快楽マンション 2号室 カズキとレイイチ

快楽マンション 2号室 カズキとレイイチ

2号室に住まう調教師カズキと彼の奴隷調教を受けたレイイチの話。カズキの調教によってスカ奴隷の質を植え付けられ店で働くレイイチは、その手の客に人気者です。

排泄(小スカのみ)ありますので、苦手な人はご注意を。
 
 攻めの一方的狂愛がテーマ。
 絶対服従、射精制限、肛虐、小スカ、温泉浣腸




 ベッドの上で膝立ちで跳ねるように、レイイチはその身体を上下に揺らしていた。
 筋肉の薄い身体を覆う肌はきめ細かで白く、薄暗い部屋の中で鮮やかに浮かび上がる。
「んっ、くっ、うっ」
 激しく上下する身体から汗がいくつも飛び散り、跳ねる度に途切れる息はひどく苦しそうだ。
 けれど眉根を寄せて歯を食いしばり、セミロングの髪が乱れるのに任せて飛び跳ねる。
「あ、もっ、あくっ」
 ここで暮らし始めたときよりは筋肉の付いた太股は、けれど、続く重労働に悲鳴を上げていた。
「お、ねがっ……あっ、」
 苦しいと、限界だと、決して言ってはならぬ言葉をいいかけて、レイイチはぐっと飲み込んだ。
 その代わりに、さっきからグチュグチャと激しい水音を立てる穴の筋肉を、意識して締め付けて。
「あ、いっ、ぱぁ、おいしっ、のぉお、ああっ」
 歓喜の言葉をとろけたように口にして、右手で乳首をつまみ上げ、左手で尻タブをがしりと掴んで激しくもみ上げる。
 許しは請えないレイイチだが、お強請りすると喜んでもらえるのだ。
「お、ぱっ、いっ、あはっ、イィ!! あぁ、カズキさまぁっ!」
 痛みを覚えるほどに強く激しく自分を虐めて、身体を貫く熱い楔を締め付けて。
 この時間を終わらせることができる唯一の存在を煽るように、淫らに悶える。
「あひっ、ちょーだぁ、い——っ、はっ、はっ、れ、レぇーチのグチャンコマンコぉ、ひっ、くっ」
「何だよ、何が欲しいって?」
 それは、レイイチにとって待望の反応だった。
 苦しさに歪む視界の中で、レイイチの身体を貫く若い男が、ベッドヘッドに背を軽く預けて嗤っている。
 その男に縋るように視線を向けて、早くこの時を終わらせて欲しいと、暗に、強請る。
「あ、ん、カズ、キさま、の、チンコ、しるっ、ほしっ、ですぅ、あくっ、うっ」
 息が苦しいのに喋るのは辛い。けれど、せっかく話しかけてくれた時に答えなければ。この苦しい時間がもっと続く。
「レェーチのっ、なか、にっ、あっついっ、の、くっ、ださいっ!!!」
「やーらしぃなぁ、おっぱいそんなに気持ちいいんだ? オスのくせしてさ」
「ひ、もちぃ、イイ——っ、あ、うっ、レェーチはメスですぅぅっ、チンポっ、汁ないと、生きてっ、いけなっい、メスですぅっ」
 酸欠になってきたのか、意識が朦朧としてきた。数分でばてて倒れていた頃に比べればマシになったけれど、それでも早く終わらせたくて、今までたくさん覚えさせられた卑猥な言葉を羅列する。
「のみたぁいっ、マンコいっぱい、溢れるほどっ」
「はっ、良いだろう。レェーチのだっいすきな、チンポ汁、恵んでやらあ」
「あうっ」
 どんと突き飛ばされ、その拍子に体内に埋まっていた肉の棒が、湯気を立てて抜け落ちる。ぴちゃりとベッドの上に散ったのは、潤滑剤だけではない。
 同時に、征服されていたそれが抜けた喪失感に、全身がぶるりと震えた。
「あ……」
 ぽろりとまなじりから涙が溢れる。
 抜かないで……。
 そんなことを思ってしまった自分が堪らなく悲しい。
「やーらしい、グジュグジュのマンコ見せろ」
 体勢が逆転して、膝をついて見下ろす不遜なカズキの言葉に、疲れ切って痙攣している足を開いた。
「こ、ここ……レェーチのグチャグチャマンコに、はっ、くっ、カズキ、さまのデカマラチンポっ、くださっ」
 内股に手を滑らせて、尻の狭間を割り開いて。
 さっきまで奉仕していた穴をさらけ出す。
「あははっ、ぱっくり開いて真っ赤なお肉がヒクヒクしてるぜっ、うわぁ、すっげぇマン汁が泡だって、ったく好きもんはこんなになるまで俺のを擦ったんだ。それゃ、俺様のモノが擦れて真っ赤になる訳よ」
 ぴしぴしと掴んだペニスで尻を叩かれる。
「あ、……もうし、わけ、ありませ……んっ、レェーチがチンポ、好き、だからっ、カズキさまのチンポが……あっ……」
 泣きそうなるほどの屈辱と恥辱の中で、カズキの顔を見上げながら両手の指をアナルに差し込み、自らパカッと開く。
「ど、か……レェーチのマンコ肉で、チンポを包んで、いやして、くださ……い」
 穴に外の空気を感じてしまう。
 とたんにぞくぞくと駆け上がった快感に、ぴくりと震えたペニスからぽたりと先走りの玉が糸をひいた流れた。
 震えた勃起ペニスには、歪に紐が巻かれたうえに、太股に押しつけるように下向きに固定されていた。
 そのせいで、どんなに感じても射精などできるはずもなく。それ以上に勃起がきつくなると痛い。
 けれど、それでも、身体の芯で渦巻くのは確かに快感だ。
「カズキ、様……」
 半年前、たった一週間でカズキに屈してからずっと、少しでも楽になろうとしている間に拾えるようになった快感だ。
 プライドとか、人間としての誇りとか、道徳心とか、そんなものを恥辱の中で完膚なきまでに否定され、死を予感させる恐怖に、生きるために選べたのはカズキが示した道だけだった。
 何も考えないこと。
 逆らわないこと。
 快感に溺れること。
 そうすれば、これ以上は酷くならない。
「がんばって俺をその気にさせたご褒美だ。メスマンコの穴、思いっきりかき混ぜてやるよ」
 悠然と言い放った男によって、これからまた別の苦しみが始まると判っていても、レイイチは微笑むしかない。
 それがどんなにひきつっていて、涙すら流れている状態でも。
「あり、がとうこざいます、カズキさま。こんな、光栄な、ことは、ありませ、ん」
 自分を苛む男に、最大限の謝辞を言わなければならない苦しみに。
「ほらよっ」
「あひぃ——っ」
 遠慮やいたわりなど毛頭無い男の容赦ない突き上げに、身体がびくりと大きく跳ねる。
「ふかっ、あっ、はげっし——くっ、うぁっ、ぎっ!!!!」
 腰を爪が食い込むほどに掴まれて、体力が有り余った男の容赦ない突き上げに、レイイチの身体が人形のように踊る。
 太くて歪なカズキのペニスは浅く深く、右に左にとランダムに突き上げる場所を変え、予測できないその動きに、翻弄されてしまう。
「んぐっ、あ゛っ、あっ、がっ」
 射精できない身体でも、調教され尽くしている前立腺を抉られれば、絶頂は味わう。
 射精よりも長く、激しく続くそれの間も突き上げられて、また襲われる。
 受け入れる体勢など取りようもなく、手足をだらりと垂らしたレイイチは、襲い来る快感の嵐に白目を剥いて痙攣し、呆けたようにあけた口から舌がだらりと落ちていた。
 意識などなくなっても、突き上げられる度に喉の奥から声が漏れる。
 深く激しく、思うがままに快楽を貪るカズキの行為はいつも一方的で、たとえレイイチの意識がなくても続けられるのが常だった。



「時間だ、起きな」
 意識を失ってどれくらい経っているのか。
 起こされて、はっきりしない頭に手を当てる。
 けれど、何かが判る前にレイイチはベッドから足を降ろして、ふらふらと起ちあがった。
 その拍子に、アナルからつうっと白濁した液体が流れ落ちる。
「おい、零れてるぜ」
 にやにやと嗤いが混じる声で指摘され、反射的にアナルに指を入れていた。
「あ、りがと……ございます」
 うまく身体が動かなくても、しなければならないことだけは反射的に動いてしまう。
 指で栓をしたままで、レイイチは床に膝を突き、感謝の言葉とともにカズキの爪先に口づけた。
「そんな格好で誘うなよ、ったく性悪な奴だぜ。俺様から絞りつくそーってんだから」
「……」
 そんなつもりは無いなんて、そんな言葉は、決して口にできない。
 カズキの好みでいれば、少なくともこれ以上は悪くならないから。
「淫乱コネコちゃん」
 声高に嗤われても、嬉しそうにしてみせる。
「ちゃんと仕事してきたら、また抱いてやるよ。お前ん中、俺様にしっくりきてサイコーだからなあ。でも、もう車が来てっから、急げよ」
「あ……ありがとうございますっ」
 その言葉に、慌てて起ちあがって。
 最初に手に取ったのは、内に溜まった液体を零さないためのアナルプラグだった。
 深くくびれて、挿入部も大きくて長いそれは、入れるときも外すときも、めいっぱいにアナルを広げなくてはならぬ代物だけど。
「うっ、くっ」
 零れた精液をなすり上げ、そのぬめりでぐいっと押し込む。
 しっかり嵌めたら、今度はその異物感に苛まされるけれど、それでも零してしまうよりはマシだ。
 汚れたままの身体に薄地の白いシャツを羽織り、黒のスリムなスーツにブラックタイを身につける。それがレイイチの仕事着だ。
 下着は許可されていない。
 何より、レイイチの服と呼べる物は、この部屋にはこの仕事着のセットしか存在しないのだ。
 敏感な肌にざらりとした布地が擦れて、ざわりと肌がざわめくのを、息を飲んで堪えて、時間が迫っていると、意識を逸らして準備をする。
 髪を整えて、衣服を身につけるレイイチを残して、カズキは盛大にあくびをしながら部屋を出て行った。
 車が来ているということは、20時が過ぎている。遅刻するわけにはいかない仕事場に、レイイチは酷使した後遺症で力が入らない身体でふらふらと黒い革靴を履いて、玄関を出た。
 マンションの4階に住むレイイチだったが、階段を使うことは滅多にない。エレベーターで階下に降りて、ふらふらと夢遊病者のようにマンションのエントランスへと向かった。
 このマンションは、一階は大家が住む部屋と、受付が備わったエントランスとがあって。
 外への出入り口には、住民以外開けることの出来ない分厚いスモークガラスのドアと外に面する透明な自動ドアの二つがあった。
 その二つのガラス戸の間に受付があり、鍵付きの郵便ポストや宅配便ボックスが設置されているのだ。ポストもボックスも、壁面を介して中側に取り出し口があるから、外に出る必要はない。
 それに大家はたいてい受付か自室にいるから、まるでホテルのコンシェルジェのように便利だった。
 その受付の前で、迎えの車の運転手が待っているのがいつものことで。
「ありがと……ございます」
 小さな声で礼をいっても、運転手はいつも無言だ。無言で車に乗せ、運ぶ。
 火曜と木曜の休み以外、レイイチを店まで運び、マンションへと連れて帰る。
 今の仕事を始めてから、このマンションと店以外の場所に出向いたことがなかった。



 レイイチがカズキと出会ったのは6ヶ月前で、早咲きの桜がやっと数輪ほころび始めた、まだコートが必要な頃だった。
 それなのに、コートどころか一枚の布も身につけることを許されずに、その店の奥の、さらに分厚い扉の奥から地階に降りたレイイチは、寒さ以上に恐怖にガチガチと歯の根も合わないほどに震えていた。
 蒼白になった身体を捕まえているのは、きっちりとダークスーツに身を包んだ、いかにも、という体格と威圧感の男達で。
 引きずり倒されたレイイチの傍らに立ったのが、店のオーナーだったのだ。
「借金を返さずに逃げようなんて、たいしたタマだな」
 地階のせいか、それともわざとなのか、吐く息が白くなるほどに冷気が漂う暗い地下室で、物置のように積まれた道具は、遊びで見たSM漫画に載っていたようなものばかり。
 天井から伸びる鎖に、床に流れた妙な染み。
 何か言おうにも、歯の根も合わない恐怖の中にいるレイイチにとって、口を開くことすら困難で。
 ただ、逃げるつもりなんか無かった、と首を振るだけだ。
「まあ、俺も情けって言うモンは一応持っているからなぁ」
「ひ、っいっ」
 ニタリと嗤う男が、髪を掴んで顔を上げさせた。
「恨むなら、ヤミ金なんかに借金した親を恨めよ」
「が、あっ」
 喉元を走る指先の、鋭い爪が溜まらなく怖い。
 硬直した身体が、それでもガクガクと震えて止まらない。
「一億」
 利子が膨らんで、借用書が転売されて。
 訳の分からぬうちに倍に膨らんだそれに、両親は逃げた。
 借金があることは知っていたが、「逃げろ」というメールに気づいたのが遅く、状況が判らぬままにここに連れてこられたのだ。
「幸いにも借り主の方も捕まえられたからなあ」
 その言葉に、蒼白になった身体からがくりと力が抜けていった。
 両親とて仕方なく借金したのだと知っている。返す当てがあるから借りたのだということも。
 けれど。
「人生、何があるか判らないってことよ」
 馬鹿にしたように男が言う、予測できない事態に、返済が瞬く間に滞った。
「おまえにも働いてもらおう。何、気持ちよく喘いで、媚び売ってりゃ、がっぽがっぽ稼げるぜ」
 解放する気など毛頭ない男の言葉と共に。
「っ!」
 鋭い痛みに見開いた視界の中で、男が嗤う。
「ちょうど良いタマだ、なあ、そう思うだろう?」
 乳首を捻り上げられた痛みに涙していたレイイチは、初めて壁際の椅子に怠惰に腰をかけた男がいるのに気がついた。
「ん〜?」
 あのときも、大あくびをしていた。
「カズキ、こいつの調教をしろ」
「あ? こいつ?」
 ふらりと起ちあがった、カズキと呼ばれた男は、服装を入れ替えれば目の前の男とそっくりだった。目の前の男が猛禽類ならば、あちらは怠惰に伸びた昼寝中の猫。
 その眠たそうな目があるレイイチを見やり。
「ふ〜ん」
 ようやく興味が出てきたと、涙と鼻水でボロボロの顔をのぞき込んだカズキが、首をかしげて。
 じっとりと上から下までを舐めるように観察する。
 特に、力無く萎びて縮こまったペニスが念入りに見られていることに気がついて、慌てて腰をひこうとしたけれど。
「逃げんなよ」
 嗤いながらがしっと握られて、動けなくなる。
 つぶれそうで、つぶれない。
 痛みの走るそれに、猛獣の気を感じたのはその時だ。
 どんなに怠惰にしていても、肉食獣の爪を隠しているのだと、震えが酷くなる。
「こいつ、ちびんねぇな。溜まってねぇのか?」
「連れてきてから2時間ほど経っている。溜まっていないとはいえないな」
 涼やかに返すオーナーのその言葉の意味も判らない。
「へえぇ。ちびりそうなもんなのになあ。それにワアワア喚かねえし」
「騒ぐタイプではない。どちらかいうと目立たないでいる方が好みのようだ。 調査でもそう出ている」
「へえぇ。そういう奴って結局は世間体が大事なんだよなあ。で、漏れそうでも漏らさないってがんばるような奴」
 そう言って、好みだ、と、呟いた後に、ポツリと。
「んっ、こいつ、俺が飼うわ」
 ニカッと笑い機嫌良くなったカズキに、驚いたのはレイイチよりもオーナーの方だった。
「飼う? こいつは商売道具だ」
「稼げるようにしてやるし、稼がせてやるよ。でもこいつ、俺のもん。もっと俺好みにしちゃってさあ、いっぱいかわいがってやんの。ああ、それにちゃんと店でも使えるように、客が喜ぶように調教すりゃ文句ないだろ?」
 ニコニコとオーナーに返す言葉にオーナーは渋い顔をして、嘆息した。
「一週間後から、21時から3時まで、フロア・リアのホストをさせる。さぼらせるような真似はすんな」
「へへ、りょーかい、さすがおにいさま〜、や、さしいなあ」
「やめろっ、おまえの猫なで声はろくなことにならん」
 一体何が起きたか判らないままで。
 けれど、直後に始まったカズキからの調教で、レイイチは彼の言葉の意味を知った。
 泣き喚いて受け入れた尿道カテーテルの痛みなんて些細なことだった。
 膀胱まで届いて勝手にでる尿を笑われて、他人が見ている前で、自身の尿を撒き散らしながら、貫かれ。嘲笑と罵声の中で絶頂を教え込まれた。
 命令を拒絶すれば、腹に多量に注がれた液はいつまでもそのままで。許しを乞えば、レイイチ自身が悪いのだと、何度も何度も苦しみに朦朧としながら、繰り返し謝せられた。
 一週間の間に、男に犯される苦しみと痛みと快楽とが繰り返され、連続射精と射精禁止の苦しみを知った頃には、ドライオーガズムも潮吹きも覚えた。
 そして絶対服従しなければ、この身が壊れる恐怖を植え付けられて。
 一週間後、カズキの好みを演じるようになったレイイチは、オーナーの前に連れてこられたのだった。
「俺のもん、壊すような客には出すなよ」
 そんなカズキの言葉にオーナーがたいそう驚いた理由は判らなかったけれど。




「いらっしゃいませ」
 地階にある選ばれた会員のみしか入ることの出来ないフロア・リア。
 そこにやってきた常連客の前に膝を突き、その足の甲に口づけを落とす。
 奴隷として忠誠を誓うレイイチの姿を好み、指名しなくてもわざわざ見にくる客も多い。
 実は、カズキは調教中にレイイチをたいそう気に入ってしまい、兄であるオーナーに自分だけの物にしたいと訴えたのだが、買った分の儲けが必要だという彼との折衝に、限定期間で店に出すことを了承していた。
 それを客も知っているから、余計にカズキを求める客は多かった。
「おや、レイイチくん、今日もイヤらしいニオイをプンプンさせてのお仕事かい?」
「……はい、マスカレード様。レイイチはお仕事前でも我慢できなくて、ご主人様のおちんちんをおマンコに入れて遊んできてしまったのです」
 何度も繰り返したセリフでも手は抜けない。イヤらしく、相手をその気にさせるように、熱のこもった言葉を口にして、ふしだらな淫売を演じる。
「おやおや、そんなにおちんちんが好きなのかい?」
「は、い……マンコがこすれて真っ赤になるまで遊んで、おいしいチンポ汁いっぱいのませてもらうのが、大好きです。マスカレード様のも……」
 跪いたままに腹の出た壮年の男の通称を呼びながら、見上げる。
 尻にはアナルプラグで留め置かれた精液が残ったままの身体で、溢れた汚れたそれはそのままに、肌にこびりついている。
 ここに来る客は、レイイチの飼い主が調教師のカズキだと知っていて。
 そのカズキに毎日のように犯されたままに、シャワーも浴びずに出勤しているのを知っているのだ。
 知っていて。
「イヤらしい汚れをたっぷりつけて?」
 レイイチを選ぶ。
「はい、レイイチは汚れたままでお客様の前に出てしまう変態なのです」
 三文芝居よりしらけたやりとりは、もう毎日だ。
 カズキに教え込まれたこの台詞は、幾パターンかはあるけれど、基本的には同じだ。
 誰もが、レイイチがそんな質ではないことを知っていて、楽しんでいる。
「マスカレード様、どうかレイイチの汚い身体をキレイにしてください」
「おやおや、レイイチは私にキレイにしてもらいたいと? ……ふむふむ、そんなに言うなら、スミズミまでキレイにしてあげようかねえ」
 外ではどこかの会社の重役か社長クラスの男達が、このフロアに入ったとたん、欲望丸出しの獣になる。
 食らいつき、熟れた肉を味わおうと舌なめずりをしている。 
「じゃあ、案内してくれるかい?」
 地階にはいくつもの個室があって、レイイチのようなホストそれぞれに専用の部屋がある。
 客が来れば、部屋に案内して客とともに過ごすのだ。
 そんなレイイチ専用の個室に案内し、ソファに座って貰って。
「マスカレード様、レイイチの身体を綺麗にしてください」
 その足下に跪き、三つ指をついてお願いする。
「そう、じゃあ、一番汚れているところを見せてよ」
「……、はい」
 その言葉に一瞬動きが止まりかけたけれど、レイイチは溢れかけた感情を飲み込んで、頷いて。
 するりと下ろしたズボンをたたんで棚において、尻を向けて這い一番汚れている場所を向けた。
「う〜ん、栓がしてあってよく見えないな」
「失礼いたしました、お待ちください」
 ・客の要望はすべて満たさなければならない。
 ・客の言葉に逆らってはならない。
 ・客の望みを邪魔してはならない。
 すべて、カズキに教え込まれたとおりに行わなければならない。
 レイイチの手がアナルプラグを握り、「ん」と強く息む。
「おお」
 感嘆の声を上げた客の視線は、窄まっていたアナルを大きく広げて出てこようとするプラグに釘づけだ。
「うっ、くっ……うっ」
 何度も息む。
 そのたびに収縮するアナルからプラグが出たり入ったりする。
 そして。
「あ、あぁぁっ」
 堪らずに発した嬌声とともに、すぽんと飛び出たプラグが床を転がって。
 その後を追うように、ポタポタと粘性がなくなるほどに放置された精液が落ちていく。
「はあっ、あっ」
 大きな異物を生み出した場所が、ひくひくと痙攣して、甘い疼きが下肢に走っていた。
「ほんとうだ、とてもよく汚れているね」
 客が起ちあがり、腰を高く掲げた四つん這いのレイイチに近づいて。
 その気配に、何度繰り返しても馴れない身体が強ばる。
「約束だ。綺麗にしてあげよう」
 がしりと尻タブを掴まれて、まだ閉じていないその場所に。
「ひ、あぁぁぁ————ぁぁ」
 ジュボジュボと勢いの良い水流が流れ込む。
「お、おおっ、入るぞ、入って、汚い汁を流し出しておるっ」
「ぁ、ぁっ、いぐっうっ」
 そのままぐいっと貫かれて、注がれる。
 意識したくなくとも、今の状況をありありと理解してしまって。
 その瞬間、全身がぶるりと震えて、すうっと血の気が失せた。
 いくら我慢して押し殺して、すべてに服従していても、不意にこみ上げる感情は止められない。
 それでも、レイイチはその焼け付くような感情すべてを飲み込んで、卑猥な言葉を言い放つ。
「あ、ああ、入って——っ、んぁ、あひぃ、ああっ」
「いっぱい貯めておいたからなあ、ほれ、奥の奥まで洗ってやるぞっ」
 勢いの良いそれが隙間から溢れ、挿入前にかけられたのと一緒に足下に流れ落ちていった。
「あ、んっ、ありが、とう、ございま、すっ。ああ、お客様のっお小便さまが、こぼれっ、ああっ」
 ・客に与えられるものは、客と同じである。すべてに敬称をつけて敬い、いただきものは決して粗末にしてはならない。
 それは、客の排泄物であろうと、だ。
「おお、零れているな」
 客は、このプレイのためにレイイチを選ぶのだ。
「あ、もったい、ない……」
 レイイチが貫かれたままに後退した。客もそれを誘うにように動く。
「も、うし、わけ、ございません……」
 どんなに押し殺してもその声が震えていることに、客は気付いた。嗚咽に近いひきつけるような声音が隠しきれてないのだ。
 いくら従順な奴隷の振りをしていても、なりきっていないレイイチが垣間見せるその感情の動きが、客を煽り、レイイチで遊ぶことを選ばせる。
「まあ良い、しっかり奥まで入ったようだし、このまま我慢しなさい」
「は、はい」
 するりと抜けて、噴き出しそうになる中身を、慌てて括約筋をぎゅっと締め付けて止めた。
 これから先、襲い来る苦痛の時間がいつ終わるのか、それは客の望み次第だ。
「お、きゃく、さま……」
 精液では腹を下さないレイイチでも、多量の浣腸は別だ。
 ぐるっと鳴り出した腹に苦しげに呻き、背後のソファに腰を下ろした客に声をかけた。
「ど、どうか……栓をつかう、ことをっ、おゆるし、くだ……さぃ」
 誰かが許可を出さない限り、レイイチは自分では何もしてはならない。
 それもカズキが決めた。カズキはレイイチが 他者に隷属する事だけを許したのだ。
 そんな、排泄の自由すら奪われたレイイチが、他のルールを守った状態でできることは、少ない。
「ああ、レイイチの望みだもの、もちろん許してあげるよ」
「あぁ……」
 嬉々として頷く客に、レイイチの瞳が潤む。
「ありがとうございます、マスカレード様。レイイチのようなモノへのマスカレード様のご温情に感謝いたします」
 平伏し、その爪先に強く口付けを落とすレイイチの腹で、ゴロゴロと不吉な音が鳴り出していた。



「レェーチのピアス、どれが似合うかなあ」
 調教以外では怠惰を絵に描いたような弟が、いつもは惰眠を貪るこんな時間に店にきて、アクセサリーカタログをめくっている。
 しかも、レイイチへの誕生日プレゼントだという。
 店にあるカタログは玄人向けでかなりマニアックな物があったりもするが、いつもなら、持って来い、の一言ですませる奴だから、暇つぶしで来たのかと思ったが、どう見ても本気で選んでいる。
 これはかわいいけど、いまいち色が、とか。
 こんなデザイン、レェーチの色っぽさこわしちまう、とか。
 かなり真面目に選んでて、それだけでも、あの他人なんかどうでも良いという奴の変わりように、驚愕ものなのだが。
「あ、あの客、俺のもんに無茶させすぎ。レェーチはあのちょい前に出させる方が、アンアン喘いで可愛いの。浣腸も程度ってもんが……、ああもう、あんのデブ、レェーチを気持ち良くさせねぇ奴なんか断れよ。も、出入り禁止」
 カタログだけでなく、監視カメラに映る映像に文句を付けるから質が悪い。
「あ、来週レェーチは一週間休みな。たまにはバケーションして、リフレッシュするから」
「来週っ! もう予約が!」
「もう決めたし、そっち断って」
 ここのところ万事がこの調子で、しかも腕の良すぎる調教師の機嫌を損ねるとたいそう厄介だと言うことを身内として良く知っているから 、無碍にもできず。
 それでも、せっかくの上得意客を断るわけにもいかず。
 だが、聞く耳持たぬカズキは、なにを言おうと来週休ませるだろう。
「いい加減にしてくれ」
 兄であると同時にオーナーでもある立場上、どうしろって言うんだ、と、心底ウンザリと嘆息を零すしかなかった。


【了】