樹人

樹人

融合実験体(キメラ)に提供された別の実験体
蔓、肛虐、人体改造




「あっ、はあっ、あっつぃ……あぁぁ……」
 身体の奥底からこみ上げる熱に、堪らずに呻き声をあげた。
 じっとしていられない。
 腹の奥底からマグマが噴き上げて中から爆発しそうだ。体内から膨れ上がる刺激は、全身を焼き尽くす熱さにも似て、逃げることもできずひいひいと啼くしかない。 
「いやらしい身体だ」
 朦朧とした頭に響く、低い声。
 鼓膜を通っているはずなのに、全身の皮膚が重く震えて身悶える。
「あんなモノを喰ろうて、旨そうに涎を垂らして」
「あ、あぁっ」
 あんなモノ呼ばわりされるほどに歪でゴツゴツとした丸太のような質感のソレを、悦び咥える俺の穴はもう単なる性器だ。
 甘い痺れとともに妙なる疼きが飛散して、ビクンビクンと震えた身体が自由にならぬまでも悶えてよがる。
 尻を掴む太い指がぬるぬるの肌を滑った。その刺激に歓喜の声を上げて、涎を溢れさせて喘ぎまくる。
「あぎっ!!」
 内壁をグリッと抉られ、白く弾けた闇の中であられもなく啼いて。
「あっ、あっ、あっ……」
 固まったままがくがくと激しく痙攣する身体を止められない。
「また、ドライで達ったね。一体何回勝手に達くのやら」
 遠く聞こえる呆れた風情のその声が、ほんの少し怒りを孕む。
 ——ああ、やばい……。
 彼を怒らせたら、いつまでも続く。判っているのに、弾ける思考を止められない。
 ずっと彼の側近をしてきたから、彼が短気なくせにしつこい性格だと知っているというのに。
 けれど、もう自分の身体が制御できない俺には、判っていてもどうしようもなかった。
 俺の尻を掴む手が深く食い込む痛みすら快感になって、己を貫く太くて長いその存在に身体を支えられて。
「ひっ、待っ!、あっっっ!!、くっ、あっ……ぅ」
 それがずるりと肉壁を擦りあげる刺激にまた達ってしまう。
「しようがないね、下ろしなさい」
 あきれた風情の溜め息に乗せられたら言葉が響いたとたんに、支えが無くなった身体がドサっと床に落ちた。
「あ、……」
 冷たい床が気持ち良い。
 ようやく……終わった……。
 朝早く始まった遊戯はいつも長く続いて、動けなくなっても続くことも多いけれど。
 ぼんやりと霞がかかった視界の向こうに、ソファに腰を下ろした男の姿が退屈そうに欠伸をしていた。
 久しぶりに早く終わるのか……と、すべての支配者である彼が、ようやく飽きてくれたのかと、ホッと安堵したその時。
「トリム、吊しなさい」
 安堵の吐息が、喉で止まった。
「ハ、イ」
 背後から聞こえた濁った諾の応えに、茹だった身体を冷め尽くす悪寒が走る。
「あ、ま……」
 思わずあげようとした手は、固い床をかりかりと引っ掻いただけ。
 顔すら上げることができず、縋るように彼を見つめるけれど。
 彼は嗤っているだけで、代わりに非常に太い褐色の手に二の腕を掴まれた。
「ひ、ぎっ……」
 この場に連れてこられてからずっと、俺を犯していたのはこのトリム。
「や、やだぁ……もっ、もう……ゆる、て……」
 許して……。
 何度も何度も繰り返した懇願は、決して聞き入れられなくて。
 別の腕がもう一方の腕を、そして。
「やあぁぁっ!!」
 トリムの背後からいっせいに伸びてきた蔓が、俺の四肢を捕らえる。
 逃げたくても、もとより力が入らない。
 かろうじて動く首をひねって、背後のトリムに縋るように視線を落とす。
 けれど、硬い表情のそれは、俺の視線を受けてもぴくりともしなくて。
 蔓と同じの全身褐色のゴツゴツとした木肌のような身体は微動だにしなかった。
 ただ、その背後から生えたうねうねと動く無数の蔓が、何かを我慢しているかのように俺の周囲でとどまっているだけだ。
 人にこの国の特殊な植物とも動物とも言えぬ生き物を融合させたトリムという名の化け物。
 生きることと生殖本能だけで蠢く目鼻すら無い元の生き物は、その四肢の代わりの蔓を自在に動かして餌を捕らえ、生殖のために動物を捕らえて種を植え付けていた。それを人の身体と融合させて、人の心など無くした欲に純粋な、けれど、主人の命令のみに従うようにされたモノ。
 そんな化け物に与えられたのが俺。
 トリムを作る実験に金を出したスポンサーが、目の前の男——かつての上司。
 この刑務所兼人体実験場に放り込まれた囚人は、この国の特異な動植物の実験体になるか、実験体の相手をさせられるか。
 どんな罪状であれ、それがたとえ俺のような判りきった冤罪だとしても、ここに一度放り込まれた者の運命は、その二択しか無かった。
「トリム、その玩具のだらしなく体液を垂れ流す穴を塞ぎなさい」
「や、やめっ、あぁ」
 制止なんて完全に無視される。判っていても、咄嗟に出たそれはやはり完全に無視されて。
「だ、めぇっ、ひぎぃぃぃ」
 力無く項垂れていたペニスの茎に、小さな瘤でゴツゴツしているくせに柔らかな蔓が食い込み、その先端に同じタイプの蔓が。
「っ、止めっ、そ、そんなっ、奥っ、もう、止めっ」
 入ってくる。
 ずる、ずるっと狭い管を瘤が抉りながら、何度も前後に差し引きされながら進んでいく。
「ひぁっ……あっ」
 もう何度もされた。されたけれど、この感触には絶対に慣れない。
 広げられる痛みと粘膜を抉る刺激、その奥にある前立腺に与えられる快感。
 それが何度も何度も繰り返される。
 ぶちゅぶちゅと隙間から噴き出す粘液も敏感な亀頭を刺激して、掴まれた陰茎も絶妙な圧迫感もまれ続ける。
 痛みとそれを凌駕する快感という相反する感覚に、だらしなく口が開き、こみ上げる快感に口角から溢れた唾液が、泡となって垂れていく。
 大の字の身体が硬直し、ひくひくと勝手に腰が揺れたけれど。すぐにその腰すら捕らえられて、動きを制限されてしまう。
「あ、お、奥……ひぃぃ」
 膀胱まで貫いてようやく止まった頃には、俺は先までの疲労感以上に、動けなくなっていた。
 もうこのまま、気を失いたい。
 眠って、その間にすべてが終わっていて欲しい。
 荒い吐息を繰り返し、虚ろな視線を彷徨わせた。
 朝早く、トリムに与えられてから一体どのくらい経っているのだろうか。
 いい加減、男も飽きてくるだろうに……。
 そのささやかな願いは、けれど。
「トリム、玩具が動かなくなりそうだね。餌を与えなさい」
 その言葉に、咄嗟に口を固く閉じた。
 けれど、疲労に苛まれた身体は、口ですら緩慢な動きしかしなくて。
「んぐっ」
 差し込まれた太めの蔓が、喉の奥に液体を噴き出す。
 口内を満たす甘酸っぱい粘度のあるそれを吐き出しくても、別の器用な蔓が俺の顎を押さえ、隙間を塞いでほとんどが口内に留まって、喉の奥に流れていくのだ。
 ごく、ごく……と泣きたくなる思いでそれを飲み込む俺は、そうやって生かされる。
 栄養価の非常に高いその液体はこの実験場特製の精力剤だ。
 即効性の高いその薬に、俺の身体は無様にも反応する。
 トリムの玩具として選ばれたその時に、異常なまでに性欲の強いトリムに付き合うための体質改良すらされている俺の身体は、精力剤が非常に効きやすい。
 すぐに掠れた意識がクリアになるほどに。
 貫かれたままの項垂れたペニスが持ち上がってしまうほどに。
「もう、やめて……ください」
 張りが出てきた己の声音に、新たな絶望の涙が溢れた。


「イイぃ、ああ、せーえきぃ、出させてぇぇ」
 ズッポ、ジュッポと泡立つ音が激しく鳴り響く下肢の間から粘液がいくらでも垂れ流れる。
 もう何度も何度もトリムに出されたそれは、精液というよりかは樹液に近い。ねっとりと黄金色した透明の液体に全身くまなく覆われているような状況で、嗅ぎたくなくてもその濃厚で淫靡な香りに満たされる。
 その媚薬としかいえない成分に浸った身体は、先よりさらに熱くたぎっていて、茹だった頭は与えられる刺激を貪り尽くす。
 先に注がれた精力剤と相まって、俺の身体は何もかもが快感になって、何度も何度も射精衝動に襲われていた。
 けれど、みっちりと膀胱まで塞がれた尿道は一滴たりとも精液を吐き出すことは適わず、生産された精液が重苦しく精嚢の中で溜まり、陰嚢を膨らませていた。
 股間を大きく割り開いた宙づり状態で、虚ろな視界であって見ることなど叶わぬ股間の状況でも、見えなくても判る。
 それがブラブラと垂れ下がって揺れているのが。
 人より大きく育って、異様な袋となったそれが。
 細身の俺の股間にぶら下がる陰茎より長く、巨大な肉色の果実が2つ。
「もっとだよ、もっと膨らませてみなさい、トリム」
「ひぃぎぃぃっ、あぁぁっ」
 嗤う男の言葉に、アナルを抉るそれが太く、長く、激しくなる。
 ペニスと同じ形で、けれど外観は蔓と変わらぬそれはいくらでも太くなる。
 今や、俺の腕ほどにもなったそれが、奥の奥まで犯すと同時に、途中に作られた瘤が前立腺をこねくり回すのだ。
 精力を取り戻した身体は、今日の最初と同じように何をされても激しい快感に襲われる。
 ぐずぐずに蕩けた意識、弾ける快感に、全身がマグマのように滾っていて。
 たまらない。
 もっと、もっと——犯して欲しい。
 快感に意識が引きずられて、ずっと犯されたいと願う自分。
「はぁぁぁっ、達くっぅぅっ、ああっ、またぁぁぁ」
 ずっと弄られ続けてきた前立腺は昔よりずっと敏感で、ほんの少しの刺激でもたまらない快感を与えるというのに、それを何度も、激しく揺さぶられもみ上げられる。
 およそ、ペニスの抽挿だけでは与えられない刺激が、常に与えられて。
 意識が壊れていく。
「ひぃぃ、やあぁっ、あぁぁっ!!」
 精液を吐き出せないまま、また達ったと同時に、ずくりと重い痛みが走ったのは、垂れ下がった陰嚢で。
 ああ、やばい……これ以上達ったら。
 蕩けきった理性の中に、ほんの僅かな危険信号が点る。
「今日は、このおいしい水蜜桃くらいまであっという間だったねえ。……ふふ、いっそメロン大くらいにするのも面白いねぇ、そうなったら弾けてしまうかもね」
 男の低い声音もそれを助長して。
「や、めて……あっ、もう、許して……」
 蕩けきる理性を繋ぎ止めて、涙と涎でぐちゃぐちゃな顔で懇願する。
「こわ、い……、です、壊さない……で」
 膨れた陰嚢が重い。
 俺の陰嚢は体質改良とともに改造されていて、快感を感じる度に精液を生産し、蓄えるのだ。
 ドライオーガズムの間でもそれは変わらず、たっぷりと蓄えていく。
 何度も何度も限界まで試させられたそれは、今や人よりかなり大きく人の拳大の袋になっていた。それがもう、シワがなくなるほどに膨らんでいるというのに。
「こんなもので壊れるものじゃないだろう?」
 嗤い声が響き、続いた言葉にさらなる恐怖が加わった。
「トリム、このリンゴくらいまで大きくできなかったら玩具を取り上げてしまうよ」
 傍らのフルーツから取り上げた深紅のリンゴは、大きな男の手でかろうじて掴めたほどに大きい。
「あ、あぁ、そんな……」
「ウ、オォ」
「まっ! やぁぁぁっ」
 お気に入りの玩具を取り上げられまいと、トリムのすべてが激しく動きだした。
 あの男が、玩具である自分の言葉など聞くはずが無くて、最悪の命令に上がったのは悲鳴ではなく嬌声だ。
 めくるめく快感は恐怖すら凌駕し、達きたくないのに、何度も何度もドライで達きまくる。
 こねくり回された前立腺が快感をまき散らし、ずくりと陰嚢が重くなっていった。
 重さに引き延ばされた根元にチリチリとした痛みが走っても止まらない。
「あっ、あぁぁ——、ぁぁ」
 喉が枯れても嬌声は上がり、トリムの粘液を全身に浴びて、尽きぬ精力に翻弄され続けた。
 肥大した乳首に絡まる細い蔓が、こねくり回し、擦りあげて、擦り潰す。
「や、あん、ああひぃっ」
 胸とペニスと脳髄がひとまとめに直結してしまったようになって、ビンビンと響く。
 尾てい骨をなで上げる太いざらざらとした蔓に身震いして、陰茎に絡む蔓の振動に妙なる声を上げ続ける。
 太いトリムのペニスは今や瘤だらけで、あり得ないほどに拡げたアナルを苛み続けていた。なのに、裂けそうなそんな刺激に全身が震えて、身悶えた。
 そのすべてが快感にしかならないほどに、身体は狂ってしまっているというのに。
 いっそ精神も狂ってしまえば良いのにと何度も願っているけれど、そう願うほどに精神は決して壊れてくれなかった。
「もう少し大きくなるだろう」
 あの男の声が、脳裏に響く。
 そのたびに、現実に引き戻されて、理性が繋ぎ止められる。
 俺を愛させて、夢中にさせて、なにもかもを捨てさせて。
 男のためにと醜い老人にまたがり腰を振って見せ、敵の巣窟で陵辱され続けながらも情報を盗み取ったというのに。
 嗤いながら突き放して、全ての罪をなすりつけて陥れた男の言葉が、俺の心を現実に繋ぎ止めていた。
 トリムを作り、玩具を作り、玩具が弄ばれるのが何より愉しいと言い放つ男。
 俺のすべてを支配する男。
「も、痛、やぁぁぁ、またぁぁ達くぅぅ! うぐぅ……許して……ぇぇ、あああぁっ」
「まだだ、トリム、がんばりなさい」
 あの男の声が、弾けそうな精神を引きずり戻す。
 きっと、脳にも細工をされたのだろう。狂った玩具には見向きもしなくなる男だと……、知っているから。
 だから。
「あひぃ、ち、ちぎれ……ぇ、あひぃぃ」
 異形に膨らんだそれが揺れて、引き伸ばされる感触に悲鳴を上げているのに。
 また、重くなる。
「も、う……やめぁ、あぁぁぁ」
 もう上げているのが悲鳴なのか嬌声なのか判らない。
 何度も何度も上げ続けて、ようやく。
「なんか、おもしろくなくなってきたねぇ……」
 嬌声を上げ続けるだけになったことに飽きてきたらしい男の言葉が、トリムへと向けられて。
「抜きなさい、全部」
「ぐぅ」
 まだ足りないと言いたいのだろう不満げな声音ではあった。けれど、トリムは決して逆らわない。
「あ、ぎやぁぁぁっっ、ひぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!」
 一気に引き抜かれたすべての蔓。
 アナルの太い瘤だらけの蔓が、内壁を叩きながら一気に引き抜かれる。ペニスの中のすべてを塞いでいた蔓も同様に。
 とたん。
「ひぁぁ————っ!!!」
 堰き止められていたすべてが、噴出する。
 アナルからは、腸内すべてを埋め尽くすほどに放出されたトリムの体液が。
 そして。
 ペニスからは二つともに指定されたリンゴ大以上に膨らむほどに溜め込んだ精液が。
 水道の栓が壊れたかのように噴き出すそれらは、俺の意識が白く弾ける以上の快感を与え、肉体を硬直させ、まさしく動かぬ玩具とさせて。
「おやおや、すごいねえ」 
 パチパチと愉しげに手を叩いて男がケラケラと笑う。
「噴水のできあがりだ」
 排尿にも似たそれは、もはや射精と呼べるものでもなくて。
 弧を描いていたそれが角度をなくして真下に落ちだして、ポタポタと滴になるまでに相当の時間がかかっている間達き続けたあげくに、俺はようやく白目を剥いて気を失った。
 だから、その後の男の言葉を知らない。
 知らないけれど。



「トリム、その玩具でもっと遊んでなさい。明日眠るまで、ね」



「んああ、くふ、んんっ!!」
 束の間の休息は、あまりにも短く終わっていた。





 樹人トリムー実験体 Sー597に関する中間報告
 前回の報告時に融合実験の成功例として上げたSー597に関し、判明したことを報告する。
 Sー597は、被害者百数十人の凶悪性犯罪者Aの身体に、黄金花メスと細胞融合能力を持つ粘性生物を埋め込んだ融合体であるが、双方の本能が顕著に発現していることが判明した。
 ただし、老若男女を問わず陵辱の対象とした本体Aの本能、および、目の前に獲物があれば何であろうと蔓を伸ばそうとする黄金花の本能が似通っているために、どちらがより強くでているかは不明。
 またその本能は性欲のみと言って良く、与えないと餌は食べず、相手を引き剥がさないと休みもしない。また性欲も、生殖ではなく相手を陵辱する性行為が目的と思われることがしばしばあり、そういったときには感情をなくしたはずの表情に喜色が浮かぶのが見て取れる。また、その技巧は進化を辿っており、学習能力があることも散見された。それらは、今後の研究課題といえる。
 なお、気温が15℃以下になるとその行動が鈍り、10℃以下になると半冬眠状態になることが確認された。
 実験時には温度管理に気をつける必要有り。


 実験体 S-694に対する中間報告
 詐欺、未成年搾取、売春、集団暴行、殺人の罪により無期懲役者である。
 生殖能力強化、体力増強、精神強化を行い、Sー597の実験相手として最適化された実験体である。現在その陰嚢は各々1リットルを超える精液を蓄えることが可能で、その量は増えている。
 なおスポンサーより、他の実験等全ての依頼に対する貸出に関し快諾をいただいており、今週は外界で行われるショーと先日発見された薬物の実験、来週はスポンサーのパーティーに出稼ぎの予定で当刑務所トップクラスの稼ぎ頭でもある。
 なお、出稼ぎ中はS-597を冬眠させておくことを注意点として追記しておく。

【了】