祝福と呪いの狭間の物語 後編

祝福と呪いの狭間の物語 後編

大陸の外にある小さな島国に、荊で覆われた奇妙な場所がある、という言い伝えが、まことしやかに巷に流布されていました。
 そこは、昔の大海賊の宝の隠し場所であるとか、神の力を宿す剣が奉られた神殿があるとか、絶世の美女が伴侶を求めて待っていて、その美女が認めないと入れないとかなど、いろいろと言われていますが、いずれも巨大な荊で覆われているというのは共通していました。
 それを聞いたとき、一人冷めた表情で相手にしなかったのは、世界最大の大国の第二皇子です。
 御年21歳、輝く金糸の髪と硬質なエメラルドの瞳を持つ長身の美丈夫で、心技体にも優れた皇子はたいそう現実主義であり、自分の目にしたことしか信じない質でした。
 しかしある日偶然、城の資料庫で100年前の小さな島国で起こった出来事が記載された文献を見つけたとき、不意にその噂話が現実ではないかと疑い始めたのです。
 その信憑性のある文献には、悪魔に呪われた王子を守るために島の最南端にある館ごと、荊の壁で封じ込めたとありました。
 本来、そんな話はその王家にとっては門外不出の出来事でしょうが、世界一の大国であるこの国には、その荊を造ったとされる陸神の遣いが住んでいますから、その関係で知り得ることができたのでしょう。
 悪魔に関しては、軍をも率いる立場上その性質をきっちり研究していた皇子にとって、そのようなことをしでかしそうだという認識はありました。
 文献が正しければ、その王子は気の毒なことに、たった一人で老いもせずに暮らしているということになります。そのことに、皇子の正義感はたいそう擽られました。
 それに、荊の壁を通り抜けるには、彼の王子に会うのに相応しくなければならないと言うことです。それが何かとまでは書いてありませんが、そう知ると負けず嫌いも顔を出してきます。
 幸いにして周辺諸国も落ち着いていますので、しばらくお忍びの旅をしても良いかと考えて、さっそく国王と兄皇子の許可をもらい、陸神の遣いから情報を得ると、付いてこようとする警護の人間を振り払い、一人旅立ちました。
「あの荊の壁は、王子が外に出ても悪魔の虜にならないようにできる者ならば通ることができる」
 陸神の遣いの、どこか苦々しげに零されたその言葉の子細は不明でした。その原因の力を解消できる力に反応するとのことらしいとしか判りません。
 彼によると、王子に何が起きたか知っているのは当時の海神の遣いだけで、彼女は王子に与えられた何かを少しでも消そうとして、そのまま力を使い果たして死に、今の海神の遣いは何もその情報を得ていなかったということです。
 故に子細を知っている者はいないとのことでしたが、情報が足りなければそれまでに見つかれば良いのだと、皇子はいろいろな情報を集めながら、茨の壁へと向かいました。
 現在荊の森と呼ばれて恐れられている壁には、過去に何度も屈強な若者や軍や冒険者の一群が挑戦したとのことですが、未だにあの壁を通り抜けた者はいないとのことでした。
 村の長老の話では、あの荊は刃物は通るのですが、切ったところからすぐに新しい芽が伸び、できた空間をより密に塞いでしまうというのです。それでも無理に通り過ぎようと闇雲に前進した者は、後ろに伸びた新しい荊に道を塞がれ、前進も後退もできずにそのうちに力つきてしまいました。すぐのところで立ち往生した人は、他の人に助けられたりしましたが、大半の人は茨の中で命を落としました。
 まだ、どんなに強力な火炎の技を使っても、すぐに大地から噴き出す水によって消されてしまい、空や海から侵入を試みようした者も、侵入できる場所がなくあきらめたのだと言います。
 皇子もさんざん止められましたが、そう言われるとますます挑戦したくなるのが、この皇子でした。
 皇子はすぐに旅立ち、深い森に分け入り村から徒歩で二日ほどで、荊の壁まで辿りつきました。
 ちょうど太陽が沈んだ直後で、辺りは急速に闇が迫ってきています。今宵はちょうど新月で月の明かりは当てにはならず、皇子は松明に火を灯しました。
 灯りに照らされた荊は、なるほど、人の胴体のように太い幹が生い茂り、隙間が有るところは蔦のように絡まる枝が鋭く大きな棘で侵入者を拒んでいました。幹には棘はありませんが、枝にはあり、しかもそれが幹にも絡んでいるのです。
 しばらくその壁に沿って歩いてみましたが、どこも途切れているところはありません。壁自体の厚さは、一番薄いところで2から3メートルほどでしょうか。思ったより厚くないとはいえ、前後に絶え間なく伸びるとなると、数十メートルになるとも考えられます。実際、真ん中辺りに白骨が転がっている場所もあり、あちらこちらに斧やら剣なども転がっています。
 それでも、進むのであれば正面突破しかないのかとも思いましたが、すでに深夜。下手に進んでも、過去の愚か者と同じ結末になると、皇子はさっさと野営の準備を行い、休むことにしました。
 もっとも野営といっても、火を焚き、食事をしたら、そのまま寝るだけです。
 事前の情報で、この森は大型、中型の肉食獣はいないということですから、比較的安心です。
 皇子は火が消えた時ように、持っていた蜜蝋のろうそくに予備としての火種を取り、マントにくるまって横になりました。






 最初、その音はひどく小さな、木々のざわめきに掻き消されそうなほどの音でした。
 何かに誘われたかのように目が覚めた皇子は、かろうじて残っていた焚き火に新しい薪をくべると、辺りを見渡しました。
 しばらく何も聞こえず、気のせいかとも思いましたが、不意に何かの気配に気が付きました。その気配は、先ほど調べた一番薄い壁の辺りから感じます。
 皇子は気配を隠し、そっとその場所に近づいて様子を伺いました。
 けれど、奥は荊が絡み合っているせいでよく見えません。かわりに、音が先ほどよりよく聞こえるようになりました。
 それは、人の声でした。啜り泣きをしているようでした。
「誰か、誰かいるのか?」
 思わず問いかけましたが、返事はありません。何度問いかけても、向こうにこちらの声が聞こえないかのように無視されます。
 そのうち、皇子は泣き声以外の声や音が混じっているのに気づきました。
「んん、ぁぁぁ……熱い、のぉ……腹が……ぅぅぁん…」
 途切れ途切れの声に、ヌチャ、クチャと粘着質で濡れた音が混じります。規則正しく繰り返されたかと思えば、急に早くなります。音も大きくなったり小さくなったり、声が掠れて啜り泣きを繰り返しているのが聞こえている内に、不意にその内容に気づいた途端、カッと腹の奥が燃え滾りました。
 皇子とて、若い男です。まして、大国の王族は、代々たいそう精力が強い故に子供を作りすぎないように、跡継ぎを成した以降は、むしろ男を性対象にすることが推奨されてました。
 皇子もすでに一人の息子と二人の娘がいます。
 第二皇子である以上それほど子供は必要なく、最近では性欲解消は男妾を相手にしていました。
 そんな皇子ですから、壁の向こうの音の正体が判ってしまえば、相手がどんな状態かも容易に想像できました。
「これがあの王子なのか?」
 思わず声を出しましたが、やはり向こうは気付いていないようです。
 この壁は、どうやらこちらの声を通さないのだろうということに気がつきました。あの文献では、王子は孤独に過ごさなければならないと記されていました。そのわりにはこの壁は薄く、声も通るだろうと思っていたのですが、そう考えると納得がいきました。
 誰もいないと判っているからこそ、王子はこんなところで自慰をしているのでしょう。
 少しでも外界が近いところで、もしかすると誰かを想っているのではと想いました。
 そんなことを考えている間も、壁の向こうの艶めかしい声は、聞こえてきます。
 それにしても、向こうの王子は一体どんな体位で自慰をしているのだろうか?
 濡れた音は激しく、ジュプジュプと泡だった音までしています。
 その音に、皇子の脳裏に美しい青年が全裸で身悶えている様子が浮かびました。右手が妄想の青年自身の陰茎を激しく扱き、喉を晒して喘いでいる姿です。彼が感じる度に、その白い尻たぶが振り振りと揺れて、闇夜に白く輝き、皇子を誘っているのです。
 その妖しい想像に煽られて、皇子は妄想の中で彼を押し倒していました。
 その尻タブの狭間に隠れているおちょぼ口に己の陰茎を喰わせたくてたまりません。
 そんな衝動のままに皇子は己の股間の衣服を緩め、すでに勃起した、握っても親指と中指がつかないほどに太く長大な陰茎を取り出したのです。
「んあっ……あぁ、もっとぉ……ぉぉっ」
 誘われれば、答えなければと陰茎を握り締め、扱きます。
「ほれ、しっかり尻を晒せ、掲げろ、穴を見せろ。チンポを擦ってヒクヒクとさせて喘げっ」
 皇子にあるまじき、と教育係に叱られそうな卑猥な言葉ですが、これはあの大国の王族直系では普通です。その卑猥な言葉を連呼して、荊の幹の棘の無い部分に縋り付き、隙間に陰茎を突き出して、激しく擦り立てます。
「んんっ、やあ、おっきぃ……ああ、もっとぉ深くっ、ふかくぅぅっ!!」
 その声を聞いたとたん、皇子の陰茎がぴくぴくっと震え、さらに大きくなりました。
 壁の向こうの王子は、挿れて欲しがっているのです。女のように、尻穴を拡げて、男の逞しい陰茎を銜え込みたがっているのです。
 それを聞いて激しい興奮が湧き起こりました。
「ああ、挿れてやるぞっ、穴を拡げろっ、ほれ、私のは太いぞ、拡げねば入らぬぞ、ほれ、ほれ」
「ああんっ、ああ、挿れてぇっ、ぶっとおぃのぉっ、あはぁぁっ」
 その声が孕むすさまじい淫蕩さに皇子も煽られて、一気に昂ぶっていきます。
 激しく扱く先端から、白く濁った粘液が溢れているのが判りました。
 グチュプチュと濡れる音が、壁の向こうからなのか、こちらの音なのか、それとも両方なのか。もう判らなくなっています。ただ、入り交じる卑猥な音色に少しでも近づこうと隙間を探してしました。
「この淫乱がっ、達けっ! 達けっ!」
 激しく腰を前後させ、妄想の中で熱い肉の中で激しく抽挿を繰り返します。
 こみ上げる衝動を堪える必要はありませんでした。
「うっ、くっ!!」
 扱く手を止めること無く噴き出す精液の量は多く、荊の幹へビチャ、ビチャと複数回降りかかりました。
 あまりに激しい絶頂に一気に力が抜けて、膝から地に落ちました。けれど右手はまだ陰茎を握り、先端から残りの全てを絞り出そうと扱き続けます。
 それが外れたのは、大きく息を吐き出した後でした。昇り詰めた快感がようやく薄れ、息が苦しくなっているのに気がつくと同時にがくりと上半身が崩れ、思わず手を幹につきました。
「え……」
 手のひらに感じていた固い荊の茎の感触が、いきなり変わったのです。視線をやれば、固かったはずのそれが、ぼろぼろと崩れています。
 よく見れば、先ほど精液がかかったところも同様に崩れて、しかも、上の方まで崩れていきます。
 頭上から落ちてくる破片は軽くて柔らかく、当たっても痛みはありません。
「もしかして、精液に弱いのか?」
 一体、何がどうなっているのか判りませんが、ほんの少しでもかかっている荊は確実に枯れて崩れていっているようです。
 しかも、切ったときには新しい荊が生えると聞いていましたが、その気配はありません。そのため、皇子のいた周りが半円状に広がっています。
 試しに皇子が前へ進んでも、背後に新しい荊が生えることはありませんでした。
 しかも、壁の向こうに近づいたせいか、あちらに声もよりはっきりと聞こえます。
「おい、聞こえるか?」
 大きな声で呼びかけても、相変わらず淫らな自慰の声しか聞こえないところを見ると、やはりこちらの声は届かないようです。
 けれど、その淫らな声を聞いていれば、皇子の身体はまた昂ぶってきました。
「なるほど、そんなにも私に突っ込まれたいのか」
 ぺろりと男らしい肉厚の唇を舐めて、再びいきり立ち始めた陰茎を扱きます。
 何しろ耳から聞こえる彼の言葉はあまりにも卑猥で、数々の妄想をさせてくれるのです。
 彼は、ここに閉じこめられる前は相当な淫乱だったのでしょう。
 悪魔の呪いにより男に激しく犯されないと生きていけない淫乱になり、そのせいで閉じこめられたのではないかと、想像しました。
「ああ、飲ませてぇ……甘いお、汁……ぅ……ああ、口づけを……おねがい……します……ぅ」
 請われるままに王子の代わりに幹へと口づけ唾液で濡らしたら、それも精液と同じ効果を荊にもたらしました。さらに、陰茎の先から滴る粘液を掬い取り、邪魔な枝になすりつければ、こちらも枯れていきます。
 今や、皇子が出す全ての体液が、荊にとって毒でした。
 ますます大きく聞こえる誘いの声に、その体液は尽きることなく出てきます。
 特に精液が触れれば、確実に巨木となった荊が枯れました。
「あはぁぁっ! ほしぃ……こんなのぉ、やだぁぁぁっ、熱いの、熱いのぉぉっ」
 どうやら王子はそうとう欲求不満のようです。
 もう何度も達っているような気配があるのに、未だ止まることを知らず、貪欲に自慰を繰り返し欲しています。
「ああ、そんなに欲しいか。私の熱い肉が欲しいか、この子種が欲しいかっ」
 誘われるように、皇子の言葉も熱く、淫靡に響きます。
 皇子は自分の声が届かないのが悔しく感じていました。
 聞こえれば、彼は皇子の存在に気がついて、もっと興奮して皇子を欲しがることでしょう。
 自分の姿が見せられないことにも悔しく感じていました。
 このたくましい陰茎を見せることができたならば、きっと王子は涎を垂らして銜え込みたがるでしょう。
 そのためには、この何本もある荊を取り除かなければなりません。
 そう思えば、陰茎を扱く手がさらに激しくなります。
 一本、二本。
 全ての体液を使い、少しずつ前進します。
 僅かな距離といえど、複雑に絡み合った荊はかなりの数になりましたが、もう何度も精液を吐き出してそれらを次々に枯らしていきます。それは、並の男では無理なほど回数でした。けれど、精力にかけては他の追随を許さぬほどに強い皇子です。
 さすがに息を切らしていましたが、とうとう最後の壁を突き崩すことに成功したのです。
 とたん、鼓膜に突き刺さる浅ましい喘ぎ声に、目の前が真っ赤になりました。辺りを見渡せば、皇子の視界に、全裸で苔むした地面に蹲り、尻穴に太い荊の枝の先を埋めて振りたくっている青年の姿が入ってきたのです。
 若々しい身体はたいそう美味しそうな褐色で均整が取れています。特に細い腰から尻タブにかけての線は艶めかしく、背から尻にかけて刻まれた紋様が蠢く様に、思わず喉を鳴らしました。
 首を一周している薄いのも、背中と似たような紋様で、まるで首輪のように見えました。頭を反らした拍子に見えた顔は卑猥に歪んでいるのに絶世の美女かと見紛うほどに美しく、その唇から覗く舌はたいそう艶めかしく、誘っていました。
 彼こそが、ここに閉じ込められていたという100年前の王子でしょう。
 悪魔に魅入られたというのも当然といえるほどにが美しく、その姿態は、それだけで淫魔のごとく淫らに男を誘っていました。さらに、彼は皇子に気づくことなく一心不乱に自慰をし、快感を貪り狂っています。
 100年もの間ここに閉じ込められてたせいで、孤独に彼は狂ってしまったのでしょうか。
 そんな疑念は、けれど、すぐに目が眩むような性的衝動に追いやられたのです。
 溢れる情欲のままに伸ばした手がその細腰を掴んで、初めて王子がびくりと振り返り、ようやく皇子を認識したようにまじまじと見つめてきました。
「だ、れ……」
 喘ぎに掠れた声が、誰何してきます。
「私は、大国の第二皇子よ」
 答えながらも、その腰を引き寄せ、濡れたそこから荊の枝を引き抜きました。
「あはぁっ──んっっっ!」
 ズボズボと引き抜いたそれは、驚くべきことにずいぶんと太く、長く入っていました。しかも、棘がついたままです。けれど、彼の穴は傷つくこと無く、その棘すら良い刺激としてとらえているようです。
 その衝撃のせいか、一瞬理性を宿した瞳がまた濁り、浅ましく悶えて快感に喘ぎ、うっとりと身を寄せてきました。その瞳は淫売のそれでした。
「犯して……んぁ、ぁくれる?」
 見上げて強請るその言葉に、もとより否など言う気はありません。
 皇子は荒々しく彼を俯せに押し倒し、さっそくその濡れそぼった穴に、自身の陰茎を押し込みました。
「あひぃっ、ああぁ、これぇぇ」
 先ほど銜えていた荊の枝より太い陰茎でしたが、王子のそれは柔らかく深く受け入れます。
「お、おおっ、なんと……」
 一言で言えば名器。
 しかも、極上という言葉付きです。
 その肉の穴は、ただの排泄口ではありませんでした。今まで経験した数多の尻穴の中でも、こんなにも熱く、きつく、脈動しつつ、本人が気持ちよさそうに締め付けるものはいませんでした。それ以前に、いつもは初めて皇子の相手をさせる前に、数日かけて慣らして拡張してからで無いと挿れることすら困難だったのです。
 だが、彼の尻穴はそんな皇子の極太の凶器を難なく受け入れ、たいそう喜んでいました。しかも、挿れただけでも皇子の快楽中枢を一気に昂揚させ、すぐにでも達きそうなほどになるほどです。ここに辿りつくまでもう何度も射精した皇子ですら、です。
 しかも王子の穴は、中がたっぷりとした粘液で濡れていますので、男を相手にしているような油なども必要ないようです。
 まさしく男のための身体のようでした。
「ふ、とぉぃ、ぁはぁっ、ああ、イいっ、イいよぉっ!」
 それに、この王子の喜びようといったらたまらないものでした。
 ちょっと揺すってやるだけで、ヒィヒィ喘いで幾度も痙攣し、泣き笑いながら「もっとぉ」と懇願するのです。
 何度達かせて、王子の性欲に果てがありません。
 熱く熟れた身体は、100年間の飢えを満たそうとしているようです。
「あぁ、嬉しいぃ……っ、こんなぁ、生きてるぅ、中で、ビュッビュウしてるぅ」
 けれど、何度も絶頂を味わう内に、彼の言葉に、意味有るものが入るようになりました。少し理性が戻ってきているようですが、まだ性欲からは逃れられないようです。
「あの、ときぃ、やぁっ、突いてぇ、止めないでぇっ! あ、ぁ、これがぁ、欲しくてぇ! 生きてるのぉっ、生のぉチンポォ、下さぁ、ああ、ずっとぉ、ずっとぉ……」
 でんぐり返しの体勢ゆえに、はっきりと見て取れる自分の穴に突き刺さる皇子の陰茎を、彼はたいそう愛おしそうに見つめていました。
「そうか、生身のこれが欲しかったのか?」
「うんぅ、欲しかったぁのぉ……けど出られな、て……」
「だから荊の枝をオモチャに楽しんでたというわけか?」
「うん、うん、は、んん、んん」
 今や、皇子をしっかりと認識して、質問に舌っ足らずに答える王子は、途切れ途切れとは言え、すべてを答えていきました。
 そのおかげで、皇子はこの王子がこんなにも色狂いになった原因と今の状況を理解しました。
 幸いなる成人の日に、悪魔に非道な薬と技を使われて犯された王子は、それだけで自分で衝動が止められないほどに淫乱な身体になってしまったのに、ここに一人で閉じ込められて、生身の男にたいそう飢えてしまっていたのです。
 しかも、悪魔の仕掛けた呪いはそれだけではなく、偉大な神々の遣いであってもその呪いを打ち消すことはできなくて、王子は100年もの長きの間、決して癒されぬ地獄のような性への飢えの中に居続けたということでした。


 朝日が指す頃、王子の欲求はようやく落ち着きました。まるで太陽の光に浄化されたかのように、その淫靡さは隠れ、浅ましいお強請りもなくなり、むしろ止めて欲しいと願うようになっていました。
 激しい行為に大地の苔が剥がれ、体液によって泥と化した地面が、王子の肌を汚しまくっています。願うままにその身体を地に下ろせば、投げ出された四肢に力はなく、ぐったりとして意識も朦朧としていました。その顔は涙と泥で汚れていますが、美しさは損なわれていません。むしろ、夜の淫靡な美しさとは違う、きりりとした見目麗しい青年の美しさが感じられます。
 その顔つきもまた皇子の好みの範疇であり、傍に置くに相応しいものであると感じました。それに、明るい陽の下で見る王子は、美しいだけでなく、愛らしさも持っていました。
そっと顔の汚れを手で拭い、これ以上汚れないようにと、その身体を胡座をかいた上に乗せると背後から抱えてやりました。頭の重みでカクリと俯いた顔を、手を添え上げさせてじっと見つめていると、皇子の陰茎がピクリと反応しました。
 さんざん楽しんで、精液すべてを吐き出したと思っていましたが、うなだれていたはずの陰茎にじわりと血が集まってきます。さすがの皇子でも異常な状態であり、どうやらこの荊の壁の中には、性欲を増す効果を持つ何かがあるのではと言う疑いが浮かびました。
 不思議に思い辺りを見渡した皇子の目に、その原因はすぐに入ってきました。
「シェリオか……」
 すこし離れたところに、小さな薄桃色の花の群生がありました。その花は、開花の際に強力な媚薬効果と精力増強効果を持つ香りを放つのです。しかし、この花は大陸の北に自生しますが、この地方にあるとは聞いたことがありません。
 その花の群生が、目を凝らす範囲に三カ所は見つけましたし、花がないまでも葉だけの群生も見て取れます。
 この植物は、香りの効能があまりに危険と言うことで、ほとんどの国では見つけ次第焼却されるはずの代物で、かなり減っているはずです。そんな危険で、しかも一人で暮らさなければならない王子に、そんなものを遣い達がこの場に残すはずはありません。となれば、これも悪魔の仕業と考える方が正解でしょう。
「壁は人や動物までもは通さなかったようだが、植物、まして種ならばどうだろうな?」
 危険な意図を持って造られた植物ならば通さなかっただろうが、芽吹く前の種を荊の壁が認識しなかったのかもしれない。もしくは、遣いの技でも悪魔の技を防ぎきれなかったのか。風に乗るほどの小さな種を、内部に運ぶのは難しくないだろうと、そんなことで皇子は結論づけました。
 悪魔の呪いは、狡猾で、しつこく、精神が破壊される過程は、悲惨としか言いようがないものです。
 悪魔は、御遣いが創った壁すらも利用したに違い有りません。
 理知的な王子には、なんと酷なことだったでしょう。そして、あの花は、それでなくても精力過多の皇子にとって、なんとはた迷惑な行為でしょう。
 今の皇子は哀れな王子を悼むより先に、己のたぎってしまったモノを鎮める必要がありました。
 もっとも悩む間もなく、その解消方法は一つだけです。
 皇子は腕の中の王子の腰を少し持ち上げて、触れずと直立した陰茎へとその身体を下ろしました。
「あ、ぁ、ぁっ」
 ズブズブと自重で飲み込むそれに、王子が反応して、痙攣します。
 あやすように頬に口付けを落とし、皇子は深く刺さった陰茎はそのままに立ち上がりました。その両腕は苦もなく王子の膝裏を抱え上げています。そのまま、支えた身体を揺すってやりながら館へと向かえば、王子がヒイヒイと良い声で鳴いて喜び、キュウッとなんとも良い締め付けをしてくれます。
 その締め付けを心地よく楽しみながら向かったのは、王子が100年の間暮らしていた館です。このまま庭先で楽しむのも良い案かと思いましたが、少々汚れが過ぎると感じたからですが、その小規模ながら瀟洒な建物に入った途端、皇子は一目でそこが気に入りました。
 なぜなら、どこもかしこも、この王子を鳴かすのに良い構造をしているのです。
 特にエントランスホールの大きな明かり取りの窓や、人が横たわれるほどに広い出窓、彫像が並ぶ階段など、非常に使い勝手がよく、いろいろな妄想を駆り立ててくれました。
 いずれ、この館を別荘地として整備するのも良いかと考えましたが、それはまた先のことです。
 今は、とにかくこの衝動を解消しなければならないと、皇子は、ホールの瀟洒な絨毯の上に王子を下ろすと、今度は正常位でずっぽりと貫き、プクリと膨れ上がった乳首に吸いつきました。
「やあ、オッパイぃ虐めないでっ、ひぃんっ」
 厭々と首を振っていますが、彼の陰茎は見事に勃起をし、その鈴口がパクパクと喘いでいます。
 どうやら、この王子もあの花の影響を受けたのでしょう。そういえば、通り道にもあの花の群生がありました。
 それを確信した皇子は、ならば遠慮は無用とばかりに、激しく腰を動かし始め。
 それからの1日を、たっぷりと楽しみ続けました。



 2日後、荊はすべて枯れていました。
 それと同じ頃に疲労を癒やす深い眠りから目覚めた王子は、完全に正気に戻っていて、あの淫乱さは欠片もありませんでした。
 しかし、記憶はすべて残っていて、目覚めてすぐに王子は自分を解放してくれた皇子に深々と謝意を表し、改めて閉じ込められた原因と中での暮らしを説明したのです。
 それによると、悪魔に一晩中さんざん犯され、さらに尻穴、陰茎、尿道に、乳首と、それらすべてに肌まで悪魔の技と薬によって徹底的に開発された身体は、その時点で悪魔のような異常な精力のあるものでないと満足できない身体になっていたのです。しかも、ほんの些細な刺激にも、愛撫のように感じてしまうために、その身体はいつも疼いているような状態でした。
 しかし海神の遣いは、その時王子が眠っていたためにそのことに気付かず、荊の中に独りで閉じ込めてしまったのです。
「こんな私がどんなにはしたないか判っていましたが、毎夜、己を慰める手が止められないのです。けれど、そんなことでは全く解消できずにいて……」
 疼き続けた身体は、特に強く疼く新月の夜に王子の精神すら支配して、男を求めて錯乱し、この敷地内をひたすら彷徨い、少しでも欲を解消するものを探してしまったとのことでした。
 それが、昨夜の場合は、あの荊の枝だったのでしょう。
「しかも、海神の遣いの手紙によりますと、消し切れなかった悪魔の子種が体内で私の組織と融合し、身体が悪魔並の性欲を持ってしまっていて、もう治すことはできないと……」
 涙を流しながらの告白は、たいそう悲痛なものでした。
 皇子は自分の想像が当たったことに気づき、心の奥底で、悪魔の狡猾さに舌を巻きました。
 悪魔は、御遣いの技すら逆手にとり、この高潔な心を持つ王子を苦しめ続けたのです。そして、助けられたこの先も、王子はその淫らな身体を嘆き続けることになることまで呼んでいたに違い有りません。
「もし、私がこの地から解放されても、この身体は男を欲して疼き続けるのです。しかも、新月の度に色欲に狂うのは止められません。一度性的興奮を得ると、この喉の紋様のせいで声を出す度にその振動が……その……私のものに伝わるようになっていて。もうそれだけで、耐えられなくて……。そして、昨夜のように浅ましく男を求め、彷徨って何人もの男たちにまたがり腰を振る淫売となってしまいます。そんな見知らぬ者達に浅ましい姿を晒すくらいなら、いっそのこと私を殺して欲しい……」
 その言葉に、ふと浮かんだ疑問を皇子はぶつけました。今まで死にたいと思わなかったのか? と。
 話を聞く限り、高貴な彼がこんな屈辱を甘んじて受け入れ続けるとは思えません。早々に自害していてもおかしくない状況です。
 その問いに王子はギュッと拳を作り、悲痛の滲んだ声音で告白しました。
「私の背にある紋様は悪魔の魔法陣で、私の傷などたちどころに治してしまいます。けれど、きっとあなた様の力なら、きっと私を!」
 それは、やってみないと判りません。否──不可能、と言った方が良いでしょう。それは、物理的のみならず、皇子の本心がそれを拒絶するのですから。
「そなたを殺すなんて、そんなもったいないことはできぬ! あ、いや、せっかく助けたのだから……」
 皇子はこの100年前の王子がたいそう気に入ってしまったのです。
「そのような早計などせぬとも、手はある。もしそなたのことをよく知って、そなたの身体のことをよく理解して、そなたが愛おしいと思う故に抱く者であれば……そなたは受け入れてくれるだろうか?」
「……ああ、そんな。私のような、悪魔に呪われた者を愛おしく思うものなど、いますまい」
「ここにいるぞ。私は色狂いに落とされたそなたを見ても、愛おしいと思った。愛し続けたいと思ったのだ」
 その言葉が信じられるように、その身体を優しく胸の中にかき抱きました。
「愛している、そなたを」
「ああ、もったいない、もったいのうございます……。けれど、私の相手は一人では無理なのです。私は……こういったことはあの日まで知りませんでしたが……それでも、こんなに、一昼夜休みなく行うことは異常だということは判ります。確かにそんな事ができるのは、悪魔以外では、あの荊の壁を通り抜けられたあなた様以外におられないでしょう。けれど私の身体は、少なくとも新月の日、28日周期のその日に一昼夜は狂い、男を欲して狂います。しかも、毎夜のお相手を要求した上で、です。そんなこと、大国の第二皇子としてお忙しいあなた様に、お願いするわけには……」
 顔を上げた王子は、感謝と畏怖の念で皇子を見つめますが、その瞳は悲しそうです。
 深い悲しみに浸る彼に、皇子は早速あらぬところがたぎるのを感じて舌なめずりしました。
「確かにそなたの言うとおりではある。私も不在の時はあるし、相手にできぬことも有ろう。だが、業腹ではあるが手立ては有るのだ、そなたが他の男を使っても良いというのであれば、な」
「え?」
 確かに、この素晴らしい王子を独りで囲えないのは業腹ものです。
 しかし、その手段を取らずに、名も知らぬ連中に彼を好きなようにされるのはもっと腹立たしいものでした。
「私はそなたのために、私以外に4人の相手を準備する事ができるのだ。しかもいずれも、私並に性欲があるからな、そなたは二度と足りないとは言わぬであろう」
「あなた様以外に4人も? そのような方々がおられるのですか?」
 驚く王子に、はっきりと頷き返す皇子の脳裏に浮かぶのは、皇子自身によく似た親族です。
 彼らは大国の王家直系男子で、そんな彼らの特徴ともいえるのが、その精力の強さでした。それを解消するための相手を捜すのに忠臣がどんなに苦労しているか知ってますから、彼を連れて帰れば皆が喜んで迎えてくれることは間違い有りません。
「心配することなど一つもない。我が王家と家臣は、あなたが城に入ってくれることを心から望んでいるのだ。それに、あなたがまた狂ったとしても、我々だけで十分対応できるだろう」
 王族が住まう城内の奥深くにいれば、新月の夜も閉じ込めて、浅ましく彷徨うこともないだろう、と。
「そのような……彼の大国の方々にご迷惑をおかけするのは……」
「かまわぬ」
と、一言で反論は却下し、もう何も言わせぬとばかりに皇子は準備もそこそこに強引に連れ帰ってしまいました。
 もちろん、旅の間もずっと王子の身体をたっぷりと可愛がったので、城につく頃には王子はすっかり皇子に心を許していました。


 城に迎え入れられた王子は、城のもっとも奥深い王族専用の区画に部屋を与えられ、王族の一員としての地位を特別に与えられました。
 皇子は都合が付けば、彼の部屋を訪れ、王子を抱きます。
 王子の部屋は浴室からテラスに噴水つきの広い庭もあり、愛するところに事欠きません。
 気の赴くままにいろいろなところで精力抜群の皇子に毎日愛されて、昔のように飢えてどうしようも無くなることは、ほとんどなくなりました。
 問題の新月の夜になると、庭にある他の扉が解放され、第二皇子だけでなく、第一皇子、第三皇子、現国王にその王弟が訪れます。
 その誰もが、一晩中王子を可愛がっても元気な精力抜群な方々ですから、王子はもう男を求めて彷徨う必要もなくなりました。
 王族は皆、どんなに抱いても淫らに欲し、どんなに激しくしても決して壊れぬ王子がたいそう気に入り、今では新月の夜だけでなく集うようになりました。第二皇子が不在の時など、率先して相手に名乗り出るほどです。
 時には王族共有の庭に連れ出して、彼らだけの夜会にも招待することがありました。
 広い庭園の東屋で、月見酒を交わしながらの楽しい宴です。
 王子も、逞しい陰茎をたくさんいただいてパクリと開ききった尻穴に、おいしいお酒をたっぷりといただいて、全身を紅潮させて悩ましげに腰を揺らして、淫らな舞を披露します。
 その美しい身体には彼らから贈られた様々な宝飾品が飾られていました。
 左右の熟して膨れ上がった乳首の周りに輝く10粒の花弁の形をしたダイヤモンドはそれらを繋ぐ金細工の重さも加わって乳首を下に引き延ばし気味にしていますが、畏れ多くも国王からの贈り物ですので、王子は大切にいつも付けています。
 王弟からいただいた褐色の肌の臍を覆い隠すほどに大きなビジョンブラッドのルビーは、臍に穿たれたピアスで固定され、かつ乳首から伸びた鎖を引っ張っていて、ありがたくも王弟ご自身のお手で、落とさないようにと留め金をカシめて外れないようにしていただいています。
 さらに、鈴口を貫き、亀頭の下からでている繊細な黄金細工が施されたリングは第一皇子からのもので、これは、同じく贈られた尿道の中にある極細の柔らかな細工物を留め置く効果がありました。
 さらにその陰茎には、蛇のように螺旋状に絡みつく細工物があります。こちらは第三皇子からで、全周にある逆立ったウロコの細工が見事なものでした。
 そして、深い愛で王子を癒してくれる第二皇子の贈り物は、尻穴を穿つ極太の張り形です。皇子のモノを象ったそれは、寂しく疼く時に慰めてくれるのはもちろんのこと、今も注いでいただいたお酒が零れぬように栓をしてくれています。
 その存在感を感じながら、王子は喜びに浸りなが舞っていました。
 本当に、なん幸せなのでしょう。
 悪魔に呪われたこの浅ましい身体を、皆、こんなにも求めてくれているのです。
 その潤んだ視線の先では、粘液まみれで月光に輝くその美しさを良い酒の肴にしながらうっとりと見つめてくれる皆の陰茎は、どれもが雄々しく立ち上がっているのですから。
 その中でも王子が一番大好きな第二皇子の陰茎に踊りながら近づいて、張り形を抜く刺激に熱い吐息を零しながら腰を下ろすと、夜会の第二幕が始まります。
 たっぷりと満足させられる生活に、王子はもう二度と死にたいとは言い出しませんでした。
 かわりに王子が放つ言葉と言えば。
「あぅぁ、はぁ、ああ、イイよぉ、おっきぃぉ、あぁん、もっとぉ……挿れてぇ、抜かないでぇっ、ずぅっと、あぁっ、うれしっ、ああ、すご、イいぃっ!!」
 そんな喜びの言葉ばかりでした。



 悪魔に魅入られたために荊の森で孤独に飢えて暮らすことになったかわいそうな王子は、素晴らしい皇子に助けられた後、神々の遣い達の言葉通り、その後の長い一生をずっと、決して飢えることなくとても幸せに暮らしました。


【了】