トリップものネタ

トリップものネタ

「うまいか?」
 悪戯に耳をなぶる指。ただ指の腹で柔らかく擦られているだけなのに、ぞわぞわとした疼きが皮膚の下を這う。
覚えず込みあげた唾液が、口の端から溢れ、流れ落ちる。冷たいコンクリートの上にシミを作ったそれに、食い込む石粒の痛みから逃れた手の平が触れた。
「……可愛いぜ、…っく、その尻尾。もっと振って見せろよ」
 吐息など感じる距離などではないのに、その熱さを感じた。上目使いで窺う視界は膜が張ったようにぼやけ、よく見えない。
 それでも、彼が笑っているのが判る。
 声で、ではない。
 冷たさすら感じる声音に交じった笑いがあったとしても、せいぜいが嘲笑くらいだ。
 視線を落とせば、視界いっぱいに広がる陰毛に、堪らず目を閉じる。
「おい、振らねえのか」
 声音に交じった苛立ちに、青年は慌てて尻を揺らした。
「ふ…っ」
 不意に、尾てい骨から脳髄まで走った甘酸っぱい疼きに、喉の奥が震えてくぐもった音を立てて、あえぐ。
 尻タブに感じるふさふさとした感触に肌が総毛立ち、地に付いた手も、膝まづいた足も、くたりと力が抜けて崩れ落ちてしまいそうになって、慌てて堪えた。
「むぐぅ……うぅ」
 最初は痛みしかおぼえなかった穴は、今や体のどこよりも感じる性感体だ。
 犬の尻尾を模した豊かな毛で覆われた大きな房は、体を串刺しするのかと言う程の木の杭に付いていたけれど、今はその姿はどこにも見えない。ただ体内で確かに存在する圧迫感が、その存在を知らしめる。
 何よりその杭は、青年に妙なる快感を与えるためのコブがたくさんあって、腰を振れば、性感体として育ちきった場所をえぐり、擦り、揉みしだく。
 それこそ意識など飛ぶほどの快楽に、けれど浸り切ることは許されない。
 重みのある房が敏感な肌をなぶり、体を支える足が、ガクガクと痙攣しても、崩れることはできない。
口いっぱいのペニスが多量の精液を吐き出し、生臭い汚濁が柔らかな粘膜を侵蝕していき、毎日欠かす事なく与えられた味を、旨そうに咀嚼するまでは。
 青年は、未知の世界への驚愕から覚め止まぬ前に、ここに連れて来られ、それからずっと、いつ終わるともつかない淫行のみを与えられ続けていた。
終わり