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ONI GOKKO
〜アベック鬼ごっこ〜 6
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「家城さん……」
 手を伸ばし、その躰に触れようとした指先が、家城の手に絡め取られた。
「ったく……あなたの行動はいつだって私を混乱させる」
 ぐいっとその手が引っ張られ、不自然にねじられた躰が悲鳴を上げる。それに顔をしかめながらも、啓輔は逆らおうとはしなかった。
 引っ張られるままに動くと、家城の頬が啓輔の頬に触れた。手が解かれ後ろから抱き締められる。
「ほんとうにいつもあなたは私を翻弄する……」
 家城の吐息が耳元をくすぐり、啓輔はくすぐったさに身を捩った。
 だが、その吐息の中に含まれるアルコール臭に気付いた途端、背にはぞぞっと寒気が走った。
 酔ってる……。
 飲みにいったのだから酔っているのは間違いない。だが、問題は量だった。
 家城は酔うと本音が出やすい。いつだって落ち着いた雰囲気をかもし出す役目をしている態度が無くなる。それは……啓輔に対して遠慮のない行為へと結びつく。
 その事を考えただけで躰が一気に熱くなった。
 一言喋るたびにぞくぞくとした疼きが耳元から全身へと飛散する。
「判ってはいたのに……ねえ」
「え?」
 その言葉に啓輔ははっと首を捻った。
 途端に耳朶を甘噛みされ、ぞくりと走った疼きのせいで手の力が抜けてしまった。
 再び突っ伏した啓輔の躰に家城がやんわりと躰を被せた。
「服部さんが嫌がってたし、その前後の会話も聞いていたから……」
「じゃ、じゃ、何でさ!」
 聞いていたなら、判った筈だ。あれが服部のためのものだったって事は。
 なのに、こいつは!
 きっと睨みつけようとした啓輔は、家城の首筋への口付けから来る刺激にその目を閉じて堪えるしかなかった。
「ん……」
「それでも嫌だった。あなたが……啓輔が他人を抱き締めている姿はね。許せないとすら思った。彼は可愛いから……そんな彼を抱き締めている啓輔がひどく立派に見えて、私の官能を高めるに十分だったこともね。ね、私はあの時、あなた達に欲情したんだ」
「…ふっ……くっ………」
 家城の手が服の上から躰の線をまさぐる。
 その普段と違う言葉遣いとその内容が啓輔を耳から犯す。
 俺達に欲情……って……
「んくっ」
 柔らかなその手の動きは、まどろっこしさを持って啓輔の躰を熱くする。
 その手の動きに感じる明確な意志。それを感じ取った啓輔の心臓はどくどくと激しく高鳴っていた。心が期待している。
 家城に触れられることを。
「それが悔しかった。あなたは私のものだ。それなのに……はたから見ているのが私なんて……許せなくて、悔しくて……私はあの場から立ち去ることしかできなかった。胸の中にあるわだかまりを抱えたまま、今日一日過ごすことになった私は……あなたと話をすることすら辛かった……。だから、これ幸いと、飲みに行ったんですよ。元から約束がありましたしね」
「あ……ご…めん……っく……」
 言葉が絶え間なく耳に入ってくる。手が休みなく動く。
 絡められた下肢が、ぐいぐいっと啓輔の股間を押し上げていた。すでにジーンズの中であることがきついと訴えているそこ。だが、家城の手は未だに上半身のみを責め立てていた。
 彼を不安にさせた。
 彼を混乱させた。
 家城さんを……。
 それは、自分が取った軽はずみな行動にあるのだから……。
 啓輔は家城の行為を受け入れるしかなかった。
 酷く念入りな愛撫に晒された躰の疼きに堪えかねて、啓輔の目尻から涙が流れ落ちる。
「あ……」
 シャツの下から入ってきた手が、胸をきりっと掴んだ。ずきりと痛みと共にそれ以上の疼きが走る。肘をついてかろうじて胸から上を起こしているが、今にも突っ伏してしまいそうだった。
 だが、躰が意に反して半身を起こそうとする。
 家城の手が自由に動けるようにと躰が無意識に動いていた。
 抜けかけている腕の力を回復させるほどに……躰が家城の動きを待っていた。
 意識が家城の手の動きだけに向けられる。
「あ……家城…さん……」
「純哉じゃないんだ」
 揶揄され、くっと唇を引き締める。だが、一瞬後には熱い吐息を吐くことになった。
 たゆまなく動く手が執拗に動き、感じるところだけを刺激していく。
 背中側の服をたくし上げられ、露わになった背筋に、家城が口付けた。
 すすすっと背筋のラインを舌でなぞられる。
「あ、……くっ………んふう……」
「判ってる?もう二度とあんなことはしないこと」
「……う…ん……」
 こくこくと頷く啓輔に、家城はくくくと躰を揺らして嗤った。
「私は……あなたの喘ぐ姿を見たい。可愛いですからね。あなたがとても可愛く見える。だけど、そんな姿、誰にも見せたくないから……」
 肌をきつく吸い上げられる。その痛みがいくつもいくつも繰り返される。
「んあっ……はあ……」
 ごろっと躰をひっくり返された。
 涙で潤んだ視界の向こうに家城がいる。
 黒々とした髪が胸の上で動き、くすぐったく感じた。
 だが、しっかりと押さえつけられた躰を動かすこともできない。啓輔は、その両の手で家城の頭を掴んだ。
 腹のあちこちも多数吸い付かれる。
 舌でつつかれる。
 そのどれもが、啓輔を高める。
「い……えき……ん」
 だが、一向に触れてくれない下肢側。
 ただ、不規則にぐぐぐっと圧を加えられるだけ。
 しかしそれだけとは言え、啓輔は我慢の限界が来ていた。
「な、もう……」
 熱い吐息と共に、家城に訴える。
 自分で触れたくても、家城の躰が邪魔で手が届かない。
「今出したら、ジーンズ濡れるよ。我慢しなさい、もう少し……」
 へその辺りで声が響く。
「んくっ……」
 躰がまどろっこしいと疼く。くしゃりと掴む髪の毛を引っ張ってみるが家城は一向に意に介さない。
「な、離せよ」
 触れてくれないなら自分から触れたくて、押しのけようとするがそれすらも許してくれない。
 ふっと躰を起こした家城と目が合った。
「触って欲しい?」
 その口元に浮かぶ笑みに羞恥を覚え、それを隠すかのように啓輔はきっと睨み付けた。
「意地、悪ぃよ、あんたは……」
「意地悪したい気分なんで……ね」
 くくくと嗤う家城に啓輔は為す術がなかった。それどころか普段見られないその姿に、ぞくりと半身が反応すらする。
 激しい行為ではない。
 ただ、柔らかく丁寧な愛撫がしつこい位に繰り返される。いつもの家城ではない。それが啓輔をさらに高め、いつもより早く限界を迎えていた。
 劣情を隠そうとしない家城の目が啓輔を捕らえ離さない。
「うっ」
 いきなり触られた。
 ジーンズの下で苦しく張りつめているモノが、触れられた途端弾けそうになった。
「んくうっ!」
 家城の腕を握りしめ、歯を食いしばって暴発寸前で堪える。
「いい顔……だ……」
 熱い声が啓輔の喉元でし、そして仰け反った喉元に熱い舌が触れた。
「んくっ……あっ」
 ぎりぎりと爪が立つほど握りしめているというのに、家城は僅かに顔をしかめただけだった。それどころか、うっとりと欲情色でその目元を染めている。
 啓輔はもう考える事ができなかった。
 躰が刺激を求めていた。
 まだほとんど服を着たままの行為だというのに、躰が泣き叫びたいほどに家城を求めている。
 触れられたくて……そして入れて欲しいと切に願う。
 ぞくぞくと伝わり、時に一気に飛散するその刺激は、必ず全てが下半身の一点に集中する。弾けたいと願うそこを、必死で我慢する。
 まだ服を着たままだという、その意識だけが啓輔を堪えさせていた。
「あ、も……な……もた…な……くっ!」
 なのに家城は啓輔を嬲るかのように躰を固定し、決してそこを露わにすることはしない。
 仕返し……。
 ふっとそんな言葉が浮かんだ。
 やっぱ……怒って……るんだ……。
 酒に呑まれた家城は……啓輔の敵う相手ではなかった。
「あ、ああっ……だ、からっ!」
 啓輔の声に悲壮さが混じる。
 ぼろぼろと流れる涙がこめかみを伝い、床へと流れ落ちた。
 もう快感から逃れる事ができそうになかった。
「た、のむ……から…な」
「我慢…できない?」
 喉元で囁かれるその触れる吐息すら、啓輔の躰を刺激する。
 啓輔は必死で頷いた。
「脱が……て……」
 そう訴えた途端すっと躰が軽くなった。
「あっ」
 温もりが離れることにふっと不安になる。伸ばした右手が家城を追いかけた。
 その指があやすように絡め取られ、頭の横で押しつけられた。
「もうちょっと待って」
 先ほどまでとはうって変わって優しい声が響く。
 程なくして衣服で締め付けられていた腰が解放された。
「啓輔……」
 欲情に掠れた声が耳朶を打つ。
「あ……」
 直に触れられたそこは見なくても判るほどに濡れそぼっていた。
 ぬるりと動く家城の指が軽く先端を爪弾く。
「ああっ!」
 我慢などできなかった。
 さんざん煽られ続けたそこは、ただそれだけで吐き出してしまう。
 急速な解放感が、激しい快感を伴って啓輔を責め苛む。
 びくびくと震える躰を止めることができなくて啓輔は家城にしがみつくしかなかった。
 突っ張った足が邪魔になっていた大きなソファを無意識のうちにずるっと動かした。
「あ……はあ……」
 何度も大きく呼吸を繰り返す啓輔を家城がそっと抱き締めた。ぐったりとした啓輔の半身を起こさせ、あやすように背中をぽんぽんと叩く。
 ……気持ちいい……
 うっとりと身を委ねていると、家城が優しく言った。
「我慢……させすぎました?」
 その言葉に啓輔が虚ろな視線を向けた。
 ここまで我慢したことはなかった。
 意志だけで我慢するのがこんなにも辛いことだとは思わなかった。だけど、家城が我慢しろと言うから……啓輔は我慢した。
 従わなければならないような……気がしたから。
「可愛いよ」
 囁かれる言葉に、躰も心も反応する。
 口付けられ、舌を絡め取られる。
 音を立てて舌を吸い上げられ、ただ貪られるのをなすがまま受け入れていた。
 自分が達っただけなのに……躰も心もどこか満足していて、気怠さだけに支配されていた……。
 が。
「まだ私が満足していないからね」
 どこか冷ややかな言葉が聞こえた。
 あっ!
 ぐいっと握られた自分のモノを扱かれ、啓輔の口から再び喘ぎが漏れ始める。
 向かい合うように向きをかえ、足を開かされ、その間に家城の躰が入ってきた。
「んあっ!」
 躰の中にめり込むように入っていく感触に、啓輔は漏れる声を止められなかった。
 慣らされたとはいえ、それでも最初は苦痛が勝っている。
「んくう……はあっ……」
 息を大きく吐いて、痛みを逃す。
 家城は啓輔が達った後、休む暇なく啓輔を再び追いつめた。
 一度覚えた快感を啓輔の躰がさらに欲するようになるのを、楽しげに見つめている。
「あ、ああ……も……動か……はあっ!」
 ずんと突き上げられ、制止する言葉は喉から発する事すらできない。
「可愛い…から……離したくない。いつだって手の中に置いておきたいのに……」
 耳元で受ける告白は、啓輔の理性を崩壊させる。
「ああっ!」
 突き上げられるたびに、嬌声が喉から迸る。
「啓輔……ね、気持ちいいだろ?」
「んっ……あ……いい…!」
「啓輔が望めばいつだってこうすることができるのだから……だから……」
 微かな声だった。
 啓輔は快楽に流されながらも、のろのろと瞼を開き、家城に視線を送る。
「な…に?」
「もう二度と他人に抱き付いたりするな……」
「ああっ!」
 ぐんと突き上げられた途端に、激しい快感が飛散し、背を大きく仰け反らせる。
 開いた口を閉じることすらできなくて、涎が顎を伝っていた。
「啓輔……お願いです……」
 何度も何度も家城が呟く。
 襲ってくる快感に晒され、啓輔はかろうじて頷くことしかできなかった。
 

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