可愛い小鳥

可愛い小鳥

 電車、玩具、肉体・精神調教、人身売買……、羞恥調教。直接的な表現は少ない……と思いますが、設定は調教陵辱系です。

ある日、たまたまたま乗り込んだ満員電車で出会った青年は、私の好みであったけれど。
特別に育てられた可愛い小鳥が大好きな、私の物語。

このお話はムーンライトノベルズにも掲載しております。





 私が彼を見つけたのは、本当に偶然だった。
 いつもは専用の送迎車で会社に向かうのだが、自宅近くの道路で大きな事故があったのだ。
 車がすぐに来れなくなったことに併せて、その日は商談のためにあるホテルに向かう必要があり、それが最寄り駅と同じ路線に有ったことから電車を使うことにしたのだが。
 同じようなことを考えた者達が多かったのか、それともこの駅はいつもこうなのか。
 ごった返すホームから押し込まれるように乗り込んだ電車はすし詰め状態だった。
 身動ぎ一つできないほどの満員電車の中は、小雨が降っている天候とも相まって、蒸せている。
 ドアに押しつけられるのはキツいが、蒸れた空気に息苦しさを覚える今は、外気を拾うガラスの傍だというだけでホッとしていた。
 ここまで酷いのなら、商談相手に事情を話してセッティングを遅らせてもらえば良かった、とも思ったが、すでに乗ってしまっているのだから仕方がない。
 まあ15分ほどで解放されるし、それまでこちらのドアは開かないし、と、無理に折り合いをつけつつもため息を付きかけたその時。
 同じくドアに向いて押しつけられている、まだ若い、けれどスーツ姿の青年が必死で息を殺していることに気が付いた。
 俯いたその両目は固く閉じられていて、眉間に深いしわが寄っている。しかもその濡れた唇は戦慄き、頬の強ばりから、音がこちらまで響きそうなほどに歯を食い縛っているのが判った。
 横顔からも判る端正な顔立ちの彼は、込み上げる何かに耐えているように震え、嗚咽のような吐息を零し、その頬は上気したように赤い。
 その辛そうな、けれど、それだけではないことを、私はすぐに気が付いた。
 視線を下に向ければ胸に抱いたカバンを掴む指が白くなるほどに強張り、小刻みに震えている。
 残念ながら、そこから下を見ることは叶わなかった。だが、電車の揺れを利用してもっと密着してみれば、彼の身体が不規則に揺れている。
 近づいた分、彼の必死に我慢しても漏れている、微かな喘ぎ声も聞こえてきた。
 その吐息は、こんな場所では不釣り合いなほどに、ひどく──艶めかしく。
 そう聞こえたのは、間違いではないだろう。
 その吐息に触れることができたなら、きっと堪らない熱を孕んでいるだろう。
 この手を彼の滑らかなうなじに触れてやれば、その悩ましげにしかめられたその眉間が、浅ましく崩れるに違いない。
 そんな明確な想像が、容易にできるほどに彼の淫らな欲情が伝わってくる。
 そう、この混み合った電車の中で彼は浅ましくも欲情し、淫らな熱を味わっているのだ。
──痴漢?
 という考えが過ぎったか、どうも周りの者達にそんな気配はない。
 それにどうやら、周りの人々の位置関係と、彼らの無関心さからか、私の他に気づいている者はいなさそうなのだ。
 だとしたら、彼は一人、こんな場所で遊んでるというわけで。
 きっと、他人に見せられないような淫らなオモチャをこの身体に仕込んでここにいるのだろう。
 それにしても、端正な顔立ちで、知的な真面目さを感じる彼は一体どんなオモチャ遊びを堪能しているのだろうか。
 確かめたい欲求はたいそう強く、けれど、それよりも。
 この愉しそうな遊びに興じている彼に触れたら、どうなるだろうか。
 脳裏に浮かんだその考えに、私は。



 私は浮かんだ笑みもそのままに、彼とドアの間に手を差し入れた。



「ひ、ぃ──」
 引きつった微かな悲鳴が、電車の音に紛れて微かに聞こえた。
 可愛い鳴き声は私の好みに合っていて、ますます楽しくなる。
 とんでもない朝になったと思っていたが、どうやら私はたいそうついているらしい。
 驚愕に見開いた瞳は、この歳にしてはきれいな透明感を持っているくせに、淡い朱が滲んでいて淫靡な色となっている。
 顔立ちは大人のそれだが、やはりどこか少年めいたものを感じさせていて、きっと学生か社会人なりたての20前後だろうと思わせた。
 その姿は私が好む小鳥達に近い物があった。
 成鳥になったばかりの初々しい小鳥達が初めて飛び立とうとしているような、そんな不安と希望が入り交じったような若さがある年代を、私はついつい小鳥と称してしまうのだが。
 彼もまさに私が大好きな小鳥のようで。
 手のひらに触れたそれは、硬いほどに張りつめていて、この湿度のせいではない湿り気すら感じられた。
 驚愕のままに向けられた怯えの滲むその瞳ににこりと笑いかけ、同時に硬く感じるそれをそろそろと指先で擦ってれやれば。
「いっ、ゃっ」
 ビクンと震え、額をドアに押し付けて必死で衝動を堪えている。
 どうやら達くまでにはならなかったが、それでも達きそうになったのは間違いない。
 たった一撫ででそこまでになるとは、たいそう敏感なのか、それとも愉しいオモチャお遊びで限界だったのか。
 多分両方だろうとほくそ笑んだ。
 それにしても、可愛い小鳥は鳴いてこそ愉しいものだが、いかんせん、ここは電車の中。
 大衆の中で、ひぃひぃ鳴きながら淫らに青臭い液で股間を濡らす姿を堪能したい気分もあるが、だからといっていらぬ痴漢騒ぎに巻き込まれてもかなわない。
 さてどうしたものかと考えつつも、慣れた指はスラックスのファスナーを下ろし、そうはさせじとばかりにドアに押さえつけられる圧迫感を、先端を爪先で引っ掻いて緩ませる。
「ぁ、く、うっ、ゃぁ……」
 熱く強請る鳴き声にそそられてしまうが、なにせここには私の愛用の道具は何一つ無い。
 せめてもっと敏感になる薬や、強力に震える数多の飾り達があれば良いのだが。
 せいぜい探り当てた熱く熟れて汁を垂らす肉棒を、指先で押し潰すように嬲ってやるくらいしかできない。
 もっと広い場所、そういつものパーティーのステージのように広ければ、この小鳥を奴隷達の身体による肉枷に嵌め、この涎ばかりの浅ましい肉棒に鞭当てて、もっと良い鳴き声を上げさせてやるのに。
「や、やめ…ぅっ」
 強張った指が堪えきれぬように自分の腕を抱きしめる。
 途端にその腕から私の腕に彼の鞄の重みがかかり、傾いたソレの中で何かが崩れる振動がした。
「ん、おや?」
 よく見れば、上部がファスナー式のその革のバッグは開いていて。
 上の方にちらりと見えたそれは、私のようなものであれば絶対に知っているものだった。
「あっ」
 慌てたように彼がバックを抱えなおそうとしているが、開いたそこからますますはっきり見えたものに、私の口元がたまらずに緩む。
「き、ひっ」
 握り潰す勢いで力を入れてから、ぬかるむ先端を爪で引っかきつつ腕を抜いて。
 涙を流して歓喜に震える彼の鞄からそれを引き抜く。
「や、待って……」
 縋るようにそれを視線で追っているのは、大好きなオモチャを取り上げられると思ったのか。
 小さなダイヤル式のつまみを親指の腹に当て、ジジッと僅かな震動とともに動かせば。
「ひぐっ」
 小さな鳴き声は可愛く掠れ、濡れた唇から覗いた舌が揺れている。
 見開いた瞳に溢れた涙がガラスを濡らし、零れた吐息が作った曇りを流し洗っていた。
 小刻みな痙攣は、彼が達った証拠だろう。
 先ほどまで触れていた彼の熱くたぎった肉棒に射精禁止の戒めなどの存在は無かったから、彼は仕舞い損ねた肉棒から、床やドアに向かって白い汚濁を吹き出したに違いない。
 いや、それとも。
 下向きに押し付けられたままであれば、彼のスラックスや靴にポタポタと落ちたということも考えられるが、なにしろ今は床も見えない混みようで、様子が見えないのがたいそう残念だった。
 そんな締まりの悪い穴には、私ならばたくさんの突起の付いた太い棒を差し込んで、自分では抜けないように鎖を陰嚢の根元につけた枷に括り付けて鍵をかけてしまって。
 勝手に達かないようにと、とくとくと言い聞かせるはずだ。
 まあもっとも。
 勝手に粗相をしたショックで 、俯いたまま嗚咽を堪えている姿を見たら。
 そして、許してください、なんて可愛いお強請りをする様をつい想像してしまって、そうなったら思わず許してやりそうな自分も想像できて、知らず苦笑を浮かべてしまった。



 長いようであっという間だった乗車時間は、心地よい風と共に終わりを告げた。
「大丈夫かね?」
 優しく問いかけても、楽しい遊びを堪能した彼は荒く熱い吐息を返すだけ。
 ホームに降りたとたんに崩れ落ちそうになった彼を支え、人の流れから外れた椅子に座らせたとたんに、飲み込んでいたオモチャが食い込んだのかヒクンっと震えて。
「あ、うっ」
 また達ったらしく、彼の股間の淫らな染みが大きくなる。
 けれど、朝の忙しい時間に私たちに視線を向ける者はおらず、当然ながら彼の汚れた靴にも、スラックスに染み込んだ痕も気づかれない。
 まして、俯いた彼が見せている淫らに蕩けた表情など、目にも入らないだろう。
 こうやって近くにいると、降りる寸前に限界まで回しきったダイヤルのせいか、微かな音が彼の腹からしていた。
 それにしても、この後どうすべきか?
 この後の商談がなければこのまま連れて帰って、もっともっと遊びたいのだが。
 だが、いつも便宜をはかってくれる知己の話をキャンセルする事もできない。それに、こんな可愛い小鳥ならば、飼い主もいるはずだから、私の勝手にはできないだろう。
 知的に見える端正な面立ちそのままにそれが淫靡に染まる様は、男の欲情を駆り立てるために育てられた結果のはずだ。それにたいそう敏感な身体に、鼓膜を擽る可愛い鳴き声もまた、そのためのもので。
 これは誰かが丹誠込めて育て上げた小鳥なのだと、私にはよく判っていた。
 だから。
「残念だが、ここでお別れしよう」
 虚ろな瞳が惑い、私に向けられる。
 ここで放置しても、飼い主が迎えに来るだろう。
 まあ小鳥のために自由に遊ばせてやっているのなら、どこにでもいる同好の士が遊び相手になってくれるだろうし。
 ただ、それが私でないのはたいそう残念だった。




 ホテルのスウィートルームで、久方ぶりに会った知己と雑談を交わす。
 どうやら品物は他の人間が連れてくる運びになっているらしいのだが、その彼が遅れているらしい。
 彼にはいろいろと便宜を図ってもらっている上に、私のことも良く知っていて、商談相手というより友人のような関係だ。
 お互いの仕事の話はもちろん、趣味の話までいろいろな他愛ない話をしているとき、ようやく来訪者が現れた。
「ようやく届いたようで。お待たせして申し訳ありませんでした」
 知己が申し訳無さそうに頭を下げるが、私はそんな彼の禿頭を見てはおらず。
「本日の品をお持ちしました。私が雛から2ヶ月育てた小鳥でございます。巣立ちの時が参りましたので、良い飼い主を捜していましたところ、お客様をご紹介いただきまして」
 品物を連れてきた男が表情も変えずに説明してくれるその間も、私の視線はその品に釘付けだ。
 部屋に入るまで支えられていた腕を離され、今は床に崩れ落ちている。
 トレンチコートは汚れ隠しの為か、はだけたそれの下からは生臭い汚れが染み込んだスラックスが見えていた。
 はあはあと艶めかしく悶える汗に塗れた肌からは、きっとあの電車の中でさんざん嗅いだあの匂いがするだろう。 
「全身いたるところが性感体であり、また非常に敏感になるよう調教済みですので、排泄、排尿でも勃起します。ただし、初々しさを損なわないよう精神調教も行っておりますので羞恥心も人一倍あります」
 その言葉とともに知己と小鳥を育てたという彼が私を見やった。
「そのあたりはもうご確認いただけたかと」
 どうやら、朝の電車内の遊技は仕掛けられた物だったらしい。
 知己に視線をやれば、悪戯っぽくウインクを返された。
「なかなか良い演技だったろう、君の運転手は。おっと彼を罰しないでくれよ」
 ということは事故があったというのは嘘だったのか。
「まったく。まあ、彼の悪戯好きも判って雇っている悪友でもあるからねぇ。ま、減給くらいはさせてもらうが」
 その分以上に、この男から謝礼をもらうのだから。
「また、調教期間中この身体に触れたのは私一人であり、挿入はしておりません。もっとも、処女を奪われる様々なレイプ映像を繰り返し見せ、また実際に目の前でその様子も見せましたので、男に犯されることを何よりも恐れています。また、女性経験も無いということです」
「おやおや、こんなに敏感なのに男恐怖症の処女だなんてねぇ」
 処女は大好きだ。まして男を知らない穴は、いつだって生身に対する恐怖を持っている。それに加えて犯される恐怖を教え込まれて。
 まったく、なんて可哀想な事を。
 そう思いつつも、零れる笑みは止まらない。
「さらに某大学の経済学部でトップクラスの成績ですので、頭も良い。一般家庭で育ち、道徳心もあります。礼儀作法の躾もできておりますのでお客様のお好み道理かと」
 全く、まるで私のために生まれてきたような小鳥じゃないか。
「けど、ずいぶんと汚れているね。私は清潔な方が好みだよ。こんなに垂れ流すのは……」
 目が離せないままに、口にした言葉に、知己が申し訳ないとばかりに苦笑して。
「躾はしているといったが、礼儀作法程度でしてね。頭はよいが我慢が足りないのですよ。そういう躾は君の方が得意だと思って」
「おやおや、私は調教済みの処女が手間がなくて好きなんだけどね」
 過去、愛でてきた可愛い小鳥達のように。
 だが、確かにこの小鳥は過去の小鳥達が色褪せて見えるほどに、私を魅了しているのも事実だ。
「それは申し訳ない。だったらちょっとサービスしますから、こんなもんでどうですか?」
 提示された金額は、そう言いながらも前と大して変わらない。
 良い意味でも悪い意味でも私を良く知っている知己に、私は苦笑を浮かべて。
「この小鳥に似合う別荘を一週間タダで貸してくれるなら。ちょうど明日から休暇をとっていたしね、丁度良い」
「おやすいご用で」
 即座に出された鍵からして、私がそういうのは判っていたのだろう。
 けれど悪い気分ではなかった。
 何より、わたしの頭の中は、この可愛い小鳥をどんな風に鳴かせようかとそればかりになっていて。
「この部屋も借りられるかい?」
「もちろんですよ。明日迎えを寄越しますのでそれまでごゆっくりおくつろぎください」
 小鳥を連れてきた男がスーツケースを差し出して、開いた中身を私に見せた。
「こちらもお付けいたします」
「これは素晴らしい」
「その小鳥に使った物もあれば、まだ一度も試していない物も。ですので、どれを気に入るか判りませんのでいろいろと揃えさせていただきました」
 私のコレクション並に揃った数々は、本当に試しがいがありそうなものばかりで。



 少し、張り切りすぎたかもしれなかったが、止められないほどに愉しかったのだから仕方がないと思うことにしよう。



 迎えが来たとき、私の可愛い小鳥は一晩中の遊びに疲れ果てていたけれど。
 一寝入りで疲れがとれたのか、車の中で薄く滲んだ程度とはいえ、粗相をしてしまった小鳥には、まず躾を行う必要があった。
 白い肌に、昨夜取り付けたばかりの私好みのアクセサリーがたいそう似合っているけれど、そんな可愛さに絆されないように心を鬼にして鞭を打つ。
「あひ、も、申し訳っ、ありっ!、ああっ!」
 白い肌に浮かぶ朱色の線がよく似合う小鳥の躾は大変が、その鳴き声は可愛らしい。
 ついついたっぷりと鞭打ってしまい、「やりすぎたけど、お前のためだよ」と、震えて鳴く小鳥のペニスに枷を付ける。
「だけどもっと我慢しないとね。これが我慢することを教えてくれるから」
「ひっ、やぁ、栓はぁ、ひぐっ」
「さあお尻にも飾りを」
「っも、ムリィっ、ひぃ、あ、ふとぁ、ああ」
 私は処女の小鳥が好きだから、この子はずっと処女にしておくつもりだけど、この子の口は極上の性器といっても良いほどに素晴らしく、性欲処理には問題ない。
 それに、アナルと違い最後にはとても綺麗にしてくれる。
 その代わり、アナルにあげるのはいろいろな形のオモチャだ。今日のソレは、私の物を象った特別製で、奥の奥まで差し込めば、可愛い鳴き声を上げながらビクビク感じてくれていた。
 そのお尻に、羽根で作った飾りをつけて。
「きれいになったね、さあ行こう」
「やぁ、もう、ゆるひてぇ、あ、あうぅ、ぃイっ、くふっ」
 特別にしつらえたそれが持つ瘤が、良いところを刺激するのだろう。何度も何度も硬直して、達っているように見えるけど。枷と栓のおかげで我慢できているようだ。
 私の言いつけを守ることが嬉しいらしく、嬉し泣きで悶える小鳥を別荘の広間に括り付けて。
「さあ、お前の自慢の鳴き声を、私にたっぷりと聞かせてごらん」
 飾りすべてに付いているバイブ機能を全部マックスにしてやれば。
「ひゃぁあ、ひゅるうっ、こ、われるぅぅっ!!!」
 別荘中に響きわたる鳴き声に、私はうっとりと聞き惚れた。
 今はもう、可愛い小鳥の鳴き声を聞くことは、私の一番のストレス解消方法になっている。
 それをゆったりと寛ぎながら聴いていて。
「ああそうだ、会社の秘書にしてあげれば、会社にも連れていけるねぇ」
 むさ苦しいストレスだらけの役員会がもうすぐある。
 いつも疲れ果ててしまうその会議も、この子の鳴き声を聞いていれば癒されて乗り切れるだろう。
「君の良い経歴は便利だよね」
 学歴大好きな役員も文句は言うまい。
 私は自分の名案を自讃し、そのための手筈を整えるためにパソコンを開いた時。
「中ぁ、ああ、イカ、テェ、あひぃぃ──っ」
 その隣で鳴き続ける小鳥の縋るような視線に気付いて微笑みかけて。
「いつも私の横で可愛い声で鳴いておくれ、ずぅっとね」
 本当に良い買い物をしたと、満足感に浸っていた。




 乳首に性器に体内に。
 敏感な身体にたくさんのオモチャをつけて、全裸のままに恥ずかしそうに佇んでいるのは、入社早々社内で彼氏候補ナンバーワンとなった社長専属秘書だ。
 彼は今、役員会に向かう時に下された社長の命令のままに、彼の帰りを待っていた。
 社長室のドアには鍵がかかっていない。
 それでも彼は全裸のままにドアに向かって立っていて、激しい羞恥心に沸騰しそうな精神を押さえつけ、襲い来る快感に必死で堪えていた。
 この部屋に、役員会の間に訪れる社員はいないと知っていても、それでもわずかな物音が恐怖を誘う。
 こんな淫らな身体を見た男は、その本能の赴くままに襲ってくるだろう。そして、その処女の穴を、自分の物よりはるかに太い凶器で切り裂き、汚すのだ、と。
 トラウマになるがごとく植え付けられた恐怖は、目を閉じれば鮮明な映像になるほどに根深く染み着いていた。
 激しい調教に疲れ果て眠っている間も陵辱ビデオの音声はいつも流れ、いうことを聞かなければ調教中に無理やり見せられた。
 そのどれもが、受け身のものが壊れるか狂うかするほどの激しい陵辱系のもので、中には彼によく似た青年が、何人もの男達に休む間もなく何日も犯され続けた物もあった。他には主人に逆らったり、逃げたりしたあげくに捕まったものだったり、密告した裏切り者であったり。
 そんな映像に出てくる男達は皆巨根ばかりで、受ける者達は痛みに酷く泣き喚いていた。
 実際にはフィストに耐えられるほどに広がる穴で裂けるわけはないのだが、それでも、そのことが信じられなくて犯される事への恐怖は消えていないどころか、激しく彼を怯えさせていた。
 さらに、汚れてしまった小鳥を飼い主は捨ててしまうだろうから、そうなったら性欲の有り余った男達の性奴隷として二束三文で売り払らわれるのだとも教えられていた。
 それ故に、飼い主の寵愛を失う恐怖は凄まじく、それから逃れるには今の飼い主に完全に従うしかないのだと信じてしまっているのだ。
 飼い主は逃げ出した小鳥を追うことはないらしい。だが、逃げた小鳥がどんな運命を辿るのか誰も知らない。
 と、訳知り顔で言われたのは、若い脱走奴隷が逃げ込んだ先の優しげだった5人の男達が、奴隷の身体を見た途端豹変して嬲り尽くす陵辱ビデオを何度も見せられた後で。その奴隷は、長時間の陵辱の果てに、ペニスのことしか考えられないほどに狂い、獣のぺニスすら喜んで咥えるメスイヌとして飼われるシーンで終わっていた。
 だから。
 どんなに恥ずかしく、そして怖くても、彼は飼い主にいわれるがままに服を脱ぎ、ニップルピアスで膨れ上がった乳首を晒し、太いニードルが貫き変形した鈴口を持つペニスをさらけ出して。
 この今にも開きそうなドアの前で、全裸で彼を待つしかなかった。
 排泄にも排尿にも感じる身体は、何かを挿れられるだけで快感に喘ぎ、悶えるほどだけど、命令のままに太いバイブを手ずから入れて、スイッチも入れて見せた。
 ひくひくと震えるペニスの先からひっきりなしに垂れ落ちる粘液は、もう床に液溜まりを作っていても。
 勝手に達くなと言われたから我慢するしかなくて、けれど、揺れる身体を止める術は知らず、上がった熱を下げる方法も知らず。
 込み上げる熱に淫らな吐息を零しながら、飼い主のための小鳥に堕ちた彼は、その檻の鍵が開いていると知っていても、遠い空に飛び立つこともできずに、ただ己の飼い主に従うことしか考えられなくなっていた。


【了】