【Animal House 迷子のクマ】 4

【Animal House 迷子のクマ】 4

4

 始めてクマを犯してから、もう何度犯したことだろう。
 尻穴での快感を覚えさせるためという、確かな調教過程なのだが、こいつの尻の具合があまりに善すぎて、玩具で犯すなどもったないと思ってしまったのだ。
 ペニスを銜えさせながらディモンに乳首を穴を開けさせたときには、堪らないほどに締まって、経験の無い痛みに泣きじゃくる様も俺のツボをついたらしく、危うく達きそうになったりもしたほどに、こいつの身体は俺と相性が良かった。
 買い取って専用品にしたい、と言ったら、ディモンが顔を顰めて無理だろと返してきたが。
 それでも、上位ランキングに入る調教師には稀においしい特典があって、それを狙ってみるのも手かなと思う。まあ、それだけの苦労をする価値があるかどうかは、まだ判らない。
 それに、まあ……。できあがったら飽きるかもしれないし。
 そんなことを考えながらたっぷりとその尻穴を堪能してから、今日は新たな調教のために部屋を移動していた。
「ほら、可愛い尻尾が揺れてないぞ。しっかりと振って、オスを誘うんだよ」
「う、あ、は、はい……うっ、ん……くっ、あっ……」
「涎が垂れてるな、あんまり汚すと舌で全部舐め取らせるぞ」
「あ、は、はい……す、みません……んくっ……やぁ…イィ、いひっ……」 
 尻穴にぎっちぎっちサイズのバイブを挿入して四つん這いで進むクマは、道中ひっきりなしに厭らしい声を上げていた。
 バイブの根元には丸い尻尾がついていて、足を動かすたびにコロコロッとしたそれが左右に動く。犬や馬の尻尾のごとく長く垂れないが、小さい分尻の狭間がよく見えて、その根元も陰嚢もブラブラぶら下がった陰茎すらよく見えた。
 それに図体の割りに小さい尻尾は、通りすがりの調教師や従業員の興味も抜群で、おかしそうに揶揄される。そのたびに、それでなくてもバイブの振動で紅潮した身体が赤くなり、内股が擦り寄ってしまうのを叱咤して、手に持っていた鞭を振るい、尻を叩く。
「しっかりと足を広げて、おまえの勃起チンポが見えるようにしろ。尾が垂れない代わりに、そっちもちゃんと振って、自分のいやらしさをアピールするんだ」
「は、はいっ、も、申し訳、ありません……、いん、淫乱メスグマ、は、あっ……くっ……み、みなさま……の、オス、の、臭いが……に、は、発情、して……ます……。あ、う……、あぁ……ど、どうか……た、種付け……を、お願い、します」
 首輪に鎖を繋がれて、四つん這いの身体をふらふらと揺すりながら、一番人の多い裏方用の道を歩かせている間、言いつけ通りにオスを誘う。尻穴での快感を最初から覚えたクマは、バイブでも勃起してて、先走りの粘液の後を道に点々と落としながら進んでいた。そのせいで、すっかりと欲情しきって今にも射精しそうだが、許可の無い排泄は射精含めて禁止しているので、クマは必死に我慢している。
 ちなみに、バイブは交尾したい輩が現れたら抜いて良いと言っているが、今日は目的があってここで交尾をさせる余裕がないので、背中に「交尾禁止」とマジックで書いてある。だから、どんなにクマが誘っても、誰も交尾してくれないのだ。
「どうした、もっとイヤらしく腰を振って、誘えよ。みんな無視して行っちまうじゃないか、ほら、この尻を振るんだよっ」
「ひっ、痛っ、あ、ご、ごめん、なさい……はい……うっ」
 パシッと強く叩いた尻タブに、赤い線が残る。
 調教が始まってから何度も鞭を打っているが、傷はすぐに薬を塗ってるから治りが早い。もっとも治りかけの皮膚は薄いから、すぐに破れてしまうのだけど。
 手持ち無沙汰に背をバシンバシンと打ちながら、向かう先はディモン管轄の大部屋だ。
 大部屋と言っても、アニマル用の小屋の中でも数頭飼い用の部屋で今は大型犬とヒョウがそれぞれ二匹ずつ入っていると言っていた。
 その部屋を、今朝方ディモンから見に来ないかと誘われたのだ。
 そろそろクマにも他のアニマルの調教風景を見せてやるのも一計かと、こうやって出張ってきたのだが。
 重い扉を開けて、クマを中に入れさせようとして。
「ひぎぃぃっ、やっ、ひっ、ゆ、るしてぇっ」
 いきなり聞こえた甲高い悲鳴に、クマが前方を見据えたままに硬直してしまっていた。
 その視線が捕らえたのは、壁の内側にある天井までの柵と、それで隔てられた先にいる壁に背を付けて大の字で固定された黄金色の長い髪と髭を持つアニマルだ。
 どうやらもう調教は始まっていたらしく、ディモンが嬉々として鞭を振るったところに入ってしまったのだ。
 先ほどの悲鳴を上げたのはオスヒョウで、敏感な乳首を打たれたのだろう、それらを真っ赤に腫らして泣いている。その股間では、同じ髪型のメスヒョウが必死になって、オスのペニスをしゃぶっていた。
 あれは、クマと違って非常によく似た一卵性双生児で、一匹がオス、他方がメスとして番として舞台での交尾ショー用に調教されているのだが。どうやらオスが何か失敗したのだろう、簡単には達けぬよう枷が施されているチンポを虐められながらの鞭打ちは、ディモンの定番のお仕置きだ。
「よお、来たか」
 気配に気付いたのか、ディモンが鞭を手にしたままにゲートまでやってきて、鍵を開けてくれる。
 低いそれを潜るように抜けたようとしたところで、クマがまだ硬直したままだということに気が付いた。
「おい、さっさと来い」
 二度三度、ぐいぐいっと引っ張ってようやくその身体がのろのろと動く。
 その顔は強張っていて、先ほどまで紅潮してたはずの肌は血の気が失せていた。
「あれ、どうした?」
「ああ……オスヒョウの悲鳴を聞いたとたんに、硬直しやがった」
「あれの?」
 鞭の柄で示すそれに頷いて返せば、ディモンが「へえ」と一声上げて。
「もしかして、鞭打ちが怖いのか?」
「……」
 その言葉に、ほんの僅かな震えが走ったのは、クマの身体に触れていた足から気が付いた。
 そういえば、最初に二人で楽しく鞭打ちしたことを思い出す。鞭の音と悲鳴と、そして俺たちが揃ったことでそれを思い出したのか。
「どうした、おまえも鞭を喰らいたいのか?」
 ふざけた様子で問いかければ、クマの頭が大きく左右に振られて、大きな身体が縮こまった。
「はは、意気地無しのクマだ。ゲイル、あんたの調教、ちいっと甘いんじゃないか?」
「まさか。ただまあ、最近は尻穴含めて快感系の調教ばっかだったからな。こいつ、結構優等生で鞭で責める機会があまり無かったからな」
「へえ、珍しいぜ、あんたがそんなに甘いなんてさ」
「だから、甘いって訳じゃない」
 弟のせいもあるのだろうが、このクマは基本俺には逆らわない。失敗はしても必死になって謝って、次の機会にはそれ以上のことをやろうとするから、罰の機会があまりなかったのだ。
 賢いといえば、賢いんだろうが。だが、バカだ。弟など見捨てれば、もっと賢く生きていけるだろうに、と最近よく考えるのだが。
 もっとも、こんな館に連れてこられた時点で、弟を見捨てようが見捨てまいが、運命は変わらない。
 ただ精神が楽になるかならないか、の違いだ。
「ところで、あれは何をやらかしたんだ?」
 兄弟で飼われているせいか、わりと扱いやすい二匹だったはずなのだが。
 クマと全く違うパターンだと、ちらりと見下ろせば、引きつったその顔が向いているのはその二匹だ。
「ああ、ショーの最中にバイブと一緒に二輪差しをしろっていう客からの要望を答えられなかったんだよ、萎えちまってよ」
「あー、それか」
 兄弟だからか、相手を庇って命令を聞けないというのは、この二匹ではたまにある。そのため、ショーの最中に調教師が乗り込んで、そのままお仕置きショーになることもよくあって。
 客もそれを面白がって、わざと嫌がることをさせる場合があるのだ。
「ま、いつものことだから、いつもの罰だよ。絶品フェラを一時間させた後は、真ん中に吊して五十回ばかり打ったら、後は犬どもにやらせるから」
 ディモンも呆れたようには言っているが、彼にしては甘い仕置きだ。萎えたにしてもショー自体は成功だったのだろう。
「おい、クマ。あそこにいるイヌどもが見えるか?」
 ディモンがクマの髪を掴んで、視線を横に向けさせた。
 そこには、すらりとした体躯の黒人の青年──ドーベルマンとどっしりとした重量級の土佐犬と呼ばれている青年が、だらだらと涎を垂らしながら鎖に繋がれて唸っていたのだ。
 その瞳にどう猛な色が浮かんでいるのにクマも気が付いたのだろう。
 その視線が戸惑うように揺らぎ、縋るように俺を見上げてきた。最近ではこうやって擦り寄ることも多い可愛いところも見せてくれるのだが、それでも甘くなったりはしていない、はずなのだが。
 イヌたちのいつもと違う様子に、ついつい口を出してしまった。
「なんだ? 薬でも与えてんのか?」
 大型犬ではあるが、しっかりと調教していて普段は命令通りに動くイヌたちだ。それが鎖がなければ今にも飛びかかりそうになりそうなほどに、荒れている。
「さっき、たっぷりと薬を打ったのさ。クマが嫌いな淫乱になる薬とよく似ているが、発情して所構わず穴を犯したくなるやつで、今ビンビンに勃起している」
 その言葉に、俺たちを誘った理由がピンと来た。
「薬に犯されたのがどうなるか見せたいわけか?」
 こっそりと耳元で囁けば、くすぐったそうにしたディモンが頷いた。
「ますます薬が嫌いになるだろ」
「確かに」
 薬に冒されたアニマルの行動は、まさしく獣だ。メス用の薬はオスメス両方ともに交尾のことしか考えられなくなるし、オス用の薬は勃起が抑えきれなくてメス穴を犯すことだけを考えるようになる。ここにあるのは、ちまたで流れてるセックスドラッグなんて目ではないほどに強烈な作用があるものばかり。
 それを性欲旺盛なイヌたちに与えたのなら、もう犯ることしか頭にないだろう。
「ということだから、しっかり見学していきな。ああ、ゲイルも鞭打ち手伝うか?」
「面倒だが……まあ良いだろう」
 その言葉にクマが震え、それ以上にヒョウたちも絶望の色を浮かべて俺を見た。
 あいつらはディモン担当のアニマルだが、調教時は時々手伝っていたから、俺がどんなふうに鞭を振るうか知っているのだ。
「まあ、お手柔らかに」
 笑い、誘うディモンに、クマの鎖をその辺りの檻に繋ぐと、俺はヒョウに近づいて。
「ゆ、許して……、お、許しくださ……い」
「お、お願い、します……兄さっ……いえ、オスを、許して……」
 フェラをし続けたせいか、陰茎を真っ赤にふやかしたオスと、口の周りを涎でべたべたにしたメス。
 仲の良い番は、互いを庇うように寄り添っていたけれど。
「離れろ」
 ドスの利いた声で命令されながら鎖を引っ張られて、メスがひいいぃと悲鳴を上げながら引き離された。
「おまえは鞭打ちはないが、先にあいつらの相手をしていろ」
 くいっと顎でイヌたちを示して、ズルズルと細身の身体を引きずっていく。
「ま、待ってっ、い、イヤっ」
 いつもは従順なメスヒョウも、欲望丸出しのイヌたちに本能的な恐怖に襲われて、必死になって抵抗するけれど。
「ライルっ! 待って、待ってくれっ、俺のせいなんだっ、ライルはっ、関係な──っ、ひぐうっ!」
 叫んだオスヒョウの胸に、俺は手早く鞭を打った。
 バシンと俺まで跳ね返るほどに強く打ったそれは、肋骨に響いたようで、苦しげな呻き声が返ってくる。
「名で呼ぶなと言っているだろうが。あれはおまえが種付けさせなければならぬメスだ。あれが仔を孕むまでな」
 あり得ぬ未来まで、本名など必要ない。
 クマはクマだし、ヒョウはメスとオスだし、ドーベルマンに土佐犬。種類までが被ることはあまりないアニマルばかりだから、その辺り不都合はなかった。
「い、いやぁっ、やあっ」
「ぐうっ、あ、穴、挿れさせっ、ぐっ」
「犯したっ、あうっ、よ、寄こせぇっ」
 悲鳴と欲に狂った声が聞こえて視線をやれば、これまた微妙な位置にメスヒョウの身体が来るように鎖が繋がれていた。
 足から胸まではイヌたちから手が届く。
 牙を剥き出しにする口がかろうじてペニスの先に届く。
 だが、挿入まではできない位置に、イヌたちは苛つき、その身体にむしゃぶりつきながら引っ張っていて。
 締まる首に必死になって鎖を掴む両方の腕にも別の紐が絡まっていて、その紐も檻に繋がっている。それが窒息防止の策なのだと容易に理解できる俺たちとは違い、オスヒョウはメスが味わう恐怖に顔面蒼白状態だ。
「おい、オスよお、さっさとてめぇの罰を受けないとメスの首が絞まってしまうぜ」
「あ、お、許し、を……お、願いしますっ、ラ、つ、メスを、助けてっ、お願いします」
 泣きながら懇願するオスヒョウに、ディモンはニヤリと嗤うと壁からゆっくりとその身体を解放する。
 その間も、ひっきりなしにイヌたちの興奮しきった声と、メスヒョウの悲鳴が届いた。
 そして、それを見続けるしかないクマの押し殺した悲鳴と怯えた様子も目に入っていて、これはずいぶんと効果的かも、と
ほくそ笑む。
「だったら、俺とゲイル、二人がかりで罰の五十発打ってやるわ。一人で打つよりかなり早く済むからなあ」
「は、はいっ、お願いします」
 ディモンの提案に、間髪を容れずオスヒョウが頷く。
「良いのか?」
 壊すつもりか、と、こっそり呟けば、オスヒョウを引き立てながら、ディモンは小さく首を横に振った。
 それは、アニマル達にも見えなかったろうけれど。
「7割ほどでよろしく」
 指で合図したその意味が判らないわけではなく、壊すつもりはないということで、納得した。