準備は侍従に任せ、積み込み作業の監視という一仕事を終えた紫紺はゆっくりと風呂に浸かった。
湯面が少し揺れているのは、先ほど船が出航したからだろう。
内湾部の波は静かだが、これからしばらく荒れた海域を通ることになる。150個ほどの荷物の割に無駄に大型船三隻となったのは、この外海の揺れを軽減するためもある。
ゆったりと浸かっていると、アイルが泣き喚く声が聞こえてきたので、味わうように緑水晶の瞳を閉じ、耳を傾けた。
竜人族はもともと肉食の狩猟民族だ。そのせいか、狩りの対象物の怯えや恐怖の悲鳴は、彼らの精神を昂揚させ、その闘争心を煽るのだ。
まして耳長族のようなか弱く、けれどたいそう旨そうな獲物の啼き声など、紫紺の欲を煽るだけで、萎えることも無い。
浣腸と腸内洗浄の苦しみにヒイヒイとわめき、「止めて」と懇願して啜り泣く声のなんと心地よいことか。
未だ処女の膣口を犯すのも捨てたがったが、あれは別の楽しみにとっておいて、肛門性交は医師の了承さえあればいつでもできる。それも貞宝にお墨付きをもらっただから、全く問題が無かった。
たっぷりと苦鳴とも悲鳴とも付かぬ声を堪能して、紫紺は浴槽からその逞しい身体を引き上げた。
柔らかな布で水滴を拭い、結い上げていた髪を下ろせば、鋼色の長髪は鈍色を放ちながらまっすぐと肩甲骨の間に垂れた。それを軽くひとまとめにして括り直して、再度背に垂らす。
その肩から尻の上部に生える腕ほどの太さの1mほどの尾の先まで、髪と同じ色の鋼色の鱗が覆っていて灯火の色を反射する。一方で肩から指先の外側部分と尾の付け根から左右の腰を渡り太股から足の甲先まで覆う鱗は、黒曜石のごとく漆黒の輝きを持っていた。地肌の色を晒すのは胸の上部から下腹までで、鱗がないように見えるだけでその皮膚の表面にはうっすらと透明な鱗があるのだ。それは強靱で、並の刃などすぐに刃こぼれしてしまう。まして鋼色と漆黒の鱗の部分は、普通の刃では決して通らない。色が濃いほどに、鱗の強度も高いのだ。
この鱗の部分の色合いや占める面積は人により違うけれど、紫紺のそれは生まれたときに、医師が感嘆の声を上げたほどに立派なものだった。
これだけ濃い鱗に覆われている部分が多いということは、その身はたいそう強いという証明でもあったからだ。
その素晴らしい身体に軽くガウンを纏い、静かになった自室へと戻ってみれば、すでに全て終わっているのだろう、侍従の姿はすでに無く、寝具の上で縛れたままのアイルが茫然自失と言った体で、天井に向けて目を見開いたままにハラハラと涙を零している。
作業で埃を被っていた肌は清められ、剥き出しになった陰部もその後ろの肛門も作業のせいか赤く色づいていた。
その慎ましやかな口は、前も後ろも紫紺の身体に見合った性器を受け入れられる寸法ではないように見えるけれど、だからこその征服欲が高まっていく。
まして。
「……助けて……許して……」
紫紺の姿を認めたアイルの瞳が細められ、希うように小さく許しを請うてきては、どうしてこの衝動を止められようか。
へたりと垂れた一対の長い耳も、その欲をほどよく駆り立てる。
その衝動のままに、手を伸ばし、濡れた頬を辿り、顎を掴めば、おもしろいように怯えて息を飲み、ガクガクと震えている。そんな身体の上によじ登り、見下ろして。
「誰に請うておる? 今後おまえができることは、早く犯して欲しい、と強請ることだけだ。私にその身の全てを提供することだけが、おまえの生きる道よ」
弱者を虐げる愉悦に浸り、ことさらに冷酷な物言いでその運命を告げてやる。
竜人族の手に落ちた耳長族の仕事は、あの契約の時から定められたそれだけだ。
「国に戻ったら、おまえは私の卵をその子宮に孕み、その肉でもって温めることになる。我らの抱卵期間は約1年。月が満ちれば我が子は生まれ落ち、おまえの乳を食ろうて育つ」
「な、んで……」
白目が目立つほどに見開かれた瞳の色に惹きつけられ、細く長い舌を出してその目元を嬲った。
びくりと強張った肌が、小気味よいほどに震えている。
今すぐにでもその小さな口を犯したい欲求は強かったが、船旅は三日もある。
一つずつ。
まずは、己の運命を悟らせてやろう。
本国に運ばれる耳長族の運命が、その身にも起こったのだと知らしめてやろう。
「竜人族の出生率はたいそう低い。それに加えて、産んだ卵を一年も温めなければならぬ。はるか昔は地熱を利用していたと言うが、地の活動が落ち着いた昨今大半の民はそれも叶わず、この肌で温めるしかない。だがそんなことをすれば、鍛錬も何もできたものではないからな。人より優れていることを好む我らは、必然的に誰も長い抱卵をしたがらぬ」
ぺろりと流れる涙を舐め取って、塩辛いそれを味わった。
小さな身体にのしかかり、竜人族には無い柔らかな毛に覆われた背を抱え、腹のなめらかな肌の感触に熱い吐息を漏らす。
肌から伝わる温もりは己たちより体温が高い証で、まるで獲物の血を浴びたような興奮をもたらした。
「そのせいで人口の減少に歯止めがかけられず、それが国の弱体化になると愁いた当時の王は対策を命じたのだよ」
「ひ、ぃぃっ」
鱗のない柔らかな肌を堪能しながら下りていき、一度腰から内ももまで辿ってから再度上がって窄まった口を指先で突く。
準備の際にある程度は解されてはいるようだが、その口はまだ固い。
まして、触れられる恐怖と、話の展開への不安からかその身は強張ったままだ。
「その研究の結果、最終的に見つかった方法が托卵することだった」
「……た、く卵?」
聞き慣れぬ単語に、アイルが思わずと言った体で呟く。
「そうだ。卵を他に託す。そしてその最適な相手として選ばれたのが耳長族だった」
耳長族の子宮は、竜人族の卵を託すのにほどよい大きさだった。またその性格も温厚で柔順。他者の子すら慈しむ性で、一度胎内に宿した子を無碍にはできないし、望まぬ行為でできた子であろうと堕ろす風習も無く、そんな子でも育てる寛容さがある。
何より。
「我らの卵の外殻の成分のせいか、受け入れた耳長族の子宮は自身の子を妊娠した時と同様な反応を示し、馴染む。拒絶反応どころか生まれたときには乳すら出すのだ」
自然の妙技と言えばそれまでだが、まるで竜人族のためにあるような身体だっのだ。
だから、選ばれた。
「故に時の王族間で契約が交わされた。毎年耳長族は150人前後の民を竜人族に捧げ、その代わりに我らはそれ相応の対価を払い、かつ南の大陸に攻め入ることはしないという……」
「……え?」
数秒間理解できなかったふうに呆然としていたアイルの瞳が一気に見開かれた。
「あ、あの、木箱は……っ」
ああ、この子は存外に賢いらしい。
「そうだよ。あの木箱の中身はみんな耳長族の成人だ。多産故に人口過多による食糧危機に陥った苦境を憂いた当時の耳長族の王が、口減らしのために喜んで提供したことが始まりでね。当時は犯罪者を中心に集められていたが、今では、親無し子や育てられぬほどに産んでしまった子を集め、育て、一年に一度出荷して王族の身銭を稼いでいるというわけだ」
何も知らぬままに国中の孤児院や育てられない親元から、国の将来のためにと王城内の深い森の奥にある館に集められ子は、国のために遠くに働きに行くのだと信じて勉強しながら生活し、成人になった最初の年の交易の日、館から旅立った彼らは運ばれる最中に眠らされ、箱詰めされて船に積み込まれる。
その仕組みを、竜人族でも知る者は少ないが、王族の端くれとして聞いたときには、またうまいこと作ったものだと思ったものだ。
「そろそろ、寝覚めたかな」
何の感慨も湧かぬままに、ぼそっと呟いて。
そのために乗り込んだ貞宝も今はたいそう忙しいだろう。
彼らは船旅の三日間の間に、その運命を知らされ、逃れぬ定めを受け入れさせられる。
船から下りれば托卵するものを求める者たちにより、すぐに競売にかけられて、後の運命は買われた先次第だ。
「耳長族に托卵させてからというもの、我らの人口は必要な水準を取り戻し、今はほどよく安定している」
本来ならば感謝すべき相手と言えるだろうけれど、いかんせん。
「だが、おまえ達は弱すぎる」
強くも無く、優れてもいない。
竜人たちにとっては、蔑みしか湧かない存在なのだ。
紫紺の言葉に、さらなる悪い予感に襲われたのか、縋るような視線が追ってくる。
それに酷薄に嗤いかけ、瞳に恐怖が満ちる様をゆっくりと味わって。
「おまえの色は気に入った、音も。どうせなら気に入った者を使うのが一番だからな。だから私の卵を抱かせてやろう。この小さな身体で、大きな子を育てよ。強く逞しく、優れた子をな。そのために、おまえのような矮小な存在であろうと、私は可愛がってやるぞ。きちんとした生活、食事、衣服。おまえが役目を果たすなら、な」
せっかく気に入りの色合いを持っているのだ。きれいに扱えば、もっと艶が出るだろう。
「王城へ付いたら、卵を産み、おまえの中に入れよう。そのために、この身体を私になじませる必要がある」
今伝えなくてもいずれ知るだろうけれど。
何より先に、この身体に紫紺自身を刻みつける必要があった。
アイルの上で膝立ちになり、羽織っていたガウンを肩から落とせば、隠しているものなど何も無い。
「ひいっ」
眼下で引きつった悲鳴が響く。
アイルの視線が紫紺の股間に引きつけられて離れない。
そこにはアイルの手首ほどに太く逞しい陰茎が、重々しくぶら下がっている。しかも、その反り返ったかさ高の鬼頭部を除き、陰茎にはびっしりと鱗が生えていて。
「見よ」
恐怖に外せない視線に見せつけるように、ゆっくりと数度扱いてやれば。
すでに期待に打ち震えていたそれがむくりと身を起こし、育っていく。
体格の違い以上の大きさに、アイルの瞳が恐怖に揺れる。
「あ……あっ……」
ガクガクと痙攣するかのごとく震える身体が、逃れようとばかりに後ずさるが、狭い寝具の上で逃げられるものでは無く。
固く育ったそれは明らかにアイルの腕並みだ。だが、アイルが怯えているのはそれだけではないだろう。彼の視線は、陰茎を覆う鱗がむくりと逆立っているのをつぶさに見ていたのだ。それは育ちきった松ぼっくりのように、紫紺のそれは起きあがっている。
「ここまで鱗に覆われている者は少ないが、我ら王族は皆こうよ。これが内部を抉る様は、得も言われぬ刺激であると皆が言うぞ。先だって私の精を与えた相手も、堪えられずにヒイヒイ喘いで喜んでおったよ。おまえもこれでたっぷりと中を抉ってやろう。何、すぐに善くなる」
逆立つ鱗に肉を抉られ、慣れぬ間は痛みがあるらしいけれど。それが慣れると善いらしい。
「やみつきになるというぞ」
「い、いやぁっ、やめっ、止めてぇぇっ!!」
括ったままの膝をぐいと広げ、尖った先を狭い口に近づける。
準備の際に使われた香油がたらりと垂れていて、それを切っ先で掬い上げ、滑りのままに先端を食い込ませれば、恐怖の悲鳴がさらに大きく心地よく響く。
「ふふっ、逆効果だ」
止めろと言われて止めるほど殊勝な質では無い。
ぐぐっと抗うそこを割り開くように腰を進めれば、きついほどの締め付けが亀頭を包み込み。
「い、いやっ、痛ぃっ、痛いぃぃっ! やめてぇっ!!」
仰け反り、逃れようとする身体を押さえつけ、欲する本能のままに一気に推し進める。
「や、ぁぁぁぁっ!!!」
己の喉から出たとは思えぬほど、どこか遠くで悲鳴が聞こえる。
引き裂かれた身体の痛みは、知覚できぬほどに心をバラバラにして、呼吸すら忘れさせた。
けれど、入り込む明らかな他人の熱塊は確かにそこに感じる。
熱くて痛い。
太いそれに串刺しされた身体は、腹の中を突き破られたようにすら感じていた。
見開いた眼に移る、逞しい身体の竜人は、そんなアイルを見下ろして嗤っている。
楽しげに、おもしろげに、苦しむアイルを嘲笑っているのだ。
「ひっ、ひっ……ぐっ」
逃げたいのに、抜きたいのに、縛られていることを除いても身体が動かない。
苦しみに喘ぎ、このまま死んでしまえればと、弾ける痛みの渦の中で誰ともつかない者に希う。
けれど。
激しい痛みとは裏腹に、アイルの肛門は裂けてはいなかった。
それが準備の際に施された薬のせいだとは知らず、裂けていないとも知らず。
「ひあっ、あっ、あっっ! やっ、やだっ、ああっ」
ズリズリっと中で動くたびに力なく声が漏れる。見開かれた瞳は何も写さず、涙が溢れては頬を濡らし、薄桃色の髪を張り付くと同時に、尻に感じた竜人の肉の温もりが失せる。
「やあっ、抜かないでぇぇっ!」
逆立つ鱗が内壁を抉る。
先の痛みが限界だと思っていたけれど、種類の違う痛みがさらに上乗せされていた。
鋭く表層を抉られ、粘膜をこそげ落とされる。
「ああっ! いやあっ!」
止めてと何度も願うけれど、彼は決して身体の動きを止めない。
決して激しくはないけれど、それでもぎりぎりまで抜いては、抜ける寸前でまた押し込まれる。
広げられる痛みに抉られる痛み。
繰り返されるそれに、意識が引きずられていく。
中の肉が前後に動く、もうそれだけが知覚している全てだ。
「良いな、色だけで無く肉も絶品で旨い」
笑い声が鼓膜に響く。理解できぬ言葉が、ただ脳に刻まれていく。
「やああっ、あああっ」
「味わえ、私の全てを。忘れられぬほどに、その身に刻め」
嘲笑が響く。
ぐじゅり、ぶじゅり。
どこからとこなく水音が響く。
痛いのに、痛くて熱いのに。
繰り返される痛みが麻痺していく。
たた熱だけが残っていく。侵入する肉が熱くて、じっとしていられない。
「あ、熱っ、ああっ、熱いのをぉ!」
まぶたの奥が白く弾ける。
身体の奥がひどく熱くて、濡れた音が激しくなって。かき混ぜられる感触に、喉から熱い吐息が吹き出していく。
「善いだろう。我らの鱗の根元から出る体液は、極上の媚薬よ。そうやって相手を欲情させ、排卵を促し、受精させるのだよ。特に鱗で抉られた後にはよく馴染む」
ああ、何を言っているのだろう?
痛みに支配され、精神が狂わされ、それが消えれば熱く茹だった身体が残されていた。
「んあっ、ああっ、ひいいっ」
べしべしと下腹を叩く様子に、泣き濡れた瞳を薄く捕らえたのは、勃起しきった己の陰茎だった。
「や、やああっ、何でぇぇっ」
痛いのに、苦しいのに。
「だらだらと涎が出ているぞ。この切っ先も女陰も濡れまくっておるぞ」
「あんっ、だめぇぇっ」
グイグイと押し開くように抉られながら、亀頭を摘ままれ、鈴口を潰すように指を食い込まされる。
「あっ、ひぃぃ、だめっ、そこはっ」
鋭い痛みが走る。
けれど、最初の痛みが薄れてしまえば、痺れるような快感が陰茎の中を走っていく。
「潤滑剤などいらぬな。勝手に溢れて、私のものを濡らしてくれるわ」
指に付いた粘液を、これ見よがしに頬になすり付けられた。そのまま開きっぱなしの口内へと潜り込み、舌の表面に擦り付けられる。
「あ、ああやあっ、ああ」
声が止まらない。
最初の頃の悲鳴ではなく、甘く強請るような嬌声だ。それとは気づいてもいなかったけれど、太い陰茎を受け入れた腰が強請るように揺れている。
「聞きしに勝る淫乱な一族よ」
繰り返される抽挿に、もう言葉など耳に入ってこない。
「だからこそ、耳長族は選ばれたのだ」
「あ、つぅぅぃいっ! そこぉぉっ、ああっ」
「我らの体液ともっとも馴染みが良いとは言え、ここまで狂うとはな」
遠くに響く嘲笑が自分の悲鳴と重なって、けれど、意味は取ることができない。
身体の奥がずくずくと崩れていく。
腹を突き破られるようにガツガツと貪られて、けれど、それがたまらなく善いのだと感じている。
裂けているはずなのに、どうしてこんなにも。
鈴口に食い込む固い爪の感触に、傷つけられる恐怖より、もっと深く抉って欲しい欲望が強い。
太く、奥深くまで抉る肉棒に、縋り付きたくて。
下腹部が勝手に引き絞られる。
「や、やだぁ……どうしてぇ、あひぃぃっ、ああ、ぼくぅ、変なぁぁ、ああっ!」
こみ上げる、それは明らかな快感で、ざわざわと全身が痺れたように全てに感じていて。
「やあ、ぁぁ、も、イくうっ! やめてぇぇっ」
込み上げる射精感に、目の前の逞しい身体の動きを止めようとしたけれど。
「私に命令するとは。愚かな輩には、死に勝る快感の刑を与えよう」
冷酷な宣言とともに、動きが一気に激しくなる。
「ひぃっ、いいっ、あぎいぁ!!」
押し出されるように陰茎の先端から白濁が吹き出す。常ならばたまらない快感に浸ってしまうそれを味わう間もなく、また追い上げられる。
上がりきって、下がる間もなく、また上がる。
突き上げられるたびに身体が跳ね、快楽も跳ね上がる。
縛られ広げられた股関節はいまや全開だ。
跳ねる陰茎の裏では、女陰から泡立つほどに淫液が溢れている。そのさらに奥で、流れた淫液をまとった鱗だらけの陰茎が、激しく抜き差しされていた。
その脈動に合わせて、追い上げられる。
「やめてぇぇっ、だめぇぇっ、狂うっ、もっ、こわれっるうっ!」
ドロドロに蕩けた身体が掻き回されて、爆発する快感に全てが引きずられて。
「ひああっ!」
意識が真っ白に弾けた。
白目を剥き、舌をだらりと零したイヤらしい表情で崩れ落ちた身体は、どうやら意識を失ったらしい。
けれど、紫紺はいまだ満足していなかった。
小さな肛門が、今や己の腕ほどに広がって、紫紺の陰茎を旨そうに咥えているのを見るだけで、身のうちからなんとも言えぬ熱い疼きが込み上げて、もっと激しく動きたいという欲求が込み上げる。
だが、さすがに最初から竜人の思うさまに、まして紫紺のような巨根を持つものに思うさまに犯されたら、いくら薬を使っていたとしても早々に壊れてしまうだろう。
侍従が施した弛緩剤は確実に締め付けを緩くし、裂けることなく竜人族の陰茎を受け入れさせる。
だが、そんな自制心はあるものの、だが、耳長族を始めて使った竜人たちが、そうそうにその壊してしまうという話は眉唾物でなかったの、この熱い肉の締め付けに理解した。
竜人より高い体温が、こんなにも気持ちよいものだったとは。そして、何よりもきついくせに柔らかく、妙なる脈動でもって陰茎を絞り、さらなる奥に招き入れようとするのだ。
「そのうちに、薬なしで受け入れさせてやろうぞ」
弛緩剤である薬を使わないならば、いったいどれほどの締め付けをもたらしてくれるだろうか。
もっともすぐに、こんな薬など不要になるだろう。この薬は、広げた形を体に馴染ませていくのだから。
グイグイと奥を抉りながら、己の快楽を得るために、弛緩した身体を使う。
けれど、気に入った1つである声が聞こえぬのは気に入らぬと、紫紺はアイルの上体を抱き起こし、手を振り上げて。
パアーンっ
アイルの頬で甲高い音が鳴ったとたんに、びくりと震えた身体に締め付けが戻る。
驚愕に薄く開いた瞳をのぞき込み、命令する。
「私が満足していないのに先に寝るとは何事か。今後我の意に逆らうのであれば、その身に戒めの楔を増やしていくぞ」
言葉の意味など判らぬように惑う瞳が、それでも恐怖の色を湛えている。
ああ、この怯える瞳が、紫紺の欲を煽るのだ。
可愛らしい色合いが、負の感情に染まっていくのに、けれど惹きつけられる。もっと、もっと見てみたい。
薄桃色の瞳を濃く染めながら、震えて怯える様をもっと見せつけてくれ。
「さあ、腰を踊らせろ。もっと味わえ」
「あひっんっ」
寝具に押しつけていた身体を起こさせ、そのまま紫紺の腰に下ろさせれば、自重で深く咥えた刺激にびくと背筋を伸ばして硬直しする。
性欲はまだ尽きぬ。
目の前に現れた可憐な乳首に誘われるように、舌を絡ませ、前歯でかじれば、きゅうっと肛門が引き絞られた。
「や、や……。噛まない、ああっ、噛まないで、くださっ、あ」
震えて懇願して、けれど命令するなという言葉を思い出したか、言い換える。
そんなこざかしさを見せるアイルに、紫紺は笑みが止まらなかった。
「噛むなというなら、噛んでやろう。噛まれたくなかったら、他で私を喜ばせることだ」
言い終えるとぎりっと歯に力を入れる。もちろん加減はしているけれど、なぜにこんなにもうまく感じるんだ?
「ひぎいっ、やあっ、痛っ、痛いっ」
暴れ、けれど、引き剥がそうとしても許されない身体に、涙が喉元を通って、当の乳首まで垂れ落ちた。
「やあ……ああ、許してえ、くださ……ああ……」
「何度も言わせるな、私を喜ばせよ、それだけだ」
「あぁ……は、ぁい……ぃ」
冷酷な物言いでの命令に、動き出したのはその細い腰だった。
紫紺のものを咥えたまま、ゴリゴリッと抉るように前後左右に動き出す。
けれど、常よりはるかに太い陰茎を咥えたそこの動きは緩慢で、許しを与えるほどでは無い。
紫紺にとっては細いとしかいいようのない腕を鷲掴み、括ったそれごと身体を激しく揺すった。
「あひぃっ、ああんっ、やだぁ」
肉に食い込む痛みに泣き喚く姿を堪能しながら、その身体を横たえる。
腰を高く掲げさせ、怯える顔を見下ろして。
先ほど叩いたせいで赤くなった頬を指先でなぞり、今度は反対側をひっぱたく。
「ひぃっ……ひぐぅ……」
「できぬのなら、おとなしく遊ばせろ。おまえに拒否権など一つもないのだから」
竜人族である紫紺に選ばれたその瞬間、耳長族であるアイルの全てはその支配下から逃れられない。
何事も優れた竜人に国に攻め入れられる恐怖に襲われた耳長族の彼の王は、己を守るために己の民を竜人族に売ったのだ。
だから、生け贄とされるのは提供された150人だけで無い。彼らが気に入れば、その瞬間、気に入られた者は竜人族のものとなる。
まして北の大陸まで運ばれてしまったら、このアイルのように元の大陸に戻ることなどできず、その人生全てが竜人族に仕えて過ごすことになるのだ。
その生殺与奪権すら握られて。
「城に戻ったら、おまえの部屋を用意してやろう」
托卵させた耳長族がその卵を腹に抱えている一年間のための部屋だ。
そこで行われるのは、子宮内の卵の中にまで響くように刺激を与えるための肛門性交だ。それを日々行うことにより、卵殻内の子どもの成長を促し、より強い子となると言われてる。
毎日行われるそのための設備は全て揃っている必要があるのに加えて、紫紺の脳裏にはいろいろな準備する品々が浮かんでいた。それらは、アイルで遊ぶために他ならない。
この最初の性交に、紫紺はアイルの身体を完全に気に入ってしまっていたのだ。
己より熱い体温を持つ肉が陰茎に絡みつく快感は、互いに卵に受精させるためだけに交わった相手の比では無かった。小さくか弱き存在が、震えて怯え、必死になって支配者に助けを請おうとする様が哀れで、もっと蹂躙したくなる。
卵が成長すれば、耳長族のこの柔らかな腹は大きくせり出し、みるからに苦しそうに見えるらしい。
今は平らな乳房も、ふくよかな山を作り、美味なる乳を吹き出すのも楽しみだ。
「そこでおまえは私の強い子を産む」
ひ弱な存在に子孫を託さねばならぬなど、愚かなことだと思っていたけれど、アイルが相手ならずいぶんと楽しいことになりそうだと思えた。