【幸いな贈り物】 前編

【幸いな贈り物】 前編

中短編の「祝福と呪いの狭間の物語」で最後にある贈り物をもらった時の顛末についてです。
 
 
 



 悪魔に呪われ、100年もの間孤独の時を過ごした王子でしたが、迎え入れられた新しい家族との生活はたいそう満ち足りたものでした。
 あの荊の森から救い出されたうえに、日々あれだけ身体を苛んでいた悪魔の呪いの苦しみを癒されて。
 それだけでも僥倖だと思うのに、彼らは皆、王子が苦しむことのないようにたいそう気にかけてくださるのです。
 昨夜とて第二皇子たる弟が不在だからと、お忙しい第一皇子がわざわざ王子の部屋に出向いてこられ、食事をともにしてくださいました。その後も闇が満ちるまで皇子御自身が入手されたというたいそう美味しいお酒を交わしながら、いろいろなお話をした次第です。
 ところが、そんな第一皇子の目の前で、王子の身体は次第に熱くなり、湧き起こる疼きが鎮まらなくなってきたのです。
 皇子の前でなんと畏れ多い、と隠し通そうとした王子ですが、すぐに第一皇子には気付かれてしまい、さらには「遠慮することなどない」のだと、優しくその疼きを癒やしてくださったのです。
「あ、ぁぁっ……すごぉ、ィイっ……あひぃ……ふかぁ、そんなっ、ああっ、いいっ!!」
 第一皇子は王子の腰を後から高く抱え上げて、激しく深く、中を抉り掻き回すことがお好きです。その度に快感の源泉を激しく刺激されて、天にも昇るほどの絶頂を味わう王子は、いつも浅ましい嬌声を放心したままに上げ、射精の悦びに満たされるのではありますが、第一皇子は時折王子の鈴口を指先で潰し、噴き出そうとする精液の口を塞いでおしまいになるのです。そうなると、尿道の中で精液が行き場を失うものですから、排尿ですら感じる敏感な尿道はもちろん、陰嚢のあたりまで逆流による鋭い痛みにヒイヒイと泣き喚く羽目になります。けれど、だからといって、第一皇子を責めることはできません。なぜなら王子は、そんな痛みにすら絶頂の快感に襲われてしまうからです。
 与えられる痛みも快感も、全ては王子のためなのです。
 しかも、第一皇子の手は決して強くはありません。
 いつも決して無理強いはせず、痛みと快楽に溺れている間も優しく背中に口付けを落とされると、なんだか動いてはいけないような気がして、そのまま堪え忍ぶのです。
 それに、温かく抱きしめられるのは大好きです。
 宥めるように背後から抱かれていると、その暖かさに激しかった射精衝動も落ち着かせることができます。けれど、それも束の間、からかうように爪で鬼頭をひっ掻かれてはたまりません。
 第一皇子はその落ち着いた印象とは裏腹に、意外にも茶目っ気に溢れていて、こういういたずらが大好きなところがあります。
 何度も爪弾かれて鬼頭が真っ赤に腫れ上がる頃には、王子の視界は白く弾けっぱなしで全身の痙攣が止まらなくなっていました。限界まで堪えての射精がもたらす快感は、意識を飛ばすほどに強烈で、その一回で満足できるほどなのです。
 けれど、第一皇子はいつも王子の快感を優先され、自ら満足されるのは、何とも申し訳ないことにその後なのです。
 精力抜群の第一皇子が、自らの腰を激しく音がするほどに打ちつけて、その腹に溢れるほどの精液を注ぎ込む頃には日が替わって久しい時間となります。そのせいで、ご自身は2回か3回ほどしか達かれないのです。
 翌朝、正気を取り戻して恐縮する王子に、十分楽しんでいると言われますが、とてもそうとは思えません。
 なにしろ第二皇子など一晩で最低5回は達かれるのです。それがこの国での直系王族だと聞いていますのでますます恐縮してしまうわけですが、気にしないで欲しいと言われると、それ以上拘るのも失でもあって。
 ならばせめて一度でたっぷり楽しんで頂けるように肉での締め付けを頑張っている次第でした。


 そんな幸せな日を3ヶ月ばかり過ごし、後1ヶ月ほどで王子の119歳の誕生日があると知ったこの国の直系王族の方々が、ぜひお祝いをしたいと誕生の宴を計画されたのです。
 今の幸いをいただいているだけでももったいないと思っている王子は、最初は固辞したのですが、誕生日の贈り物の素晴らしさをぜひ教えて差し上げたい、それに派手なことはせず内輪だけでの宴だから、と言われると断るのも悪いと感じ、喜んでお受けすることにしました。
 王子は、物心付いてからずっと誕生日に贈り物を貰ったことはありません。それは、彼の国ではたいそう忌むべきものとして、禁忌になっていたからです。けれど、その原因であった悪魔の呪いの発動が過ぎた今、贈り物を厭う理由はありませんでした。
 ならば記念に残る素晴らしい贈り物を用意しようと、王族方が張り切って準備しているということを聞いて、王子は感激のあまり涙が止まりません。
 ただ嬉しく、指折り数えて待ち望んだ晴れの日は、天気の良い満月の日でもありました。
 新月で無いので、意識無く淫欲に狂うことはありません。
 故に安心して、その時間を迎える事ができました。
 ただ実質的な保護者である第二皇子は、昨日から近郊で起きた崖崩れの視察に出かけて昼間は留守ですが、日没とともに始まる誕生の宴までには必ず戻ると約束されましたので、後少ししたら戻って来られるでしょう。
「王子」
 窓の外を眺めながら、その刻を胸躍らせて待っていた王子の部屋を叩いたのは、第三皇子でした。
「そろそろお庭に参りませんか?」
 物静かな第三応じは、若くしてこの大国の参謀役を務めるほどにその十分な知識をお持ちで、かつ知己に優れた方です。
 その第三皇子に案内され、城の奥、直系男子のみがその存在を知っているという月庭園という庭に入りました。
 その門扉は古めかしいかんぬきがかかっており、その鍵は非常に重々しく、また厳重に管理されているものと聞いています。
「よろしいのですが。そんな大切な場所に私が入っても」
 王子は家族同様に扱われていますが、しょせんはよそ者、直系ではありません。
 けれど、そんな王子の懸念を第三皇子は一笑に付しました。
「確かに直系男子のみという理はありますが、それは絶対的な決まりでは無ありません。歴代の王族の中には、ここでお相手の方と二人だけで結婚の誓いを立てた者もおりますし、親しい方と散歩に赴かれたりと、いろいろと使われているのです。要は、直系男子が認めていれば良いということになりますね」
 にこりとどこか無邪気な笑みを見せる第三皇子は、楽しそうに王子の手を引きました。
「ここで、秘密の密会をしていたという記録も多くありますから、外では迂闊に逢い引きできない王族の息抜きの場であったと思っていただければ、しっくり来るかと思います」
 そう言われてほっと安堵した王子は、手を引かれるままに高い木々に囲まれた広場のようなところに進みました。
 そこは意外なほどに広く、静かな場所でした。
 周りを囲むように生えている大木の性でしょうか。人口の物は少なく、また見えないようになっていて、まるで森の中に迷い込んだような気がします。
 その奥には天然の岩や巨大な株などを利用した低い机があり、地面にはじゅうたんのような柔らかな厚みのある布が広く敷き詰められています。けれど、普段、繊細な彫刻のなされた家具を利用している王族にしてみれば、それらはほんとうに質素なものばかりです。しかも、そこに台車で運んできたらしい料理や食器を並べているのは、なんと国王とその王弟、残りの皇子方でした。
「あ、あの……」
 普段そんなことなどしそうにない方々の行為に驚き、辺りを見渡しますが、召使いは一人もいません。
「ああ、ここで何かをしようと思うと、私たち自身で動かないとダメなのです。召使いは入れないのです」
 にこりと、いたずらっぽく返されて、王子は驚きに言葉も出ません。
 ならば、国王達は王子のために召使いがするようなことをされているということになります。
「気にしないでください。こういうことも、存外楽しいものですよ。まして、誰かを楽しませたいと思うと、こういうことは苦では無いです」
 硬直して立ち尽くす王子を、第三皇子は導き、布の上に座らせました。
 ふわりと沈むのは、布では無く地面の苔むした柔らかさのせいのようです。
「この国では、こうやって地に座って大地の暖かさに触れるのもよく行われていることなのです」
 1メートル以上ある大木の幹の机を中心に、第一皇子と第二皇子に挟まれた王子のちょうど向かいには、国王と王弟が座りました。第三皇子は、第二皇子と王弟の間です。
「さあ、グラスを」
 第二皇子が差し出したグラスを手に取ると、皇子の手が肩に周り、身体が引き寄せられました。
 立派な体格に寄り添うようになって、その慣れた香りにかあっと身体が熱くなります。
「これは、先日の酒とよく似た種なので、気に入られると思うけど」
 第一皇子から瓶を差し出され、慌ててグラスを差し出しました。とぽとぽと注がれる黄金色の酒は、今日のは少し泡立っています。
「発泡酒で、酒精度は低めだから、たっぷり飲んでも大丈夫だ」
 第二皇子に耳元で囁かれ、身体はますます熱くなります。
 今日は新月でないので大丈夫かと思いましたが、こうまで引っ付かれると慣れた温度に身体が反応してしまいます。といっても、愛おしそうに指先で頬に触れ、頭の上に顎を乗せて擦り寄せられては、抗うこともできません。
 熱くなる身体の芯と羞恥に染まる頬を隠すように俯き加減でいると、そのグラスに他のグラスがチンと音を立てて触れました。
「さあ、宴の始まりだよ」
 頭上からの優しい視線と声に、王子はこくりと頷き、グラスを差し出しました。


 美味しい食事に酒、機知に富んだ会話。
 内輪だけですから、派手なことはいっさいありません。ダンスも楽器演奏も何もありません。
 けれど、彼らが用意した宴は家族的で優しくて、王子をたいそう満足させました。
 100年も前、あの荊の森に入る前までもこんなふうに優しい宴はあったに違いないのですが、それらは狂おしい飢えの日々に遠く霞んでしまっていたのです。
 それに、大国を治める王族だけのことはあって、彼らの知識はたいそう豊富でした。
 119歳とはいえ、実質19歳——しかも、100年もの長きにわたって刻の流れから取り残されていた王子にとって、人々の生活の変化すら、いまだに全てが把握できていないのです。
 ふと気がつけば、身体の疼きを忘れていたことに気がつきました。それに、少し落ち着いているような気がします。
 そんな些細なことでも、王子にとっては進化です。
 これもそれも、第二皇子と王族の方々のおかげだと心からの感謝の念に浸っていたその時。
「それでは、そろそろ贈り物を差し上げよう」
 王様の言葉に、他の四人も賛同の言葉を上げます。
「そんな……もう、この宴だけで私はこんなにも幸せです。ほんとうに……もったいないことなのに……」
「気にすることは無い。これは私たちがしたいからなのだ。人に贈り物を贈るというのが、我々は大好きなのでね」
 国王が軽くウィンクをして、まずは私からだと両手に乗るほどの小箱を差し出しました。
 国王の手ずから贈呈に、王子は感極まって言葉も出ません。けれど、第二皇子に促されて、おずおずとそれを受け取りました。
 とても軽いものです。でも、とても重く感じました。
 じわりと持っている手のひらに滲む温もりがとても嬉しく思います。
「開けてごらん」
 言われておずおずと上蓋をとると、そこには柔らかな布でくるまれた煌めく透明の飾りが二つ置かれていました。
 滴型の花弁が一つに付き5個。いずれも透明度は高く、光を乱反射させる繊細なカットがされています。
 花弁が集まる中央部は空間が空いていますが、それぞれの根元は繊細な金細工で支えられており、空間の奥には棒が走っています。一つの花弁長は10mmほどですので、全体でも30mmにもなりません。
「これは?」
 宝飾品のように見えますが、どこにつけるものが判らなくて首を傾げましすと、国王はさもありなんと頷いて。
「取り付けてあげよう」
 ニヤリと、意味ありげに口角を上げた国王はずいぶんと楽しげで、王子は逆らえるはずも無く素直に差し出しました。
 けれど。
「な、何?」
 不意に、第二皇子が王子を抱き寄せ、自分のあぐらの上に座らせたのです。
 背中に感じる王子の体温に心臓が高鳴るのを感じつつも、何が起きたか判らずに首を巡らせます。そんな王子の唇を第二皇子は軽く啄むと、彼は王子のシャツを瞬く間に脱がせました。
「え?」
 未だ状況が判っていない王子に、国王は安心させるように微笑みかけました。
「これは、そなたの愛らしい乳首を飾るものだよ。そなたの乳首はたいそう敏感なゆえに、保護する役目もあるのだ」
 王子を愛撫するときには、とても繊細な動きを見せる指が、今また優しく乳首を撫で上げます。
「あ、んっ」
 触れるか触れないかの距離を通り過ぎる感触に、王子の背筋にぞくりと危ない感覚が走り抜けました。
「少し痛いかも知れないが、すぐに治まるから」
 親指と人差し指が小さな実を摘まむように、柔らかなタッチで触れては転がします。
 そのたびに込み上げる疼きは、背筋を通り尾てい骨に突き抜けて、下肢にぞわりとした刺激をもたらしました。
「や、待って……んあ……」
 快感が増幅され、それが限度を越えると喉の紋様が淡く光り、喉の震えが陰茎に響きます。
 ほんの少しのきっかけが王子の身体を次々と昂揚させ、浅く喘ぎながら力の抜けてきた身体を暖かな第二皇子の胸に預けました。
 皇子も後ろから王子を抱え、前に回した大きな手のひらで両方の胸を周囲の肉ごと掴み上げます。
 初な娘の乳房のように小さな丘を作ったそれの先端で、淫らに熟した乳首が大きく膨らんでいました。
 その乳首をしっかりと愛撫した国王は、おもむろに飾りを一つ取り上げて、その土台についていた太めの軸を乳首に横から押し当てます。
「動いてはダメだよ」
 その言葉は優しく、宥めるようですが、手の動きは容赦がありません。
「ひ、ぎぃぃ──っ!!」
 それでなくても人より敏感な乳首に、しかも充血しきったそこに通された軸は、王子の身体が跳ねるほどの痛みを与えました。堪らず逃げようとする身体は、けれど、第二皇子にしっかりと胸を掴まれているせいで動きません。
 貫き通し、傷口からたらりと流れる一筋の血を、国王は美味しそうに舐め上げて、留め具をしっかりと嵌めました。
 さらに。
「やっ、ぁぁぁ──っ!!!」
 反対側も同様に一気に貫き、痛みに悶える王子の動きの身体を押さえながら、こちらも留め具を止めました。
「ああ、よく似合う。可愛いよ」
 その言葉にひくりと肩を震わせた王子は、涙を貯めた目で自分の乳首を見下ろします。
 そこには、第二皇子の手で盛り上がった胸に月と炎の灯りを受けて燦然と輝く二輪の花が咲いていました。
 乳首がちょうどおしべ・めしべの集合体のようになっています。
「可愛すぎて食べてしまいたいね」
 国王が覗き込み、ぺろりと舌を出して。
「あ、あぁ……んん」
 乳首の先端を舐められて、王子の声音が快感の色へと変わります。もうそこに痛みはありませんでした。
 出血も止まり、軸を銜え込んだ乳首は、まるで生まれつきそうであったかのように馴染んでいます。
 それは、背中に描かれた悪魔の呪いの賜物でした。それは、王子の身体に作られた傷を瞬く間に直してしまう効果があり、喉の紋様と同じく、今もその効果を保っています。
 けれど、異物で貫かれた違和感は、まだ消えません。それでなくても充血していたところでしたので、さらに腫れてしまったように、僅かな刺激でも敏感に感じていました。
「こうしていると痛みなど感じないだろう? しばらく続けてあげよう」
 舌先で擽りながら優しく諭すように言われて、確かに痛みなど無くなった王子はこくりと頷きました。
 畏れ多くも国王からいただいた贈り物なのだと、改めて認識すると、手ずから取り付けたいただけただけでも僥倖なのだと思ったのです。
 それに、他の方々も似合うと褒めてくださいますし、第二皇子も嬉しそうに王子の胸を揉みしだき、「素敵だ」「似合う」と何度も誉めてくださったのです。
 王子は第二皇子が大好きでしたから、そう言われるとこんな素敵な贈り物をいただいたとこにうれしさばかりが募ります。
「そうそう、私の贈り物は、国王の贈り物と繋がるんですよ」
 そう言って王弟が取り出し見せたのは、ピジョンブラッドのルビーとそれに繋がる金の鎖でした。
「これはこうやって……」
「んんっ」
 王弟の指が触れたのは、王子の形の良い臍です。
 そのくぼみの左右の壁をそっと撫でて、王弟はもう一つの手に持ったルビーをそこに押し当てました。
 それは、ちょうど臍の大きさにぴったりです。
「それ……は?」
 すでに胸からの快感に酔いしれていた王子の動きは緩慢で、王弟の動きに首を傾げるばかりです。
「この素敵な臍を飾るものですよ」
 その言葉が終わるかどうかのうちに、その手がプツリプツリと左右の壁に針を通しました。
「ひっ、ぃぃぃっ!」
 再び響いた悲鳴は、けれど、快感に紛れて弱いものでした。
 ですので、王弟は軽々と左右二本の留め具を用いて、臍に埋め込むようにルビーを嵌めてしまいました。
「それからこの鎖を、乳首の飾りに繋げて」
 ルビーの上部の金具から伸びた二本の瀟洒な鎖が、上方へと引っ張り上げられて、第二皇子に背を押されて前屈みになった王子の乳首の飾りに付けられました。それは、確かに対になっていてたようで、難なく鎖が固定されました。
「ああ、なんと愛らしい。けれど、ルビーが落ちては大変ですから、この留め具はしっかりと固定しておきましょう」
 その言葉とともに、王弟は工具を使い、ルビーを固定する留め具を潰してしまいました。
 その頃には傷も癒えていますから、もう治癒する際に肉が押し出すこともないので、外れて落ちる心配はありません。
「ほら、ちょっと起きてごらん」
 耳元で囁く第二皇子の言葉に、快感にぼおっとしていた王子が前屈みの身体を起こそうとして。
「んっ!」
 背筋をぴんと伸ばすと、短めの二本の鎖が引っ張られて、両方の乳首に鋭い痛みが走りました。けれど、すぐさまそれが甘い疼きになって、下腹部の奥に響き、背筋を駆け上がります。
「気持ちよいでしょう? この鎖も容易に外れませんから、国王からの贈り物を落とす心配はありませんね」
 にっこりと満面の笑みの王弟が、ゆっくりとルビーの周りを指で辿りました。
 計算され尽くしたカットは、胸の飾りと同じく、妖しい光を放っています。
 国王と王弟の贈り物を、王子はたらりと涎を垂らしながら満足そうに見つめました。
「あ、りがとう……ございます……。嬉しいです」
 最初はどうなることかと思いましたが、馴染んでしまえば、確かに自分の褐色の肌にそれらはたいそう映えています。
 なにより国王も王弟も、たいそう満足されているという事実が、王子を喜ばせました。
 今の王子にとって、自分のことをこんなにも考えてくれる彼らの喜びこそが大切だったのです。

後編に続く