恐怖に動けない体に男達がのしかかる。
蒼白になり総毛だった肌に舌がいくつも這う。
腕や足に、乳首からヘソ、そしてさらに下へと舌が進む。
さすがに、三枝の舌が陰毛をかき分けながらも下に進み始めた時には、暴れたけれど。手綱を強く引っ張られて、痛みに体が硬直する。
視界の中で、頭が移動していく先にあるのは、こんな中でも涎を垂らし快感を待ちわびる敬一のペニスで。
おかしいのに、まるでそこだけ違う生き物のように、ひくひくと蠢いている。
さすがに変だと気が付く。
この触れられるたびにざわざわと大きくなる疼きも、考えたら変だ。
酒だけのせいではない。ここのところ忙しくて、抜いていないだけのせいでもない。
きっと、何か飲まされた。
心臓がドクドクと速い速度で鳴り響く。寒いのに、怖いのに、痛いのに、体の芯から生まれる熱は、さらに高くなっている。
「元気なチンポだ。期待に打ち震えてるって感じだな」
「太さもあるし、エラもきっちり立って、女泣かせの一品だねこりゃ」
「はは、宝の持ち腐れだ。代わりに飾り立ててやるよ、俺が」
「ひっ、な、やだっ……」
男達にのしかかられた今、口から出る言葉はすべて虚ろに響く。
「ピアス、どんなのがいいかな? シルバーのごつい奴で、穴を塞ぐのが似合いそ…」
「いきなりそれかよ、初心者にはきついって。俺としちゃ鎖で飾れるようにして貰いたいんだが」
「塞がれちゃ、しょんべんもまともにできないんじゃ。いっつも座ってやらねぇと飛びちっまいそう」
「けっこう可愛いんじゃないですか? 女の子と同じように毎回座って用を足す敬一君って」
それがどんな飾りなのか、敬一には想像もつかないけれど。
ただ判るのは、その言葉を、誰も止めさせようとはしていないこと。
「まあ、その前に」
「真の快楽ってもんを教え込まなきゃな」
「ですね。そうしないと、それを与えられない辛さってのも判りませんし」
「ケツへの刺激だけで、タンクを空にしてやるよ」
四人の男が顔を見あわせ、愉しそうに嗤った。
転がされた敬一の周りにはいつの間にか見たこともないような道具がたくさん転がっている。
その中から三枝が、液体の入ったボトルを取り上げた。四人の中で先導を切るのはいつも三枝だ。
「あ、あぁぁっ」
股間の奥。
広げた股の背後に回った三枝の手が、尻の肉を広げると同時に、体内に入り込んできた。
細くて滑っている。
けれど、排出しかしない場所に侵入してくるそれは、異物感を強く与えてきた。きゅうっとアナルが引き締まり、滑っているそれを締め付けてしまい余計に形が露わになる。
「ふふ、うまそうに銜え込んで。けど、そんなに力を入れてはダーメ」
「ひっ、ぐうっ」
いきなり手綱が引っ張られた。
固く眼を瞑った敬一の耳に、生暖かい吐息と共に言葉が響く。
「力を抜かないと、もっと痛いことになりますよ。ほら、大きく息を吐いて」
引きちぎられそうな痛みに呻き、優しい声音に縋り付く。
はあ──と大きく息を吐き、強張った尻から力を抜いて、意識してアナルを弛めた。
痛いのは嫌いだ。
本当なら、なんとかして逃げ出したかったけれど、とうてい叶いそうにないのなら従うしかなかった。
もともと、何かに逆らって突き進めるほど、敬一の心は強くない。
さらに、子供の頃から体育会系とは無縁で生きてきた体には、強いモノに立ち向かうほどの力もついていなかった。
だから、言われるがままに従うしかなかった。
それがどんなに理不尽で、さらに状況を悪くするとは判っていても。
「ひっ、くっ……うえっ……えぐ…………」
「ああ、泣いちゃって、かわいそう……」
ひくひくと嗚咽を零す敬一に、鈴木が口づけを繰り返す。
溢れ出た涙を舌先で掬い上げ、かわりに唾液を顔に塗りたくる。
「怖いのも最初だけです。すぐに欲しくて堪らなくなって。そんな時に泣いて強請る敬一君はきっととても可愛いでしょうね」
「俺的には、イヤだイヤだって言ってんのを無理矢理するのもオツなんだけどなあ。こいつ大学生だろ。知り合いのいっぱいいる大学のトイレで立ったままケツマンコに突っ込んでさ。へへ、声を押し殺してるところでぐちゃぐちゃに突き上げて、狂わしてぇ」
「おやおや、丹波君は相変わらず。でしたら、わざとお友達をトイレに誘ってみたいモノです。扉一枚隔てて悶える敬一君は、可愛いと思いますよ」
この中ではまだ優しいと思っていた鈴木が、丹波の言葉に同意していた。
「あとね、蕩けるほどに解してから太い玩具を挿入して、お散歩に連れていきたいです」
「お、それも良いなあ。たくさん人がいるところで、射精させてさ。濡れまくったまんま、今度は電車の中で痴漢ごっことか」
頭の上で交わされるこれからの計画。
ただ涙を流すことしかできない敬一を絶望に突き落とす。
「ほら、怠けていないで手伝えよ」
「はいはい」
体内の異物感が強くなる。
さすがに辛いと身悶えると、また手綱を引っ張られて。
ロープ一本で良いように扱われながら、ただ辛いだけの行為を、自ら受け入れるしかない。
「やめて……もう……許して……」
アナルに食い込む指が増える。狭い肉壺に注がれたジェルの助けを借りて、固い肉をどんどん解して広げていった。
乳首にはそれぞれに人の口が吸い付いていて、引きちぎれられそうな痛みが走る。けれど、それだけでも無くて。
鈴木の細やかな動きをする指が、表皮をくすぐり移動する。
「やめっ、あゎぁ……っ、こんな、あぁ──」
ペニスが、粘膜に包み込まれた。
熱くて肉厚なモノに巻き付かれて、きゅうっと引き絞られる。
「や、やぁっ」
加藤による男の剥き出しの性感帯に与えられる行為に、敬一の目の前が白く弾ける。
ちゅるちゅると音をたてて吸い付かれて、尿道の中にある先走りが吸い上げられて。その初めての感覚にも、大きく喘ぐ。
普通じゃない行為とはいえ、知らぬ間に盛られていた薬に敏感になっていた体は、敬一の意識などお構いなしに反応していた。
「あ、はぁぁっ──ヤぁ……」
恐怖はある。
心の奥で、恐怖に追い込まれて縮こまっているものがある。抜け出そうと抗う力がたいそう弱いそれは、敬一の理性だ。
その恐怖の上から、今度は快感が襲いかかる。
ダイレクトなペニスへの愛撫は、自慰などよりよっぽどイイ。
そんな自分が見たくなくて、固く眼を瞑ってしまうと、今度は触れる舌や粘膜の感覚のみが増大する。
「ひっ、もうっ、やだ、離せっ」
くいくいっと手綱が動く、その微妙な刺激にすら感じてしまう。
痛みだけでない、苦しいような圧迫感が、脳髄に届く頃には快感に変化しているのだ。
一度感じ始めてしまった体は、一直線に突っ走るだけだ。
「もっ、達くっ、いくっ、離せっ、やだぁ」
それでも男に達かされると、何もかもが壊れそうになってしまいそうで、必死になって堪えたけれど。
「ひはぁぁっ」
ドクン、と全身が跳ねた。
アナルに入った指先が、体の中で何かを捕まえた。
その瞬間、堪えきれない濁流に呑み込まれ、敬一の体は一瞬で枷を失った。
震える腰を押さえつけられたまま、ペニスがびくびくっと震えている。
顔を上げた三枝の口元から白い液体が流れ落ちた。
「ふふっ、感度はばっちり。この子、前立腺刺激で達ったよ」
「そりゃ手間が省けるな」
その言葉に、敬一の体が悲しみに震える。
口から抜け落ちたペニスは唾液で濡れそぼり、先端から白い精液を滲ませていた。その一向に萎えようとしないペニスに、再び指が絡まった。
「もうここへの刺激はいらないな。今度は、穴だけで達かせてあげよう」
「もう解れたか」
「まだちょっとキツイかも知れないけど……。でも入るんじゃない? あ、丹波君は最後ね」
「えぇっ!」
「丹波君大きいから、最後でもきついって」
「ぶぅ……」
飛び交う会話にこの先の行為が見えてくる。
三枝がいた場所に、加藤が入り込んできた。
手早く脱ぎ去った衣服の下から現れるのは、見間違いようのない大人の男の体だ。
慣れた仕草で薄いゴムが被さったペニスを軽く振って苦笑する加藤が、苦笑しながらぼやいた。
「なんか、それって俺が一番粗チンだって言われているような……」
そういって手早く扱き上げたそれは、瞬く間に敬一のペニスより一回りは大きくなった。
「丹波君が大きすぎるだけってことですよ。一番なのは大家さん特権だって判ってるでしょうに」
「言ってみただけだっつうの。相変わらず鈴木はくそまじめだって、んじゃ、行くぜ」
「えっ、だ、ダメだっ、やめろっ」
尻の肉に、ゴム越しでも判る生暖かい棒が当たっている。
ぬるりと数度肌を擦り、間違いなく狙う場所に近づくそれに、一気に全身が硬直する。
引きつった頬に、鈴木の唇が触れた。
「固くなるときついですよ」
細やかな指先が、乳首に触れた。
「ほら、こっちも可愛がって上げますから」
「い、いや、だって……ひぁっ」
摘み上げられ、二本の指の腹で潰され、擦られる。
とたんに唾液が溢れるほどのもどかしい快感に襲われて、ふっと意識が乳首の方に逸れて。
「あ──っ」
ミシリ
骨がミシミシと軋んでいた。
体の肉が柔らかいのに太い芯のある肉の棒に、引き裂かれていく。裂ける痛みが、背筋から一気に脳天まで走り抜けた。
響いた悲鳴は音が無く、見開かれた瞳は何も捉えていない。
「あぁーあ、いたそ」
嗤う声が遠く、僅かな快感は全て吹っ飛んでいた。
それなのに、その肉棒は、入ってくる。
指などの比ではない太さがぷつりと項目の狭い肉壁を押し広げ、先を飲み込んですぐに柔らかさがなくなった固いばかりの茎でさらに広げていく。
「あっ、あっ」
強く仰け反った体に、残りの三人が群がる。
我慢できないとばかりに自分たちのペニスを取り出して、敬一の体に擦り付けていた。
「イイ声で鳴く。なんか、これだけで達きそう」
「ごめんねぇ、でも痛いのは最初だけだからね。我慢してくださいね」
「俺のはもっと太いから、今の内にちゃんと慣らして貰えよ」
言葉が脳に届いても意味をなさないものばかり。
ただ、与えられる痛みと狭い肉壺を押し入ってくる肉棒の感覚だけが、敬一を支配していた。
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