デートの楽しみ 前編

デートの楽しみ 前編

シリーズ「歪んだ絆」の春樹と亮太のデートのお話。
他者による陵辱(挿入無し)シーン有り。服従とお仕置き、言葉責め。春樹への亮太の依存度マックス。
(観梅より前(若干変更ありですが、観梅の中にある過去の喧嘩シーンの一部はこちらに入っています。))




★ 亮太

「どうしたのさ?」
 明るい笑顔と共に伸ばされた手に、思わず縋るようにして手を差し出す。
 ほんの少し先にいる春樹の指先に、亮太の爪先が触れて。宙を舞った手は力無く踊り、揺れた身体が、電流のような激しい刺激にびくりと強張った。
「あっ、……あっ……ぁ」
 溜まらず喘いだ拍子に、口内に溢れた涎が口の端を流れそうになる。虚ろに開いた瞳が映す視界がゆらめき、周りの喧噪がふっと消えた。
 行っちゃう……。
 春樹が……行っちゃう……。
 ただ、置いて行かれたくなくて、早くと頭は急いているのに、肝心の足が動いてくれない。気を抜くと、腰やら膝やらの力が抜けて、この場に座り込んでしまいそうになっていて。
 ほんの少し先の春樹が遠い。
 後もう一歩先に進めば良いのに、足が動かなくて。
 零れそうになる涙に、その姿すら歪んでしまったせいか、一瞬その姿を見失い焦った。
「どうしたの?」
 けれど、次の瞬間、遠いと思った顔が、すぐ横で囁く。
「あ……」
 ぞくりと背筋に走った疼きに、踏み出そうとした足がとまった。
「はやく来ないと置いていくよ?」
「やっ、待ってぇ……」
 通り抜ける春樹の腕にとっさに縋り付いて、なかばしゃくり上げながらお願いする。
「い、一緒に……行くから……ねぇ、ちょっとだけ……待って」
 もう少しだけ。
 ちゃんと身体を動かすから、ちゃんと歩くから……。
「は、るき……と、デート、だから……、俺、歩くから……」
 大学に家の手伝いに、会社での勉強と、亮太より忙しい春樹がせっかく誘ってくれたデートの誘いを、断れるわけが無くて。
 昨晩から明け方まで、動けなくなるほどにたっぷりとセックスしまくった身体であっても、拒絶することなんてできなくかった。というより、したくはなかった。
「ん~、そうか。でも、辛いならもう帰るよ。あと少しでパレードが始まるけどさ。亮太が無理ならさ」
 腕時計を見ながらしかめ面をする春樹は、明日の早朝から学会へ出かけるために出なくてならないので、本当ならこんな時間にデートなんて無理なはずだったのだ。けれど、春樹から行きたいって言ってくれた。
 ここも高藤の系列が経営しているテーマパークで、長い列も渡されたパスであれば待ち時間ゼロで入り放題だった。
 でなければ、昼過ぎまでどうしても起きれなくて、3時からの入園となった亮太達がアトラクションを全部回るなんて無理だっただろう。
 あと少しで閉園時間となり、もうすっかり夜の帳が下りていてライトアップされていないところは沈み込むような闇が見える。
 閉園までいるよと言ってくれた春樹は、忙しいのにほんとに優しいけど、ずっと春樹を一人占めできるなんて、最近ではあまりない。
 こうやって二人で出かけるデートは、同じ家で暮らしていても別物だから、亮太としてはどうしても出かけたかったのだ。
「ん、ごめん……ね」
 ぐずくずと力が入らない膝に力を込めて、傍らの壁に手をついて身体を支える。
「しょうがないな、とりあえずこっちにおいで」
 テーマパークの中で、春樹が亮太の手を取って移動させた先は、人通りも多い通りの店と店の間にある狭い通路だった。
 座って休むための椅子のような小物もあって、亮太達以外にも何人かのグループがそこで休んでいた。
 ただ、やんわりとした灯りが多く、人の顔までははっきりしない。
 そんな場所で、壁に身体を預けた春樹に亮太が寄り添うようにして立って話しかけてくる。
「だから言ったろう? ったく、昨夜の亮太ときたら、何度も何度も可愛く強請ってさ。俺が今日デートがあるからもう止めようって行っても、『抱いて、犯して』っておっきな声で欲しがるから……だから、やり過ぎだって言ったのにさ」
「は、春樹っ」
 ごく普通の声で言われた言葉に、近くで休んでいた男の人がぴくりと顔を上げた。それに気付いた亮太が慌てて春樹を止めたけれど。
「ケツマンコなんて縁が擦れて真っ赤になってるし、乳首もいつも以上に腫れちゃったし」
 春樹は気にもせずに続けて、さらに卑猥な言葉を紡ぎ出す。
 幸いにも、詳しい内容までは判っていないのか、ぼんやりと賑やかな通りへと視線を向けたようで、ホッとしたけれど。
「何、違うって言うのか?」
 途端に声音が低くなった春樹の怒りを感じて、亮太は慌てて首を振った。
「違う、違うよ、そんなことないっ」
 大好きな春樹はいつもは優しいけれど。
 その沸点は以外に低いときがあって、亮太はそれが怖かった。
 今の亮太にとって、春樹が一番大事な人で大好きな恋人だ。それに、今や家族とも疎遠になっているから、春樹に捨てられると亮太はひとりぼっちで。大好きで、頼れる存在である春樹に嫌われたくなくて、亮太は春樹には強く出られない。
「そうだよ、俺が悪いんだ……その……」
「何? 何が悪いんだっけ?」
 問われて……昨夜からもう今日の朝遅くまで行われた事を思い出す。
 最初に『明日のデートがあるから……今日は止めようよ』と言ったのは亮太だけど。
 いつも熟れていて男を欲しがるようになっている亮太の身体は、大好きな春樹に触れられるだけで蕩けてしまう。だから、食事の後の軽いキスが深いものになっても、『ダメだ』って言いつつも止められなくて。
 春樹の上手なキスに亮太はそれだけで幾度となく軽い絶頂を味わい、その淫らな身体は、触れられもせずに乳首はぷくりと立ちあがって刺激を欲し、ペニスは完全に勃ち上がってて濡れまくり、アナルはパクパクと喘いで大きくて太い肉棒に犯されることを期待してしまった。
 それを思い出して。
「俺が、我慢できなかったから……」
 さっきの春樹の声は届かなかったようだ。
 それでも周りの人が気になって小さくなった声を、春樹が首を傾げて「聞こえない」と口を尖らせた。
「何? そんなちっさな声じゃ判らない」
「ご、ごめっ! あ、あのっ、俺が我慢できなかったらっ、だよっ、ごめんなさいっ」
 もう一度、声を高くして答えれば、今度は春樹には聞こえたようだ。
「何が我慢できなかったんだっけ?」
「そ、それは……」
 容赦ない問いかけに、亮太は答えを渋ることも、言葉を選べないことも気が付いたけれど、それでも口ごもった。
 春樹が意地悪なのは判っていた。
 こんな場所でも、亮太の身体に淫らな悪戯をするくらい平気なことも判っていた。
 実際、今だって乳首のピアスは腫れた膨らんだそこを刺激しているし、アナルには細身とは言え前立腺を刺激するには十分なサイズの張り型が入ったままだ。さらにペニスには、さんざん射精してもすぐに射精の欲求を訴える亮太の縛めにと、勃起抑制と射精制限用の枷が嵌められていた。
 春樹と出かける時には最低限のデフォルトと決められている春樹が選んでくれたアクセサリー群は、淫乱な身体を淫らに狂わせるのに十分だ。
 それでもデートに出たいと思ったのは亮太なのだ。そんな亮太につきあってくれている春樹の催促に、亮太は逆らえる筈もなくて。
「ほ、しかったのは、春樹の……チンポ……。春樹のキスで、身体が、熱くなって……欲しくて堪らなくなって……」
 思い出しただけで、身体の奥から熱い怒濤が迫り上がり、溢れて身体を満たしていくほどに、春樹の身体は淫乱だ。
「うん、俺が今日は触れるだけの方が……って言ったのに、亮太は俺のチンポをいきなり銜えて、もっと、と欲しがったんだよな」
 一緒にシャワーを浴びて春樹に洗って貰っている間も二回の絶頂を味わった。射精はなんとか我慢したけれど、ベッドに倒れて触れられた途端にペニスは暴発した。
 勝手に達った亮太に春樹がちょっと怒ったようだったから、ご機嫌を取りたいと、春樹の大好きな喉の奥深くまで銜えて愛撫したのだ。
 その後、体勢がシックスナインになって、春樹の指が亮太のアナルまで愛撫し出して。
「は、い……俺、我慢できなくて……尻を振って、春樹のチンポ強請って……」
 だって、春樹が亮太の全身をくまなく愛撫して、指で前立腺を刺激して、たまらなく感じさせてくれたから。
 窓の向こうが白々と明けてきたころに味わった絶頂は小刻みに痙攣し続ける身体が自分のものでないようで、気が付いたら昼を過ぎていた始末だったのだ。
 春樹の指の動きを思い出して、思わず足がモジモジと躙り寄る。勝手に尻に力が入り、そのせいで、アナルの張り型を締め付けて。
「は、春樹が……くれて……チンポくれたら……俺は、もう……」
 気持ちよくて、堪えられなくて、我慢なんてできなくなる。
 ぐちゅ……。
 濡れた音が身体の中で響いた。
 零れた熱い吐息が、壁で跳ね返り頬を擽る。
「そうだね、こんなふうに真っ赤になって……欲しいって何度もこんなふうにチンポを擦り寄せて」
「あっ、うっ」
 春樹の足が動いて、ごりっと亮太の股間を強く押しつけてきた。
 勃起できなくても、それでも立ちあがろうとする亮太のペニスに加わる刺激は、さんざん弄られて敏感になった身体には堪らない。
 堪らず亮太自身も腰を突き出し擦り寄せて、ゴリゴリとした感触を愉しんでいると、頬に触れたのは春樹の指先……なのに、昨夜のように濡れていて。
「春樹のアナルはドロドロだったね。イヤらしい臭いがしてたよね、こんなふうに」
 また触れた頬から漂う臭いは、今しているのものなのか、記憶の中のものなのか。
「濡れているって言ったら、亮太、なんて言ったっけ?」
 耳朶に吹き込まれる言葉が、さらなる記憶を呼び起こす。
「……ん、だって……俺のマンコだから……は汁ピチャのメスマンコだから……」
「そ、亮太はいつだって……えっと、何のように濡れている、って言ったっけ? えっとだから……」
 考え込んだ春樹の言葉に、亮太は続けて思い出す。
「あっ、り、亮太は……淫乱な娼婦のように、マンコいっつも、濡れてて、男を、誘うって……」
 そう言ったら、春樹が。
「ヤらしいよな」
 そう言って嗤う。
「欲しいからって自分で誘いまくって」
 だから、あのとき、亮太は春樹を誘った。尻を振り、指をいれて大きく広げうねる中を晒して、卑猥な言葉で春樹のペニスを求めた。
「ここ、自分で弄くってたよな」
 春樹の指先が不意に胸を掠めた途端に、服地がたいそう敏感になった表面を擦り、ぞくりと背筋に甘い疼きが駆け上がる。
 脳髄まで犯す快感は、全身の筋肉すら麻痺させて、総毛だった皮膚から淫臭漂う汗を噴き出させて周囲に甘い空気をにじませる。
 それが鼻腔を擽り、肺の中を満たして血管に入り込み。
 脳全体を蕩けさせる。
「あ、う……」
 力の入ってしまった尻タブに揉まれて中の張り型がうごめいて。胴体の突起が前立腺にヒットした途端に、目の奥が白く爆ぜた。
 がくがくと震える身体をもう膝が支えきれなくて、くたりと壁に全てを預けてずるずるとアスファルトにしゃがみ込む。
「何、休憩?」
 春樹の声が遠のく気配に気が付いて慌てて見上げれば、その表情は逆光で暗く見えないままにその姿が離れていった。
「まっ!」
 服を掴もうとした指は、布地に滑る。
「俺、ちょっと電話するとこあったから。ここはちょっとうるさいから向こうでしてくる。あ、帰りになんか飲み物買ってくるから、ここで待ってて」
 明るい声は機嫌が良くて、ほっと安堵してその手を下げた。
「判った、ゆっくりしてきて」
 春樹の邪魔をしたくなくて、本当は早く帰ってきて欲しいけれど、その懇願は喉の奥で押し殺す。
 春樹は忙しくて、今日だって無理をしている連れてきてくれたのだから。
「ごめんな、ゆっくり構えなくてさ」
 申し訳なさそうに言われると、亮太もいたたまれなく、急いで首を振った。
「大丈夫。春樹は今一番忙しいんだから」
 教授に認められて、高藤の会社でも評判が良くて。
 高藤の末っ子だからって甘えていられないし、いつだって実績を出さなければいけないプレッシャーは相当なものだ。
 実際春樹はできる人だから、その分、皆の期待も大きい。
 それでも、使いやすくてちょうど良いって思われているだけだよって軽く言っているけれど、それは春樹の才能が認められているからだ。
 それに、春樹がその期待に応えようと頑張っているのも、亮太はずっと一緒に生活しているから知っていた。
 だからこそ、亮太が邪魔になるようなことはしてはならないのだと思っていた。


 すまなさそうに離れていった春樹が、通りの向こうに消えた途端に、亮太はいきなり肩を叩かれた。
 あまりのことに驚いて、びくりと震えて振り向けば、さっきまで離れたところにいたはずの二人組の男達が近くでニヤニヤと嗤って立っていた。
 壁際に座り込む亮太に覆い被さるほどに近い距離で、男が言う。
「彼氏がいない間、俺たちと遊ばね? なあ、淫乱娼婦並みに男が好きな淫乱ちゃん」
 その声音に含まれる卑猥な色に、血の気が音を立てて失せた。
「チンポ、ケツマンコに銜えるのが大好きなんだろ? 自分で尻振って、欲しいって強請るんだよな」
「さっきも、欲しいって腰振って強請ってたじゃねえか」
「な、なんで……」
「リョータって言うんだろ、あんた。ハルキちゃんと仲睦まじくエロい話で盛り上がってたくせに」
 その言葉に、男達が全てを聞いていたことに気が付いた。
 聞こえていないと思っていたけれど、それも振りだったのだろうか。
 見上げた先の舌なめずりする男達が向ける視線の意味するところを、亮太は何よりも知っていて。
 迫ってくる欲望まみれの雄の迫力に、ガクガクと震えて後ずさろうとするけれど、背後は壁で逃げるところなどなかった。
  慌てて辺りを見渡すけれど、ちょうどパレードが始まったのか休憩していた人たちも皆が通りの方に出ていた。しかも、賑やかな音楽は、近くにいる男達の声すら掻き消すほどの迫力で、少々叫んでも届かない。
「今も欲しいんだろ? だから俺達が遊んでやるって」
「い、イヤだっ! 春樹っ、春樹っ」
 届かないと判っていても、男達を押し退けながら叫んでしまう。
 春樹はどこまで行ったのか、このパレードの音を嫌ったならばかなり遠くにいってしまったはずだということは、容易に推測できる。
 ならば、と慌ててポケットを探ってスマホを取り出そうとしたら、今度は腕を掴まれて。
「ダメだよ、リョータ。ハルキちゃんは忙しいのに。それにどうせ今電話したって、話中だろう?」
「あ……」
 知らされた事実が思い浮かばなかったこと、確かにその可能性があると思った瞬間、力の抜けた指からスマホが取り除かれる。
「ちょっ!! う──っ!!」
 けれど、それを抗議する間も無く掴まれた手を捻られ、頭を壁に押しつけられて。ごつっと目の前で火花が散るような衝撃に、意識が僅かに揺らいだ。
「さあ、いいとこ、行こうぜ」
 肩に腕を回されて、うまく動かない足を引きずるようにして、奥まった人通りのないエリアに連れて行かれた。
 倉庫らしい入り口の、使われていない建物が、目の前で開かれる。
 歓声のような声は聞こえるのに、板壁の隙間から、鮮やかなライトアップの光は見えるのに。
 閉じられたドアが闇を作り、恐怖を煽る。
「はなせっ、嫌だっ」
「静かにしなよ、ほら、良いとこだろう。実はここ、絶好の穴場なわけよ。特別な客のみに案内される場所ってな。ということで、リョータくんも特別にご招待~」
「チンポ好きな淫乱ちゃんが遊ぶには、最高だぜ。ちゃあんとパレードも見えるし、チンポで遊びながら見れるって最高のシチュじゃね?」
「ここにね──って、あれ?」
「ひっ!」
 布地越しとは言え張り型を銜える場所を押されて、駆け抜けたのは紛れもない快感だった。
「なんか固いのがある。ここ」
「や、やめっ……ひっ」
 コツコツと叩かれて、まともに中まで響く。前立腺に当たる瘤がその振動を伝えるから、抗う事も忘れるほどの刺激に零れたのは紛れもなく嬌声だった。
 春樹は埋め込んでしまうタイプより根元が飛び出ているタイプを好むから、今日のソレも根元が出ていて、抜けないように紐で股を通ったベルトで固定されているのだ。
「なるほどなるほど、チンポ大好きな淫乱ちゃんは、いっつもケツに銜えていないと満足できないわけね」
「へええ、そうなんだぁ。けど、玩具じゃ満足できないんじゃない」
「い、いやっ、──ひっ、止めてっ、や」
 ジーンズの腰の締め付けが緩くなる。男達の手を止めようとするけれど、そのたびに張り型に刺激を与えられ、爪を立てることすらままならない。
「ご──開──帳っ!! お──っ、すげぇっ!!」」
「いぎっ!」
 上半身を跪いた男の一人の方に倒されて、押さえ込まれたまま尻タブに空気が触れる。亮太が涙目で振り向いた先で、腰と白い尻タブの狭間に伸びた赤いベルトが見えた。それを男の一人がくいくいっと引っ張っていた。
 その度に張り型が奥に入り込んで。
 堪らない愉悦に、全身がガクガクと震える。
「パンツも着けてないんだ……、しかもけっこうでっかくね、これ」
「はあ……いっ、ぬ、抜かない、でぇ……あうっ」
 ずるりと、ベルトの余裕分が引っ張り出され、馴染んでいた肉壁を擦られる感触にぞくぞくと背筋に快感が走った。
「でも、これじゃ俺たちの入らねぇぜ。なんか外れねぇし」
「ちっ、鍵付きかよ。まあ、淫乱ちゃんの管理にはこれくらいしねえとダメなんだろうよ。見ろよ、こっちには勃起できねえように、押さえつけられてるぜ」
「ひゃあ、マジでっ。こんなに気持ちよさそうによがってんのに、勃起すらできねぇの……ってマジかよ」
 勢いよく身体を起こされて、逃げる間も無く仰向けになた身体はM字開脚のまま股間の全てが空を向く。
 ベルトを後ろから回された赤い革ベルトは、蟻の門渡りと呼ばれる部分から上に金具に繋がれていた。その金具は、門渡りから身体に向かって突き上げるような突起があるのと同時に、ペニスを下向きのままに固定して射精するための動きを遮るようにできていた。
 そのベルトをまた強く引っ張られて、その意図した動きのせいで、亮太は張り型だけでなく門渡りからも押し上げられて、前立腺を体内外から刺激されて悶絶する。
「痛っ、や、止めてっ」
 善すぎる快感は、ひどく辛い。
 しかも、与えてくるのは春樹では無いのだ。なのに、身体は浅ましく反応する。
 涙混じりに拒絶を訴えても、その弱々しい動きも言葉も、まるで強請っているようだと、亮太自身も思ってしまって。
「辛いねえ、勃起すらできないなんてさ。まあ淫乱ちゃんだからなあ、彼氏に管理して貰わなきゃ、すぐに別の男に尻振って、チンポちょうだいって強請っちゃうんだろうなあ」
「だろうねぇ、しかもちょっと揺らしただけで、チンポがこんなにも涎を垂らしてんの」
「あうっ、やあぁ」
 鈴口に膨らむ滴を指で擦られて、その刺激に堪らず喘いだ。
 アナルばかりで絶頂することが多いけれど、そこだって立派な性感帯であることに変わりない。むしろ、弄られ続けて余計に敏感になっているのだから。
「淫乱ちゃん、チンポ欲しい?」
 言葉共にカシャッと音がして、目を剥いた亮太の視界にスマホが見えた。
 見慣れぬそれは、さっき奪い取られた亮太のものとは似ても似つかぬものだ。
「うわぁ、良い絵が撮れたよお。これ、その手の掲示板に名前付けてアップしちゃおうかなあ。ハルキくんの恋人はこんなにも淫乱なリョータくんですってさ」
「あははっ、それ、サイコーっ! 顔もぱっちり写ってるし、リョータくんは……ああ、真木亮太くんねぇ、で、お相手は高藤春樹くん」
「ま、待ってっ!」
 指紋認証にしていても、指をつかまれれば意味がない。
 フルネームで登録していプロフィールから、アドレスの中身からと、全てを暴かれていく。
「大学のセンセの名前が入っている。これ調べたら、すぐにどこのガッコが判るね」
「なんとか大学の真木亮太くんってキャプション付けてやるよ」
「止めてっ、やっ、あうっ……くっ、うっ」
 カシャカシャと連続音が鳴り響く。同時にベルトを縦横無尽に動かされて、亮太の嬌声が止まらない。
 周りから賑やかなパレード音楽が響いていても、それ以上に響く卑猥な音とシャッター音が、春樹を羞恥に追いやった。
 チラチラと線のように差し込む明かり中、羞恥と興奮に染まった肌が淫らに悶えて、泣き濡れた顔が砂に汚れていく。
「マジ……なんか、すげぇ」
 トーンが変わった声音と同時に、亮太の足の間にいた男が急いたようにズボンの前を緩めた。
「突っ込めねぇのが残念だけど……」
 飛びでたペニスを扱きながら、ニヤリと嗤う。
「汚してやるよ、俺たちのもので」
「……ああ、な──る。じゃあ、俺も」
「痛っ!」
 背側にいた男がいきなり亮太の身体を後ろに押し倒した。がつんと後頭部を打ち付けて、軽い脳しんとうを味わう。唸るだけで何もできないままに、その男が亮太の腹の上に乗った。
「俺はここを汚してやろう」
 めくられたシャツに、胸のピアスが陽光に煌めく。
「わお、淫乱ちゃんのおっぱいもスッゲぇ」
 太いピアスのニードルのせいで、人の三倍は膨らんでいる乳首に、目の色が変わった。
「お、おねが……いっ、もう、止めて……くださ……」
 犯される危険は、張り型のおかげでなさそうだったのに。
 それでも諦めない男達の行動が読めなくて、亮太は激しい恐怖と悪寒にガクガクと激しく震えていた。
 この身体は、春樹のものなのに。
 けれど、目の前でシコシコと扱く男のペニスが、じわりと淫猥な汁を垂れ流す。
 乳首に擦りつけられた汁は、まだ透明だけど。
「うっ」
 小さく喘いだ後ろの男がぐりっとベルトの隙間にそれを突っ込んだ。
 途端に、広がる熱い粘液の感触に、堪らずに悲鳴が音も無く空に響く。
「中に直接出せねぇのが残念だけど……こうやって……」
「あひっ、ああっ、やあっ」
 グチャグチャと明らかにさっきより増した水音に、怯えた瞳が水滴を浮かばせて、溢れ落ちた。
「こいつの穴緩いから、隙間からザーメンが楽に入っていったぜ」
「お、俺もっ」
 びくびくと震える目の前のペニスから噴き出す精液が、胸に、そして顔へと振りかけられた。
 それにさらにペニスを押し当てて、そのまま塗り広げていって。
「ピアスの穴にも……。んで、こっちはお口にも……」
「んぐっ、むぐっ」
 精液を拭われたままに口に指を突っ込まれて、頬の裏側へと塗りつけられた。
「こっちも直接いれてぇけど、やんちゃな淫乱ちゃんに噛まれても大変だからなあ……」
「その分、たっぷりとこの淫乱な身体を見て愉しもうぜ。この美味そうにザーメン食べる身体をさ」
「も……止めて……お願い……だから……」
「往来で卑猥語連発するような奴が何言ってんだよ。俺たちはあんたのこの卑猥な身体に煽られてんの。あんたの身体が俺たちのザーメン欲しいって言ってんだよ、判る?」
「そうそ、だから、リョータくんが諸悪の根源って訳。リョータちゃんがあんまりにも淫乱だから、彼氏のハルキちゃんも困ってあんな端っこで休憩するはめになったんだろ?」
「あ、そういやそうだね。せっかくのデートだったのにねぇ。こんなふうに動けなくなったのは、こんなところで発情しちゃったリョータちゃんのせいだもんね」
 こんなところ、春樹に見られたら……。
 たとえ挿入されていなくても……春樹を傷つけるから……。
 男達が言うように、亮太の身体が男を誘ってしまったから。
 こんなところで、卑猥な話をする羽目になってしまったのも亮太が動けなくなったせい。動けなくなったのも、何度も春樹に強請ったせい。強請ってしまったのは、こんな淫乱ですぐに欲情する身体を持った亮太自身のせい。
「……ごめん、なさい……ごめんなさい……、亮太が淫乱だから……悪いんですっ……。だから、だから、もう止めて、くださっ……」
 ぐすぐすと泣いて許しを請う。
 けれど。
 降りかかる熱い精液に濡れながら光の中で謝罪の言葉を繰り返す亮太に、男達の欲望に満ちた瞳はますますその色を濃くしていった。

【続く】