2023/6/3 現在非公開となっております。
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限定公開の「再会」は、ずいぶん前にあるサイトの方へとお見せしたものです。
軍隊/下剋上/主従/淫具等々
確か後半部の舞台となった海岸線の話からこの話ができたなと思い出したところです。
作成した本人も存在を忘れてかけていたのですが、約1万字の話です。
※※※
「再会」冒頭部
少し早足で、人気の無い道を歩く。
固い靴底が細かな砂利を喰む音がせわしなく鳴り、遠くから車両のエンジン音が風に乗って聞こえていた。人一人分という狭い幅と日差しが強いのが難点といえば難点の別棟に向かう近道は、今日は他に使う者もいないようで、誰の姿も認めずに擦り抜けられた、と小さく安堵したその瞬間。
「お久しぶりです。ウィール少佐」
不意に倉庫の中から現れ私の名を呼んだ彼の、最初の印象は夏の陽光に照らされた、そのきらびやかなプラチナブランドだった。続いて邪気のない笑顔が目に入り、同時に鍛えられている筋肉質の身体に気づいたとたん、全身に鈍い音が響いた。
思わず見開いた瞳が、ただ彼だけを映して。
「……トゥ、トゥエル、伍長……」
震え、うまく動かぬ口から名が落ちる。
その呼びかけに彼が、二年前まで部下の一人だったトゥエルが頷いた。
「先日軍曹の拝命と同時に、縁あってこちらの基地に転属になりました。ですので、まずは少佐にご挨拶を、と」
丁寧でそつの無い対応は、確かにあの彼だと今更ながらに知覚して、身体の強ばりが激しくなる。
心臓は激しい鼓動を繰り返し、肺が酸素を求めて荒い呼吸を繰り返した。
一歩一歩、動けない私に、彼が視線を向けたまま近づいてくる。
「少佐」
カツン、と、彼の軍靴の底がコンクリに音を立てて、止まった。小さな音だが、心臓が激しく跳ね、息が止まる。
五十センチも離れていない距離。俯く視界に、彼の清潔に整えられた下士官兵のシャツに磨かれた軍靴が見えていた。
「少佐、どうか懐かしいお顔をお見せください」
「っ!」
吐息が耳朶を擽り、上がってきた武骨な指がするりと喉を撫であげて。
背筋を走る電流のような疼きに、喉が鳴る。
膝が震え、ぐらりと傾いだ身体が背後の壁に触れた。視界を塞ぐ広い胸から上へと見上げさせられ、高い位置にあるエメラルドグリーンの瞳が私を見つめている。
宝石のように綺麗だと女達には人気だった瞳が、その無機質な冷たさを孕んだままに見つめてくる。
「ぁ、う……」
不意に、冷たい恐怖が背筋を駆け巡り、熱を孕んだ身体を急速に冷ました。
……