヤが荒れた地を食むせいだと、経験から推測はできたけれど。
 それからさほど間を置かず、今の状態の原因全てを思い出した。
 ああ、何も変わっていない。それどころか、まだ続いてるんだ、と。
 とたんに怠く火照っていた身体が一気に冷めてきて、襲う恐怖と絶望の波で、全身の肌がざわりと総毛立った。
 何かの救いを求めるように、乾いた涙が張り付いた重いまぶたをなんとかこじ開けて、辺りを窺ってみたけれど、視界の端に映った投げ出した手が力無く掻く青色のシートも、低い位置から見る車のシートも、遮光シートが貼られた窓から垣間見える澱んだ色でしか無い空も、何も変わっていなかった。いや、間近に見える木々の枝葉は、山の中だからだろうか。
 今朝、家の前に横付けされたワンボックスカーにシンにむりやり引きずり込まれ、中の床に押しつけられてからずっと見えていた世界との違いはそれだけだった。
 もっとも、見える位置こそ変わらないが、朝には新品らしかった青いシートはべたべたな粘液で汚れ、部屋着だったボロいTシャツは単なるぼろ切れと化し、転がっている。
 何より、起き上がる気力さえ無いこの身体の疲労は、朝よりはるかに酷い。
「よお、タキ、起きたか?」
 僅かな身動ぎに気付いて話しかけてきたその声に、条件反射のように視線を向けた。
 タキと己の名を呼ぶ同年代の彼は、数ヶ月前までタキの愛してやまない大切な恋人だったシンだ。
 けれど。
「……ぁ、は……い」
 タキが蒼白になって怯えるほど、その表情も声音も全てが恐怖に結びつき、視線一つにすら支配されて逆らえない。
「よっく寝てたぜ、もう二時間も走ってんのにさ。途中で休憩したの、気付いてないだろ」
 ずいぶんと愉しそうに笑みを見せ、たいそう上機嫌な様子だけど。
「シ……ン……」
 ただ力無く名を呼び、口を噤む。
 シンがこんなふうに上機嫌であればあるほど、それがタキにとって良いことばかりで無いことは、この身に染みついて判っていた。何かを期待するには、あまりにも裏切られ続けてきたのだ。
 それに、シンの背後にタキをここまで疲れさせた男達の姿が見えてしまっては、その身を小さく縮めるしかなかった。
 何一つ、衣服と呼べる物を身に纏うことすら許されず、汚れを晒した身体を隠すものなど無い。
 その身体を、イヤらしい笑みを浮かべてながら好色な視線を向ける三人の男達は、その瞳にある嗜虐と欲望を隠そうともしていなくて、突き刺さるような視線が、特に性器を嬲っている。
 この車に乗せられたら直後から、運転手だったシン以外のこの三人が、入れ替わり立ち替わりタキを犯し続けたのだが、まだ終わりでは無いのだとその視線が知らしめる。
 今や、タキの身体は男達が与えた淫らな痕と塗りたくられた精液まみれだった。
 身体の中も、ちょっと身動ぎするだけで、アナルからブチュブチュと泡立ち溢れるほどに注がれていて。
 三本の肉棒を銜え続けたアナルは今も熱を持って腫れっぼたく、まだ太い異物が入っているように感じていて、まだ定着していないピアス穴もヒリヒリとずっと痛みに疼いていた。
 そんな欲望の捌け口にされた記憶を、まざまざと思い出してしまったタキの歯の根が合わないほどに震え、小さな音が鳴り響く。喉の奥から迸りそうになった悲鳴は、けれどその力さえないとかすかに喉を震わせただけだ。
 そんな怯えに気付いたのだろう、男達と顔を見合わせて嗤っていた。
「タキちゃん、目ぇ醒めたみたいだね。も、タキちゃんのおマンコ、すっごい熱くてうねっていて気持ち良くってさ。もうタキちゃんのおマンコって、ほんとチンポが好きなんだねえ。俺、もう搾り取られちゃってフラフラだよ」
 タキのアナルを、何度も何度も穿ち、抉り、思うざまに使いまくったケントが、傍らに跪いて、その腫れたアナルをつつっと指先で触れる。
「ん……ん……」
 もう晴れて何も感じないはずなのに、そんな刺激は別物のようで、とたんに沸き起こった何とも言えない甘い疼きに、溢れた涎が顎を伝った。
「使い込まれてっから、もうガバガハなのかと思ったけどよ、イイ締め付けでさ。それに、『欲しいのおぉ』って、タキちゃんが強請りまくるからこっちも頑張っちゃったわけだけど」
 ピアス穴を開けられたばかりでまだ鈍く痛む乳首を舐めて、吸いまくり、止めて欲しいと請うたら、そう言えと強要したのが、このゴウシで。
 体力自慢の持久力と自慢の太いペニスでタキのアナルを突き上げまくったのだ。
「可愛い身体で、ド淫乱なタキちゃんのそのお口は、まだまだいっぱい欲しいって、涎を垂らしているけど、でも、もう俺たちは打ち止めなんだ、ごめんね」
 三人の中では一番年長の、白髪交じりの壮年のトシハルは、嬉々としてタキを獣のように四つに這わせ、背後から何度も奥深くを抉って掻き回し喘がせまくった。
「でも、愉しませてくれたご褒美はちゃんとあげるから」
 遅漏気味で長い間何度もタキを犯したトシハルが運転席から叫ぶのに、シンが頷き、タキへと視線を向けた。
「お前がみんなを気に入ったように、みんなもお前のことすっげぇ気に入ったってさ。だから、特別なご褒美くれるってよ。良かったな」
 と。
 愉しそうに言い放った言葉は、タキには死刑宣告に等しいものだ。
「そ、んな……い、いらな……ぃ……」
 ここ最近、タキを犯した男達が口にするご褒美には碌な物が無かったから。
「おいおい? 皆がせっかく準備してくれたって言うのに」
 けれど、拒絶の言葉にシンが気色ばる。が。
「んー、タキちゃんってば遠慮してるだけだよねぇ。ね、気にしなくて良いんだよ。俺ら、タキちゃんが気に入ったから準備したんだし、ね! 遠慮なくそれで楽しんでね」
「ああ、まあなあ。タキは欲しいもの程いらねえって言う天の邪鬼なところがあるからな。けどなあタキぃ、皆がせっかく準備してくれてんだ、そこは有り難く受け取るもんだろが?」
 タキの言葉は無視されて、代わりの言葉で逃げ道が封じられる。
 その言葉に堪らず首を振ろうとするけれど。
「ひっ、ぐっ!」
 大きな手で頭が床に敷かれたシートに押しつけられる。耳朶に直接響く重低音がさらに荒く脳髄を揺さぶって、痛みとともに襲い来る不快感に呻き声が零れた。
 何よりも、最近のシンに許しを乞うて、叶えて貰ったことなど無いことを思い出し、続けようとした言葉が消えてしまう。
「だらだらとザーメン零してる尻穴が、まだ足りねぇってひくひく震えてるしクセに、遠慮なんかするなよ。なあ? そのチンポの枷も、その時に外してやろうって思っているんだし」
「あ、ひっ」
 尻タブに食い込む足先に腰を押されて息を飲む。身体の下になった張り詰めたペニスも陰嚢も、押されて鈍く痛んだのだ。
 そこは陰茎も含めてもう一週間も戒められ、自慰も禁止されていた。
 それなのに与えられた快感で、そこは吐き出せないものがたっぷりと溜まって、鈍く重い。
 しかも、その一週間の間もシンはいつだって自分の欲を解消するのにタキを使っていた。
 アナルの快感を、異物が入るだけでも拾ってしまえるほどに男との性交に慣らされた身体をいじめ抜き、自分が満足したら今度は解放されない苦しみに咽び泣きながら許しを乞うタキを愉悦の表情で眺めながら酒を愉しむのだ。
 それが最近とみに気に入っているらしいシンは、欲求不満に苦しむせいでわずかな刺激に勃起してしまうタキを、「躾」と称して全裸で過ごさせることも多い。
 勃起が見つかれば、「勝手に勃起した淫乱」は、お仕置きが必要だと、ペニスが痛むほどに握らて、痛みに萎えさせられたり。ある時は冷やされ萎えさせられて、けれどそんな一時しのぎでは結局また勃起して。
 ならば満足するまで遊んだら、と今度はオナホールで自慰を強要された。
 射精できないから解放されないままに絶頂し続けて、最後には疲れ果てて気を失うようにして眠りにつく。
 そのわずかな間だけが休息の時になるような、そんな一週間を過ごしてきたから、身体は疲れ果てていても、今もあっけなく勃起したままだったのだ。



 タキがシンとつきあい始めた頃は幸せだった。
 毎日求められ、獣のように交わい、快楽におぼれる日々は幸せとしか言いようがなった。
 もとは大学時代に学内で見かけた時からからずっと憧れていた。
 女性と付き合っているのを知っていたから、諦めようと思ったけれど、顔も人なつっこい明るい性格ももろ好みで、出会えばついつい視線で追ってしまう日々が続いていた。
 何度抱かれる夢を見たか判らない。
 友人の一人に誘われていった宴会にシンがいたときなんて、何度もちら見をし、彼の言葉に聞き耳を立てまくったほどだ。
 その後卒業して、シンは都内の会社に就職し、タキは教授の知り合いの通訳・翻訳会社の仕事を在宅ですることになった。そうなれば、ほとんど家の中で過ごすタキがシンと会う可能性など皆無に近かったのだけど。
 ある日、今から半年ほど前にシンがタキの前に突然現れて。
 大学の頃からずっと生活していた安さが取り得のアパートの前で、男前の顔にはにかんだ笑みを見せられただけで、甘く疼いたのは胸だけではなかった。
「ずっとつき合いたいって思ってたんだ……けど、ようやく踏ん切りが付いたって言うか」
 唐突な言葉だったけれど。だが、夢にまで見た告白に、その時のタキの頭は一気に沸騰した。
 あの時自分が何て返事したのかハッキリ覚えていない。
 信じられないとかなんとか呆然としている間に、気がついたらシンの部屋に連れてこられて、再会記念だと酒を飲んで。
 それから。
 セックスしていた。
 それは、全てが夢の中の出来事のようで、けれど、翌朝目覚めても、シンの腕の中にいて。
 今から考えればあまりにも唐突で、不自然なところは多々あったけれど、その時のタキは幸せで頭が飽和していたから、不自然さに気がつかなかった。
 それからの日々は、全てがシンと共にあった。
 愉しいデート、夕食、セックス。
 時々シンはあまりにも強引な時も、無理矢理な事も有ったけれど、全ては愛故だと思っていた。
 恋は盲目という言葉があるけれど、今なら意味がよく判る。良いところしか目に入っていなくて、おかしなところをおかしいと思わない。
 勝手に達くなと怒られて、目隠しされて緩く拘束されて、バイブ入れっぱなしで放置されるお仕置きをされても、その時は楽しかった。
 人気がないとはいえ、満月の夜に山間の空き地で全裸で車に手を着いて、背後からシンに貫かれまくったときも、愛に包まれているのだから、平気だと思った。
 欲しい、と言われて、甘いキスをされて。
 衣服を身につけたままのシンが全裸のタキを隠してくれていると思っていたし、もっと声を上げろ、叫べ、イヤらしく大声で強請れ、と言われても、それでシンが昂ぶってくれるのなら、と、いわれるがままに、叫んでいた。
 そんな盲目的だった3ヶ月の蜜月の日々。
 誘われるがままに部屋を解約してシンが暮らすマンションでの同棲生活となって。望むことすら許されないと思っていた同棲生活に、さらに目が眩んでしまっていた日々は一ヶ月ほど続いたのだけど。
 そんな日々は、シンがその本性を露わにし始めて、徐々に崩れていった。
 初めてシンが怖いと思ったのは何がきっかけだったのか。
 もともと求められるがままに何度もセックスしていたのだけど、同棲後は下手をすると昼も夜も、シンが家にいるときはいつだって身体を合わせているようになっていた。
 時々、外回りの営業の間に戻ってきてまで挿入されて、さすがに呆れてしまったが、そんなに欲しがってくれることもまた嬉しかった日々。
  だけど、週末の間ずっと発情期の犬のようにセックス三昧で過ごした翌朝、まだ手を伸ばしてくるシンに『しばらく、もう無理かも……』と腰砕けになって動けずに、黄色い太陽を見上げて呟いてしまったあの朝。
 その直後、タキの手首と足首に枷を取りつけたシンの浮かべた笑みがなぜか無性に怖く感じた。
「嘘つくなよ」
 知らず引きつった表情になったタキに気がついてるはずなのに、シンは嗤っていた。
「ド淫乱なくせに、何をごまかしてんだよ」
 それは、声音以外はいつも言われている言葉だったけれど、四肢の枷のせいかその声音の奥底にある冷たい温度をむやみに感じてぞくりと総毛立つ。
 豹変とは言えないはずだった。これもまた、いつものシンの筈なのに。
「まあ、ザーメン喰らいまくって今は腹いっぱいなんだろうなぁ」
 ぐいっと拡げられた股間を見つめるその視線は、何かを思いついたようにひどく愉しそうな笑みを浮かべていた。
「俺、今日は退屈な会議でなきゃなんねぇの。だからタキの可愛い姿で慰めて」
 甘えたようなお強請りは、今までだって何度もあったのと同じだ。
「あっ、や。それデカすぎだ、あぐっ、きっつっ! 苦しっ」
 拡げられた四肢の間、緩んだアナルに沈められたバイブは、かつてないほどに太かった。
「見ててあげるよ、淫乱タキ」
「ぎっ、ゃっ!!」
「お漏らししてもいいように、ここでトイレできるようにしといてやるよ」
 取り出されたのは、何枚ものペット用トイレシーツだった。それが尻の下、身体の下に敷かれていく。
 その間に、戯れのように敏感なペニスの先を弄くり回されながら、スイッチも入れられて。
「やっ、あんっ、あぁ、ひあああっ」
 セックス三昧で敏感なままの粘膜がダイレクトに刺激を前立腺に送り、一気に快楽の波に巻き込まれた。
 それでも、いつもだったら長くても一時間程度で止めてくれるはずだったけれど。
「これ、電源、コンセントから取ってるから、ずっと動いているよ。じゃ、行ってくるね」
 そう言って出ていったシンは、いくら待っても帰ってくることもなく。
 ただ、ヒイヒイと喘ぎ、犯すバイブに尻を振りたくり、堪えきれない絶頂の果てに気を失っても、バイブは止まることなど無くて。
 出かける前に設置されたWEBカメラの小さなレンズがそんなタキを追い、時折耳元に置かれた自動着信設定の携帯が鳴って、淫らなタキを揶揄するシンの言葉を吐き出した。


 その日、いつシンが帰ってきたのか判らない。
 
 
 けれど、その日からシンの異常さが目に付き始めて。


「さっさと説明しなよ、目を逸らしてどうすんだよっ! ほらっ、タキのイヤらしい格好を、俺に説明してくれって」
 股間を晒してバイブによがるタキの姿を鏡で見せられながら、太いバイブの形状から、それにどんなふうによがって感じまくっているかをマイクに向かって説明させられて。
 どうして、こんなにも執拗に強制するのだろう、と疑いだしたらもう止まらなかった。


「チンポがおいしい? マジ変態ちっくだよな、タキ」
 帰宅してきたシンを玄関先で跪いて出迎えて、キスどころか抱擁も無く、揶揄されながら汗に蒸れたペニスをフェラをするのが日課になった。


「露出狂だし、見られながらするのもイイんだよな。そゆ時って、タキの穴、むっちゃ締まりがいいし」
 明るい月光が照らす緑の中で、細部まではっきりと判る映像がWEB上で公開されているのを見せられた。
 その映像には、BGMのように荒い鼻息と好意的とは言えない複数の冷やかしが入っていて、明らかに第三者の撮影だった。しかも、シンはそれを知っていたように言う。
「タキのファン、たっぷり付いたよ、良かったなあ」
 たくさんの書き込みは、タキの実名フルネーム入りだった。
 他にも、駅のトイレで、ベランダで、木陰で。
 恥ずかしくて厭だったけれど、誰からも見られてないなし、シンが欲しがるからしていたのに。
 それらは映像だけでなく静止画もいっぱいあって、それら盗撮写真は、どれもがタキの卑猥さばかりが目立つアングルで撮られていた。


「こんな淫乱を持った恋人としては、よそ様に迷惑をかけんように、きっちり管理しねぇとな」
 恋人の持っていた本性は、気がついたタキに逃げる隙など欠片も与えてくれなかった。
 それからずっと、タキの全てはシンの管理下だ。特に性的行為に関することは徹底的で、射精どころかオーガズムを感じることすらシンへの申告が必要になっていた。
 すでに繰り返されたセックスのせいで、男に犯され感じる身体になってしまっている身体に、我慢することは辛かった。理性を飛ばしてはしたなく強請る姿を嗤いながらビデオに撮って、淫乱だと蔑み罵倒されることも増えた。
 そんな中で、シンに少しでも早く許して貰いたくて、ひたすら従うようになったのもすぐのことだ。
 だが、シンの行為はどんどんエスカレートしていっている。
 二週間ほど前、シンに連れて行かれたどこかのマンションの一室で男に引き合わされ、逆らう間も無くその男のベッドに鎖に繋がれて。
 シンが去った後、タキは一晩中、あらゆる体位で犯され、溜まっていた精液を空になるまで噴き出した。髪まで付着した精液で卑猥な臭いにまみれたタキだったのだが、迎えにきたシンは、
「やっぱりタキは淫乱だよな。初めての相手でもそんなに達きまくるなんてさ」
と、感慨深げに嬉しそうに呟いた。
 そうシンは、タキが淫乱で卑猥で、変態的な行為をすると、たいそう満足するのだ。
 激しく喘ぎ、卑猥な玩具に悦び、破廉恥な格好で男を強請れば、甘く優しくなる。
「良い子だね、タキ」 
 頬に落とされたキスは優しく、そんな時のシンは確かに恋人のように振る舞ってくれるけれど。
「ご褒美をくれるんだって、良かったね。けど、タキにはまだ穴が開いていないから……開けてもらわなきゃね」
 けれど、疲れ切ってまともに動けないタキをシンが押さえつけて、向けられたニードルは、タキがどんなに嫌がっても、両の乳首を貫くのは止まらなかったのだ。
 そして一週間前も。
 ピアスを取り付けられた両の乳首はまだ触れると痛みに疼くほどなのに、また別の男の元に連れて行かれて。
 一晩の相手のご褒美は、いろいろな太さの尿道拡張セットだった。
 今は一番細いのでもきついのに、シンはタキが泣くと喜んで、毎日のように拡張を続けていて、いずれは、一番太いのを入れるのだとひどく張り切っている。
 そして今週は、車の中のこの三人に引き合わされたのだった。

「着いたぜ」
 裸のまま外に引きずり出されたタキの目の前にあったのは、雑草が伸びきった広場の、所々に東屋のような建物があるところだった。
 そろそろ日が沈むかという薄暗くなりかけた時間帯もあってひどく寂寥感が漂う。そのせいか、昼間の熱気が残って熱いほどなのに、身体の芯がぞくぞくと震えた。
 とんと背中を押されて足を進めるけれど、裸足に草や石が食い込み数歩も歩けない。何より、足が凍り付いたように動かない。
「ここ……何?」
「ん、タキみたいな淫乱が大好きな遊び場なんだって。この人たちが選んでくれたんだよ」
 な、と振り返り、車から降りてきた三人に、シンが問いかけた。
「そうそ」
「ここ、タキちゃんみたいな子なら泣いて悦ぶスポットだよぉ。僕たちの知り合いのわんこちゃん達、みんな帰りたくないっていうくらい」
「今夜は特別に貸し切りにしたので、たっぷりと遊べると思うけど?」
 ケラケラと笑いながら言われる言葉に、不穏な空気を感じてしまう。そのせいで足は止まり、だめだと判っていても逆らおうとして。
「や……、ひっ……」
「タキ、さあ行こうぜ」
 けれど、そんな些細な反抗もシンの一言でたち消える。
 穏やかであるけれど、有無を言わせぬその口調に逆らえた試しなど無い。
「こっちだよぉ」
 引きずられるように連れて行かれた東屋の中でもひときわ大きくて立派なところで。
 そこに整然と置かれたそれらに、タキはびくりと硬直し、次の瞬間掠れた悲鳴を上げて、へなへなと座り込んだ。
「すごいだろ?」
 と言われても。
「や、あ……あっ……ひっ……」
 逃げたいのに逃げられないままに、腕を取られる。
「ふふ——っ、タキちゃん、気にいったぁ?」
「愉しそうな遊具だろ? ここでパーティーするとね、みんなこの遊具でずっと遊んでるだけどね」
「きっとタキちゃんが気に入るものもあると思ってね。会員制の場所だけど、タキちゃんには特別に使わせてあげるね」
 そう言って指し示されたそれらは、一見すると子供向けの電動乗り物にしか見えなかった。
 コインを入れると電動で繰り返しの動きをするもので、小さな子供たちには人気のそれらだが、サイズは大きく大人のサイズになっているうえに。
「さあさ、まずはこれに乗って」
「ひっ、イヤだっ、やっ!」
 声をかけられ、蒼白な顔を振って逃げようとしたけれど、力の強いゴウシから逃れることなどできなくて。
「さあさ、ここだよぉっ、はいっ、イッキっ!」
「ひ、ぁぁぁぁっ!!」
 緩んでいるはずの穴でも、ひどくきつい。なのに、自重だけでなく上からも力を入れられて、滑ったままの穴に、硬質な異物がずるずると入り込む。
 その半端無い太さは、今日相手にした誰のものよりも太くて、張り裂けそうだったけれど。
「ああ、こんなぁ……、太ぃ……」
 押し広げられた肉壁越しに前立腺が味わう刺激も相当なもので、口が閉じられて無くて端から唾液がだらだらと垂れ落ちている。
「うわぁぁ、それ一番太いやつじゃねぇの、ゴウシぃ、きっ、ちっくぅぅっ!」
「なーに言ってんだ、お前がこれに乗せろって言ったんだろ」
 ふざけた物言いに反応できようはずも無く、まだ動いてもいないのに体内を駆け巡る快感に意識が持って行かれそうだった。
 遊具自体は可愛くデフォルメされた動物や乗り物の遊具ではあったけれど、またいで乗るその場所に固定されたさまざまな形状の張り型は、どれもがアナルを快楽と痛みに虐め尽くす計算された形状をしていたのだ。
 さらに遊具は少し高い台の上にあったから、その両足は地面に着くことなく垂れ下がっていて、身体を浮かすこともできなかった。
「ほらほら、危ないから安全ベルト締めて」
 力無く前の手すりに手をかけ、ぜいぜいと荒い息を吐くタキの腰と太股に太く丈夫なベルトが締められて固定される。
「さ、コインを入れてあげますよぉ」
「あっ、チョイ待ち。タキのアクセサリーを外してやらねぇとなあ」
 シンの手が、タキのペニスを戒めていた枷を外して。
「ほぉら、もう射精できるぜ」
「投入っ」
 カチン
 それは小さな音だった。けれど。
 グラッ
 最初はゆっくりと、けれどすぐに大きく早く。
 ぐらぐらと前後に横に、子供向け遊具とは思えぬほどに、さながらロデオマシーンのごとく揺れる。そのたびに、身体が揺れて、固定された身体の中の固いそれに、前後左右に押しつけられる。
「あ、ああぁっ、ああぁ——っ!」
 背筋を電気のように走る快感に、喉も裂けよとばかりに零れる嬌声が止められない。
「すっげぇ、噴水みてぇに噴き上げたぜ、ははっ、顔まで飛んでら」
 絶頂の快感など、一体いつ感じたのか。いや、いつ止まったのか。
「おい、映像撮れたか?」
「ばっちりっ」
 いつの間にか照明が点っていた。
 向けられたレンズが白く光る。
「後で皆で写真撮影だな」
「だったらタキは、ああ、これが良い。魔女黒猫メイドのシロップがけ。メイドが真っ白シロップをスクリーンにかけた瞬間に撮れるやつ」
「へぇ、でもプリクラ撮るまでシロップ溜まってる?」
 ひいひいと喘ぎながら再び噴き出したそれは、少し勢いが減っている。
「出なきゃ、出るまでがんばって貰えば良いだけさ」
 中身が丸見えのプリクラセットの中には、黒猫のコスチュームとともに、箒の持ち手側についた歪な張り型が見えていて。
「タキちゃんのような淫乱なのでも一晩中遊べるから、ここは人気なんだよ」
「確かにねぇ、タキだったら毎日だって遊びまくるよな」
「や、ぁぁっ、もう、イヤっ、あぁ、止めてぇぇっ、ああっ」
 まだ一台目だというのに泣き喚いて喜ぶ姿を見つめながら、シンはうっとりと微笑みながら呟く。
「やっぱ、可愛いなぁタキは」
 そんな姿に、残りの三人が苦笑を浮かべた。
「シンのタキちゃんラブ度はほんと重傷だね。好きな子ほど激しく虐めてしまう性癖、タキちゃんに受け入れてもらって良かったねぇ」
「ったくな、今度もまた振られるか逃げられるって思ったけど、もう半年も続いてるなんて奇跡だぜ」
「シンも毎度毎度逃がしたり壊したりしていたら、さすがに学習したってことだろ。まあ、今度はせめて逃がさないようにしろよ……ああ、ほら、終わったみたいだ」
 通常より長く動いていた遊具がようやく止まり、ぐたりと前のめりになったタキを、シンが受け止める。
 けれど、そんなタキの瞳は達きすぎたせいか虚ろで、シンに優しく包まれているのに気がつかない。
 そのぐったりとした身体を、皆で持ち上げると。
「あ、ぁぁぁんんっ」
 朦朧としていても、張り型が抜ける刺激にタキが身悶え、ペニスから残滓を滲ませた。
 ガクガクと震えたタキがぼんやりと視線を彷徨わせ、シンを捕らえる。
「……シ、ン」
「タキ、さあ、次だよ」
 甘い言葉だけが耳に届いたのか、タキがうっとりと微笑んで。
 シンに抱きつく指先に力が入った次の瞬間。
「やぁぁぁっ!!」
 新たな内部を抉る刺激に、その身体が跳ねた。
 今度は丸みを帯びた飛行機の遊具で、その可愛さに似合わぬ捻れた張り型が、タキの中にずぼずぼと埋まっていく。さらに両翼から垂れ下がった鎖を引き上げられそれぞれが乳首ピアスに付けられた。
「ちゃんと掴まって」
 バーを掴む手が滑るのを、外からシンが押さえつける。
「テーク、オフゥ!」
「ひぎゃぁぁぁぁ、あぁぁぁぁ」
 ケントのふざけたかけ声とコインが機械に落ちる音、そしてタキの悲鳴とどれが早かったのか。


 闇に包まれた山間の谷底にある遊技場で、機械音と嬌声と複数のはやす声はいつまでも続いていた。


「タキちゃぁんっ、今日は気に入ってくれた? また僕たちを満足させてくれたら、あそこに連れていってあげるからね」
「今つくっている試作品のテスターをしてくれるとうれしいな。アナルと前立腺と会陰とチンポ、全部まとめてたっぷり刺激してくれるんだ。処女でも一発で噴き上げるマシンガンバイブにするもつもりだから気に入ってもらえると思うよ」
「今度相手をしてくれたら、その白い身体に素敵なタトゥをご褒美してあげよう」
 タキ達が住まうマンションの前の車の中で三人の男達がタキに話しかけるけれど、そのタキはヘラヘラと笑いながら涎を垂らしている。その瞳は、どこにも焦点があっていなかった。
 そんなタキを抱きしめて、シンが残念そうに首を傾げる。
「タトゥーも良いなぁ。けどさタキの相手をしてくれる人がいっぱいいて、結構待って貰うことになるんで。でも、なるべく早く設定してみるわ」
 毎週の予約は、けっこう先まで埋まっているのだ。
「でも、ちょっと壊れちゃったかなあ、タキちゃん」 
 ケントの言葉に、シンはくすりと笑い返した。
 今日の遊具遊びの途中でタキは完全に理性を飛ばしてしまい、それこそ「壊れた」という言葉が相応しいほどに、与えられる刺激に嬌声を上げ、恍惚の表情で自ら遊具にまたがり尻を振りたくるようになっていた。
 最後には、ケラケラと笑いながらシンに抱きつき、彼のペニスを銜えたがって。限界が来てぱたりと崩れ落ちた後も、その腰は卑猥にうねっていたほどだったけれど。
「この程度、タキなら一晩寝て起きたらまた元気になってるよ。何しろこいつ、セックスするの、何日も続けてできるくらいタフなんで」
 そう言ってシンは、タキの身体を優しく撫でていた。
「タキぃ、目ぇ覚またしら、今度は俺とセックスしような」
 そんな言葉をかけながら。


【了】