【皇王陛下の優雅な企み】

【皇王陛下の優雅な企み】


皇王陛下の優雅な企み
 ※愛玩奴隷、騎乗位、従順  最後の企みは好みがわかれるかも、です。

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 余は皇国十二代皇王であり、初代皇王と近い力を持つ「先祖返り」である。
 そのことを否定する者はこの皇国にはおらぬし、おるはずもない。余を目にする者は、民の中にある血が初代の力を感じ、本能的にその力を感じるが故にだ。もっとも余は余であり、これが余の普通でしかない。たとえ民にはない屈強な体躯、長い寿命、人には畏敬でしかない力を持っていようともだ。
 だがこれは余だけのことではなく、余と同じ血の流れをくむ皇国の直系皇族――は何かしらの祖の力が発現しており、だからこそこの国の安寧は護られていると言えよう。
 我らが祖、この世界においては畏怖の感情と共にその名を呼ばれる魔族が一人『妖鬼王』の子である初代皇王の御力は薄れているとはいえ、人の身でしかない他国が抗えるものではなのだ。
 だが魔族からすれば魔族と人の混血は弱者でしかない。しかも人の生しか持たぬ我らは幾つもの代替わりを経ておるがために、先祖返りを果たせなかった皇族の血は人と変わらない。故に、妖鬼王の血を受け継ぐからというおごりなどは一切なかった。実際永い刻を生きる妖鬼王が統治する人の国は海を挟んだ大陸にあって、今も年に一度交易をしている関係ではあるが、縁戚関係など振りかざすことすらできぬ。余もいまだかの王にまみえたことはないが、それが幸いと言うべきことだということは理解している。
 だがそれでも、余の祖が妖鬼王であることは紛うことなき事実であり、先祖返りを果たした余は、皇国の民より頭一つ分以上高長身で筋肉は肥大、体力、筋力、知力などは比べるまでもなく、剣技等戦闘能力が高い。そしてまたそれに付随するように、魔族特有の尋常ならざるほどの性欲もまた発現していた。
 だがこの性欲、人の中で暮らす身にはかなり面倒なもの。
 もちろん性欲を発散することは厭うどころか、快楽は余の無聊を慰めるものでもあるから、我慢するという選択肢は欠片もない。
 しかも毎夜とは言わないまでも性欲解消をしないと、苛つきが増し、かなり攻撃的になってしまうから、発散しないなど考えられないのだ。苛つく余が失態をした官僚にどのような折檻を浴びせてしまったか、我に返った余ですら後始末に苦悩したほど。国の為なら清濁併せ呑むつもりである余であっても、性的欲求不満により理性のたがが外れるのは論外ということだ。
 ならば汗をかいて発散しようとして騎士団員と稽古をつければ手酷く痛めつけてしまい、青筋を立てた騎士団長に稽古場への出入り禁止を言い渡される。仕方なく執務室にいれば、地図を眺めて隣国に攻め入る算段を本気で考え込み、顔を強張らせた宰相に指摘され、物理的に頭も身体も冷やすはめになった。
 自ら国の安寧を壊し、民を傷つけるなどあってはならぬことだと重々承知はしているが、頑強な理性をもってしても余の性欲は年々強くなる始末。しかも比例するがごとく嗜虐性までもが強くなり、一度の逢瀬で相手を瀕死にまで追いやるとなっては、もはやうかつな相手も選べない。もとより我が妃では相手にならぬことは明白だった。
 現在余は、過去同様に悩み抜いた先祖を興した施策により、その膨大な性欲の一部を日々解消しているが、どうにも余の性欲は強すぎて、すべてが解消できてはいなかった。
 しかもおおっぴらに公表できる施策でなく、知っているのは信頼の置ける上位貴族のみだ。何しろ元が犯罪者とは言え、犯罪奴隷に落ちた者の中で体力のある若者や見目の良い者など皇族の眼鏡にかなう者を後宮に集め、性奴隷として使いつぶすというものなのだから。それでも罪なき無辜の民を使うことを思えば合理的だと言えよう。
 幸いと喜ぶには施政者たる余には口元が引き攣るものがあるが、皇国における犯罪者の数は充分で、足りなくなったことはない。
 だが、最近の余は、犯罪奴隷を使っても満足しきれないことが続いていた。おかげで昼間の政務も滞るようになっていったのだ。数時間おきに暴れそうになって、水風呂に入って身体を冷ますのは心身ともにつらい。
 特に有能な公爵家当主を宰相に据えた以降、なぜか仕事量は増大して余計に精神的な負担が増えていた。彼もまた先祖返りをしており、知力面で非常に優れているのは確か。しかも湧き上がる性欲すらも仕事で解消しようと仕事を増やす質で、深夜、鬼気迫ったあやつには余ですら何も言えないほど。彼に仕える政務官のすべてを諦めた顔を見ていると、余の解消しきれなかった性欲もかなり落ち着くのは不幸中の幸い――いや、確かに皇国における無駄は削減されて、財政も好転しているとは聞いているし、宰相立案の福祉政策とやらが功を奏して孤児や浮浪者が減り、治安が良くなったあげくに犯罪者が減ったのは、それは……喜ばしいことであるのだ。
 しかしこの激務に余の精神的負担は倍増し、そのせいか性欲が増大し、後宮通いと水風呂の回数も増えていき――余は、皇太子を矢面に出すことにした。
 これも次期皇王としての勉強として仕方がないことであるが、時折宰相が訪れたあやつの執務室から悲鳴のような雄叫びが聞こえてくるのは、すまぬとしか言いようがない。


 そんな日々の中、余も含め強い先祖返りを持つ者は、栄える皇国の様子を喜びながらもなんともなしに憂いた気分で過ごしていたのだが。
 余は、ある日、たいそう相性の良い奴隷を手に入れることができたのだ。
 その奴隷を手に入れてから、余の体調はすこぶるつきで良い。今も、面倒な会議も終わり、後宮に戻る余の足の動きは速かった。
 後宮にある余の館の玄関ホールに一歩足を踏み入れれば、可愛く待っている私の奴隷――そう私のお気に入りの奴隷が出迎えてくれているのだ。
「ただいま」
 声をかければ、肩幅まで足を広げて腰を深く下ろし、両手をその前についたまま見上げて麗しい笑みを見せてくれた。
 侍従が頭を下げる横で、余のお気に入りも背を丸めて床に着くほど頭を下げ、必然的に尻があがり、背中ごしにふさふさの尻尾が揺れているのが見える。
「今日の趣向は獣か?」
 侍従に問えば、さようでございます、と首是される。
「そうか、では来いクォード」
 余のお気に入りとなった記念につけた名を呼べば、ワンと答えてすり寄ってきた。侍従から引き綱を受け取ると、余は急くままに足を止めることなく寝室へと向かう。短い引き綱は階段でピンと伸びるが、賢いクォードは余に負荷をかけることはなかった。
 四つん這いで器用に駆け上がるクォードは慣れたもので、尻を上下左右に振り、尻尾が揺らして余を和ませながら付いてくる。
 奴隷に成り立てだった一年前は、首が絞まるほどに引き綱を引っ張りずいぶんと余に手間をかけさせたというのに。苦しさ故か涙を流していたあのときのクォードは、今では尻尾付き淫具がお気に入りで、下腹部ではそそり立つ陰茎から涎を垂らしながら喜んで付いてくる。
 階段を上がりきったところでいったん立ち止まると、私に寄り添うようにお座りをし、彼の砂色の髪をかき乱すように撫でてやれば、目を閉じて気持ちよさそうにワンと鳴く。
 ふさふさの尻尾は、もともと長めだったこのお気に入りの髪を切って作り上げたものだ。何度も伸ばしては切ってを繰り返してようやく完成したもので、その出来栄えは本物と変わりない。
 クーンと鳴きながら私を見上げる瞳は赤味を帯びた煉瓦色で、天井の照明がその中で瞬き、その煌めきを見ていると、余とクォードが出会った夜会のときを思い出させた。彼を、そういう意味で意識したある春の宴の夜会のときだ。
 あれからもう十六、七年ばかり経っているだろうか。
 あの夜も春の宴の季節らしく、外では闇の中に浮かぶ月が煌めき、その静かな光に照らされて淡い桃色の花が昼間よりも可憐に、だがどこか幽玄とも言える雰囲気で満開の花びらを散らしていた。風が吹けば軽い花びらは舞い散り、時折会場である室内にも舞い込んでくる。その花びらが持っているグラスに舞い降りれば、幸いがあると言われており、時に会場の中ではそんな喜びの声が溢れていた。
 だからか、余も舞い込んできた花びらに視線を取られていたのだろうか。その花びらがグラスではなく砂色の髪に降り、彼がふっと顔を上げたそのとき、余は確かに彼をそういう目で見てしまったのだ。
 下腹部を貫く疼きに持っていたグラスの酒面が揺れた。喉の奥が獣のようにうなり声を上げそうになるのをかろうじて堪える。目眩にも似た酩酊感が、この程度では酔わないはずの身体を襲った。
 あれは……と余の頭が彼の素性を記憶から探り始めると同時に思い出す。
 過去幾度か、宴の中で出会った元貴族であったクォードを意識したことはなかったが、余との年齢差以上に若々しさを持ったままの端正な顔立ちと皇国では珍しい砂色の髪が印象には残っていた。
 だが余は、少なくとも貴族位である者をその用途にて召し上げることはなかったし、するつもりもなかった。いや確かにあの日まで、余は家臣をその目で見ないように自制を働かせていたのだ。
 だがあのとき、花びらに導かれるように彼の姿を目にしたとたん、余は彼から目が離せなくなったのだ。
 夜を徹して行われる春の宴で、白い装束を身にまとった彼は、熱気に当てられていたのか、飲み過ぎたのか、上気した頬を見せて月夜の下で夜風に当たっていた。
 月明かりに照らされた砂色の髪が美しく輝き、煉瓦色の瞳がロウソクの灯りできらめき、愁いを帯びた表情が余の欲を誘う。
 確かあれは彼が男爵家に継いだばかりのころか。
 なぜか彼のことが気になった余は、あれからその理由を調べ続けた。
 なぜ彼に強く反応したか、単なる好みの容姿だったからか、それとも何か引き合うものがあるのか。
 他にも似たような容姿の者はいる。彼より余の好みである姿形を持っていたり、妖艶に誘ってくる女性もいた。だが誰が相手であっても、彼ほど強く欲をそそられない。
 疲労故に欲望が勝ったとき、一番に考えるのは彼のこと。いや、あれは駄目だと頭を振ったことはもう数え切れない。幸いに下位貴族故に出会うのは宴でしかなく、それ以上余の欲を煽らなかった。
 実のところ、事情を知る者には召し上げて側室にしてはとも言われたが、娘ならともかく貴族の男を側室にするにはいろいろと問題がある。まして彼はすでに結婚をし、先だって嫡男が産まれたところだ。
 いくら余が皇王とはいえ、いや、皇王だからこそ、できぬことであった。
 だがやはり性欲が溜まってくるとあの砂色の髪が脳裏にちらつき、煉瓦色の瞳を再度目にしたいと願う余がそこにいた。
 ああ、余が欲するのはあの色合い。あの髪をこの指でかき回し、その瞳に口付け、欲に満ち満ちた瞳の中に余を写させたい。
 もしあの色合いの娘がいれば、身代わりでもいい、城仕えさせてそのまま側室に上げさせても。
 思わず彼の親族を遠いつながりまでしらみつぶしに探させもしたのだが、結局彼とその子以外その色を持つ者はいなかった。
 考えてみれば、家臣、騎士、一般の民の中であのような色合いを私は見たことがあるだろうか?
 砂色の髪はまだあるかもしれない。だが、煉瓦色の瞳は確かに見たことがないし、その組み合わせとなると誰一人いない。
 この皇国には時折父とも母とも違う色合いの子が生まれ、色が違うことが不義の証にはならない風潮があった。それは民にも先祖返りという知識があるせいだ。皇族のように力を受け継ぐわけでなく、ただはるか遠い祖先の色を受け継ぐ者でしかない彼ら。
 彼もそういう者なのだろうか。ならば余の血の中に、彼の色を気にする何かがあるのかもしれない。
 そんな仮定が思い浮かび調べてみたところ、確かに我が皇国の創始者たる初代皇王最愛の愛妾の一人がこの色の組み合わせだったと文献に残っていた。
 ならば、彼はきっとその愛妾と同じ一族の血をどこかで引いており、だからこそ余が反応してしまったのかもしれない。
 だが、位の低い男爵であっても、そのころの余はまだ彼をどうこうしようという気にはならなかった。というより、自制をしていたというか。
 幸いにそのころはまだ奴隷相手で解消できていたから、彼に無理強いをすることは考えていなかった。
 だが、そんな皇族と砂色の髪と煉瓦色の瞳の関係性について研究が進んだころ、余は我が子が彼に反応したのに気が付いたのだった。しかも性的にだ。
 通常より早い性への目覚めは、先祖返りの性だ。だからこそ、他の誰もそのことに気が付かなかったし、皇太子の知識もこれが性欲かと、ただそう思ったに過ぎない。
 幸いにその場に余がいたことで、彼らを引き離すことに成功し、当時のクォードにも皇太子にも何も気付かれずに済んだのだが。
 余としては、むざむざ彼を皇太子に与える気はない。だが、余と同様の強さを持つ皇太子がいずれ奪いに来ることも充分に考えられる。それほどまでに彼の色合いは余達を欲に惑わせる。
 となれば。
 あの色合いの者を増やす必要がある。
 その時、余の頭の中にあったのはそのことだけであり、彼が同じ色合いを持つ二人目の子をもうけたのはすぐだった。


 年を経るにつれ、余の性欲は若かりし頃を上回っていく。
 それこそが初代の先祖返りにふさわしいとは言われるが、それを解消する手立ては年々難しくなっていた。
 屈強な理性という鎧に包まれた欲は、今にもはち切れそうなほどに育っている。
 そんな余に、書庫の奥から発見された文献が司書から手渡されたのは、偶然か必然か。
 建国のころに記されたかなり古い文献を読み解いていく先で、余の目はある場所で止まった。
『妖鬼王の強欲と言えるほどの性欲を解消しながらも生き延びることが可能な希有なる存在がある。その特徴は、砂色の髪と煉瓦色の瞳であり、彼らは淫魔の血を引く者であると言われている』
 余の手は震え、何度もその場所を読み返した。
 再度古い皇族の記録を研究し直せば、初期のころには何度もその色合いの者が愛妾や夜の側仕えとして召し抱えられていたことがわかった。それはたいてい男で、髪と瞳の色は皆同じ。
 だが召し抱え続けた結果、次第に皇国ではその希有な色合いの者は見つけられなくなったらしい。その意味も、なぜに彼らを集める必要があったのかも含めて消えていき、残ったのはその打開策としての犯罪奴隷の仕組みだった。
 ならば「犯罪奴隷の後宮への登用は、その色を持つ者の代わりだ」という仮説が信憑性を持って成り立っていく。
 貴族にも貸す犯罪奴隷は、そう考えればただの性奴隷としての扱い。
 本来皇族が欲してやまないのはその色を持つ者たちなのではないか。
 その途端、彼の姿が狂おしいほどの激情と共に脳裏に甦る。
 欲しい、あれが欲しい――と。
 全身が皮一枚でできた袋のように感じた。埋め尽くすのは強烈な餓え、その欲に煽られるように発情する。
 たぶんもう限界が来ている。その存在を知ってなお我慢し続けることはもう余には限界なのだと。
 だから余は、余に次ぐ先祖返りの力を持つ皇太子と、血族である宰相に話を持ちかけた。彼らをその目に映させ、知り得た情報を渡していく。
 類い希なる知力の宰相はすぐに余の言葉の意味を察し、皇太子は言葉よりもその本能でその意味を理解したようだ。
 強い視線が三人の親子に向き、反応したように彼らの視線が余らへと向けられる。
 煉瓦色の瞳が大きく見開かれて、すぐに敬意を持って伏せられた。その瞳の色が見えぬことがどんなに惜しいと思ったか。
 親の動きに二人の子も気が付いて、こちらに視線を向けた。
 同じ色の瞳が驚きを持って余らを見る。傍らで皇太子が強く拳を握ったのがわかった。ごくりと宰相の喉が音もなく動く。
 余の理性もまたその時、柔らかな果実のように握りつぶされ、恋に狂った若者のように欲だけが表に出そうになった。すでに齢五十を迎えたこの身体でさえ彼を求めて唾液を溢れさせそうになったほどに。
 だからこそ。
「頼む」
 立場がある故にめったに口にせぬ言葉を、余は意識するより先に発していた。
 その言葉に、宰相が頷かざるを得ないとわかってはいても、止めることなどできなかった。
 


 公爵の奸計は大したもので、まず男爵が私の手の中に落ち、それから一年後兄弟がそれぞれの手に落ちた。
 皇太子は焦れてかなりせっついていたが、公爵はあれで被虐趣味でもあるのかその焦れったさも楽しんでいたようだ。いや、いきなり父親が失踪、思いも寄らぬ借金の返済と心労にやつれていく様を見て楽しんでいたようであったから、あれはあれで嗜虐趣味の一貫だとも言えるか。
 もっとも余も同罪であるが故に、彼らの所業には苦言を呈することもできぬ。
 一年前、クォードを犯罪者としてひそかに捕らえ処罰して、誰も知らぬうちに犯罪奴隷として後宮の施設に入れた後は、我が館から出したことはなかった。
 見覚えのないことに戸惑い、処罰されることに抗う彼を目の前にして、余の理性は柔らかな果実のように潰れ、締め付けられていた性欲が一気に膨れ上がる。
 余の寝室につながれた哀れな贄は、余の力でその身を守る衣を一裂きで奪われ、白い肌に指の跡を残すほどに押さえつけられ、無垢なる後孔を余が剛直で貫かれた。
 響き渡る悲鳴は余の荒ぶる心には心地よく、乱れ散る赤き鮮血は芳醇な酒よりも余を酩酊させるほどに芳しい香りを放っていた。
「素晴らしい、この熱、この締まり、この動き。余の物を受け入れてなお、貪欲に余を欲するか」
「んぐ、ぁぁっ、ぎっ、ひぃぃぃっ!!」
 理性を失った余にとって、目の前の彼は欲を解消する肉の塊でしかなかった。尻たぶに爪痕を残すほどにつかみ、もみあげ、狭い肉で余のモノを締め付けさせる。
 それは彼にとって苦痛の一時だったろう。その痛ましさすら余には愛おしく、背後から抱きしめながら泣き喚く彼の頬に舌を這わし、その甘美たる涙を啜った。
 息も絶え絶えの彼の中は、青ざめた肌に反して熱く、いまだかつてないほどに余を快感に浸らせる。
 なるほど、確かにこれは先祖が欲してやまないはずだと、かつてない快感に余の心は歓喜した。
 何度も何度も、余の剛直をすべて飲み込むクォード。いや、このときはまだ他の名前があったはずだが、もうそんな無駄な記憶は余にはない。
 しかもクォード自身、最初から余のモノをすべて飲み込み、なおかつ次第に余の突き上げに慣れてきたのだ。
 痛みに苦しむ声に次第に甘いものが混じり始めていく。破瓜により血塗られた箇所からは、次第に透明な液が溢れ出し、きつかった穴がほころび、食むように余を奥へと迎え入れていった。
「あ、ぁぁ、こんなぁぁ……なんで、こんな……」
 自身も何が起きたかわからぬのか、戸惑いの色が喘ぎ声に混じっている。
「そなたの身体は余に犯されるためにあるのだよ。皇王たる余の、先祖返りの力を持つこの余のモノを慰めるための身体よ」
「あ、ぁぁっ、そんなっ、ぁぁひぃぃぃっ!」
 強く突き上げてやれば、どくんと余に響くほどに震えて硬直した。見開いた瞳は焦点があっておらず、きゅうきゅうと締め付ける肉が彼の絶頂を教えてくる。衝動のあまり握りしめるのは余の腕。絶頂のすさまじさに舌を口からはみ出させ、跳ねるように痙攣し続ける。
「これは、まさに余のためにある身体よ」
 初めて余のモノを受け入れて、尻で絶頂を迎えた者など初めてであった。しかも、その間も余のモノを貪欲に食み、搾り取ろうとしておるのだ。
「欲しいならくれてやろうぞ」
 我慢する気など毛頭ない余の陰茎から、たっぷりとした量の精液が放出される。背筋を這い上がる射精の快感は凄まじく、余は天を見あげ咆哮を上げた。
「いい、いいぞ、こんなに素晴らしいとはっ、なぜに余は長い間我慢したのだっ、こんな身体、一度味わったらもう二度と手放せぬ」
 過去使った奴隷が塵芥の淫具にしか思えなかった。
 温かな身体を持つ淫具ではあったが、余にこれほどまでの快感を与えることはなく、どこか義務のように放出していたものだ。だがクォードの身体は非になるものであった。
 これは神が余に与えた唯一のモノ、そうとしか思えないほどに、意識が飛ぶような快感に満たされる。それがずっと、普通よりもはるかに長い射精の間続くのだ。
 しかも最初より強く、けれどやわやわと絞るように蠢く肉が、次の射精を促してくる。もっとくれとばかりに余を煽り、余の欲をかき立てていく。
「おお、まだ欲しいか、ならばくれてやろう。そなたを手にするまでずっと待ち望んでいた余も、まだまだ満足などしておらぬからな」
 目の前に伏した身体を抱き寄せて、その翼の痕のような肩甲骨に口付ける。
 地上に降りた神の使いのような痕、そこに赤い跡を残し、ねっとりと舐め上げれば、ぶるりと身体が震えた。
「あ……こ、お……様」
 掠れた声が余を呼ぶ。その期待に応えてやらねばならないだろう。
 余の身体は再び彼を寝台に押しつけて。
「まっ、駄目ぇぇっ、ぎ、ふっかっ、太っ、ぁぁぃぃぃっっ!」
 妙なる調べを室内に響かせ、余はその身体をその日一昼夜、堪能し尽くしたのだ。