【癒しの人生】 シオン編

【癒しの人生】 シオン編



「謁見の間からずいぶんと時間がかかったが、ようやくシオンに会いにこれたな。ふふ、可愛らしい寝顔だ」
「ようやく身体が我に馴染みましたが、まだまだですよ」
 まどろみの中、すぐ傍で行われた会話に意識が急速に戻ってきた。身体がひどく怠く、指先一つ動かせない。特に腰から下の感覚がなくて、鈍い痛みがひっきりなしに襲っていて、無意識のうちに唸り声を上げていたようだった。
「おや、目覚めたか」
「そのようですね、シオン、起きなさい」
 言葉とともに頬に痛みが襲った。軽い音はそれほど強くなかったが、意識の覚醒には十分で。しかもその痛みが記憶を揺り動かした。
「ひっ!」
 自分が何をされていたか、苦痛を与えた相手が私の髪を掴み、顔を無理に上げさせている状況に、身動ぐこともできずに怯えた。
「いつまで惰眠を貪っている。父王様のお目見えだ。起きて挨拶なさいっ」
 叱責の声音に、身体が恐怖に震える。挨拶と言われて口が開くが、喉が音を発しない。無様に何度も開閉させた口は、閉じることできずに口角から涎を垂らす始末。
「是羅、そのように声高に叱りつけるでない。ほら、怯えているではないか」
 陛下の手が是羅様から私の身体を受け取り、抱き締めてくる。大きな身体は是羅様と変わらず、私をすっぽりと覆い尽くすほどだ。
 恐怖は幾分か冷めたのだが、それでも鬼躯国の王に抱かれている状況に別の意味で硬直して動けない。これでも雛嶺国の王子として他国の王と謁見することあったというのに、礼儀作法などが頭から飛んでしまっていた。
「シオン、一週間ぶりだが息災で何よりだ」
「い……しゅ、かん?」
 そんなに時間が経ったのだろうか。
 記憶にあるのはいつでも是羅様に抱かれている状態だった。それならばもっと疲れていてもおかしくないと思うけれど、確かに身体は怠いがそんなに時間が経ったようには思えない。
「その間是羅にはしっかりと教えてもらったようだね」
 何をと疑問には思ったが、それよりも礼を尽くすほうが先だと、少しでも居住まいを正し、何度も喉を震わせてようようにして言葉を紡ぐ。
「陛下……」
「我が子である故に父と呼んで欲しいと思うのだが?」
「そ、それは……」
 実の息子である是羅様達ならいざ知らず、そのように気さくに呼べるものでなかった。躊躇う私に、王は笑い、「ならば陛下で良いぞ。いずれは父と呼んで欲しいものだが」と恐れ多くも妥協していただいた。
「ありがと……ございます」
 なんとか失礼の無いように身体を離そうとするが、力の入らぬ四肢は身動ぐことすら難しい。しかも今の私は何一つ身に着けておらず、ふと気が付けばねっとりとした体液でまみれていた。
「へ、陛下……お召し物が汚れてしまいますっ」
 すでに豪奢なローブに染みができていた。しかも私に触れた指にも、明らかに陛下のものではない体液が付いてしまっている。動けないまでに慌てる私に、陛下が笑みを零される。
「ふむ、ならばその舌できれいにしてもらおうか」
「えっ、んぐっ」
 いきなりその汚れた指が私の口の中に入ってきた、そのまま上顎を擦られ、ぞくりと肌があわ立つ。
「ちゃんと舌を絡めなさい」
「んぐぅ、うっ」
 二本の太い指が滑り込み、舌を掴み、歯茎を嬲る。驚愕はすぐに明らかな性的な刺激と口の中に広がる生臭い味に惑わされ、吐き出すことも敵わずに呆然と私はその指を受け入れるしかなかった。
 何しろこの指の持ち主は鬼躯国の王、もし彼の不興を買えば、貧しい我が国はどうなることか。そんなことが脳裏によぎってしまえば、もう彼には逆らえない。
 まして。
「ひぐっ」
 ぐちゅっと背後で音がして、込み上げる衝動に意識が囚われる。尻の狭間に触れたものが体内に入ってきていた。それは背を滑り落ちた陛下の指だった。
「よく濡れておる。是羅の魔羅を受け入れてずいぶんと喜んだようだな」
「さようでございます、父王様。シオンは我の魔羅を喜び銜え、尻を振りたくり、抽挿のたびに空イキを繰り返しておりましたよ。そう一週間もの間、起きている時間はずっと我の魔羅を喰い締めておりました」
「ほんとに……一週間も……」
 そんなに時が経ったという感覚はない。何度もイった記憶はあるが下腹の重苦しさは変わらず、解放感はないが、確かに疲れはそれほどでもなかった。
 だが私の問いかける視線は冷たく無視される。何より陛下がそれをさせない。
「あ、やっ、ひぐっ」
 言葉を発しようにも、陛下が口内と体内の指を動かして刺激を与え続けているのだ。
「我ら鬼躯国の魔羅は大きく、他国の者は受け入れがたいことが多い。ましてや王家の身体は民よりも大きい。そのためになかなか受け入れられるものがなかったが、シオンが受け入れてくれるならずいぶんと楽になるな」
「さようですね、別宮にも行けない我ら、しかも後宮(うしろのみや)の妃らだけでは我らの性欲は解消しきれませんし、あまりに交合を行うと子ばかりが増えてしまうという難点が」
「かといってなかなか奥宮で受け入れるような者もおらず困っておったのだが、確かにこのシオンは良い子のようだ。これ、このように愛らしく喘ぐ」
「んんっ、ああっ」
「あまりに善い声で鳴く故に、我の魔羅も張ってきたぞ」
「ご遠慮なくお使いくださいませ」
「ふむ」
 どうして口内を嬲られるだけでこんなにも感じるのか、喘ぎ声は止まらず、身体に力が入らない。後孔に入った指が、尻の中をかき混ぜているのにも逆らえない。是羅様のものを入れていたときのような痛みはなくて、だからか痺れるような快感が背筋を駆け上がっていく。
 背後から淫らな音が鳴り響き、身体が熱く火照っていた。
 そんな私の足に、冷たい手が触れる。ぼおっとしたまま視線を動かせば、是羅様が私の足を抱え上げていた。まるで幼子の排泄を助けるような姿勢だと認識して、羞恥に身体が熱くなる。
 だがそんな恥じらいも、陛下が衣服をかき分けて、その股間から陛下ご自身を取り出すまでだった。
「ひ、いぃぃぃっ」
 是羅様と遜色ない、それよりももっと黒々とした猛々しいもの。
 逃げる間などなかった。もとより是羅様に拘束されている身体は、暴れることもできない。
「や、あぁぁっ!!」
 裂ける。
 先ほどよりも速くぎりぎりと肉を割り開きながら入ってくる巨大なもの。下から内臓が押し上げられて空気が喉から出て行く。目の前がチカチカと光り、激痛に全身が硬直した。
「おお、シオン。そのように美味しそうに頬張られては、余も若い頃に戻ったようだ」
 脇の下に回された力強い手が私の身体を掴む。
 是羅様から渡された身体は、陛下にとってはとても軽いものらしい。
「ひぐっ、あぁぁ、ぎゃっ、はげっ、ああ、激しいっ、ああぁっ」
 スボッズボッと音が響き渡るほどに激しく身体が上下していた。音はもっと下のほうからするのに、体内からも響いている。
 さっきまで是羅様にされていたのと同じことをされて、薄れていた記憶がはっきりと甦ってきた。
 陛下と同じように是羅様にも使われた身体。
 最初は悲鳴だった声はしだいに嬌声となり、逃げようとした身体は縋り付くようになった。
 ああそうだ、こうやって揺すられて激しく抽挿されるたびに私は快感を拾っていたのだ、このように。
 太く熱い杭に貫かれて、私は浅ましくも歓喜の声を上げていた。
 肉を抉られ、多量の体液を浴びせられて、嬉しいと笑っていた。
 自ら手を伸ばし、もっととねだったのは、私だった。
 絶頂の果てに気を飛ばしても、すぐに目覚めて是羅様へ縋り付いた。
「ひぃ、深っ、ああっ、やあ、らめぇっ、ひあぁっ」
 どくんと激しく身体が跳ねた。
 白目を剥いて絶頂を迎えた身体が、天から地に墜ちるまでの間に、私は再び次の快楽に身を委ねた。
 いい、いいっ、もっと。
 記憶に残る私は、何度ねだっただろう。
 見れば寝台の模様も、壁際の花瓶の花も変わっていた。
 そうだ、私はもう何日もここにいる。
 是羅様が満足するまで抱かれ続けた私は、日にちの感覚など失っていたけれど。身体はその間の記憶を持っていた持っていたからこそ、この身体はこんなにも簡単に陛下を受け入れて、快楽にむせび泣く。
 太ももを幾重にも流れ落ちる白濁した体液は、是羅様のものか陛下のものか。
 見下ろした股間にはいきり立ったままの自分のものがあった。
 ああ、出したい……イキたい。
「あ、あっ、おねぎゃい……、おねひゃい、しますっ……イカせて、出したいです……、お願いしみゃすっ!」
「さっきからイキっぱなしのように見えるぞ」
「違うっ、ちぎゃっうぅっ、出したいのお、精液、出したいっ!」
「おや、射精させてもらっていないのかい?」
 ちらりと陛下が是羅様に視線をやる。それに肩を竦めて是羅様が反応する。
「別に禁止はしておりません。ただ是蒼によるとシオンは遅漏だということですよ」
「遅漏? 簡単には射精できぬということか?」
「さあ、詳しいことは」
 そんな会話に、涙を流す。
「ちがっ……そんなこと、ないっ、触らせて、触れさせてくださ、い……」
 過去経験がないわけではない。そのときは普通に射精ができていた。陰茎を擦って自慰も何度もしたことがある。そのときは普通に出せた。
 涙を零ししゃくり上げながら訴えれば陛下がおもむろに私の陰茎へと手を伸ばされた。
「ひぃんっ!」
 亀頭部を太い指が強く押す。大きな掌は私の陰茎をすっぽり覆い、ほかの指が激しくしごく。
「い、ぃぃぃっ! いいよぉ!」
 腰がガクガクと揺れた。尻の中の刺激と前の刺激。二つの刺激がそれぞれの快感を広って絡み合い、尻だけでは味わえなかった快感が全身で感じていた。
「イく、イくうぅっ!」
 膨れ上がった快感は、後孔への挿入で爆発する。溢れた快感は全身を巡り、肌を震わせ、意識を白く染めた。
「あ、あっ……あっ」
 仰け反り、喉を晒して喘いだ。
 麻痺したように感覚がぼやけているのに、快感ばかりをものすごく感じている。
 だけど。
「おや、射精はしていないな」
「そのようで」
 そんな言葉が耳に入り、変わらず感じる重苦しさに気が付いた。気が付いてしまえば、飢餓感にも似た射精衝動が襲ってくる。
「いや……なんで……なんで?」
 見下ろせば、透明な粘液は流しているのに、勃起し震える陰茎はそのままだった。
「なんで……なんでぇ」
「別に構わないだろう、あれだけ盛大に空イキするのだから」
「さようですね。それよりもお忙しい父王様へのご奉仕をしっかり続けなさい」
「あ、あ……でも……」
「ふむ、残念ながらあまり時間が取れぬでな。そなたが射精できないのは是蒼にでも確認させよう。だから今は……」
「ひゃうんっ!」
 寝台に押し倒され、背からのし掛かってくる陛下の重みに悲鳴を上げる。だがそれもすぐに始まった抽挿によって、すぐに快楽の中にと流されていった。