数十分前、マサラ王子が足早に出かけた。
優秀な再生外科医でもあるマサラの治療を受けたいという患者は多い。
いつも夜遅くまで戻ってこられないマサラのために、この居住区を管理するのが執事であるムルナの役目だ。
この居住区直属の召使いは8人。他にも専属の調理師が1人に警備兵が4人。彼らの勤務の管理はむろんのこと、応援に呼ぶ人員や来訪者の接待もその管轄にあった。
特に主たるマサラが出かける直前がムルナが一番忙しい時だ。
彼が朝食を取れるのは、いつもその後だった。
先ほど召使いの1人が自室まで運んできた盆を机に置く。
遅い朝食は、新鮮なバターを練り込んだ焼きたてのクロワッサンと果物。そして、グラスいっぱいの美味しい乳。だがそれ用のグラスは、まだ空だ。
その中にあるべき乳を待つムルナの耳に、戸の音が微かに届いたのは、細々とした事務処理をこなしている時だった。
遠慮がち、と言えば聞こえは良いが、叩く力が弱いだけの鈍い小さな音。
それが、不規則に響く。
視線だけを扉に向けたムルナの口元の笑みが深くなった。
聞こえる喘ぐような呼びかけ。
「……ル…ナ様」
少しだけ大きくなった不規則な音色を聞きながら、仕事を再開する
「ム、ルナ……さ…まっ」
中から開かぬ限り入室を許されないから、ただひたすら呼びかけている。
ムルナが下した言いつけを守り、必死になって扉を叩く。
何度も何度もドアが鳴る。
叫んで、喘いで、啜り泣くように懇願されて。
ふうと大きく息を吐き、一段落がついたムルナが立ち上がったのは、最初に気づいた時から10分以上は経ってからだった。
女性の召使いが着る服はメイド服と呼ばれている。
膝の長さまで直線的に裁断された布に袖を付けた物で、羽織って前で合わせる型。前は2枚の布が深く合わさるようになっていて、腰のところで飾り紐で止める。その上から、背で蝶の羽のように結ぶ帯を締めるのだ。袖はゆったりとした物で、肘のところで飾り紐で縛るようになっている。その服の下はぴったりとした膝上までの下衣を着用していて、機能的ながら可憐さを強調した服で、来客者にも評判が良い。
いつでも、見映え良く、立ち居振る舞いを可憐に。
常駐している3人の女性召使いには、いつもそう申しつけている。
だが、今ドアの向こうにいたのは、とても可憐とは言い難い格好をしていた。
後ろ向きに尻だけを高く掲げているものだから、股間から何から丸見えなのだ。
その足下には、空になったコップが二つと吸引具、そして卵が入った皿が乗ったお盆が置いてある。
「遅い。マサラ様がお出掛けになったらすぐ来るように言っておいたはずです」
姿勢を崩さないカザナに、冷ややかな言葉をかける。
マサラが出掛けてから、すでに45分。
マサラの寝所から、ゆっくり歩いても5分とかからない距離だ。
「も、申し、わ、け……ありません……」
王より下賜された姓奴は、いまだに自分のすべきことをわきまえていない。
「それになんて格好しているんでしょうか。まさしく雌豚の呼び名に相応しい」
「ひぃっ」
剥き出しの白い尻を、加減無く平手で叩く。
不自然な姿勢に与えられた衝撃に、引き締まった尻がふるふると震えた。
中心で同じく震えている淫猥な肉色の花びら。
女である証を剥き出しにしたその先では、男の証が陰液を涎のように垂らしていた。
細みの尻も、適度な筋肉ののった足も、女とはどことなく違う。
下がっていた頭が上がって振り返り、泣き濡れた瞳が向けられた。苛むムルナに、抗議の色が浮かんでいる。
良いというまでドアが開いた時の姿勢を崩さないように言いつけているのはムルナなのだ。
「今日のはずいぶんと太いですねぇ」
曲げた指の関節を唇に押し当てて、くつくつと押し殺した笑みを零す。
ぬらぬらと厭らしく滑る透明な液が、大腿を伝っていた。引き締まった大腿の内側には、足首まで白く濁った液で濡れている。
その源である肉色の花びらの中心には、足と腰に回した革帯で固定された陰具が根元まで埋め込まれていた。
その奥には、マサラが施した多量の精液が納められているのだ。
基本的には産卵時以外には抜かれることの無い陰具。
大小長短各種ある陰具のどれを使うかは、マサラの気分次第だ。
今日のそれはたいそう太い。
これでは、歩くことすら難儀だろうことは容易に想像できた。
なにしろ、その後──アナルにも朝から入りっぱなしの陰具がある。
身体を改造された時、カザナの前立腺は直腸と膣に挟まれるように置かれた。
狭い距離にある2本の肉筒に太い物が収まれば、その間隔は狭くなる。
それがそんな快感をもたらすかは、股間の奥で硬度を保ったまま、だらだらと涎を垂らしているペニスを見れば一目瞭然だった。
男であるならば、歓喜の泉を激しく掻き混ぜられているような物。
常に枷を嵌めて、陰嚢をくびりだすように下に引っ張っていても、溢れ出す陰液が、床に幾つもの溜りをつくっていた。
「だらしない、こんなにぼとぼとと……」
「あ……いあぁ──」
指先でアナルの陰具を弾いてやると、艶やかな嬌声を上げて尻が淫らに踊る。
こちらは膣用よりは細い。
ぐいと押し込んでやれば、ガクガクと身体を揺らした。
カザナはその姿勢でずっと戸を叩いていたのだ。
尻を掲げて高い位置で、陰具で戸を叩くように。
ムルナの命令に、カザナは逆らえない。肉を拓き、前立腺付近を抉るように突き刺さった陰具を戸に打ち付ければ、その衝撃がどんな効果をもたらすか判っていてもだ。
「随分と長くここにいたようですが、もっと強く叩かないと聞こえないですよ。それともここで戸を叩く振りをして、遊んでいたのかな?」
「あっ、ひっぃっ!」
ぐりぐりとアナルの陰具を揺らすと、甘い悲鳴を上げる。カザナの背がピンッと伸びて、わなわなと震える唇から、だらりと唾液が流れ落ちた。
すでにその喉元から胸までべっとりと濡れているから、今更増えても判らないほどだ。
「やあ、おはよう」
ちょうど応接室の手入れに向かうのか、召使いの一人が通りかかって挨拶をした。
その彼女に向かって笑顔で手を上げる。
「あら、この雌豚。またこんなに汚して……。掃除が大変だわ」
気の強い彼女は、いつもカザナを雌豚と呼ぶ。
「ムルナ様。この雌豚のおちんちんって栓ができませんか? 一滴も漏らさないようなもの」
「マサラ様に進言しておこう」
「よろしくお願い致します」
カザナを視界から外したとたんに、いつもの穏やかで優しい表情に戻る。浅黒い肌を縁取るのは美しい銀糸の髪。エキゾチックな風貌の彼女は、リジンから逃げてきた一人だ。
その彼女が向かう通路の奥の方では、警備兵が雑談をしながらこちらを見ていた。
そんないくつもの視線に晒されながら悶えるカザナは、最初の頃は全身を真っ赤に染めて一向に言うことなど聞かなかったけれど。
ムルナが躾を繰り返し、ようやくここまでおとなしくなった。
「さあ、そろそろ私の朝食を用意して貰いましょうか」
「はぁ……は…いぃ」
貪欲な身体は、まだ快感が欲しいようだ。
霞がかかったように澱んだ瞳に、うっすらと笑みを刷いた口元。ゆらりと泳ぐ身体から、淫猥な臭いが溢れ出している。
服から零れた乳房がふるふると震え、ペニスを突き出して
手を伸ばして盆を取ったカザナが、歩きにくそうに奇妙に腰をくゆらして歩いた。
素直に言うことを聞くのも面白くないな。
今のカザナよりも最初の頃の反抗的なカザナは、ムルナも腕の振るいがいが有った。
その時のことがちらりと脳裏を宿る。
何をするにも反抗的であったカザナの凜とした眼差しに脅えが走り、次いで快楽に染まるあの変化を。
怒りを露にして男の矜持を振りかざしていたカザナが、屈辱の涙を流しながら犯してくれと強請る姿を。
また見て見たくなった。
カザナがムルナに引き合わされたのは、今から2ヶ月ほど前だった。
病院から連れてこられた後、1週間ほどマサラの寝室にいたカザナは、その日がメイドとしての初仕事だった。
その1週間何があったのか、居住区にいた者なら皆知っている。
1日中悲鳴とも嬌声ともつかぬ声がずっと響き渡っていたのだから。
2日続いたそれは、3日目は途絶え、そして、4日目には再開した。
昨夜、ようやく部屋から出てきたカザナは失神寸前で、男達の手で引きずられるようにして浴室に運ばれた。そのまま5人いる男の召使い総出で、雌豚──淫乱な男狂い女の蔑称──と呼ばれながら丹念に全身にこびり付いた体液を洗い落としてやれば、あんあんと泣き喚き、嬌声を上げて薄い精液を噴き上げながら達きまくっていた。
ギラギラとした五対の瞳に見送られたカザナが、寝具に投げ入れられたのはそのすぐ後。
さすがに次の日は動けなかったが、いつまでも休ませる訳にはいかない。
そんなカザナの一切の教育と管理を任せられたのが、執事であるムルナだった。
今後はこの程度でバテないようにするのも仕事の一つだ。
取れない疲れに朦朧としていたカザナだったが、特注のメイド服を見たとたん、嫌悪の表情を浮かべた。
他の服より裾が短く、袷が少ない。飾り紐の留め具も無く帯だけで止めているから、その袷はとても開きやすい。しかも袖は肘で止めないから、腕を高く上げれば肩まで剥き出しになった。
そして下衣は着用しない。
下着は許されていないから、前屈みになれば尻が覗く。のけぞれば、ペニスの先が覗くだろう。
性奴専用の服としてあつらえたそれをカザナはひどく嫌がったが、それ以外の服は無いと言い切ると、不承不承手を通した。裸でいるよりはマシだ思ったのだろう。
だが。
「お前の乳がマサラ様の食事となります。これから毎朝自分で乳を搾りなさい」
恥ずかしそうに縮こまっていたカザナだったが、ムルナの言葉に驚き、激しい怒りに顔を染めた。
「何で私がそんなことをっ! 冗談じゃないっ! こんな馬鹿げた茶番は真っ平だっ、私を誰だと思っているっ!」
「雌牛ですよ」
そして、雌鳥で、雌豚。
『そろそろ、出てきそうだな』
王子が出かける前に残した言葉の意味は、ムルナはきちんと理解している。
「雌牛だとぉ」
「それがお前の仕事です。姓奴に拒絶権は無い」
その言葉に、きりきりと眉尻がつり上がる。
白い肌が紅潮し、憤怒の色が空色の瞳を彩る。
「何が乳だ、何が雌牛だ、私は男だっ! 滅んだとは言え、リジンの王子だぞっ……」
愚かなことを。
執事としてすべてを取り仕切るムルナは、何でも知っている。
マサラの兄王子であるキスカが、撮ってくれといって設置した幾つものカメラのスイッチを入れ、操作したのはムルナだ。
そのカメラのレンズの先で、この一週間ずっと女性奴としてマサラを満足させていたのは誰だ?
処女である膣の破瓜の時ですら腰を振っていたのは誰だ?
ムルナから見ても身震いするほど歪なペニスを埋め込まれて、狂喜していたのは誰だ?
乳首から乳房まで、揉まれて舐められて。
善がって鼻を鳴らして擦り付けて。
同じく処女であったアナルをこじ開けられ、そこに太い陰具を埋め込んだまま膣を犯され、その刺激だけで何度も絶頂を迎えていたというのに。
入浴させた時も、たいした痴態ぶりを晒していた。どこに触れられても、はあはあと喘ぎ、見悶えて射精しまくって。
その全てを知っているムルナの前で、肩を怒らせるたびに、ふるふると震える乳房。それが服越しでも判る。その先端に広がる染みが、乳でないといつまで言い切るだろうか?
「お前は雌牛だ。いや、乳以外は雌豚だな。いつでも盛って穴という穴を埋められたくて喘いでいる雌豚。欲しければ望まれるものを自ら差し出せ」
襟首を掴み、勢いよく押し広げる。
「それでなければ、お前の存在意義は無い」
「ひっ!」
ぽろんとはみ出た乳房を、カザナが真っ赤になって腕が隠した。
大きめの張りのある形の良い乳房。
だが、カザナが隠したいのはそれではない。
「その乳首を出しなさい」
しっかりと閉じた指で隠された乳首。
カザナが青ざめて嫌々と首を振る。
カザナが何より嫌っているその乳首。
それは、雌牛のように太く長く、男の親指のくらいのサイズがあったのだ。
その異形な形に、カザナは泣き喚いて嫌がったと聞いている。
今も、見られるのを嫌がり、ずりずりと後ずさる。
もっとも、ムルナの方も、カザナの態度は予想していた。
「そうですか。では……」
背後に向かって目配せしたムルナに、カザナも気がついて、はっと後を振り返る。
だが、それより先に、屈強な警備兵のネリとヤナがカザナの両腕を捕らえていた。
「な、何をっ、離せっ」
全身で拒絶しているが、いかんせん宮殿でかしづかれて暮らしていた元王子だ。あっけなく腕を引かれ、胸を晒すことになった。
「ひゅーっ、すげぇ」
頭上から嘲笑が降ってくるのに、カザナが真っ赤になって俯いた。
大きな乳首は色も濃い。
手を伸ばして握れば、掌でしっかりと握り締められる。
「い、いやっ、やめろっ」
掌で強弱を付けると、カザナがびくりと全身を振るわせて、悲痛な表情で見つめてきた。
それには微笑んで返して。
「もう良いか?」
背後から手を伸ばしてきたネリとヤナには、軽く頷き返す。
「では遠慮無く」
「ひあ──っ」
柔らかな乳首がぺちゃっとつぶれる程にネリの太い指で摘まれていた。
「や、やっ、痛──、あ、あっ──や、やぁ」
そのままぐりぐりと擦られる度に、悲鳴の音色が変わる。
「へえ、結構固いっすねぇ」
ヤナは乳房全体を大きな手のひらで包み込んでいる。
ぐりぐりと指が食い込み歪に変形していた。
「んあっ──痛い──っ、やめっ」
そちらも揉まれるたびに上がるのは悲鳴ばかりだ。
「お前達、力が強すぎるんじゃないか?」
さすがに呆れて声をかける。重い剣を振り回す警備兵の握力は指先だけでも十分強い。
「そうすかぁ? でも、ほらっ」
だが、ヤナに目線で教えられた視線を落とす。──と。
「おやおや……」
袷を広げた拍子に裾まで開いてしまったのか、カザナは股間まで露わにしていた。
そこでは、ペニスが緩やかに立ち上がっている。
「いっ、さ、さわるなっ」
まだ柔らかいペニスだが手の中で弄ぶと、さらに固くなっていく。
「い、痛っ──、ああ、駄目だ……、触るな……っつうっ」
胸を揉まれて痛みに叫び、ペニスを握られて悶え、また痛みに叫ぶ。
乳首と乳房、そしてペニスを思うように弄くっていると、カザナの身体から厭らしい臭いが立ち昇り、三人の興奮度をますます上げていった。