淫魔遊戯四十八手 その6ー鬼ごっこー

淫魔遊戯四十八手 その6ー鬼ごっこー

 この屋敷が、こんなにも静かになるとは憂は思ってもみなかった。
 ここは鬼の頭である羽角(はずみ)がいる本宅では無く、数ある別宅のうちの一つでしかない。
 普段は鬼達やその配下、使用人が詰めていて、本宅よりも雑多な印象が強い。それは、棲まう者達の精神が上位の鬼達より荒んでいるからだろう。
 だが、今日は誰一人いない。
 綱紀の命により退出させられた彼らは、今日は外での仕事か遊びか、別の屋敷に行っているか。
 だから、静まり返っているのは間違いないけれど、その屋敷が静まりかえっている違和感が、どうしても拭えない。
 これだけ静かなのだから、憂以外のもう一人がどこにいるか、その気配が窺えそうなのに、それはまったく判らなかった。
 だから落ち着いてはいられない。
 きょろきょろと辺りを見渡し、五分遅れてこの屋敷に入ってきたはずの客の気配を探す。
 今日の客の要望は、屋敷内での鬼ごっこだった。
 一時間の撮影内で捕まってしまうと、憂は男の自由になる。その命令に逆らう事などできなくなる。けれど、捕まらなければ何もされない。
 一人だけが相手だったけれど、だから大丈夫とはいえないのが憂の客だ。捕まってしまえば、何をされるか判らない。
 だからこそ気が急いて、僅かな物音に怯え、自分が廊下の床板を踏む音にすらびくりと震えていた。そのたびに立ち止まり、辺りを窺う。
 知らない場所ではないのに、あまりにいつもと違うせいで、まるで違う世界に紛れ込んだような不安に襲われる。
何かがいつもと違う。
他者がいないだけでなく、 何かが。
けれど、憂にそれを知る術はなく、緊張と不安ばかりが増していた。
 荒い自分の吐息ばかりが鼓膜に響き、その音で居場所が気付かれないかとまた怯えてしまう。
決して暑くはない気温なのに、全身がしっとりと汗ばみ、無意識のうちに腕を上げて額を拭っていた。その拍子に目の前に薄く透けた白い布地が舞う。
 それは憂の身に唯一許された薄絹製の白い千早の幅広の袖だった。
 巫女装束などで上に羽織る衣装だが、それを無理に前袷にして別の細い紐で縛っている。灯りに透かせば身体の線をくっきりと浮かび上がらせるほどに薄く、身の動きで簡単に舞い上がるほどに軽い。しかも丈が太腿までしか無かった。
 着崩れしやすいそれは何度直してもすぐに前が緩んで開き、そのたびに、裾の袷から勃起したペニスが飛び出て、布の端がで擦れる。
 そんな僅かな刺激にも激しく疼く性器は、その尿道には鬼ごっこにちなんだという、おとぎ話に出てくるような鬼の金棒の形状をした棒が深く挿入されていた。
 先端は丸くて太く、手前になるほど細い。鬼の金棒では持ち手側になる先はペニスから出ていて、自在に動く輪が憂が動く度にチャリチャリと音を立てた。
 さらに正確に金棒を模したそれは、その表面にもゴツゴツとした突起が無数に付いていた。
 それが狭い尿道を割り拓いて進む痛みはたいそう酷く、全身を力任せに押しつけられていても、必死になって逆らい、泣き叫んだ。
 あれから時間が経った今でもじくじくとそこが痛む。
 けれど。
捕まってそれを奪われたら憂の負け。
だから、特に固定されていないそれがズルリと抜けそうになれば、自分で押し込まなければならない。
「う、ぐぅ、くっ……」
 屋敷内を彷徨っていた憂が、抜け出したそれをグイッと押し込む。途端に口から苦鳴ではない、艶めかしくも熱い吐息が零れた。
 淫魔の身体は刺激に馴染む。
 それが酷い痛みであっても、神経が快楽中枢に繋がっていく。何もかも快楽として受け取る身体を持つのが淫魔なのだから。
 あれから一体何分経ったのか、それは時を知る術を持たぬ憂の身体が、ペニスへの刺激をざわめく快感と捉えるには十分な時間で。
今はただ、ハアハアと浅ましく卑猥に悶えながら、こみ上げる唾液を淫らに口角から零す。
 ゾワゾワと溢れる快感に身体の奥が疼いて堪らない。
 勃起したペニスが憂が歩を進めるたびに揺れて、その揺れる動きにすら甘く芯を振るわせる。
 さらに薄衣が触れて。
 ぞわりとした疼きが背筋を走り抜けて、幾度もぶるりと震えた。
 本来白衣の上に羽織る千早は、広い袖と身頃のゆったりとした造りだ。だから、動けばすぐに肩からずり落ち、軽いために動くたびにふわりと舞った。
 それは明るい日差しで煌めき、自分の身体よりも広い範囲で相手に認識されてしまうだろう。
 袖を押さえれば、裾が舞う。その隙間からペニスが覗き、衣の端が敏感な亀頭を弄び。
「ん、くっ……」
 びりびりと走り抜ける快感に、膝が崩れた。
 膝と手をついて、はあ、と奥深くから零した吐息は熱く、甘い。
 こんなことでも欲情する己の身体が恨めしく、ぎゅっと目を瞑って振り払うように首を振って立ち上がり、部屋へと立ち入った。
 どこかおぼつかない歩みでも、それでも憂にとってはせいいっぱいの早足だ。視界には何も見えないけれど、けれど、すぐ後ろに誰かがいるような気がしてならなかった。
 無人の部屋を通り過ぎ、向かいの障子に片手を付くけれど。
 目測を誤ったか、したたかに手を打ち付けて、ガタッと大きな音を立てた。
 その音にびくりと硬直し、きょろきょろと辺りを見回して。
 しんと静まりかえった空気は、憂以外の誰の存在も教えなかった。
「はあ……」
 と、大きく息を吐いて、こつんと障子の桟に額をつける。
 鼓動が激しく、早く鳴っている。
 今何分経っただろうか。
 五分、いや十分か?
 いったい何分が過ぎているのかも判らない。
 もう、客は出発しただろうか?
 それとも、もうそこまで来ているのだろうか?
 濡れ縁に風が吹けば庭側の障子が揺れて音をたてて。慌てて振り向いて、誰もいないことにほっとする。
 たいして動いていないはずなのに、息が上がる。
 視野が薄く歪むのは、激しい緊張のせいだけではない。
 汗が流れる額を腕でぬぐい、荒く息を継ぐ。
 怖かった。
 怖くて——不安で。
 見つかりたくない。
客に思う様になぶられるのはまっぴらだ。
 けれど。
 今憂の身体は浅ましく火照り、さらなる快楽を求めて歪な棒を銜えたペニスを震わせる。
 不安に苛まれながらも、暑く欲情した身体が、激しく男を求めていた。
空っぽのアナルをオスの熱い肉棒で満たしたくて、涎が溢れる。
 みっちりと尿道を埋め尽くす金棒と粘膜の僅かにできた隙間を伝い、憂の卑猥な体液があふれ出ることはできるけれど、精液のような勢いのある粘性の高い液体は流れない。
 細く銀糸のような糸をひき、それが風になびいて足に絡まり、落ちる。同時に、アナルからも溢れた粘液が太股を伝い、足を伝い落ちて。
 磨かれた床に淫らな染みを残それが、先よりさらに数が増え、明らかな道標となっていた。
「あ、くっ、……もっ……あうっ」
 腹の奥からゾクゾクと強い疼きがこみ上げて、溜まらず立ち止まり壁に手を突いて喘ぐ。
 知らず腰が揺れて、ブラブラと揺れたペニスが僅かな風にすら歓喜の涎を垂らした。
 薄く白い生地の奥で、熟した乳首が荒い布地に触れることを喜んでいる。
 滑らかな肩胛骨の高い場所が、ずり落ちた襟に擦れてずるりと手から力が抜けた。
 時間が経つほどに強くなっていく快感は、特に薬などが使われている訳では無いはずなのに。
もっとも奴らが只の潤滑剤という言葉をまるっきり信じているわけではないが。
 たった一本の金棒と、羽織らされた千早。
 そして迫り来る陵辱者への恐怖と——そして、憂の体が覚えている陵辱者から与えられる快楽への期待に。
 それだけで、憂の体は勝手に淫らに欲情し、腰砕けになりそうな快感に動けなくなっていく。
「や、あ……たす、けて……」
 ぽろりと頬を流れ落ちる涙にすら震えて、入り込んだ大広間の畳の間に力無く崩れ落ちた腰は、それでもカクカクと何かを期待するように動いている。
 その時、カタッとどこかの障子が揺れる音がしたのを、憂は聞き逃さなかった。
 逃げないと——理性が囁く言葉は、どこか遠くて。
 紅潮した顔がゆらりと音がした方に巡らされる。
 また響いた音に、憂は怯えた表情を見せて、ずるりと這うように手を動かしたけれど。
 ざらりとした畳の目に沿って動いた先は、その音がした方で。
 憂の赤く染まった瞳が期待に満ちていることに、憂自身気付いていなかった。


 ずりずりと軟体動物のように這う憂の体から、もう千早は脱げ落ちていた。
 いつも陵辱され続けた身体は、放置されて飢えていた。
 誰もいない鬼の館に立ちこめる香りのしない香が、その飢えを助長していることに、憂だけが知らなかった。
 薬学に長けた鬼の一人が作り上げた香は、人や鬼にはたいして効かない。
 薬に慣れないモノが少し欲情することはあっても、そういう相手と一緒に居るとムードが高まる程度のものなのだが。
 その香に隠された効能は、何よりも淫魔の性を持つものには作用するようになっていた。
 それは、淫魔の飢えを煽り、知らず相手を欲するようになるものだ。それでも、鬼が創った薬にしては穏やかに効き、その効果は高くない。
 けれど、今の憂にとって、それは十分な効能だった。
 いつもならもう少し保つはずの飢えが煽られて、すぐ近くに感じる陵辱者の存在がびりびりと感じられる。
 尿道を刺激する金棒も、肌を刺激する千早も、それを倍増させる最適なアイテムだった。
 敏感な身体への刺激が、よけいに感覚を鋭くしていたのだ。
 襲われる——という妄想は、期待になり、けれど、そんな浅ましい期待を嫌悪し、逃れようとする焦りが、よけいに陵辱されることを意識する。
 DVD撮影のために毎日毎時間与えられた性的刺激は、憂の身体をますますま貪欲に作り替えていて、どつぼに陥った精神をさらに追い詰めた。
 それは、憂自身がどんなに認めていなくても、紛れもない事実で。
 とろりと蕩けた腹ばいになった憂の尻だけが時々左右に擦りつけるように動いていて。
 飲み込めないままの涎が、呆けて開いた顎から溢れて、畳に染みを作っていた。
 そんな淫らな染みが、あちらこちらにできた部屋で、憂は逃れ得ぬままに時間を過ごす。
 そんな姿が、あちらこちらに仕掛けられた高性能なビデオカメラで死角なくすべて撮影されていることを憂だけが知らない。
 高性能な集音マイクが、アナルの収縮でヌチャヌチャと濡れた音を立てるのを拾っていることも知らない。
 今回の撮影だけでなく、すべての撮影シーンにおいて、撮られた映像はすぐにダイジェスト化されて、一部はリアルタイムで専用サイトにアップされて。残りは特別限定版のおまけとして、今回の参加者達に配られていた。
 多方面から撮影された映像は、実際の撮影時間の数十倍になるほどにもあって、嗜虐心の強い男達の欲を満足させてあまりあるものばかりだったから、その一部を少し提供しても、十分なほどにあったのだ。
 そして、この撮影も時間にして、残り10分。
 後10分逃げれば、憂は今回の陵辱者から逃れられるのだけど。
 がらり、と開いた襖の、その間から明るい声が響いた。
「みーつけた」
 サングラスにスーツ姿の、まだ若い男の姿が、憂の期待に満ちた瞳に映る。
「オスを欲しがってやーらしく悶える姿をもっと堪能したかったけどねぇ、やっぱさぁ、あんたを犯りてぇって思っちゃったわけでぇ……」
 下品な物言いの男が、かけていたサングラスをするりと取った。
「でもさあ、良いこと思いついちゃってぇ……」
 ケラケラと笑う男は、ずりっずりと躙り寄る憂の姿ににやにやと笑う。
「あんた、生じゃねぇと駄目なんだって?」
 するりと股間から出したそれには、しっかりとしたゴムが被されていた。
「相談したら特別性のゴムをくれたんだ」
「あ……」
 そのゴムを見て取って、憂が大きく目を見開いた。
 歪だった。
 歪だった。
 特に先端がやけに太く凶悪な突起がたくさん付いていた。そのせいで、先端部は二回り以上大きくなり、エラは張り、陰茎部はひどく太いたくさんのリングが積み重なったようになっていた。
 それが、憂の尻に向かう。
「へっへっへぇ——っ、どうだ俺様の金棒はっ。これにかかったら一突きで昇天できるぜぃっ」
「い、いやっ、それっ、と、とってぇぇぇ、それ、やだあぁぁっ」
 その凶悪な形状は、憂ですら怯えさせた。
 さらに、ゴムというモノを淫魔は嫌う。
 生き物の精を喰らうのが淫魔。
 精液を得て飢えを満たすのが淫魔。
 そんな淫魔にとって無機質なオモチャと同様に、糧となる精液を遮るゴムは欲しいときほど邪魔な存在だった。
「ほおら、大好きなちんぽ金棒だよぉぉ、いただきますって言えよ」
 嗤いながら、正気に戻ったようにじたばたと暴れる尻タブを掴み、広げて。
「うひょひょひょっ、ほらほらほらほらほらぁ、真っ赤なお口おっぴろげてぇよぉっ、ほらぁ、おいしく頬張んなぁ」
「ひゃ、あぁぁぁ、ぁぁぁぁっっっっっ!!!」
 ぶちゅぅぅっっ、と、濡れた音に悲鳴が重なる。
 慣れているといっても、締まりはものすごく良い淫魔の尻に、太いとしか言いようのないゴム付ペニスがにちにちと入っていく。
 衝撃にのけぞり、助けを請うかのように伸びた指先が強ばったままひくひくと蠢く。
「おーっ、分厚いから感じにくいと思ったけど、ウネウネうねってんのがよっく判るわっ。ひゃほっ、なんかきっちぃからすっげえ刺激っ、ははぁっ、さ、いこー」
 一気に奥まで挿入して、ぺたりと密着した尻タブと腰の動きに喜悦の笑みを見せながら、男はぺろりと薄い唇を舐めた。
「後10分しかねぇけど……」
 ずるりとぎりぎりまでペニスを引き抜いて。
 とたんに、憂の身体がそれを追いかけるように動いた。
 瞳が白く濁り、開いた口からイヌのように伸び出た舌先からぼたぼたと涎が落ちる。
「あひっ……いっ……いやぁぁ、抜かないでぇぇ」
 限界が来ていた憂の身体は、計算され尽くした形状のそれに、一瞬で淫欲の虜に陥っていた。
 もう、鬼ごっこ中であったことも、撮影中であることも、すべてが頭から吹っ飛んでいて。
 ぎりぎりまで抜けかけたペニスを追いかけてくる。
「ああ、抜きやしねぇよ、10分しかねぇからな」
 ニヤリと笑い、尻たぶに食い込む指先が痣をつくるほどに掴んで、ぐいっと引き寄せる。
「ひっ、ひぎっぃぃ、あぎっ、きっ、ぐっ、ひゃうぅっ!!!!」
 とたんに始まった激しい抽挿に、憂の嬌声は、10分間一時も止まること無く、続いていた。


【六の遊戯 ー 鬼ごっこ ー 了】
 
淫魔遊戯四十八手
〈鬼ごっこ〉分類:玩具、尿道、強要、精神責め
 その名の通り、子供が遊ぶ遊戯ですが、内容を考えれば良い遊戯になります。場所、時間、鬼の数、これが淫魔遊戯になりますれば、その服装、玩具など、いろいろな遊び方ができるものです。
 さらに淫魔は、視線、感情、悪意などにも敏感で、じりじりと精神的に追い詰めるだけでも欲情します。

 お勧めお客様:精神的苦痛を与えることが大好きな方。賭け事がお好きな方。


【リクエスト】
「1人での参加、客は逃げ回る憂を追いかける。制限時間1時間以内に捕まえることが出来なければそこで終わり、途中で捕まえることが出来れば残り時間で好きに扱うことが出来る。場所は屋敷の中のみ。逃げる際に拘束などはしないが、尿道には金棒が入れられる。遊戯名は鬼ごっこ。」

 こちらの遊技内容は、お客様よりメールにてリクエストいただきました。ありがとうございました。
 もちろん、撮影中の映像は進呈しております。