月明かり番外【ひとでなしの恋2】
ザーンハルト付き執政官見習い ファム 初めて見た獣に、ファムは恐怖した。だがそれ以上に、それはファムの心に人知れぬ感情を呼び起こした。 血の臭いが扉の外にまで漂っていた。 ようやく辿り着いて、人の垣根の隙間から覗 …
ザーンハルト付き執政官見習い ファム 初めて見た獣に、ファムは恐怖した。だがそれ以上に、それはファムの心に人知れぬ感情を呼び起こした。 血の臭いが扉の外にまで漂っていた。 ようやく辿り着いて、人の垣根の隙間から覗 …
ヴァルツ×ザーンハルト ? 心地よい温もり。 ふわふわの体毛に擦り寄って、体に掛けていた布を引き寄せる。 もうそれだけで、最高のベッドのできあがりだ。 ヴァルツは心地よいそれに身を委ね、警戒心の欠片も無い笑みを …
28 「ザーン……」 のろのろとおぼつかない足取りでヴァルツはベッドへと近づいた。 病的な白さの顔色、力なく閉じられた目蓋。 横たわった姿に、弱っていることは明白だ。 「ザーンっ!」 薄い掛布に浮かぶ腕に縋る。 …
?10 ジゼとザンジがどうにかこうにか城の人々に受け入れられて、ほおっと息を吐く頃には、先発隊が出発してからもう一ヶ月が経っていた。 だが、戦局は一進一退を繰り返し、進展がない。 伝書鳩を駆使した連絡は、滞ることは …
第一王子(30)の幼なじみの男女三人の話。変わらぬ日々がいつまでも続きそうな、そんな憂鬱な日々が途切れた時。 長い会議の後、ケレイス国の第一王子であるヴァルツは執務室に戻ってぐたりと椅子に座り込んだ。 金にあかせて作 …
11 体が酷く怠い。 柔らかな布団の上にいるというのに、触れる何もかもが鬱陶しい。 寝返りをする気にもなれないのに、動きたくて体がうずうずして、落ち着かない。怠いのに、動くしかない状態に、ミシュナは深いため息を吐い …
?ケレイス王国騎士ミシュナ(19)と任務中に出会った男の話。玉の輿物語。 17の年に騎士団に入隊してようやく2年。 もうすぐ成人の儀を迎えるミシュナは、見習いの地位から脱却し、剣の腕も上がってきた。 騎士団に入って …