目覚めれば犯されて、快楽の中で意識を失い、目を覚ませば違う異形のモノに犯された。
時には、数体続けて、あるいは同時に。
レネの身体はいつもゼリー状のモノで固定されていて、逃げることなどできない。それどころか、それは異形の輩が犯しやすいようにレネの身体を固定する。
「イあああぁっ、やめぇ、も、無理ぃっ」
今回のは、人のように二足歩行しているけれど、手足が異様に長い。
異形達がレネの頼みを聞いてくれたことなどなく、それらが望むがままに、体内を深く穿つ行為は止まらない。
今日のその股間から生えた長く太く自在に動くモノは、位置的にはペニスなのだろうけれど、与える刺激の強さは、半端ではなかった。
激しい抽挿の間でも、捻り、曲がり、うねるのだ。
「あぁっ、うぅっ、ま、またぁ」
前立腺を深く抉られて世界が白く染まり、瞼の裏で星が瞬く。
四肢の先まで硬直し、全身が痺れて膨らみきって。唯一、自由になる頭を振りたくって、暴れまわる熱を外に出そうとする。
だが最近、一体どんな技なのか、快感は全てレネの体内に封じ込められ、蓄積されていくようになった。
それは怪我が完全に治った辺りからだろうか。
この空間を支配するゼリー状のモノが許さない限り、どんなに感じでも、絶頂を迎えても、レネは射精できない。解放されないのだ。
空中で仰向けになるようにその不定形な支配者の身体で四肢を繋がれ、大きく割広げられた股間で訪問者のモノの蠢く長いペニスが、不意に膨れ上がった。
「ぎっ、ヒイィィィ!!」
アナルを埋め尽くすペニスの表面から一斉に絨毛が生えた、とはレネは知らない。
だが、嬲られ続けて敏感な粘膜を腰のある絨毛でゴリゴリ擦られて、全身を痙攣させながら達きまくる。
「あああああああぁっ!!」
絨毛から一斉に吹き出す粘液にすら、全身が総毛立つような疼きに身悶える。
すでに肉だけで満ち満ちた肉筒から溢れたそれが、グチュグチュと滲み出、尻を伝って床を汚した。
「あぁっ、あ、う、ふ……」
ビクビクと小刻みの痙攣を繰り返すレネの身体から、ズルリと長いペニスが抜け落ちた。
「ひ、ぃぃん」
その刺激にすら感じ、身悶える。
ズルリズルリと移動する音が室内に響き、パタンと扉が閉まる音がして。
「あぁぁ」
深く官能に満ちた吐息を零すレネは、その美しい顔が涙と涎でグチャグチャになり、瞳は紗がかかったように濁っていた。
その身体にあるのは、頬に残っているあの傷だけ。崖から落ちた傷どころか、その前の憔悴しきって痩せて荒れた身体でもなく。今のレネは、頬の傷以外は、赤子のような無垢の肌を持つ美しい身体を持っていた。
それもこれも、全てゼリー状のモノのせいだった。レネの身体を覆い尽くし、体内にすら潜り込み、汚れもレネの体液も何もかも吸収してしまうのだ。
そして成長する。
最初の頃はかろうじてレネの全身を薄く覆える程度だったが、今では厚く覆ってもまだまだ余裕がある。
緩慢だった動きも素早く、いろいろな部分で同時に違う動きもした。
何より知恵が付き、レネをどうすれば美味しい体液のご馳走を食べられるかを熟知しているようなのだ。
そして。
先日から、それは話せるようになっていた。
「レネ、レネ……もっと、もっと」
「ああぁっ!」
激しく吸引され、ジュルジュルと飲み干されて、強制的な射精に意識が飛ぶ。
青い半透明な人型を取ったそれのお気に入りは、レネのペニスから直接精液を啜ることだ。
「おい、し、よ。レネ、もっと」
言葉を発しだしたそれは貪欲で、際限なくレネの体液を欲しがる。
「レネの、おいしーから、早く形、できそ」
「む、り……、も、休ませて」
空になれば招き入れられた異形に犯され、溜まった体液を啜られて。
どれもが強烈な快感付きで、理性を狂わされる。もはや全身が性感帯のように敏感で、そよぐ風にすら欲情する身体だ。
何をされても感じるせいで、激しい快感が止まらない。
全身が自分のものでなくなる。
意識が身体から放たれ、広い空間を駆け回ろうとする。
だが、レネは篭の鳥だった。
飛び立つ意識はすんでのところで捉えられ、地上へと引きずり落とされる定めだなのだ。
「ひ……う……も、許して……」
涙が溢れる懇願は、誰も聞いてくれない。
「もっと、ちょうだい」
それは、レネの精液や身体に付着する体液を餌としていて、それが無くなれば止めて、次の来訪者のためにレネの身体を固定する。
「ゆる、て……」
視界の片隅で扉が開くのを捉えながら、嗚咽をこぼしながら繰り返した。
「許して、カラ、お願い」
「レネ、早く、俺の身体、造って」
忘れたことなどない顔が、至近距離で微笑む。
「お願い、もう、許して」
レネの体液を喰らうほどに近づく造形に、懇願する。
「レネのお願い……も、少しだ、よ」
けれど、それは笑うだけだ。
「レネ、人気あるから、お客様いっぱい……」
不意にそれた視線につられたレネの視界に映ったのは、扉の向こうで異形が列をなす光景。
「あ、あ、や、だ……」
「早く、俺を造って」
カラの声で、カラの顔で、背後から四肢を拘束しながら絡みつく。
「そしたら、レネの願い、叶う。俺の、願い叶う」
「あ、ひいぃ!」
イソギンチャクのような触手が絡みつき、犯される。
背後から伸びたのは青い、指が形成された手で、熟した陰茎をイタズラに締め付けられ、快感をせき止められた。
「カラ、ああ、カラ、許して……あううっ」
話せるようになったカラと名乗ったそれが教えてくれたこの場所の正体は、魔界のような異形の神々が住まう世界の娼館で。
「俺が、俺になったら」
現世で絶望にまみれて自殺した魂を拾い上げた身体に戻して娼婦として使役する場所で。
「たっぷり、犯して、やるよ。願いどおりに」
その任期は、願いが適うまで。
「ひ、ううっ、そんな、そんなのっ」
願っていない。
「お、俺は、ただカラと、ひあ、暮らしたくてっ」
触手に犯され喘ぎながら涙を流し、快楽にのたうつレネに、カラがのどの奥で笑う。
「うん、レネの願い、それ」
だけどね。
「俺の願い、強い」
強くて、強くて、無念のうちに死んだ者の思念は、魔界の理すら凌駕する。
「俺、欲しかった。レネの受け入れながら、レネを犯したい、思ってた。犯して、虐めたい、苦しめたい。けど、俺の身体、ムチャクチャで使えない」
楽しそうに、犯され悶えるレネを見下ろして、カラがウットリと続けた。
壊れすぎて魂しか無かったカラに与えられたのは、仮の身体だった。他生物の体液で成長し、擬態が可能なそれ。
けれど、それではカラの願いは叶わないはずだった。
「けど、レネが来てくれた。俺、生まれ変われる。それに、やっぱり、犯されるレネ、可愛い」
「イ、あぁぁっ、もおっ、ゆる、て─ひっ─っ!」
身体の奥で爆ぜる強すぎる快感が辛くて、泣き喚いてそれを与えるモノとカラに懇願する。ここで与えられるモノは、何だって強すぎた。
強すぎるが故に苦しくて、けれど逃げることもできなくて。
「カ、ラっ、も、もうっ──あうぅ!!」
「モット、モット……聞きたい、いい声……」
拘束するカラはレネが悲鳴を上げるほど喜ぶ。
「ほら、レネの願い、叶う」
カラと一緒に暮らしたい。目の前で失ったカラと会いたかったからこその願い。
確かにカラと出会えた。カラが常に傍にいる。けれど。
「俺の願いも叶えられる」
「ああ、やああぁっ」
終わらない陵辱の原因が判っても、レネにはどうしようもなかった。
「もう、許し、あぁっ、うっ、カラ……」
「可愛いレネ、もっともっと、良い声、出して」
背後から伸びてきた手に顎を掬われて、口づけられて、唾液を啜られた。
「ねえレネ……、どうせなら、ずっとここに居よう。ここにいれば、リネはずっと犯してもらえるよ。いろんなペニスに」
体液を得るたびに人の身体と知恵とそして力を得るカラの楽しそうな提案に、大きく首を横に振る。その拍子に溜まった涙が飛び散る様に、不快げに鼻を鳴らして、カラの青い触手が延びた。
「ダメ、全部俺の」
吸い上げた涙がカラの中に消えていく。
もうほとんど元の姿と色を持って。
否。
それ以上の力を蓄えたカラは、既にこの地の神の一人といえるだろう。
強い願いは、この地では力になる。
「レネ、レネ」
カラの願いは強い。レネのささやかな願いなどとは比べものにならないほどに。
そして。
「飼ってあげるよ、可愛いレネ」
レネが知らなかったカラの本性が、この地ではカラのすべて。
「淫乱なペットにして上げる」
力を露わにしたカラに包まれて、レネは逆らえない。アナルに彼のたくましい肉棒を受け入れて、その裸体を紅潮させながら、淫らに喘ぐだけだった。
【了】