【可愛い小鳥の飼い主の日常】

【可愛い小鳥の飼い主の日常】

既出【可愛い小鳥】の続編です。
挿入はありませんが、鬼畜なご主人さまの異常な思考がお好きな方はご堪能ください



 手に入れた小鳥が甘く鳴き続けるのを聞きながら、私は会議の最終確認をしていた。
 今日は大切な取引先との会議。さらには夜の接待まで予定がびっしり詰まっている。
 相手は建築会社の社長だが、街の小さな土建屋から大きくなった会社で、社長本人も親父という呼び方のほうが似合う樽のような体つきの中年だ。
 控えめに言ってもかなり私の美意識からも外れており、今からすでに憂鬱な気分になっている。さらにとにかく眠気が襲ってきていた。
 だからこそ、かわいい小鳥のさえずりで心を癒し、英気を養おうとしていたのだが。
 先ほどから少しその声が小さくなっている。
「どうしたんだい、もう疲れたのかな」
 視線を向ければ、両手を自身の事務机について前屈みになった小鳥が汗を滲ませながら震えていた。足は今にも崩れそうに、俯き目を閉じた顔は苦痛を耐えるようにしかめられている。
「あ、く……もうし、わけ、あり……せん……」
 絞り出すような声は掠れ、机の上で手のひらの下敷きになった反省文がシワを作っていた。
「はやく続きを読みなさい」
 会議の準備をしている間読ませていた反省文はもっと長いはず。促せば、かわいい小鳥はシワだらけになった報告書の紙から手を避けて、赤く染まった頬もそのままに口を開いた。
「ふ、れて、きた……手のひら……は熱く、うっ……わ、たしのむ、胸……」
「そこはおっぱいと読みなさいと言ったね」
 間違いを指摘してやれば、息を飲んでカクカクと頷いた。
「も、もうしわけありま……ん、わた、しのおっぱいをつかみ……激しく、もんで……うぅっ……くっ……ち、くび……を指で摘まんでぇ……ごりごりと扱きまし、た……。わたし、は、ひうっ、あ、あぅ、き、気持ち良く、てぇ、尻――い、いえ、ケツを振って……お、男のチン、ポに擦り付けて……あ、えぎまし、た……ああっ」
 ようやく一文が読めたと思ったら、またがくがくと激しく痙攣して硬直している。
 細い身体に合わせて作られた淡い色合いのスーツの股間にじわりと粗相の痕が広がっているのを、私は机越しに見つけた。
「おやおや、我慢しなさいと言っておいたよね」
 かわいい小鳥は、少し我慢が利かなくて言ったことを守れない。
 冷たく指摘してやれば、怯えたように唇を戦慄かせて、私を見上げてきた。
「それに反省文もきちんと読めないなんて、悪い子だね」
「あ、や、も、もうしわけ、ありませ……、」
 しかも小鳥は昨日言いつけに背いて緑深い公園の暗いエリアに入り込み、野良犬に襲われかけたのだ。
 私が見つけたときには、大柄な黒い髪の野良犬は脇目も振らずに盛っていて、かわいい小鳥を茂みに引きずり込んで押し倒しマウントを取っていたという。
 貞操帯をしっかりと着けていたから未遂で終わったけれど、あやうくこの小鳥は処女を散らすところだったというわけだ。
「ちゃんと明るい道を散歩していれば、あんな野良犬に襲われることなんかなかったんだよ。わかっているよね」
 少し遠出をした公園は緑が豊かで、程よい散歩道がある。
 いつも自宅と会社を車で往復するだけの小鳥だから、たまには自然に触れさせようと連れて行ったのが昨夜だ。
 仕事の関係で散歩の時間は遅くなったが、外灯が煌々と照らす散歩道は歩くのにはなんら支障がなかった。そこで「自由に散歩してきていいよ」と放してやって、私は車の中で少しPC仕事をしていたのだが。
 時間になっても戻ってこないかわいい小鳥に、しばらくはしようがないなと待っていたのだがそれでも戻ってこない。仕方なく迎えに行けば、散歩道から離れた茂みの中で小鳥が野良犬に襲われていたのを発見したというわけだ。
「ほら、粗相の罰は後にしよう。さっさと最後まで読みなさい」
 幸いにして会議までもう少しある。
「は、い……」
 ひくっとしゃくり上げ、涙を流す小鳥は青ざめた顔で反省文を読むことを再開した。
「ノライヌ……は、わたしの処女を奪おう、と……わ、たしのお気に入りの栓をつ、かみ……んくっ……激しく、揺らして」
「激しくねえ、それはどの程度かな?」
「あ、はい……お尻の――いえ、ケツの処女、マンコが広がる……ぐらい、です」
「ふーむ、このぐらいか」
 机の端に置いていたリモコンをカチカチッと二段階ぐらい上げてみた。
「ひぐぅぅぅっ!」
 途端に小鳥が机に突っ伏し、突き出した尻をカクカクと激しく震わせた。
「あ、うくっ……は、はげしっ……ひぐぅぅっ!」
「それとももっと強いのか?」
 カチッ。
「ひあっ、ぃぃぁぁぁっ――!」
 小鳥のかかとは上がり、膝は伸び、先より上がった尻はぶるぶると傍目から見ても震えていた。小鳥はというと右のこめかみを机に押しつけ、口の端から舌を出し、白目を剥いている。
 恍惚とした表情は、まさに忘我の境地。私の問いかけに返事をする気もないようで、私はため息をつきながら小鳥へと話しかけた。
「これぐらいではないのか? こら、返事をしなさい」
 だけど小鳥は一向に返事をせず、そのうちに会議の時間も迫ってきたので、私は仕方なく小鳥をそのまま放置することにした。


 昨夜野良犬に襲われた小鳥は、幸いにして私のお気に入りである処女性を失うことはなかったが、着ていた薄絹の着物は剥ぎ取られ、丁寧に手入れをしていた肌は傷だらけにされていた。特に慎ましくも淫らな乳首はピアスこそ外れていなかったが、涎だらけの上に噛み痕だらけ。
 黒髪で大柄な野良犬はどうやら乳首が大好きだったようで、ことさらにそこばかりを銜えていたようだ。
 さらに特大バイブ機能付きの貞操帯もなんとか外そうとしたのか、ベルト周りはうっ血して傷を作っていたほど。
 かわいい小鳥に見合った愛らしいペニスも乳首と同様に、野良犬の精液らしきものがべったりとくっつき、赤黒く勃起した姿を晒していた。まあそれは、散歩の前からだったのでいいのだが。
 しっかりと射精防止バンドをしていたため粗相はしていなかったようだが、着けていた私の小鳥だという鑑別札は鈴口のピアスから外れて行方不明になってしまっていた。
 鑑別札は小鳥が行方不明になっても探すことができるGPS機能を組み込んだもの。その機能を使い最終的には発見したが、その大切な札を無くした原因はやはり言いつけを守らず暗い茂みに入り込んだ小鳥。
 昨夜は自宅に戻った後、傷の手当ての後はその身に染みるまで謝罪をさせ、反省文を書かせた。
 家で使うパソコンを小鳥が使うためにと特別に作った入力器具は、かわいい乳首の先に取り付けた器具を使ってキーが押せるものだ。
 吸盤状の治具を胸につけてその先端にある突起で、押しやすいように大きくしたキーが押せるという道具。押すには少々力がいるが、キーが反応すれば震動が発生し乳首を通してわかるので、押してなかったということはない。うっかり手を使わないようにと後ろ手にした手は貞操帯のバイブで遊ばせていたのだが、反省文一つでもなかなかはかどらず、結果付き合った私まで徹夜に近い。おかげで寝不足というわけだ。
 もっともそれは小鳥も同様で、反省文一つで疲れ切っていたのか朝は起きれず、私も小鳥も遅刻寸前だった。


 会議は滞りなく進んだが、どうにも最後の詰めでつまずいてしまった。
 樽親父はのらりくらりと返答を引き延ばし、最後ににやりと嗤いながら一枚の写真を私へと差し出してきた。
 その写真を見て、私は驚いた。
 昨日私のかわいい小鳥を襲った野良犬が、全裸で縛られ転がっていたのだ。泣き濡れたとわかる情けない顔は、私が殴った跡がくっきりと残っている。
「これは?」
 と思わず問えば、樽親父はイヒヒと虫唾が走る笑みを見せた。
「昨夜公園で拾いましてな。なかなか楽しい玩具ですわ」
 どうやら同好の士らしい返答に、私はしばし黙考した。この樽親父の目的がわからなかったからだ。
 それにもしかすると私のかわいい小鳥が襲われている姿も見ていたのかもしれない。あそこには時折変質者が現れるという話も聞いたことがある。だからこそ明るいところを使うようにと言ったぐらいだ。
 美しい白絹の薄い着物を着た小鳥が外灯に照らされている姿は、いつものかわいさよりは妖艶さんのほうがたっていて、思わず貞操帯がしっかりとはまっているか確認したが、あの姿を見たのはどうやら野良犬だけではなかったらしい。
 まあ、私も自慢したいと思っていたから見られたの別にいい。
 それよりこんな仕事の場所で、この樽親父は何が目的か、というほうが重要だ。
「それでですな、あんなにかわいい子で遊んでいるあなたなら、楽しい遊びをご存じかと思って。たとえばこういうのをお持ちじゃないかなと」
 やはり見られていたかと思ったが、樽親父が差し出した写真に私はためらうことなく頷いた。
「確かにこれなら持っている」
 有名な細工師が作った一点物。技巧を凝らした品物は男の逞しいペニスを象った大理石細工。根元の台にある作成者のサインは確かに同じだった。
 もっともオブジェという触れ込みだが、実は私の趣味には合わない代物だ。
 もともと動かないものは今一つ好みではないし、何よりそのオブジェはモデルがいる。そのモデルからお近づきの印にと渡されたが、その人もなかば冗談のように配っているらしい。
 小鳥のようにかわいいものならまだ良いが、むくつけき男のものなど、しかも私より大きいという男としての矜持をくすぐる代物など見たくもないとしまいこんでいたのだが。
「これをいただけるなら、先ほどの案件、サインを致しましょう」
 どうやらモデルに問い合わせをして、私のことを聞き出したらしい。
 個人情報の漏洩だと憤慨ものではあるが、あの男も何か意図があって私が持っていることをこの男に伝えたというほうが正しいだろう。
 あのモデルの男ならば、私が小鳥をあそこで遊ばせることも調べがついているはずだ。
 ともあれ、あのモデルが私を推薦したのなら、何も問題はない。いや、私の美意識的には問題があるがそれはおいといて。
「もちろん差し上げます。それとその犬にあった玩具も一緒に」
「おお、それは楽しみです。あの方より、あなたの趣味のコレクションはとてもすばらしいと窺っておりますので」
 たいそう満足したらしい樽親父はその後の接待でも上機嫌で、私は予想以上の好条件で契約ができたのだった。

 部屋に戻れば、自分の机の横で小鳥が息も絶え絶えに喘いでいた。近づけばブーンという震動が床を介して伝わってくる。
「小鳥、かわいい小鳥、今日はもう帰るが、おまえはどうする?」
 問いかけても、うつろに開いた目は私を捉えず返事もしない。
「そう、だったらずっとここにいるといいよ。もう私の元は飽きたかな。それならそれでいいけどね」
 私ももう疲れた、早く帰りたいと踵を返せば、不意に足首を掴まれてたたらを踏んだ。
「かわいい小鳥、おいたは厳罰ものだよ」
「……かえ、ります……おいて、いかないで……、ご主人さま……」
 床に這いつくばったまま、顔だけ上げて懇願する瞳は濡れていて、掠れた声音で縋り付いてくる。
 その愛らしい姿に、私は頷いた。
「そう、帰りたいなら連れて帰ってあげるよ」
 その言葉が届いたのか、小鳥が嬉しそうに微笑んだ。
 本当に、幸せそうな笑みを浮かべて、私に手を伸ばしてきた。


 かわいい小鳥の口が私のペニスを銜え込み、何度も何度も抽挿をくり返す。
 ソファに浅く腰掛けて、小鳥がしたいようにさせている間に、私はパソコンを立ち上げて、ウェブ電話をつないだ。
『やあ、何か用かい?』
「樽親父の件だが」
 たぶん想像はついてはいたが、一応確認は必要だ。私に自分のペニスをディルドにして送った男は、私の言葉にしばらく考え込んでいたが、「ああ」と両手を打った。
『あの建築会社の社長だね。うん、僕が君のことを教えた件かな?』
「伝えるなら一言連絡が欲しいんだが」
『ごめんごめん。でも君ならうまくあしらえると思ったんだよ』
「で、あの樽親父はおまえの客か?」
『そう』
 まだ若いように見えてその実十分に狡猾なこの男は、会員制SM俱楽部を経営していてなかなかの荒稼ぎをしている。特にプレミアム会員は表に出せない遊びもできるとのことでずいぶんとその手の嗜好の人間に人気があった。
『あれね、僕はもうシリーズで作ったやつを全部配り終えちゃってたから在庫がなくてね。でも君ならどうせしまいこんでいるだけだろうからと思って、それであの公園を教えたらついでにおもしろい獲物がいたらしいね。そっちのほうでも感謝されちゃったよ』
 色ぼけした大学生だったか、あの野良犬は。
 どっかの質(たち)の悪い関連かと思って、すぐに結果を出してくる組織に頼んで調べたが、特に問題ないようで放置しておいたのだが。
『前から聞いていたあの社長の好みにぴったりだったんだよね』
 なるほど、いろいろと繫がってはいたが、直接的ではなかったようだ。
「今度からは先に連絡を飲む」
『そうだね、今回は僕のミス。そうだ、おわびにそのかわいい小鳥と遊べるプライベートビーチに招待してあげるよ。小さいけど設備の整ったコテージ付き、どう?』
「ああ、それはいい。別荘はこの小鳥を買ったとき以来だ」
 私の言葉に、銜えたままの小鳥がびくりと震えた。その瞳が浮かべるのは恐怖……だけではないだろう。垣間見える股間では、小鳥のかわいいペニスがしっかり頭をもたげて期待に震えているのだから。
「二泊三日で借りたい」
『了解、準備しておくよ』


 私のかわいい小鳥は、今日もきれいな声でさえずっている。
 美しい裸体に陽の光を浴びせて、潮の匂いのする白い砂浜で走り回っていた。
 その傍らには躾の行き届いた大型犬が三匹。
 その中にはあの公園で小鳥を襲った野良犬も――いや、今は立派な飼い犬だったが、その姿もあった。
 三匹ともにさっきあげた特製の餌が良かったようで、小鳥と遊ぶのがずいぶんと楽しそうだ。
 その股間ではいきり立ったペニスは大型犬らしくたいそう立派。
 涎を垂らしながら小鳥と遊びたがっている。
 私はふと自分の傍らにあるテーブルに置いたままだった貞操帯へと視線を向けた。
 それから小鳥が走って目指している先へ。
 そこにはこれよりもはるかに太いディルド付き貞操帯が置いてある。それに向かって走る小鳥は、さらさらの砂地に足を取られてさっきから何度も転んでいた。
 それは後脚を鎖でつないだ犬たちもそう。それでもぎらつく目をした犬たちは徐々に小鳥との差を狭めていた。
「小鳥、かわいい小鳥、急がないと処女を奪われるよ」
 囁く声がイヤフォン越しに届いたのか、小鳥が悲鳴を上げた。
「私は処女じゃないと飼わないからね」
 うっとりと囁いた言葉は、決して嘘でなかった。

【了】