【Animal House 鳥編】 前編

【Animal House 鳥編】 前編

『Animal House 鳥』

AnimalHouseのフロアで客をもてなす鳥という存在の話。
素敵な人だと思っていたのにひどい人だった。
逃げられたと思ったら、気が付けば「鳥」になっていた。
口虐、鞭打ち、四肢損壊


「君に接客してもらえるととてもゆったりできるよ。それにいつも一生懸命真面目だって判るから、見ていてとても元気をもらえる」
 こんなチェーン店なんかのカフェに顔を出すようには思えないほどに身なりの立派なその人は、シェリルが最近よく見かける客の一人だった。
 常ならば訪れては去って行くたくさんの客の一人でしかないのだが、その風体故にシェリルの記憶にとどまっていた。何より非常に見目良い相貌が自身の好みであったことも、その一端にはなっていた。
 そんなふうに思っていた人に褒めてもらえて、シェリルは客の手にカップを手渡しながら思わず頬を染めてしまった。
 隠しようもない熱くなった頬に、客ははすぐに気がついたのだろう。
 微笑ましげな笑みを深くしながら、それとは判らぬようにシェリルの指に自身のそれを絡めてきて。
「また来るよ、君に逢いに」
 社交辞令とは思えぬ艶めいた笑みに、魅入られる。
 客が出て行く姿を視線で追い呆然と立ち尽くすシェリルであったが、忙しい店ではすぐに次のオーダーへの対応へと追われた。
 そのせいで、その客のことは頭の片隅へと沈んで言ってしまっていたのだが。
 次の日も次の日も。
 毎日、客は通ってきた。
 レジは幾つもあって、ときにはシェリル以外のレジが空いている場合もあるが、客はいつもシェリルのところにやってきた。
 カップを手ずから渡されることを希望し、ほんの一言二言の会話を嬉しげに交わし、「またね」と必ずその言葉を口にした。
 繰り返される僅かなひとときであっても、暖かな言葉と向けられる視線から、客が自分の何を望んでいるのか、いくら鈍いシェリルでも気が付いてしまう。
 機知に富んだ会話と必ず込められる賛辞がシェリルの記憶に根を張り、感情すら支配していく。その感情が恋と呼べるものなのだと、20歳を過ぎても恋人一人作ったことのない初なシェリルであっても自覚をするのは容易かった。そう気が付いたときには日がな一日彼その人のことが思い浮かぶようになり、バイトの日にはまた逢えるかもしれないという期待がいつまでも離れない。
 だが確かに彼からのは好意は感じてはいても、だからと言っていわゆる苦学生と言われるシェリルにとって、明らかなエリート然とした彼はあまりにも差がありすぎた。
 差し出されるクレジットカードはこんな店では御目にかかることすら難しいランクのカードだし、垣間見えた駐車場の車は運転手付きだ。
 きっとここに来ることが、忙しい彼のいっときの安らぎであるのだろう。その相手ができるのであれば幸いだと、シェリルは自分を納得させ、こんな僅かな逢瀬だけでも十分だと思っていた。
 だがある日、その人はいつものオーダーの後、ひどく真摯な声で一言追加してきた。
「今度一緒に出かけないかい?」
 乞われた言葉にうろたえて返事ができないシェリルの手に握らされた一枚の名刺には彼の名と仕事先、そしてプライベートな電話番号とメールアドレスが手書きで追加されていた。
「明日、14時に駅で」
 シェリルの耳元に近付いた彼の口が、よく知った駅の名と時刻を囁く。
 動揺のあまりシェリルの手の中で硬い紙がくしゃくしゃに潰れたことも気付かず、ただ耳朶から広がる甘い疼きになすすべもなく、高い位置にある彼の顔を見上げた。
 その後のことはよく覚えていない。
 オーダーされた品物を機械的に作り、彼に渡した。
「またね」
 いつもの言葉に「ありがとうございました」と返したのは間違いない。
 ようやく頭が働き出したときには、彼の姿はもうドアの外へと消えていて、ようやく何が起こったか気が付いた。だが追いかけようにも、すぐにカウンターまでやってきた客の存在に邪魔されてしまう。
 手元に残された名刺だけがポケットの奥で小さく音を立て、先ほどの彼の言葉が夢で無かったのだと認識できた。
 当日はバイトは無く、大学の講義も融通が利く時間だった。
 初めての誘いに不安はある。だが、今まで接してきた彼はとても紳士的で、どちらかと言えば彼にふさわしい対応ができるかどうか、そちらのほうが問題だった。それ以外、断る理由など無かったのだ。
 それを言い訳にして、シェリルは彼が指定した場所に赴いた。
 名刺によれば彼の名はジェイムス・クーリー。会社名には彼の名が入っている弁護士事務所で、シェリルでも知っている有名な建物にその事務所はあった。
 そのビルからほど近い指定された駅は、この辺りでは最も乗降客が多いところだ。
 人の群れが通り過ぎる一角で、シェリルは生成りのセーターに洗いざらしのジーンズにスニーカーという姿で所在なげに立っていた。
 おしゃれに縁が無く、服装にお金が掛けられないシェリルが持っている中では、一応見栄えの良いものだ。それでも、彼からすればみすぼらしいものに違いない。
 その感情が、シェリルを萎縮させ、俯いた顔をなかなか上げられない。
 それでも、彼はそんなシェリルを見つけると嬉しそうに近付いてきて、視線を合わせて微笑んでくれたのだ。
「来てくれて良かった。こんなに嬉しいことはないよ」
 と、抱き締めてさえくれたのだ。

 それが二人で会い始めたきっかけだった。
 時には高級としか言いようのないレストランに案内されることもあったが、シェリルに気を遣ってくれているのか、普段はファストフード店や敷居の高くないカフェ、ときには公園や美術館などにも出かけた。
 そんな中、指先が触れあうだけでも赤く染まる彼に、ジェイムスは優しく触れてくる。
「シェリルはほんとにいい子だね」
 そんな言葉に嬉しさと同様に抱く羞恥に言葉を失うと、朗らかに笑ってその場を和ませてくれた。
「可愛いなんて、僕には似合いませんよ」
 薄すぎる色が奇妙だと言われて以来、瞳が隠れるほどに伸ばした黒くて重い前髪に、そばかすだらけの頬、妙に赤みの強い唇は、ぽってりと厚みがあるのに女の子のように小さい。アンバランスなその顔がシェリルは嫌いで隠しているのだが、そんな彼の顔をジェイムスは可愛いといつも言った。
「黒い髪がよく映える顔立ちだ。脱色していないのもいいね。でも、もう少し短くてもいいかな」
「でも……僕、瞳が……」
「スカイブルーでとてもきれいだ」
「あ……」
 コンプレックスの元を褒められて言葉を失ったが、その直後緩んだ赤い唇に濡れた感触が伝わるのを呆然としたまま感じていた。
「ほら、可愛い」
 前髪を搔きあげた指が頬に移動し、太い指が顔の輪郭を辿る。
 唇にかかる吐息に背筋があわ立つような感触が走り、視界が狭くなったような気がした。
 視界いっぱいに広がったジェイムスの整った顔立ちが、焦点が合わぬほどに近い。
「あ……、なんで……」
「君が好きだからだよ」
 だから触れたいと言われて、堪らず一歩後ずさった。それは嫌悪より強い羞恥のせいだ。
「で、も……僕なんて……」
「きれいだよ、薄い色だと君が言うその瞳も整った鼻筋も、薄くそばかすのある頬は弾力があって何よりきれいな輪郭を描いている。何より、この素敵な唇は、いつだって私に我慢を強いているよ。とてもおいしそうな色をしているから」
 一言一言が砂糖がけのお菓子を口に含んだように甘く、思考を蕩けさせる。
 何より嫌だと思っていたシェリル自身の顔をジェイムスはこんなにも褒めてくれた。
 もうそれだけで、再度触れてきた唇から逃れる意志を失っていた。


 会えば会うほどに触れあうことは多くなり、彼の唇を知った場所が増えていく。
 最初は唇だけだった口吻は次第に舌での行為になり、今は互いの唾液を貪るように激しくなった。
 と言っても、シェリルはいつもでも受け身でしかない。
 そんな彼に優しくジェイムスは手ほどきをしてくれる。
 彼の身体に触れることも、自分の身体を拓くことも、性欲という浅ましいものを互いに解放する術も、全て彼が教えてくれた。
 初めてはとても立派なホテルの部屋で、きれいな夜景が見える場所でだった。
 白い肌を窓に映し、深々と貫かれる様を涙に潤んだ視界に収めながら、忘れられない長い一夜を過ごしたのだ。
 何もしらなかった身体は一晩で、いやらしい愛撫が与える快感と、自慰では考えられないほどの激しい衝動と、それに翻弄されたときの自分の浅ましさを知った。
 身体の中に他人のものが入ってくる衝撃と、視界が白く染まるほどの快感というものを教えられた。
 何度も何度も。
 その日以来、溺れたように互いを求めるようになった。
 毎日逢えたときですら例外では無く、ジェイムスが忙しさに時間がとれない日々が続いたときには、車の中で触れあった。
 人気の無い駐車場とはいえ、外は明るく、スモークガラス越しでも覗き込めば何をしているかわかるだろう。だが、ジェイムスから求められるとシェリルは逆らえなかった。
 自分自身も彼の熱を感じたかったのだ。
 それは純粋無垢だったシェリルにとって信じられない行為ではあったが、それでも彼に溺れていくのは止められなかった。


 アニマルハウスと呼ばれる館がこの世界にはある。
 普通ならば知るはずもないその館の存在をシェリルが知ったのは、一カ月ほど前のことだった。
 それは、ジェイムスが初めてシェリルの前に顔を出したときからだと五カ月足らずの月日が経ったときだ。
 この館ではアニマルと呼ばれるコンパニオンが客たちをもてなし歓待する。
 なぜアニマルと呼ばれるかと言えば、コンパニオンは皆それぞれ動物を模倣しているからだ。中には身体の一部だけとはいえそのものの姿をしている者もいる。
 そんなアニマルの中には鳥と呼ばれる者達がいて、幾つものクラスで分かれていた。
 その鳥たちの中でも特に極彩色をその身に纏った美しい高位のインコやオウムと呼ばれるクラスのものたちが特に人気を博している。
「うまそうにさえずる、声もいい。インコに選ばれただけのことはある」
 喉の刺激に呻く声を頭上から揶揄されて、幾ら経験しても慣れぬ行為にインコと呼ばれたシェリルは一筋の涙を流した。薄いアイスブルーの瞳がうつろに声の主を見上げる。
 だが聞き知ったその声の主と視線が合った途端に、シェリルは身を震わせすぐに瞳を伏せた。その客はシェリルにとって二度と会いたくない相手だったからだ。
 正確には一カ月前、彼の元から逃げ出したときからずっとそう願ってきた相手だ。
 あのとき死に物狂いで逃げ出したはずだった。だが結局たった一カ月でこんなふうに再会し、しかもあのとき以上に抗えない状況となっている現実に溢れる涙が止まらない。
 さらに今は暴力的な性のはけ口となっている浅ましい痴自分を不特定多数に見られながら、受け入れがたい行為を強いられ続けるのだ。
 あのときでさえ地獄だと思った日々は、今から思えばまだたいしたことが無かった。
 冷たい地下室で裸体のまま拘束され、彼のものを上下の穴で銜えさせられ続けた日々ですら、今の生活は耐えがたいものだ。
 日々、男の精液を啜り、ねだり、貫かれて続ける生活など、人として受け入れられる者では無い。押さえつけられ、身体を拓かれ、暴力としか言い様のない陵辱ですら甘んじて受ける。抗うことも拒絶することもできず、一方的で理不尽な決まりを破れば屈辱的な罰を与えられ蔑まれる。ここではアニマルは人ではなくただの道具でしか無かった。
 だがそんなことより何より、今この男の言いようにされている現実が何よりも受け入れがたかった。何よりも、この男だけは。
「私の元から去るからだよ、私のところでいい子にしていれば、こんなところで浅ましい姿をさらさなくて良かったのに」
 喉の奥で銜えて反論も何も許されないシェリルの頬に幾筋も涙が流れた。
 客として訪れたジェイムスを憎む気力も無く、その巨大な忌むべきものへと奉仕する。
 へそまで生えた剛毛が唇や頬を刺激した。
 シャツの袷からはみ出た六つに割れた腹が額を打ち、盛り上がる関節を持つ太い指がシェリルの頭を乱暴に揺り動かす。
 愛していたと信じていたころに見せられていた紳士的な振る舞いなど一切見せない。
 素晴らしい立派なものだと思っていた子どもの腕ほどもある巨根は、今でははおぞましい凶器でしかなかった。初めてのときにも受け入れることが難しかったそれは、あのときは愛おしい人のモノであるが故に受け入れることにためらいはなかった。
 だが今は、恐ろしい。
 えらの張った先端を銜えるだけで口の中は一杯で、長大故に確実に喉の奥を刺激し、何度もえづく。
 それでも客であるジェイムスの要望を叶えなければ、きつい罰を与えられてしまう。それは、ジェイムスを憎むより先に避けなければならないことで、シェリルは必死になって肉の塊に歯を当てないように舌で愛撫を繰り返していた。
 と言っても関節が軋むほどに大きく口を開けないと銜えられないせいで、舌を絡めても思うようには動かない。もごもごと口の中全体で食むように刺激し、裏筋の皮をこそげるように舌を這わせ吸引するけれど、少しでも腰を動かされると太く長いそれに喉の奥を突かれて、反射的にこみ上げる吐き気をこらえて喉が震えた。
 それがまたイイのだと野卑な声が頭上で響き、頭を掴まれ、ガツガツと前後させられる。
「ぐぉっ、お゛っ、ごぉっ」
 苦しげに呻いても、それに頓着することもない。
 喉を塞がれ、酸欠に意識が薄れていく。
 態度も声もあのときとは正反対のジェイムスの姿が助長する。
 次第にシェリルの視界が白く曇っていった。


 どのクラスであっても、鳥はほぼ例外なく腕は後ろ手に戒められており、足は折り曲げた状態で太ももと縛られ、止まり木と称される台座に身体を固定されている。
 その止まり木は鳥ごとに止まる場所が決まっていて、高位のクラスほどVIPと言われる上級の客が集う場所に固定されていた。
 そこで鳥たちは、その日のノルマが終わるか客が個室への移動を要望するそのときまで大広間でさえずり続けるのが仕事だ。
「いいねえ、その顔。あの頃よりいい顔をする。どうしてあの時私に見せてくれなかったのかい? ……ああ、そうか。皆に見られるほうがいいのかな」
 シェリルの口を犯しながら陶然と囁くジェイムスの言葉に、朦朧とした意識がこの男が恋人だったときを思い起こした。
 優しい人だと信じていた。
 チェーン店のカフェでバイトをしながら大学に通う苦学生の彼に優しく接してくれて、そのうちに金銭的な援助もしてくれるようになった。と言ってもそれはファストフードでの食事だったり、必要な文房具だったり、本当に些細なものばかりで警戒など何も起こるものではなかった。
 誘う言葉も愛情に満ちており、言葉も触れてきた優しい手も、その後の行為もひどく優しかった。
 始めて彼とベッドでも共に過ごした日は、彼の優しさにたっぷりと触れた、素晴らしい宝物だとさえ思ったのだ。
 その後も、優しい彼に触れられるのは大好きだった。
 彼の、戸惑いながらもシェリルを欲する言葉が微笑ましくて、なんでも叶えたかった。彼のためなら、どんなことでもできると思っていたのだ。
 だが、そんな幸せは出会って三カ月ほど、初めて彼と共に夜を過ごした日からだと二カ月足らずで消え去った。
 気がつけば、彼の屋敷に囚われていた。
 最初は外に出させてもらえないだけだったそれが、部屋に閉じ込められるようになり、衣服を奪われた。その異常な状況に逆らえば、事態はどんどん悪化した。
 寝室で鎖につながれ、それでも逆らえば地下室の牢屋でつながれ、嫌がるシェリルの乳首の周りに言葉が刻まれた。
 さらに日がな一日男か道具で苛まれるようになったのはすぐのことだ。
 施される行為が苛烈になるにつれ、ジェイムスからは紳士的な態度が消え、別人のように乱暴で苛烈な性格へと変貌した。
「可愛い小鳥を手に入れるゲームは、本当に楽しかったよ」
 そのためならどんなこともできた、と。
 弁護士事務所の名刺は噓ではなかったが、彼のクライアントはアンダーグラウンドのものが多いのだと知ったのは、閉じ込められた屋敷の中での会話からだった。
 車の中でのペッティングは隠しカメラで撮影されていて、拘束されて玩具で犯されながら鑑賞会だと見せられた。
 それどころか初めてのホテルでのときも撮影されていて、まるで売り物のように編集すらされていた。その映像は脚色されていて、巨大なペニスでの処女喪失を喜ぶビッチな淫売として表現されていたのだ。
 しばらく会えなかったときの、自室での彼を思っての自慰も撮られていた。
 初めてのフェラも、まるで自分からねだったかのようになっていた。
 何もかもが記録に残され、編集され、見せられた。
 クライアントが喜んで鑑賞していたと笑いながら言われた。
 淫乱で男好きなビッチなシェリル。
 地下室に閉じ込めらて日々、シェリルはそう呼ばれるようになっていた。
 彼の命令に従えなければ罰を与えられ、泣きわめくほどの快楽の中で苦痛も与えられた。
 そんな男の支配下から逃げられたのは偶然だった。
 伝手をたどり逃げた先で隠れ住んだのは一カ月ちょっと。
 その間なんの音沙汰もなくて、もう大丈夫だと安心してしまった自分を呪いたい。
 闇夜に紛れて侵入してきた男たちに拉致されて、気がつけばこの館で調教されて。
 その手配をしたのも、この男だったのだと先ほど聞かされた。
 流れた涙が膨れた頬を濡らす。
 その涙をジェイムスが太い指を頬に添わせ拭い取った。そのまま歪んだ頬を辿り、口の端に触れ、垂れた涎を追いかけて喉を嬲り、再び大きく開いた唇の端へと辿り着く。
 それだけで敏感な肌はざわざわと悪寒にも似た疼きを走らせ、反射的に強張った筋肉が尻の中の太い異物を挟み込む。
「ん、あぁっ」
 とたんに零れるあえかな声音に、客がおもしろがって指の動きを強くした。
「ぐぁ、ぁっ、おっ……」
 止まり木とされる丸太をまたぐ形にされていて、折り曲げた足は身体が倒れないようにその丸太に固定されている。後ろ手から伸びる短い鎖もまたその丸太につながれていて、上半身が倒れないようにされていた。
 しかも丸太には尻の谷間に沿うような膨らみがあり、さらにそこから伸びているキノコ状の模型が鳥を固定する役目を持っている。
 それぞれの鳥専用の止まり木のキノコは、客が自在に操作することができる機械仕掛けで、しかもその鳥専用の形状をして肉を埋め尽くしていた。
 特にキノコの表面を彩る様々な突起は、緻密な計算で鳥たちの調教された肉壁を刺激する。
 そのことを、教えられるまでもなく身体で知っている鳥たちはできるだけじっとしていようとするのだが。
 ほんのわずかな動きすら、それは許してくれない。
 シェリルも例外ではなく、苦痛に歪む表情とは裏腹に彼の白い肌は欲情の色を帯び、薄い色の瞳は震え、眉間にはしわが切なげに刻まれていた。少しでも動けば中の突起が前立腺を抉り、薬で敏感になった全身を快感の渦に叩き込み、そのまま一気に高みへと上げていくのだ。
「ん……あ、あっ!!」
 喉の奥深くを突かれた拍子に身体が仰け反り、その拍子に内部が激しく抉られる。途端に体内を走った電気にも似た衝撃に、身体が激しく震えて叫んだ顔が淫らに蕩けた。
 口からずるりと抜け落ちたペニスが、ぎらつくほどに濡れたままの頬を叩いた
「何をしているんだ、早く銜えろ」
「は、はぃ……あぁ、ひっ」
 絶頂の中で呆けたままに逃げていったペニスを追いかけるが、それだけでまたすさまじい快感が身体を貫いた。
 長引く絶頂のせいで小刻みに身体は痙攣し、警戒を発する脳の命令すらうまく伝わらなかった。
 早くしないと罰を受けてしまう。
 インコであることは嫌でたまらないが、それでもインコ以外になるのも嫌だった。
 鳥のカテゴリのものは鳥以外になることはない。
 ただ、上位から下位へ、またはその逆へとクラスが変わることはあった。
 最上位のインコから最下級のスズメ、そして嫌われ者のカラス。インコが女王なら場末の酒場娘がスズメ、そして客相手すらできない程度の悪いのがカラスだ。
 客の人気や稼ぎでその地位がころころと変わるのが、鳥というカテゴリの特徴だった。
 インコであれば皆一様に髪をきれいな配色でもって染められるうえに、極彩色の色合いの長い羽が肩から背中に垂れるように飾られる。飾り羽のごとく鮮やかなそれは数十本が束ねられていて翼のようにその背を覆っており、それと同様の飾りが尾てい骨付近にも着けられていて、彼の腰が蠢く度にさわさわと床を払うようで、見た目はたいへんに美しい。
 だがその分、美しいものを汚したいと願うものには格好の獲物だ。
「もっとうまそうに銜えて味わうんだ。ほら、もっと奥まで」
 がしっと頭を掴まれ、はっと目を見開いたのと思いっきり喉奥を突かれたのが同時だった。
「ウォ――ッ、ゴェォっッ、エグォッ!!」
 ガツガツと窒息しそうなほどに喉を突かれ、悶絶した。
 頭を掴まれればもうなす術はなくされるがままだ。止まり木の上で身体が前後に激しく揺れて、そのせいで尻の狭間で濡れた音が激しく響く。
 止まり木から流れ落ちるほどに粘性の強い液体が滴を零し、揺れる拍子に下腹をシェリルの飾られたペニスが何度も打っていた。


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