【Animal House コウマ編】

【Animal House コウマ編】

アニマルペット達が客を癒やすコンパニオン・ハウスで、オプション専用として働くコウマの話。
コウマはまだ赤ん坊だから、たくさんのミルクが必要です。
近親相姦入りますので、苦手な方はご遠慮ください。
 
 
 

Animal House2

 縋るかのように伸ばした手は力が入らずにぱたりと落ちて。
 片腕では支えられなかった上体が崩れ落ちていった。
 古ぼけて粗末な印象な、けれど材質だけは上等な寝台は、己とは縁がないのだと言わんばかりに明るい場所にある。
 寝台の上から照らす煤けた照明の仄暗い明かりの中で、そこだけがぽっかりと浮かび上がる中で、一組の人間が隙間なく絡み合っていた。
 肌をまとう滴が明かりにきらめき、和えかな嬌声が砕石痕もあらわな岩壁で反射する。
「ふかぁっ、ああ、だめぇぇっ、こ、こわれっ、あ、やっ、あぁっ!」
「おおっ、いい締め付けだ。欲しがってワシのモノに絡みよるわ」
 喜色に満ちた声音に、リズム良い濡れた音が粘っこく絡む。
「だ、だめぇぇぇっ、も、やだぁぁっ! イキたっ、だめぇぇっ」
 でっぷりとした腹の肉がプルプルと揺れる下で、華奢な身体がビクビクッと激しく痙攣した。
 その様子に気付いて、冷たい床に 這いつくばっていた、小柄で細身の青年は、ずるりと這い進んだ。緩慢に上がった顔はまだ若い。
 やけに細い腕でひこずるように身体を動かして、しなやかな胴体を寝具の脇で持ち上げた。灯りの輪に入ったその肌はきめ細かく黄みがかっていて、黒髪を見るまでも無く東洋系だと知れた。
 そのせいか、非常に若く見られる彼は、すでに21歳ではあるけれど、誰もがそれを信じてない。
「ひいぃぃっ!!」
 不意に悲鳴とも嬌声とも付かぬ声が響き、手入れだけは十二分にされている彼の艶やかな黒髪の上に、ポタポタと滴が降り落ちてくる。
 その液体を首を伸ばして口に受け、受け止めきれなかったそれを舌を出して舐め啜った。
 もう何度も出したそれは、量も少なくひどく薄い。
「おやおや、また達ったのかい? なんともまあ、淫乱なことよ」
 老人が呆れたように言い、けれどその腰の動きは止まらない。
 達った余韻に浸る間も無く再開した動きに、相手をしているかなり若く見える男は、ほとんど白目をむいて揺すられるばかりだ。
 その姿を見ながら零れた精液を舐め取った青年は、四つん這いの姿勢を取って、感謝の印にゆらりゆらりと尻穴から伸びた尻尾を踊らせる。
 老人に抱かれる彼を羨望のまなざしで見つめながら、再び自分の出番ができるまで、そこで待機するのが青年の常だ。
 絶頂を繰り返し、際限ない射精に歓喜どころか苦鳴する身体を見つめるその瞳に浮かぶのは、明らかな羨望であった。



 青年は半年ほど前からずっと、ここ「コンパニオン・ハウス」と呼ばれる館で暮らしていた。
 この館は、アニマルペットであるコンパニオン達が客の要望に応え、癒やしを与えるとして、知るものには有名なところらしい。
 けれど、それが地図のどこにあるのか、誰が運営しているのか、青年も他のアニマル達も誰も知らない。彼らはここに連れてこられてからずっと、己の小屋と客室とそれらを繋ぐ廊下しか知ることはなかった。
 逃げようとした者もいるけれど、見せしめで行われる罰の厳しさを見せられて、誰もが全てを諦める。
 青年もまた、勤めていた工場から帰宅中に浚われてからずっとここにいて、日の光すら目にすることはなく、調教時以外は客に奉仕する生活を送っていた。
 最初の頃はまだ、誰かの恨みを買って堕とされたのだろうか、知らない誰かの借金のカタに売られたのだろうか、と考える余裕があったけれど、元より心当たりなど全くないままだった。
 親族と言っても、今や堅実な生活を志とする父親しかいず、母親は2年前に亡くなった。他に親族はいず、考えられるネタも無くて。
 けれど、少しでも言葉を発したら、調教師達に「無駄吠えをした」と激しい折檻を施され、考え込んでいれば「不真面目だ」と反省するまで責め立てられ。
 そんな日々に、精神の方が先に音を上げた。
 折檻のネタになるような言葉を発することを止めて、調教師の言われるがままに従って、熱心に客達に奉仕する術を覚えていく。
 調教は休む間もなく繰り返され、考えることは悪いことだという認識すら植え付けられて。
 調教が終わる頃には、彼の名は子馬のコウマとなっていた。
 その頃の彼が、小柄なのに細く長く伸びた四肢と後ろだけ長いたてがみのような黒髪を持っていたこと。何より小柄なくせにペニスは人一倍大きくて、ウマナミと言うに相応しいモノだったからだ。
 そんなコウマに館の主は、「この子はまだ赤ん坊だから、ミルクだけを与えるように」と言ったらしい。
 調教師が言うその言葉の意味が判らずに、けれどそれを疑問に思うこともなく馬具のような物を身につけさせられたコウマは、手綱を引かれるがままに首を伸ばした。
 その顔に降ってきたのは、調教師の一人が自慰で吐き出した精液だ。
「ミルクだよ」
 ニヤリと嗤う取り囲んだ10人の調教師が、次々に精液を振りかける。
 頭から身体から、白く垂れるそれを、コウマは全て舐めさせられた。
 床に落ちたモノは啜り取り、身体についたものは掬い上げて舐め取り、調教師達のペニスに残ったモノまで吸い取らされて。
「たくさん飲まなければね。まだまだお前は赤ん坊だから」
 その日から始まった調教は、朝から晩まで精液を啜ることだった。
 さらに、いつでも馬のように四つん這いにさせられたのもこの時期からだ。
 調教師が引けるようにと手綱が奥歯に取り付けるタイプの轡や面掛にかけられて、尻尾は己のものより太いペニス型の挿入具でアナルに固定された。さらにそこは鞦と呼ばれる馬具の形をしたベルトで抜けないようになっていて、尻尾の根元に回されるはずのベルトは陰嚢の根元で、その動きを固定していた。
 そのせいで、突き出してしまう大きなペニスには幾重にもバンドが嵌められて、さらに尿道にも波打つ棒が埋め込まれた。
 その棒は、先端の金具を外せば排尿だけはできるようになっていて、一日一回のメンテナンスの時しか外されない。
 そのせいで、その時からコウマはずっと一滴の射精も許されていないのだ。
 調教の果てに敏感になった前立腺を刺激する張り型のせいで、常に勃起していても。
 行為に使われる潤滑剤に入っている媚薬に、常に身体が侵されていても。
 勃起して重くなったウマナミのペニスを、足の間でぶらぶらさせながら、コウマは解消させてもらえない射精衝動に苦しみ続けるようになっていた。


 今日も、四つん這いで調教師に引かれて客の前に連れて行かれる。廊下をのろのろと歩むコウマの後ろに見学客がいるのもいつものことで、勃起したペニスが三本目の足に見えると嘲笑されながら、部屋へ向かう。
 コウマはあくまでオプション提供のアニマルだから、客の相手は直接はしない。
 せいぜいがペニスの精液を舐め啜るために口淫をするくらいなのだけど、意外にも特別料金を払っても呼び寄せる客は多かった。そのため、コウマは日がな一日、どこかの部屋で淫臭漂うさなかに置かれ、たっぷりと媚薬が混じった精液を啜り続けている。
 そんなコウマのもう一つの特徴が、膝から下が病的なまでに細く、体重を支えるのは難しい足だった。昔は何の問題もなかったそれらは、ここで打たれた正体の分からぬ薬のせいだ。
 そのせいで膝をついて進むしかないのだけど、実のところ腕もそれほど強くない。
 片手では上体を支えにくいほどに、そちらも弱っているのは同じ薬を打たれたせいだ。
 身体を支えられなくなる手前で調整された筋力は、四つん這いの体勢だとどうしても身体が痙攣しているかのように震えてしまう。そのせいでいつも尻尾が揺れて、揺れれば中の張り型に振動が発生するようになっていて、位置調整された張り型に前立腺を絶え間なく刺激され続けた。
 その刺激は微弱ではあるけれど、徹底的に快感を教え込まれたそこには過ぎるほどであって、コウマの身体はいつだって欲情して、時折痙攣して空達きすらするほどだ。
 最近では最初の客の元に行く前から、快感に呆けた視線を彷徨わせ、よたりよたりと這い進み、何度も何度も艶めかしく身をくねらせるようになっていて、禁じられた喘ぎ声すら止められない。
「ひぁぁ、ん、んん……」
 零れかけた嬌声は、けれど長く続く前に溢れた唾液とともにごくりと飲み込み、役目が始まるまで待機すべき場所に蹲る。
 そんなコウマの視線はどこか虚ろで、溢れた涎が口の端を辿り床に染みを作り、腰はずっと揺るがせながら出番がくるのを待ち続ける。
「あ──っ、あっ、おおっきっ、壊れるうぅっ!! やぁぁ、ゆるっ、てぇぇ、ひぎぃっ!!」
 頭上で響く嬌声がひときわ高くなり、それが絶叫に変われば出番はすぐだ。
「だらだら許可無く零して、その上に締め付けが緩い。おいっ、鞭を」
「さぼるな、許可無く達った罰だっ!」
「ひぎっ、ああっ、お、お許しっ、──あぁっ!!」
 罵声と嘲笑と悲鳴が入り交じる中で、尻を振りながら、黙々と全ての精液を舐め取っていく。
 今日はファック・バニーと呼ばれる金髪の青年と3人の客達の部屋だった。
 名前の通り彼は色キチガイの設定のウサギで、髪の間からピンクの長い耳を垂らしている。
 そんな彼の客はいつも複数で、ずいぶんと乱暴な行為が好きな者ばかりが揃っているのが常だった。
 けれど、そんな場でもコウマの顔には嫌悪感など微塵もなく、それどころかどこか恍惚といっても良いような表情すら浮かべて、その場で自分の役目をこなしていた。
 時折揺らぐ視線が捕らえるのは、さっきから噴き上げっぱなしのバニーのペニスだ。
 自分もあんなに出したい、と願う想いが視線を外させず、零れる精液が自分の者だったらと、希う。
 バニーの客は、いつもたっぷりの潤滑剤を使うけれど、それはバニーのためではなく、中に含まれる強力な媚薬をたくさん注ぎたいがためだった。
 溢れるほどのそれは、抽挿の度にアナルから噴き出して、客の出した精液と混じり合い流れていく。客に施される中和剤など与えられないアニマル達は、意思に反して淫らに欲に狂い、限界まで精液を吐き出して、客達を悦ばせるのだ。
 もちろん、それを舐めなければならないコウマは、口から直接それを体内に入れているのと同様で、ある意味アニマル達より効きが良い。
 現にその身体は、全身の肌を淡く紅潮させ、股間のペニスが腹をうつほどに反り返らせ、アナルの僅かな刺激など物足りなくて、狂いそうなほどに激しく抉るような刺激を渇望した。
 けれど、あくまでコウマはオプションで客がアナルを使うことはない。
 精液を美味しそうに舐め啜るその無様な姿を愉しむだけの代物なのだ。だからバニーのような相手との行為に熱中し出すと「邪魔だ」とその白い尻を蹴飛ばされるほどに扱いは雑だ。
 だから、今目の前で男のペニスを捻じこまれ、鞭打たれているバニーが心底羨ましい。
 客の中には、射精制限を好む者も多いけれど、今日のように精液全て絞り付くさんとばかりに、連続射精をさせてもらえるなんて、なんてバニーは幸せなのだと、心から思う。
 コウマには許されぬ射精をあれだけできて、なんでそんなに苦しいのか。
 贅沢だと、ただ闇雲に憤慨し、いらないならくれれば良いのに、と、無い物ねだりを心の中で繰り返す。
 ああ、羨ましい。妬ましい……。
 もらえないと思えばますます欲しくて仕方が無くて。こんなに自分が堪え性が無かったかと思うほどに、渇望が強くなる。
 調教中も指と道具と薬だけで、その後もずっと張り型で犯されないようになっているコウマは、いまだペニスを受け入れたことが無い。
 アナルからは快楽のみを与えられ、拡張も時間をかけてゆっくりと行われてきたから、そこは弛むこと無く綺麗なつぼみを持っていて、張り型を挿れる時も形良く華開くだけだ。
 それがどんなに大事に扱われているなどと、知らないのはコウマばかりであって、他のアニマル達がどんなにコウマを羨ましく思っているのか、それこそ知りもしない。。
 この館では、「射精をしたいなら客のペニスをいただいて許可を貰うこと」という、絶対に守らなければならない規則があって、客達も悦んでそれに従っている。
 だから客を取らせてもらえないコウマの願いは叶えられるはずもなく、願いはますます強くなってコウマを縛り付けていく。
 希望は強い欲望になり、物足りなさは飢えのごとく激しくなり続ける。
 僅かな休憩や食事、睡眠時間に、休ませなければならないはずの身体がコウマを裏切り、勃起したままに滾る熱にうなされる。必死になって我慢しようとしても、気が抜けば床に向かってカクカクと腰を動かし、哀れな自慰の姿を披露した。
 冷めない熱は思考すら染めつくし、狂おしい欲求に全身で身悶え、助けてくれる誰かを探して視線を惑わせた。
 それは客で無くても良いのだ。
 ここで働く者でも、調教師でも、誰でも。
 誰にでも腰を振って強請るコウマに、だけど誰も助けは与えてくれなかった。
 積み重なった不満が恨みとなり、最近では堪らずそれをアニマル達に向けてしまう。
 溢れて泡立つ精液を舐める時に、前歯でわざと痛めるようにアナルの縁に食い込ませれば、バニーの身体が激しく跳ねて、苦鳴の中でまた達っていた。
 ああ、なんて。……なんで俺だけ……ああ、羨ましい……。
 勝手に達ったバニーが客の怒りを買って、二輪差しをされていることすら、この身に起きて欲しいと願う。
 射精をさせてもらえるなら、あんなことなど何でも無いのだろうに。
 けれど、狂おしく欲するコウマを無視し、客達はたった一匹しかいないバニーだけに群がっていた。
 コウマに意識が向くのは精液を目にしたときだけだ。
「ミルクが零れているぞ。ほら、美味しいミルクがもったいないだろう?」
「ひぐっ」
 髪の毛を引き掴まれ、結合部から溢れるそれに顔を押しつけられて。
 真っ赤に腫れたバニーの尻を垂れる客達の精液を舐め取っていく。
「ひゃんっ、やぁっ」
 鞭で傷ついた肌は僅かな刺激でも傷むのだろう、バニーが金切り声を上げて泣き叫ぶけれど、客は構わず太い肉棒を小さな入り口に押し入れる。さらに続いてもう一本のペニスが、さらにもうバイブが深く激しく埋められる。
 耳をつんざく悲鳴に、滴る血が視界を赤く染め。否、それは欲望に血走ったセイトの目のせいでもあって、思考全てが朱に染まっていく。
「ひ、ん……っ、んっ……、イ、たい……イカ…………て……」
 口の中で音にならない言葉を紡ぎ、自分が小さく口走っていることすら判らぬままに、コウマは不意に客の腹の上で踊るバニーのペニスに食いついた。
「ひぃ、ああぁっ、やあぁぁ!」
 きつく、激しく舌を絡め、吸い付いて。
 欲望に狂い、歯を立てて、役に立たなくして自分と変われとばかりに責め立てる。
 いきなりのことに暴れ逃れようとするバニーは、けれど客に挟まれ、動けない。
 予定外の出来事に、客達は驚き、けれど愉しい余興だと大笑いでアニマルの戯れを受け入れた。
 痙攣するペニスが吐き出す薄い僅かな精液をコウマは喉を鳴らして飲み込んでも、コウマは、まだ足りないとばかりに、柔らかくなった肉に食い付いた。



 勝手に他のアニマルのペニスに噛みついた罰だと、コウマの乳首にはカウベルが下げられた。
 重いそれは身動ぐだけでカランカランと音を立て、引っ張られる激痛の中でも沸き起こる疼きに、腕を震わせた。筋肉の少ない腕はそんな震えでも堪えられず、上体がガクガクと揺れる。
 その拍子にがくりと腰が砕け、ペニスの棒がかつんと床を打つ。その刺激に腰が跳ね上がり、またベルが鳴って。
 ひょこたん、ひょこたんと跳ねる様が、まさにコウマらしいと、客達にはたいそう人気で、またコウマを呼ぶ客が増えた。
 日に二度、三度、増えればそれだけ媚薬は身体に溜まっていく。
 客が満足して休憩に入ればコウマは下がらされるけれど、すぐに次の客に呼ばれる。
 媚薬で熟れた身体で尻尾を振っていれば、アナルの中の挿入具が前立腺を押し上げて、前よりも激しく感じる快感で全身を蕩けてさせていくだけだ。
 そのせいで余計に力が入らない四肢を震わせて、泣き濡れた瞳でヒイヒイと鳴いていても、誰もコウマには構ってくれない。
 ファック・バニーのペニスに噛みついたあの日以来、コウマの手綱は短くなって調教師が必ず付くようになり、勝手にペニスを銜えることはできなくなっていた。
 毎日何度も淫臭の漂う部屋で、ただひたすらに精液が出されるのを待ち続ける。
 今日の部屋は、グロテスクな道具がたくさん置かれた地下牢もどきよりも陰気なところだ。
 拷問部屋という名の遊戯室で、中空に吊られて息も絶え絶えの淫魔猫のアナルから滴る精液を受け取るのが、今日最後の仕事だと言われていた。
 高い位置で吊らされて苦しげに呻く彼は、人をたぶらかした罰だといろいろな卑猥な目的の器具で責められて、半分戒められたペニスから射精とも呼べぬ緩慢な量で床に零し続けている。
 その下にぺたりと座り込んで、上をむいて口で精液を零さぬようにしろと言われて。
 座ったせいで深く埋まった張り型の刺激がたいそう良くて、腰が勝手に動き回る。
 けれど、立ち上がったペニスはふるふると小さく震えるだけで、物欲しそうに先端をパクパクと喘がれるだけだ。
 ぽたりと舌の上に精液が落ちる。
 その生臭い味を味わいながら、ああ、出したいと切に願う。
 どうか、コウマの疼くアナルを使ってください。
 何でもしますから、あなた様のペニスを突っ込んで、掻き回して、いっぱい射精を許してください。
 どうか、おれで遊んでください。
 お願いします。
 言葉が許されていたら、繰り返し懇願していただろう言葉を、頭の中だけで繰り返しながら、もじもじと腰の動きを止められないままに、精液を受け止める。
 淫魔猫の肌を打つ鞭の音も、苦鳴が混じる嬌声も。
 涙を零して言われも無い罪の許しを乞う淫魔猫をうっとりと、けれどぎらぎらと滾る思いで見つめながら、何度も何度も、自分も犯してと願い続けているうちに。
「く、うんん……んん、しい……いれ、て……ああ……おれにも…、ほし…ぃ……」
 吐息に交じり強請るように声が漏れ始めた。
 あの日から、コウマはあれだけ鳴くなと躾けられていたはずの鳴き声を、縋るように発するようになっていた。
 啼き出したコウマの声が、薄暗い部屋の床の上で響いていく。
 その様子を、客も調教師も嗤って見て、煽るように淫魔猫のアナルに埋められたバイブの強度を上げた。
 激しくなった嬌声に、またぽたりと新たな滴が落ちてきて。受け止めきれなかったセイトの頬を白く染めた。
 その様子を隠しカメラで観察している者がいることなどコウマは知らない。気づきもせずに、口を開けて垂れる精液を受け止め、淫らに腰を揺らめかし、カランカランとカウベルを鳴らし続ける。
 カメラの映像を見ていた男が、そんなコウマに満足げに頷いたことなど知らずに。
 今のコウマは、自分が犯されることばかりを考え続けていた。




 突然、名前が「セイト」になった。
 もう大人になったから、だから固有の名前で呼ぶよと、目の前の、始めて見る男に言われたのだ。
 そう呼ばれた時はどこか懐かしく感じた次の瞬間、それが元の名前だったことを思い出す。
「なん……」
 思わず発しかけた言葉はいまだ許されていないと、理性が働くセイトが思い出し、慌てて続くそれを飲み込んだ。代わりに恐る恐る目の前に座る体格の良い壮年の男を見やる。
 ついぞ見たことが無い男は、けれど、あの館での記憶は曖昧だから、客で無かったとは言い切れない。何より、あの館からセイトを連れ出すことができたのだから客には間違いないのだろう。
 だがセイトの視線を浴びても男は薄ら笑いを浮かべるだけで、何も教えてくれるつもりはないようで、ここがどこなのか、本当に館で無いのかも判らない。
 セイトの記憶にあるのは、先日の最後の客の部屋から連れ出されたまでだ。
 ただひたすら達きたいと願うままに、妄想の中で射精しまくって愉悦に浸っていたことは覚えている。けれど、それだけだ。
 ふと気がつけば、ここにいて。
 睡眠だけは十分取れているのか、いまだ状況が判らぬ状態に、身体も落ち着いて、むやみやたらに欲情はしていない。
 ただ、いつもの馬具は身につけたままだった。
 手綱だけは外れていたけれど、床を打つペニスの棒も拘束具も、乳首のカウベルも、アナルの尻尾もそのままだ。
「セイト」
 怯えを見せて固まっているセイトに、不意に男が話しかけてきて、それに跳ねるように顔を上げた。
 声音は優しい響きを持っていたけれど、背筋に総毛立つほどの悪寒が走ったせいだ。
 その冷たい感覚に、肌が色を失っていく。
 さらに、声音よりも、顔に浮かんだその笑みもより怖しいものだと気がついてしまうと、視線を合わせることすら躊躇した。
「お前はね、私のお気に入りの部下の成功報酬として購入した」
 その手元でカチッと小さな音がしたことに、恐怖から逃れるようにそちらに見やる。
 男がその指先にぶら下げたのは、小さな真ちゅうでできた鍵だった。それをセイトの目の前に揺らしながら、足を組み直す。
 だが、セイトはそんな男の仕草より、その鍵に釘付けになっていた。
 あれは、セイトのペニスを戒めるベルトの鍵で、もう何度も見せつけられたそれを、間違えるはずも無い。
 あれがあれば、ペニスの拘束具も棒も全て外せるのだ。
 陰嚢を囲み動きを抑える馬具も外せて、アナルの己のペニス並に大きな張り型も外せて。
「この鍵とともに、お前をその部下にやろうと思っている。ちょうど任せた仕事を成功させてくれたと同時にお前の準備もできたと聞いたし、ちょうど良かった」
 準備……?
 何のことだろう、と僅かに思ったけれど、ゆらりゆらりと動く鍵から視線が外せない。
 今日はまだ媚薬入りの精液は飲んでいないけれど、張り型を意識したせいか、身体の熱が上がっていく。飲み込みきれなかった涎がだらだらと喉を伝い、ペニスはムクムクと完全に勃起して、腰がカクカクと揺れていた。
 薬に侵され続けた身体が、常に性的快感を欲し続けるようになっているのだと、セイトはまだ知らない。
 雄の僅かな匂いにすら身体が反応するようになっているのだと、まだ気付いていないのだ。
 そんなセイトの浅ましい姿に男が満足げに頷いた時。
「ああ、来たね」
 誰かの足が近づいて、男の傍らで立ち止まった。
 けれどセイトの目の前にある鍵に視線をやっていて、男は視界に入っていなかったけれど。
「お前が欲しがっていた黒髪の子だよ。名前は、奇しくもセイトという」
「っ……セイト……」
 息を飲む音と共に、どこかで聞いた声が耳に届く。その記憶を揺さぶる声音に気を取られて、ふっと声のした方を見やって。
 びくん、と、全身が硬直した。
 熱に浮かされ潤んだ瞳の中に、見知った顔が写っていた。
 セイトと同じく呆然と半端に口を開けて、視線を向けている男がいた。それは、淫欲に狂い、人だった頃のことなど忘れていた日々の中、それでも、時折思い出してしまった顔だった。
「あ、と、とう……さ……ん……」
 掠れて音にならない言葉が口を吐いて出て、さすがに全身の熱を一瞬忘れた。
 母に似て小柄で童顔な自分とは違い、ブラックスーツが似合う大柄で筋肉質な壮年にしては若々しく張りのある男は、間違いなく実の父だと、セイトは理解して。
 縋るように身体がぎくしゃくと動き出したその時。
 男が慣らした喉の音に、遮られた。
「良く似ているだろう? セイトくんの”偽物”のくせにね、なあタクト」
 わざとらしい物言いは、固まった2人双方に向けられていた。
 そのままゆっくりと視線を巡らせて、セイトを見つめ、満足げに父親たるタクトに鍵を差し出す。
「にせもの……」
 それに反応したのはタクトの方が先だった。
 差し出されるままに鍵を受け取って、手のひらの中のそれを見やり、またセイトに視線を向ける。
「偽物、ですか?」
 惑うように呟いて、確認するように男に視線を向ける。
「本物のはずがないだろう? 君の息子は、半年ほど前にレイプされて亡くなったんだから」
 セイト本人を前にはっきりと、もう本物はいないのだと言い切り、愉しげに咽の奥で嗤っている。
「悲惨なレイプ現場だったのは、君も私も目にしたからよく知っているだろう?」
 不幸な出来事だと、言う割りには愉しげで。
 それに父親も。
「ああ、そうでしたね。あの子は私の目の前で死んだ、そうでしたね」
 ふっと視線を逸らし、元に戻した時には、その口元は笑っていた。話題に沿わない表情に、セイトの身体が凍り付く。
「そ、そんな……」
 あまりのことに声をあげようとしたセイトは、けれど2人に浴びせられた視線に言葉までも失った。
 まるで捕食者のように、楽しい獲物を手に入れたかのような喜悦に満ち満ちた視線の前に、自分は餌に過ぎないのだと恐怖を持って思い知る。
 2人の言葉がでっち上げだとしても、少なくとも彼らは前言を撤回などしないだろう。
 あれは確かに父親だ。
 けれど、あれはまた、セイトを守ってくれる存在には見えなかった。
 僅かな時間に、それをはっきりと認識させられるほどに、タクトの雰囲気は父親の時とは変わっていた。
 あんな剥き出しの、はっきりと判るほどに欲望に満ちた厭らしい視線など、向けられたことなどなかった。
「前に言っていただろう?」
 そんなタクトに、あの男が親しげに話しかける。
「お前が例の組織のボスの息子……テイラーだったかををたらし込んで、お前のチンポ狂いにさせて淫売館に売り込むことができたら、素晴らしいご褒美をやろうと」
 意気揚々と語る男の言葉を、脳は理解せず、けれどろくでもない内容だと本能が悟り、怖気に全身が震えてしまう。
 何より父親がセイトを見る目に浮かぶ好色さが濃くなるのが、視線を向けていなくても判っていて。逃れるように小さく蹲るけれど、余計に包まれるように感じてしまった。
 それは、あの館の客達がアニマルに向ける目と同じでしかなかった。
「お前が好きな黒髪で小柄で細身で若い……お前の息子そっくりな青年で年も同じで21歳。探してみるものだね。あの館の主に、探して欲しいとお願いしてたら、本当に見つけてきてくれたよ」
 クスクスと愉しげに笑いながら、男は父親を見やった。
「欲しいかい? 気に入らないようだったら……別に遠慮しなくて良いからね。他の奴に与えても良いし」
 その言葉に、タクトが即座に首を振った。
「いえ。こんな私のために、しかもあのように簡単な仕事なのに、こんな……こんな素晴らしい……。ああ、確かに息子にそっくりです。まるで本人のように……そっくりで。甦ったのかと思いました」
 タクトも男も、セイトがまさしくその息子であると判っていての茶番なのだと判るほどに、二人の様子はあからさまにわざとらしかった。
 そう、二人は判っていて、わざわざこんな茶番をセイトに見せつけているのだ。
 救いの無い絶望を、わざわざ見せつけるように。
「偽物とは言え、可愛い息子にそっくりな者。ありがたくいただきとうございます」
 父親が今や完全にその表情を恍惚に緩ませて、視線をセイトに向けたまま近づく。
 セイトは、近づくその確かに父親のはずのタクトから逃れるように尻で後ずさった。このときばかりは、アナルの張り型も気にならず、力の入らない手足が悔しくて仕方が無かった。
「ゃ……い、や……」
 以前の父親との仲は悪くなく、普通の親子関係で時に叱られ、時に笑いあいながら暮らした日々が確かにあったけれど。
 けれど、これは誰だろう?
 外観は確かに父親そのものなのに、その内包するモノは、明らかに違う。
「それは良かった」
 男が満足げに声を上げた。
「ねえ、偽物のセイト。タクトと私が出逢ったのは、1年ほど前でね。本物のセイトくんが男に襲われ無惨にも亡くなる半年位前だったんだよ。あの日、知らせを受けた私が廃屋となっていた別荘に出向いたら、うちの商売道具の男娼をずいぶんと愉しげにズタボロに犯していたんだ。あまりにも愉しそうに、セイトって呼びながら。しかも、見たことも無いほどに図太いペニスでね。後にも先にもあんなに驚いたことはないね。股間から腕が生えているのかと思ったくらいだ」
「たいそう使いづらい代物ですけどね」
 そのサイズをセイトも知っている。その血を受け継いだセイトは、そこだけは父親似になってしまったからだ。
「まあ、驚いて、怒りも消えて。で、なんでセイトと呼んでいるのかと聞いてみたら、その理由がねぇ。なんと、奥さんが亡くなってからというもの、実の息子に触手が動いて我慢できそうに無いから、替わりの淫売を捕まえて犯していたんだ、と。さすがに息子を犯すのは……って悩んでいたくせに、君にそっくりな黒髪に東洋系の男娼が泣きわめいてるのに躊躇わずに犯していたからねぇ。その立派な逸物でね。かわいそうにあのセイトくんの身代わりは、アナルは裂けて血まみれになっていたよ。でもまあ、その言い分が気に入ってね、声をかけて私の部下にしたのさ」
 一年前……。
 確かに父親は仕事を変わっていた。
 それまで作業着姿で出勤していたのが、ブラックスーツを着用するようになったのだ。
「その男娼は、君のペニスにすっかり参ってしまっていたけれど、残念ながら半年後に死んでしまったんだっけか?」
「そうでしたね。ただ、ちょうどセイトが亡くなったのが同じ時期で、私は対応しておりませんでした」
「そうか。私もセイトくんの方だったね」
「ええ、セイトの身体を清めて葬儀を出す間に、片付けられたと聞いています。あれは薬を使われ、中毒の果てによがり狂ったと聞いていますけど。一体何人と遊んだのか全身精液だらけだったらしいですね」
「ああ、奇しくも何人にもレイプされたセイトくんも同じような姿になっていたらしいねぇ……」
 その浮かんだ笑みの意味に気づかないほど、セイトはバカではなかった。
 自分が知らない、知るはずも無い自分の最後を語られて、その語る意図など明白だ。
 セイトは、すでにこの世にいない存在で。
 身代わりになった誰かは、セイトの死のシナリオ通りに死んでいったのだ。セイトそっくりと言われた男娼の死を、わざわざ伝えられた意味を、セイトは間違えなかった。
 彼らの中に、本物のセイトはもういない。
「セイトくんは可哀想な姿だったねぇ」
「ボスにまで看取ってもらえ、あの時は本当にお世話になりました」
 息子の死を笑いながら交わす2人は、あきらかに似たもの同士だった。そして、今のこの姿こそが本来のタクトの姿なのだと、理解してしまう。
 一年位前、確かに随分と生き生きしている、と思ったことを覚えていたから。
 セイトも働いていたから、あまり気にしていなかったけれど。
「しかし君はお買い得だったよ。つい最近まで一般人だったと思えないほどでね。言うことを聞かない娼婦や男娼の躾けが普段の仕事だったが、まあたいてい君の巨根を見せるだけで恐れて大人しくなったし。それに裏切り者の始末も愉しくなったよ。君もたいそう愉しんでくれて良いショーになって観客から集金までできたしね。もうタクトは我々の組織の必要不可欠な存在だよ」
「私もボスの元で働くことができて幸せです」
 そんな言葉に、堪らず視線を泳がせて、その拍子にタクトの股間を捕らえてしまい。
「ひっ!」
 掠れた悲鳴とともに、全身が強張った。
 すでにそこはスラックスの下で大きな膨らみを持って、その存在感を主張していたからだ。
「いつか好みの息子そっくりの若い男を見つけて褒美にしてやると言ったが、館の主から連絡を貰ったときは、たいそう嬉しかったな。半年ほど前に見つけたらしいけど、しっかり調教もしてくれて、君のペニスを受け入れられるようになっているって。ついでに、君の底知れぬ性欲に対応できるような淫乱な身体らしいよ」
「それは、嬉しい話です」
 硬直していたセイトの顔に影が差す。
 体格の良い父親が目の前にくるともはや壁でしか無い。
「気に入ったかい?」
「ええ……」
 どこかうわずった声音で、父親のはずの獣が言う。
 欲望にぎらつく瞳がセイトの動きを縛り、舌なめずりの音が恐怖を煽る。
「今すぐに……犯したいほどです」
 伸びた太い指が細い腕を掴む。
 凍り付いた身体は、ガクガクと歯の根も合わぬほどに震えていた。
「私のこのペニスを、この淫乱な身体に奥深くまで埋め、日がな一日この身体を味わい尽くしたいです」
「おやおや、ずいぶんと気に入ってくれたようだ。」
「可愛いセイトのために、やりたいと妄想していたことがたくさんあるんです。妻も毎夜涙を流し悦んだたくさんのこと。まずはそれを全部やりつくしたいです」
「ああ、それはずいぶんと愉しそうだ。君の奥さんは、奴隷のごとくそのペニスに奉仕することを悦んでいたマゾ女だったとか。彼女は腹上死だったか? 亡くならなければ、セイトくんに不埒な欲を抱くことはなかったろうが。ああ、いや。それだと君がうちに来てくれなかったろうな。これで良かったんだ」
「正確には行為の後の心筋梗塞ですね。ちょっといつもと違うことをしましたが……。それに亡くなったのは病院です」
「ああ、そうか。まあ、そんなことより、セイトは男は初めてらしいから、破瓜の瞬間を見学したいところだな」
「もちろんでございます。ボスのお望みのままに」
「それは楽しみだ。ここの地下室と中庭を存分に使ってくれ」
「それは、助かります。こちらの地下室はたいそう広いし、設備も整っておりますから。それにしても、何とお礼を言って良いやら。ボスの大事な商売道具を壊そうとした私を寛大なお心で雇っていただいたばかりか、いつも楽しい仕事ばかり。その上、こんな素晴らしい褒美まで」
 嬉々として深く頭を下げるタクトに、この組織のボスは鷹揚に頷いた。
「何、私のために働いてくれるなら、この程度問題無い。それより、今日はたっぷり休んでセイトの相手をして良いから、明日あたり裏切り者を処分するのをお前に任せて良いか? 迷惑を被った顧客の一人が、お前のモノで貫かれて狂い死ぬ様を見たいと言っているのだ」
「それでしたら悦んで。ちょうど良かったです。少し衝動を冷ましませんと、今のままではセイトを壊してしまいそうです」
「おいおい、早々に壊すんじゃ無いよ」
「もちろんです。重々気をつけます」
 とんでもない会話が繰り返されるのを、セイトは涙をこぼしながら聞いていた。
 逃げることなどもとより頭になく、この時ばかりはペニスも萎えて、ただ呆然と嗚咽を上げて。
「ああ、セイト。タクトの命令は絶対だよ。これからタクトが君の主人で、何よりも優先すべき相手だからね」
 違えることなど許されないのだと、言われなくても判ったその言葉に、セイトは無言で頷いた。
「物わかりが良い子は、きっと長く楽しめるだろうね」
「ええ、大切に扱わせていただきます」
 これから何が始まるのか、判ってはいても逃れることなどできないと、タクトの大きな手がセイトの身体を軽々と抱え上げるのを黙って受け入れるだけだった。


「ひ、ぎぃぃっ、き、きつぅ!! あぁぁぁっ、お、きすぎぃっ」
 大きいと言われ続けたセイトのペニスよりさらに大きなタクトのペニスを背面座位で受け入れた瞬間、あまりの衝撃と激痛に白目を向いて仰け反れば、タクトが後ろから包むように抱き締めてくる。
 始めて受け入れたペニスは、破瓜と呼ばれるに相応しく、セイトのアナルに亀裂をいれながら開かせた。
 滴った赤い滴はすぐに多量に注がれた潤滑剤にまみれて薄くなり、濡れそぼった巨大な陰茎が割り開かれた尻の狭間にじわりじわりと飲み込まれていく。
 幸いなことに十分拡張されていたので、それ以上は裂けておらず、致命傷にはいたっていない。
 悲鳴は掠れて消えていき、押し出されるような吐息が長く続いた。
 大柄な身体の上に下ろされて、馴染んだ匂いと声音を纏わせながら、セイトの身体がタクトの大腿の上まで完全に沈んだとき、ふうっとその身体は弛緩した。
 吐き出し続けた胸が、大きく息を吸い込んでいって、また吐き出して。
 それが三度ほど繰り返された後、セイトはことんと頭をタクトの胸に預けた。
 その姿は安心しきった幼子が、親のあぐらの上に座って身体を預けているようで。
 そんなセイトの背後から回ってきた手に顎を掴まれて、向けさせられたぎらつくライトに眩しげに目を細める。そのライト間にあるカメラのレンズにそんなセイトの姿が小さく写り込み、撮影中を知らせる赤い表示灯が僅かに瞬いて。
 その向こうであの男がグラスを片手に愉しげに二人の初の絡みを見物している。
 それら全てを目にして、頭で状況を理解していても、セイトは暴れることなく荒れた息を整え続けた。
 裂けた痛みは酷い。
 圧迫感も酷い。
 けれど、今身体の中に、あれだけ欲していたペニスが埋め込められたのだ、という事実が、セイトの精神を支配していた。
 身体を満たす巨大なペニスへの恐怖はもう無い。
 苦しさと激痛は予想外であったけれど、それでも押し広げられた肉壁が敏感な前立腺を圧迫される感覚に、得も言われぬ快感を味わっていた。
 動いていない今でさえ、ゾクゾクとした甘い疼きが背筋を這い上がっている。
 さらにセイトのペニスは貫かれただけで勃起しきっていて、先端から半年ぶりの濃厚な精液が溢れだしていた。
 そんな己の姿に視線を落とし、セイトはうっとりと微笑んだ。
「で、てる……ああ、出してる……」
 狂うほどに欲した射精ができて、今のセイトはそれだけで歓喜に包まれていたのだ。
 そして、それをさせてくれたのは背後のタクトだと判っていて、微笑んだままに頭上に顔を向けた。
「……ご、しゅ、じんさま? おれの……?」
 彼が、許してくれたのだ。
 このタクトが、セイトがずっと希い、切望し続けた射精を許してくれたのだ。
 あの男が、タクトがセイトのご主人様だと言ったことを、歓喜とともに受け容れた瞬間だった。
「おれの……ご主人さま」
 父親だという意識が抜け落ちて、従うべき相手だと認識するのは、あの館で身に着けた保身術だと知らぬ間に、歪んだ想いがセイトを縛り付ける。
 そんな想いが伝わったのだろう、タクトがセイトの頬に唇を押しつけた。
「そうだ。私がお前の主人だ。決して逆らってはならない、な。私の言いつけを守るのであれば、いつでも可愛がってやろう」
 言葉と共に腰を跳ね上げさせられて。
「う、あっ……わ……ぁ」
 深く押し込められたペニスに押し出されるように、尿道が息づくように口を開け、粘液を吐き出した。
「またぁ……でたぁ……」
 セイトの頬が無邪気に弛んで、口元に笑みをはく。
「イイだろう? セイトの母親も始めて尻穴を犯してやったときには、ひきつけを起こすほどにショックを受けていたが、すぐにヒイヒイと涎を垂らしてよがりまくっていたからな。お前も……、ああ、本物のセイトもきっとそういうタイプだろうと思っていたが、お前はそんなところもあれに似ているな」
 クツクツと笑みに震える様子が密着した肌を伝わり、肩に鋭い痛みが走った。
 噛みつかれ、捕食される恐怖を感じながらも、身体は熱く火照り、下半身はきゅうきゅうと太い肉の凶器を締め付けて、また精液を垂れ流す。
 ぞわりと疼き続ける肌は、一皮むけて敏感になったかのようで、触れられているところから絶え間なく痺れのような快感がひた走った。
 嵩高い亀頭のエラが、タクトが動く度にごりごりと熱く潤んだ肉壁を擦り、胸のカウベルがカランカランと振動して、全身の筋肉が意図せず収縮した。
 痛みも確かにあるはずなのに、けれど感じるのは意識が弾けるほどの快感で、セイトは何度も何度も身体を仰け反らせ、タクトに包まれながら勢いの無い射精を繰り返していくだけだ。
 その肌は卑猥に色づいて、意識を飛ばしたようにその瞳は虚ろに瞬くだけだ。
「口を開けろ」
 噛みしめた口先に慣れた味が触れて、条件反射のように口を開けば、太い指が奥まで押し込まれた。
「っ、げほっ、おぉ」
 たっぷりと精液が口の中に塗りつけられる。その味に、セイトの記憶が甦った。
 それは、毎日狂おしいほどに味わい続け支配され続けた快感と激しい射精への欲求の記憶で、こんなものではない、もっと出したいのだとそれがセイトを追いたてる。
「お前の好物らしいな。毎日ザーメンづくしだったって? これからもたっぷりと喰らうが良い」
 言葉に、とろりと蕩けた瞳が己のペニスを探し求め、流れ出る精液を捕らえながらこくりと頷いた。
 もっと出したい。
 出して、イキたい……。
 こんなのじゃ、足りない。
「もっと……もっと達きたい。犯して、……射精の許可を……」
 強請るその言葉に、タクトが厭というはずもない。
「今宵は何度達っても良いさ。ここが空になるまで絞り尽くすんだ。何しろ、私の長年の念願が叶った素晴らしい日なのだから」
 感極まったように囁いて、次の瞬間、セイトの身体を前へと押し倒した。
 いきなりのことにびくりと大きく背が震え、遠慮なく始まった抽挿にゴリゴリと肉壁が擦られ喉を晒して嬌声を上げた。
「あっぁぁぁ! あっ、あっ、ぎっ、あぁぁっ」
 ずぼっ、グジュッ、グジュッ!
 繰り返される抽挿は、どんどん早く激しく、それにつられてセイトの声も高く、揺れるベルが大きく鳴り響く。
「あ、ぐっ、うっ……うっ、ぐっ……」
 知らず噴き出す精液は、セイトが確かに絶頂を与えていることを見せているのだけど、本人はそれを味わうより先にアナルからの快感ばかりにイキ狂った。
 腰を抱え上げられ、ひ弱な四肢が無様に揺れる様に、タクトが眉根を寄せた。
「足はもういらない……。勝手に出歩くなど許さない。もうどこにも行く必要はないのだから」
 そんな言葉を呟いて、タクトがちらりとボスへと目をやって、ボスが笑って頷いた。
「用意してあるさ。膝から先を使い物にならなくする薬だろ。ああ、まさしくそのセイトの居場所はここしかない。前に君が私に語った……奥さんにしたことと、したいと思っていたこと。セイトにしたいと願っていたことのために必要な全て。君が私に従い続ける限り、私はその報酬としてそれらを提供しよう。私はそれだけ君が気に入っている」
「ありがとうこざいます。もちろん、私のすべてであなたに従います」
 会話の間に止まってしまった動きが物足りないと、セイトが嫌々と首を振って腰をくねらせる。
 そんな尻をぱちりと叩き、タクトは嬉しげに笑みながらまた腰を動かし始めて、それをセイトは嬌声をあげながら、受け入れたのだった。

【了】