【四つの王国と魔王の話】第一章〝北の国〟ー6(完)

【四つの王国と魔王の話】第一章〝北の国〟ー6(完)


 狭い道を限界近い太さのモノで押し広げ、張ったエラでごりごりと肉壁を抉るような抽挿を繰り返し、今にも吐き出したい欲求を堪えに堪えること数度。興奮が最高潮になった瞬間に、すべてをさらけ出す。
「お、おおっ」
 低く喉の奥で唸り、一気に広がった快感に硬直した全身を痙攣させる。掴んだ肉は指先の形に食い込み、誘われるようにそのうなじに噛みいた。届く悲鳴すら耳に心地よく、脳が蕩ける快感に心身すべてを浸らせる。
 狭い肉の壺に広がる熱い液体が己の子種だと、そう考えるだけで得も言われぬ快感を味わった。
 それは過去味わったどの身体とも違う感覚で、嶺炎はすぐにシュリオの身体に夢中になった。
 淡い金の髪は絹糸のように細く、汗で濡れた背に絡みついている。紅潮した身体はいたるところに嶺炎が付けた痕が残っていた。
 吸い付いた痕だけでなく、青あざになった指の痕もあり、その中で最後に噛みついた歯形が一番深い傷となっている。
 その傷を付けた自分の歯を、嶺炎はそっと舌先で辿った。いつもより犬歯が鋭く刺激してくる。
 どこか獣じみた欲情が嶺炎を支配していた、捕らえた獲物を喰らい尽くしたいと魂の奥底が叫んでいる。
「まだ……」
 いまだ体内に埋め込んだままの魔羅は、次の放出を求めていた。呼吸が荒くなるほどの快感の余韻がいまだ続いているのに、欲する身体が止められない。
 嶺炎は手を伸ばして、力なく伏したシュリオの髪を掴み引き寄せた。
「い、たい……」
 掠れた声が訴え、寝台についた手が一つ、逆らうように嶺炎に伸びる。その手を払い落として、腕を前に回してその身体を抱き寄せた。
「しばらくこれを使ってよいか?」
 身体を起こしたときに視界に入った二人に問えば、かまわないとばかりに頷かれた。カストにいたっては新しい潤滑剤の瓶を渡してきて、今度は仄かに橙の色が入っている。
「ミントの匂いがします。ラベルには『刺激のある一夜を』という文言が」
 見せられても読めぬ字に首を傾げれば、「古代語です、今のように四つの国に別れる前にあった国が使用していた言語ですね」
 博識ぶりを発揮するカストの説明に、言語の知識も一応ある嶺炎は舌を巻いた。古代語はその複雑さから学ぶにしても難しいのだ。
「刺激のある一夜か、どういう意味か?」
「さあ、さすがにそこまでは。ただここにあるのはすべて魔具だと考えれば、これも何かの隠喩かもしれませんね」
 頷き、その瓶の蓋を開けてもらう。
「どちらに?」
「もちろんこの穴だろう」
 問われるままに答えれば、ユーリアが手助けだとばかりにシュリオの前に回ってその両脚を大きく割り広げた。とたんにバランスの失った身体の重みが一気に嶺炎の股間へとのしかかる。
「い、ああっ!!」
 背面座位となったせいで、シュリオは自身の重みで嶺炎のそれをさらに深く飲み込んだ。
 もはや奥の洞はすっかりと嶺炎のものに馴染んでいたが、それでもさらに奥へと入り込む刺激は堪らないもののようだった。
「カスト殿、どうぞ」
「い、あぁぁっ! やめっ! 触らないでぇぇっ!
 全開となった股間の枷に戒められたままの魔羅を持ち上げられて、今度は激しく身悶える。
 白みを帯びた粘液が泡立ち溢れ、しとどに先端を濡らしてはいるが、嫌だと暴れているにもかかわらずそこに完全に勃起したままだ。自由度の低い枷のせいで、動かす度にそれが激しく食い込んでいる。
「いやらしく涎を垂らして、潤滑剤など要らぬほどにここを濡らしておるようで」
「はて、嶺炎殿下のものですでに目いっぱい、このままで入りませんね」
「先端が細い口を取り付けて隙間から入れよう。ほら、指先ぐらいならまだ入る」
「やっ、痛いっ、広げるなっ、ああっ!」
 ユーリアが押し広げるようにして隙間を作り、人差し指を入れていく。
 じりじりと指の先の関節まで入ったところで、カストが細い注ぎ口をその隙間へと潜り込ませた。
 だが逆さにした瓶の中身は入っていかない。
 嶺炎もシュリオの身体を抱え直して、ユーリオたちの助けになるようにと少しだけ身体を持ち上げたりとやってみるが、それでなくともみっちりと埋め尽くしているせいか、奥まで隙間ができないようだ。
「そうですねえ、せめてこの瓶が皮袋のように柔らければ押し込むことができるんでしょうが」
 カストが嘆息と共に呟いた直後、「あ」と驚愕の声を続けた。
「どうした?」
「瓶が柔らかくなりました」
 ぐじゅっと液が流れる感触が魔羅にも伝わってくる。
「あっ、も、入んない……ひゃん、冷たいっ!」
 冷たくはないはずの液体が、奥に入り込むにつけてひんやりとした冷気を伝えてくる。
 たちまち届いた清涼感のある匂いは、確かに香辛料でもあるミント系のものだ。飲み物に清涼感を与えるのに使用されるそれの効能は確か。
「なるほど、これは刺激的な一夜になりそうだ」
「やっ、何? 今度は熱いっ、いやだ、これっ」
 ひんやりとした液体が、肉に触れるたびに今度は熱くなる。ちりちりとした刺激すら感じるそれにじっとしていられずに、嶺炎は腰を揺らめかせた。
「いやっ、抜いてくれっ! これ熱い、なんか変な感じが……っ、あうっ」
「そんなにか? まあ多少はヒリヒリした感じがないわけではないが」
「な、かムズムズするっ、奥が熱くて、ヒリヒリして、ムズムズしてっ、厭だ、これ、あ、あぁっ」
 言っているそばからシュリオの身悶える動きが激しくなり、すぐにでも逃れようと前へとずっていく。そんな動きにずるりと抜けそうになって、嶺炎はすぐにその身体を引き留め、抱き締めた。
「ひ、ぁぁっ! 深いの厭だっ、ひぐぅっ」
「俺はこの深いのがいい」
 ちりちりとした刺激だけでなく、身悶えるたびに肉壁が嶺炎の魔羅全体を締め付けて堪らない。動かずとも昇天しそうなほどの気持ちよさに、唸りながら「動くな」と叱咤した。
 だが刺激が強く過ぎるのか、その言葉も耳に入っていないようだ。
「これは意識が自分の身体にばかりいっているようですね、何か別の刺激を加えればいいでしょう」
 呆れたようにユーリアが呟き、カストへと視線を向けた。
「カスト殿、その棚に装飾具のようなものがありますか?」
「装飾具……耳飾りでしょうか、ああ、これは……」
 物色しながら取り出したのは、指先でつまめるほどに小さなものだ。嶺炎にも見慣れたそれは、耳たぶに穴を開けて使うものだ。
「針は?」
「準備されています」
 銀の皿に入れられていのは太い針と刺激臭のする液体に浸かった布。そこに〝南の国〟の朱雀に似た鳥の姿がぶら下がる釣り針状の金具を持つ耳飾りが添えられた。
「これの耳に着けるのか?」
 多少なりとも痛みが刺激となって意識を呼び起こさせるのかと納得しかけた嶺炎だったが、「いいえ」とユーリアが首を振るのに、その手の動きを追った。
「嶺炎殿下はその淫乱をしっかりと抑えておいてくださいませ」
 その言葉が耳に届くか届かないか。躊躇いもないユーリアの手によってその針が刺されたのは、シュリオの右の乳首だった。
 そんなところへと目を剥いた嶺炎だったが、カストが平然と流れる血を拭き取る姿に、そんなものなのかと納得する。もっとも悲鳴すら上げずに硬直したシュリオからの刺激に耐えるほうに気を取られてたいたというのもあったのだが。
 続く刺激に喉の奥で出かけた声を飲み込めたのは幸いで、放出の余韻に固く目を瞑って絶え入る嶺炎の耳に、シュリオの悲鳴が届く。
「ひぎぃぃっ!! 痛い、痛いぃっ!!」
 ふふと小さく笑いながらぐりぐりと乱暴な手つきでユーリアがシュリオの乳首に、針より太い釣り針状の部分を取り付けていたのだ。
 痛みに震える身体は締まり痛いほどに嶺炎の魔羅を締め付けてくれて、呆気ない二度目にこっそりとほぞを噛んだ。
「淫乱にはよく似合う」
「いや、許して……こんなの……」
 ユーリオが指先でぶら下がる鳥の飾りを揺らせば、痛み硬直する身体が嶺炎のものを強く締め付ける。さすがにすぐには暴発しないが、それでもなんとか意識をそこから逸らすように嶺炎もその飾りをシュリオの肩越しにのぞきこんだ。
 釣り針のようだと思ったのは先端に返しが付いているからだ。右から左に通った先は太い返しのせいで、今度抜くときは流血沙汰になるのは容易に想像ができる。その反対側は乳首の真下へと伸びていて、ぶら下がるのは両翼を広げた朱雀だ。
「こちらは傷薬のようです。使えば即座に傷が治ると書いてあります」
 やはり古代語を読み取ったカストが差し出してきた薬が塗られた。
「やあぁぁっ、痛い、染みるぅっ!」
「暴れるなっ!」
 慌てて押さえつけてはみるが、涙を飛ばして髪を振り乱すシュリオは聞いてはいない。
 もっとも傷口に染みるのはしばらく待てば治まるもので、すぐに落ち着いてはくれたのだが。
「なるほど、これはいい。我が国に持ち帰りたいぐらいだ」
 確かに傷薬の効能は確かで、出血は止まり、めくれ上がった肉肉しい色合いも薄皮を被って目立たなくなっていた。
「お願、い……もう、もう痛いのは嫌だ……」
 それでも明らかに傷を付けられてシュリオの反抗心は潰えたのか、必死になって目の前にいるユーリオに懇願を始めた。何しろ目の前の皿にはもう一つ、左用の朱雀の飾りが置かれているのだ。
 恐怖が滲んだ表情は、その横顔からも窺える。
「だったら我らの命令は絶対服従だ」
「は、はいっ!」
 冷たい言葉にシュリオが逆らえるはずもなかった。冷たい環境にいたとしても、肉体的な痛みを与えることは少なかったはずだ。いくつかある小なものは幼少期のものだとしか思えず、この肉体にはひどい傷痕はない。傷ができない程度には何かをされたとしても、それでも敏感に腫れた場所を貫かれる行為は段違いの痛みと恐怖だろう。
 剣で切られた記憶がある嶺炎やユーリオはともかく、シュリオは血を流す恐怖にも耐えられないようだった。
 もっとも文官であるカストも同様だろうが、彼は嬉々として傷口を見ているほどだ。彼の知的好奇心は尽きぬらしい。
「左はしないのですか……」
 などと残念そうな彼の言葉に、シュリオが頬を引きつらせる。
「次に逆らえば左を着ける」
 酷薄さを滲ませて嗤うユーリアの姿は彼の本性なのだろうか。
 ならば魔王の人選はまさしく適切だったと言えるだろう。カストの知識しかり、ユーリアの行為しかり。
 ならば自分は、と嶺炎は自身を顧みた。
「この尽きぬ欲望がその一つか」
 シュリオの痴態も涙も声も、今は何もかもが嶺炎の欲を誘う。
 二度目の暴発など無かったように痛いほどに張り詰めている魔羅の存在。ウマナミだと評される巨根は受け入れる側がつらいと知っているが、それでもこの欲望に思いつくままに犯し尽くしたいという強い欲望は、目の前のシュリオを貪り尽くしたくて堪らずらず、特に先ほど血を流した姿にひどく興奮していた。
 犬歯が牙のように感じ、今身体中に突き立てたいと獣染みた欲求も強い。
 いまだかつて経験したことのないこの衝動は、ずっと自分の中にあったものだろうか?
「シュリオ、腰だけを高く上げて、両手で尻を割り開け」
 入ったままの状態で命令する。そこに混じる愉悦が強い。
「は、はい……」
 痛みの記憶に、シュリオは頷く。
 おずおずと身体を前に倒そうとして、いまだ入ったままなのに気がついたように後ろを振り返った。
 それに言葉はかけない。ユーリアたちも様子見をしているだけだ。