月明かりの下で(3)

28 「ザーン……」  のろのろとおぼつかない足取りでヴァルツはベッドへと近づいた。  病的な白さの顔色、力なく閉じられた目蓋。  横たわった姿に、弱っていることは明白だ。 「ザーンっ!」  薄い掛布に浮かぶ腕に縋る。 …

月明かりの下で(2)

?10  ジゼとザンジがどうにかこうにか城の人々に受け入れられて、ほおっと息を吐く頃には、先発隊が出発してからもう一ヶ月が経っていた。  だが、戦局は一進一退を繰り返し、進展がない。  伝書鳩を駆使した連絡は、滞ることは …

月明かりの下で(1)

第一王子(30)の幼なじみの男女三人の話。変わらぬ日々がいつまでも続きそうな、そんな憂鬱な日々が途切れた時。  長い会議の後、ケレイス国の第一王子であるヴァルツは執務室に戻ってぐたりと椅子に座り込んだ。  金にあかせて作 …

外苑の乙女 後編

11  体が酷く怠い。  柔らかな布団の上にいるというのに、触れる何もかもが鬱陶しい。  寝返りをする気にもなれないのに、動きたくて体がうずうずして、落ち着かない。怠いのに、動くしかない状態に、ミシュナは深いため息を吐い …

外苑の乙女 前編

?ケレイス王国騎士ミシュナ(19)と任務中に出会った男の話。玉の輿物語。  17の年に騎士団に入隊してようやく2年。  もうすぐ成人の儀を迎えるミシュナは、見習いの地位から脱却し、剣の腕も上がってきた。  騎士団に入って …