【水砂 捕獲】(3)

【水砂 捕獲】(3)

 奴隷商の親玉である男──ルクザンのペニスは体に見合った太さと長さを持っていて、軽く扱いただけで腹に付くほどに反り返っていた。
 それを、四つん這いにさせたミズサに押しつけてくる。まだ指すら入れていないアナルは固く閉ざしているのに、ミズサの緊張に強ばった尻タブをむずっと掴んで固定し、すぐにその長大な肉棒が遠慮呵責なく押し入ってきた。
「うっ、くっぅぅっ」
 潤いが足らずに、肉が絡みついて軋む。引きつる痛みに、奥歯を噛み締めて堪えた。
「へぇ、何もしねぇのに濡れてきたやがった。噂通りだな、こりゃ、すげぇ」
 亀頭部だけが、男を受け入れ慣れているアナルにヌポヌポと出入りする。ただそれだけの刺激でもじわじわと粘液が滲み出て足りなかった潤いを足していく。ズズっと入り込む摩擦は痛みを伴うというのに、体がこの先に訪れるはずの快楽を期待して、粘液を滲ませるのだ。
「あっ、くっ……きつ……い」 
 それでもルクザンのそれは大きくて、締まりのよいミズサのアナルは悲鳴を上げていた。
「性奴隷っていやあさんざん弄ばれてるはずなのに、締め付けも上々だ。処女並なのに──切れてねぇ……」
 頭上から降ってくる声音は、少し上擦っていた。
 荒い吐息に混じるため息のような音、それが繰り返される度に、体内に入り込んだ肉の容量が増すように感じる。ぎちぎちに伸びた肉壁が異物であるそれを押し返そうと勝手に蠢いて、ペニスの熱も形も満遍なく拾っていた。
 太くて長くて、さらに固い。
 柔らかいはずのエラさえも猛々しく張っていて、内壁を削りながら通り抜けていく。
 そのコシの強さに、痛みと、それ以上の快感がゾクゾクと走り抜けた。
 しかもペニスから感じる熱は、ミズサの熱をも上げるのだ。引きつれるほのかな痛みは快感に変化して、さらに体を熱くした。それが全身を駆け巡り、また熱を拾ってくる。たくさんの熱は下腹部の奥にわだかまり、とぐろを巻いて狂おしく暴れ回った。
 籠もる熱は理性を狂わせる。
 もとより淫乱な性奴隷の体だ。熱が理性をもトロトロに蕩かして始めれば、足りないアナルへの刺激を欲して、体が勝手に動くようになるのだ。
 実際、ゆっくりと送り込まれるその速度がもどかしい。
「あ、ぁぁっ、は……ぁぁぁぁ、や……だ」
 尻を高く掲げて、額を床に擦りつけて。
 じわじわとこみあげる焦れったい快感に見悶える。濡れてしまえば、ルクザンのペニスが与える刺激は快感でしかない。けれど、今の速度は緩すぎた。
 今まで何本も受け入れてきたペニスは、もっと乱暴だった。己の欲望を満たすためだけに一気に突き入れ、十分でない粘液に引きずられる肉壁の動きすら味わって、まずは一発、と、快感だけを貪られる。
 だからこそ、ルクザンの試すがめす入り込む動きがもどかしい。堪らずに腰を振ってしまって、手の爪がかりかりと岩の床を掻く。
 ぞわりと表皮の下を虫が這うような粟立つ感触に、甘い呻き声を上げて、イヤだと身を捩った。
「や、あっ……はああ……んんぅ、こ……な……はや…ぁくぅぅ……ぅ」
 知らず、強請る言葉が零れ落ち、焦れったさに涙すら流れ落ちる。
「おいおい、挿れただけでお強請りが始まるってか? つうか、マジで濡れてきたし。しかも、中がぐにぐにと動いて、絡みついて離しやしねぇ……なんだよ、このケツ。高級娼婦のマンコ以上の代もんじゃねぇか」
 耳に届く驚愕と揶揄混じりの言葉。それになけなしの衿持が揺さぶられ理性が慟哭を上げるのに、体は歓喜の嬌声を上げる。
 ずっぽりと入りこんだペニスの熱が気持ちよくて堪らないけれど、まだ足りない。もっと動いて欲しい。そうすれば、もっと狂えるのに。
 何も考えずに、何も後悔せずに。ただ、ペニスが与える快楽だけに浸ることができるのに。
「あっはぁぁ……うご、いて……、もっ、ほし……だから」
 性奴隷でしかない存在に。今はもうそれだけで良いから。それだけで、良いと──命令されているから。
「お、くまで、んぅっ……欲しっ、に……ああぁ、嫌だ、こんな……っ」
 快感に溺れてしまえば、どんな辛いことをされても、体は嬉しがる。それが、ミズサが性奴隷になって早々に学んだことだ。
「なんてぇ声で誘いやがる」
 ルクザンの声が上擦ってきていた。体内のペニスの動きが早く、それ自身もひどく大きく張っている。
「ひっ、いあぁぁ……おっき……すごっ」
 近い距離で喉が鳴る音がたくさんする。
 ずんずんと突き上げられ始めてぶれる視界の中に、さっきまで向こうの方で遊んでいた男達がいた。
「お頭、そんなに良んですかい?」
「イイ声で鳴きやがって……すっげぇ……イヤらしい顔で……」
 ミズサが欲に狂えば、どんな淫乱な娼婦よりもイヤらしい。その色香は、周りの男達を皆誘うだろう。
 そんなことを言ったのは、あの部隊一の切れ者カランだった。
 だからと言って、それを意識して動いている訳ではないけれど。
「う、ふぅぅ……んく、うっ、くっ」 
 パンパンと肉が肉を打つ甲高い音よりも、グチュグチュと湿った音の方がより大きく尻から響く。肉壁に感じる泡が弾ける感覚は、粘液のものだろう。
 絡みついて引きずられる粘膜の動きは、神経を逆撫でされるほどの刺激を与えてくれる。
 ほどなく、ルクザンのペニスが、ミズサのもっとも感じる場所を探り当てた。
「あっ、はっ──、あうっ、そこっ、んくっ」 
 ミズサの快感の源は、あまりにも目立つ。ペニスがそこに触れれば、意識が爆発しそうなほどに感じて、それだけになる。そんな前立腺をペニスがごりごりと擦り上げていく。
「へえっ、こりゃ良ぃや、ゴリゴリと良い刺激になるぜ」
「ひっ、くぅっ!」
 強く押しつけられながら数度抽挿されて、それだけで目の前で星が弾けて、意識が吹き飛んでいきそうで。
「やあっ、もうっ……ひぐ──ぅぅ、ああっ!!」
 びくびくと全身が痙攣する。
 仰け反った背筋に強張った筋肉はあまりにも淫らだ。さらに引き締まった尻とそこから中に通じる肉の道は、入り込んできた異物を捕まえようとぐねぐねと蠕動運動を繰り返す。そのせいでよりリアルにペニスの形も熱も感じてしまう。
 もう、止まらない。
 残っていた理性が吹き飛べば、そこにいるのは、男達に嬲られるためだけの性奴隷だ。
 両頬を最後の理性が滴となって溢れて流れ落ち、床に染みをつくる。
「あ、ああぁっ、はっあぁぁっ!」
 声が止まらない。打ち込まれる楔に押し出される吐息と共に、嬌声が迸る。閉じなくなった口角から、だらりと涎が垂れ落ちて、喉から胸を濡らした。
 肩ががくりと落ちて、衝撃で閉じた口内で今度は強く奥歯を噛み締めた。
「ひぐぅ、くっ」
 ぞくぞくと背筋を走った悪寒にも似た快感を、堪え忍ぶ。それでも小刻みに肩が震えて、腰が淫らに揺れた。
 声を殺さないこと。
 声を殺すこと。
 繰り返すタイミングは無意識だ。けれど、男達がそれに煽られるのは経験で知っている。
 意識しなくても男を誘う淫らな体は、ただ悶え、全身を駆け巡る快感に捕らわれ続けているだけなのだ。
 息を詰めて悶えて。耐えきれないとばかりに声を上げて。
 理性などいらない。
 快感だけを追うだけの生き物となって、何かに誘われるようにゆらりと頭を上げた。
 溢れた涙が視界を奪う。焦点がうまく合わないけれど、人が増えているのは判る。その潤んだ空色の瞳がたたえた欲情は男達を狂わせるというのに。快感に捕らわれたミズサは、もう自分を止められない。
 もう誰も、他の奴隷を使っていない。
 最初に広間にいた人数より多くなった男達の視線が、ただミズサのみを捕らえていた。
 グチャグチャと湿った音が鳴る接合部は、白い肌と陰毛の対比により、いつも以上に淫らに映える。
 白い大腿は溢れた粘液で濡れそぼり、感じて強張る筋肉の動きが傍から見てもはっきりと判った。
 そんな全てを男達の視線が捕らえて離さない。
 その様に気が付いて、覚えず笑んだ。
 左右の口角を僅かに上げただけで、微苦笑とも言える曖昧なものだったけれど。
 男達の欲情を煽るには十分過ぎるモノで。
「ひっ」
 か細い悲鳴を上げた男が、よろよろとミズサに近づいた。それが影となって見える。その近づく影に向けた視界に、男の胯間が入ってきた。
 それに向かって床を掻いていた指を伸ばしたのは無意識だ。
 けれど届かないと判ると、今度は意識してそれに手を伸ばす。
「っく、……あうっ、あぁぁっ、それも……」
 アナルだけでは足りない。
 指が靴に触れた。そこからスネへ、そして内股へと伸ばす。その触れた先が、ガクガクと揺れていた。
「お、おかし、ら……っ」
 堪えきれないとばかりに上げた懇願は悲鳴に似ていた。
「た、まんねぇ……すげぇ、欲しがってる……」
「おいおい、尻にぶってぇチンポを貰ってるくせに、次を強請るのかよ」
「お、頭……こいつすげぇ……、これがモノホンの純血って奴ですかい? これ……堪らねぇっす」
 手下達の下衣はそれほどきつくない。だが今、彼らの股間はそれとはっきり判るほど膨れていた。
「口、口、使わせてくだせぇ……、待ってられねぇっ」
「お、俺もっ」
「手、この手にっ」
 一人が頼み始めると、後は堰を切ったように、手下達の声が響きわたる。
「んっ、ふっ、あ……ぜんぶぅ……、くださ、い、ほし……」
 男達を素直に受け入れれば、それだけ早く許される。染みついた習性は、あの部隊ならば救いだったろうけれど。
 けれど、ここがどこかも理解していても、違う行動は取れなかった。
 腰を揺らし、背をくねらせて、欲しがる男達を誘っていた。口も手も、どこでも良い。淫乱なミズサの体はどこだって性器だ。
 だから、欲しい。欲しくて堪らない……。
 願いは男達に、そして、それを叶えてくれるであろうルクザンに向けられて、ミズサは艶やかに微笑みながら、請うた。
「欲しぃ、です。おっきいのが……太いのが……しい」
 性奴隷に成り立ての頃は強制だった言葉は、もうためらいも無く零れ落ちる。掠れた声音での囁くようなお強請りは、聞き慣れない男達には即効性の媚薬のようなものだ。
 ルクザンの瞳の奥が赤く染まっていく。
 男達の吐息もひどく荒く、血走った瞳が、ミズサとルクザンを交互に見やる。
「お、お頭っ!」
 悲鳴のような懇願は、暴発する寸前だった。
「ちっ」
 仕方ないといった舌打ちが響き、けれど続いた声音は愉快そうなもので。
「しょうがねえ。だが、これは試しだ。傷付けんじゃねぇぞ」
 牽制はどこまで有効か、言った本人も判らないとばかりに、苦笑が滲んだその言葉を、手下達は最後まで聞いていなかっただろう。
 最後の言葉が言い終わる前に、ミズサの口にも手にもいきり立ったペニスが何本も突きつけられた。
「すっげぇ?、これが本物……。こりゃ確かにあんな高値になるのも判る……」
 それだけを言って黙りこくった男の荒い息づかいが、ミズサの肌を嬲る。
 口の中にあるペニスは多量の先走りの液を垂れ流しながらピクピクと痙攣し、射精したいのを必死で堪えているようだ。それにミズサがゆっくりと舌を這わせ、喉の奥を締めて亀頭を刺激する。口の中に広がる先走りに唾液が溢れ、何度も何度も嚥下した。
 その喉の動きに、包み込んだペニスが大きく跳ねる。
「うっ、ぐっ」
 どくどくと注ぎ込まれる粘性の高い生臭い体液が、喉の奥にとろりと流れ落ちた。その刺激すらも快感に結びつくミズサは、ごくごくと喉を鳴らして美味しそうに飲み込む。
 それら全てが無意識のことだったけれど。
「あっ、あっ、あっ」
 その様を間近で見たその男のペニスが、萎える間も無く勃起していく。頬に落ちる水滴は、欲情にまみれて上がった男達の熱気による汗だ。
「次は俺だっ、てめぇっ」
「お前はもう口を使っただろうがっ」
「ぐがっ!!」
 頭上でケンカが勃発した。もう達ったのに、抜かずに抽挿を繰り返す男が殴り飛ばされた。その拍子に口内を占めていたペニスが抜け落ちて、たらりと唾液が床に流れ落ちる。
「ああ……」
 熱い熱がなくなった口内が物足りない。舌が濡れた唇を舐めて、欲情した瞳に男達を捕らえる。
「おめぇらっ、うるせぇっ!」
 怒鳴ったルクザンの声も、どこか上擦っていてすぐに自分の快楽を追い求めるのに没頭し始めた。
 さすがに、ルクザンは呆気なく達くことはなかったけれど、それでもミズサのアナルに溺れているようで、その目は血走り、腰を掴んだ指はくっきりと白い肌に痕を作るほどで。
 ルクザンの激しい抽挿に、ミズサの体が揺れる。
 そして。
「うおおぉっ」
 ドンっと一際激しく深く貫いた体が、硬直したように止まる。
 ビクビクッと小刻みに痙攣する腰がさらに押しつけるように前へと進む。
「あ……あぁ、あつっ……」
 甘く濡れた声が零れ落ち、長い嘆息が後に続いた。
 白い肌に指の後が濃く残る。
「こんな……ん、初めてだ……」
 いつもより長い射精感に上げた感嘆の言葉は、紛れもない真実だ。
 厳つい顔つきがだらしなく緩み、僅かに開いた口から出てきた舌が、ぺろりと唇を舐める。
「ちくしょぉっ、まだヤリ足りねぇ」
「っお、お、おかしらっ、そりゃ、殺生なっ」
 口惜しそうに唸るルクザンに、順番待ちをしている男達から抗議の声が上がった。それを睨め付け、けれど、渋々と一歩下がる、と。
「あ……んん……」
 ずるりと抜け落ちたペニスを捕らえようにと、尻が追っかける様は、あまりにも淫猥で。
 射精の余韻に浸っているルクザンのペニスが、びくりと反応するほどだったけれど。それより先に、待っていた男が、ものすごい勢いで、ミズサに突っ込んだのだ。
 いつもははっきりとした上下関係すら、そこには無かった。
 皆が皆、欲しくて堪らないのだと、ルクザンとて判る。
 実際、ルクザンがアナルを明け渡してからは、男達のケンカはさらに酷くなった。
 誰もが待てないと我先に群がる。
 奪い、押し退け、僅かでも刺激が貰えるところを探して、ミズサを使う。
 手や足の関節を使えればまだマシだ。それだけ男達の人数は多く、ミズサが身動ぐだけでその欲情は果てることなく込み上げて、のしかかってくる。
 全身余すところ無くかけられた精液は、最初はねっとりと液溜まりを作るほどに濃かったけれど。それが、薄くなっても男達は止まらない。口から滴り落ちる涎混じりの白濁は、ミズサの顔を汚し、赤く熟れた乳首を淫らに汚している。
「うっ、あぁぁっ」
 ぷくりと膨れあがった乳首を鈴口に突っ込まれて。つぶれた乳首からの快感をさらに欲して、ペニスに胸を押しつける。
 ミズサのペニスも今はもう萎えたままだ。
 珍しく戒められることなく使われたせいで、もう何度も射精しまくっている。
 けれど、まだまだ男達は飽きていない。
 特にアナルや口を使った者達は、あまりに呆気なく射精するモノも多く、体よりも心が物足りないと、すぐに次をしようとする。
 だが、一回使えば交替の掟は自然に決まっていて、そうなれば残りの場所をと群がるけれど、そこも待ち人が多い。使っている連中を見ていると焦れてくるのか、ただ肌に擦り付けるだけの者も出てくる始末で。
 そんな肌への刺激だけでも、ミズサはあえかな嬌声を上げて身悶えるから、また男達は欲情する。
 そんな繰り返しで、もう何時間も経っているのに、一向にミズサが解放される様子は見られなかった。

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