【Animal House 迷子のクマ】 3

【Animal House 迷子のクマ】 3

3

 きっかり一時間後、床に横たわったクマの尻からバイブを引きずり出した。
「う、く……」
 小さく震えて、治療中でさえぴくりと動かなかった身体が震えた。だが、目覚めるまでにはいかなかった。
 続けての調教は心身もにダメージが大きいのは間違いなく、一時間程度では回復するはずもない。
 まして、己自身としては受け入れられぬはずのこの調教を、他人のためにと我慢するのは精神的負担は大きい。弟を見捨てれば、自分は痛みから逃れられるいう思いが、いつも心の片隅にあるからだ。そんな思いをねじ伏せようとするのはきつい。
 だが、クマ自身で選んだそれがいつまで保つか。
 俺は、未だ目覚めぬクマをじっと見下ろした。
 さっきまでいたディモンは、こいつの手当をしたあと自身が担当する調教の時間だと渋々戻ったところだ。
 もうほとんどできあがっているアニマルのデビューが翌日にあるということで、そのせいで今日はもう戻ってこないのは確かで、もっともどちらにせよ今日の残りの調教は、一人で十分だった。
 この一時間はクマの身体の皮膚がえぐれたところを半透明の軟膏で覆うという治療に当てていた。創傷を覆うそれは、適度な粘着性でもって傷に張り付き、細胞の新陳代謝を促進して傷の治りを早くする。ついでに抗菌効果もあって、化膿防止の意味もある。ここのアニマル向けの特別に調合された治療用の薬で、驚くほどに傷の治りが早い。
 もっとも、劇薬に近い成分も含まれてるから、繰り返し使えば、確実に毒素が身体に溜まる恐れがあるという忠告は受けていた。
 だが、この傷の治りの早さに比べたら、そんなものは気にするほどのものではない。
 特にひどかった右の肩甲骨も、若さも相まって明日には皮膚が薄く再生するだろう。けれど、人の身体は痛みを忘れない。そこに与えられた鞭の痛みを覚えているから、これから先、鞭を見るたびに気絶したほどの痛みを思い出し、恐怖に震えるだろう。
 ましてまだ薄い皮膚を再び打たれる痛みは、通常時よりひどい。
「鞭を強請り続けるんだ、これからはな。自ら強請って、この身体を傷だらけにして戻ってこい。この痛みの中でいつも眠りにつくように」
 弟を庇うクマの意固地な精神が保つまでずっと。
 言いつけを守って、このクマはどこまで堪えるか。
 それを見るのも楽しみだ、と背から脇へと走る赤い痕を辿り、手を胸へと滑らせた。
 指先に触れた小さな突起は、今は柔らかいが、頼んだ鑑札は明日には届いて、この乳首を飾るだろう。
 浅黒い肌にステンレスの無骨で重いドッグタグはきっと似合うとほくそ笑む。ピアッシングされて常に刺激を受けるそこは、そのうちに大きく膨らんで、虐めるには格好の場所になるはずだ。
 そんな想像をしながら、つま弾き、きつく摘まみ、優しく撫でる。
「ん……く……」
 敏感だと思った通り、何度もそんなことを繰り返していればクマの意識が浮上してきたようで、数度まぶたが震えた後に、その瞳が薄く覗いた。
 何が起きたか判らないかのように、何度も瞬きを繰り返した後、瞳が動く。
 最初は床を見ていたそれが、上がってきて。
「やあ、起きたか?」
 ただ静かに呼びかければ、いぶかしげに顔が顰められ、直後、その身体が跳ねた、が。
「んぐぅぅぅ……痛ぅっ、ぐっ……」
 勢いよく起き上がろうとした身体は、全身に走った痛みに耐えるかのように丸くなり、中途半端なままに蹲る。
 痛み止めも入ってはいるが、いきなりのことに傷の入った皮膚が引きつったのは目に見えていた。もう何度も見てきた光景だから容易に推測できるそれに、俺も気にはしない。
「目が覚めたなら、次の調教だ」
 その言葉に、クマがノロノロと顔をあげ、次いですぐに不審そうに辺りを見渡す。
 見覚えのない場所だと気が付いたのだろう。
「次の調教部屋だ。ここでは、主に尻の拡張と快感の開発をメインに行う」
 床は同じだが、壁にある棚の数は違う。
 さっきの部屋にもあったバイブ以外にも、多種多様なものがこの部屋にはあって、三角木馬すら十種類はくだらない。
「……か、くちょー……?」
「あの十二番のバイブ以上のサイズもここにはある」
 棚に移動し、おもむろに一番大きなそれを取り上げてやれば、ひいっと喉の奥で悲鳴を飲み込んでいた。
 それは俺の腕より太く、それこそこの館で飼う馬の中でも一番大きなペニスを模したもので、俺でも片手では辛いほどに寸胴と言っても良いような形をしていた。
「これが入れば、馬相手もできる。おまえが堪えられるなら、最終的にはこれで広げてやろう」
「馬……あっ」
 呆然とオウム返しに呟いたクマが、はっと我に返ったように顔を上げた。
「お、願い、します……。そ、れで、広げて、あ……淫乱なクマのケツマンコ……広げてください、お願いします」
 深く頭を下げるその様子に、俺は知らず眉間のしわを深くした。
 何に堪えるべきなのか、どう願いをすれば良いのか、詳しく言わなくても理解できるだけの賢さはあるくせに。
 それは褒めるべきことなのだが、その理由が弟を庇うためというのが、奇妙に俺の琴線を擽った。
 便利と言えば便利なのだが、だがそのことを考えるたびに違和感というか、なんとも言えぬ不愉快な感覚が、俺の中に棘のように突き刺さり、ちくちくとした不快な痛みを味わった。
 ほんの僅かな違和感だが、一度気が付いてしまうとうっとうしいほどにつきまとう何か。
 それでも、そんなことを思ったのは一瞬で、俺は軽くクマの尻を叩くと。
「さすがにいきなり馬サイズはいれられないかな。それよりも、自分から誘えるようになれ。尻を上げて、まあ、パターンはいろいろあるが、たとえば『淫乱なメスグマのびちょびちょマンコは、いつでも発情して口を開けています。締まりの無い淫乱な穴を、お客さまの熱くて太い肉棒でお仕置きをしてください』と、お願いするんだ」
 今は弛緩した筋肉質な尻タブは、さすがに他の部位より白い。それでも、どこか黄みがかった薄い色を宿していた。
 弟とは違う色味。さすがに蒙古斑はないが、この色味は黄色人種のそれだ。
 はるか昔にどこかで混じった血が、クマの身体に表れているのか。
 だからか……。
 薄い色味の肌、明るい色の瞳に、鮮やかな金髪。三人揃ってそんな色を持つ家族の中の異端児。
 推測に過ぎないけれど、もしあの親が白人至上主義ならばクマの存在は抹消したいほどに忌むべきものだろう。
 これが超音波診断などのないはるか昔の自宅でのお産であったら、生まれたとたんに抹消されていたかもしれない子。
 逞しい尻を見ながら、ついついそんなことを考えていたら、むくりとその尻が起き上がってきた。
「い、んらんな、クマのケツマンコ……、いつも発情してて、開いてます。どうか、締まりの無い穴を、お客さま、の……あ、熱くて、ふ、とい……肉、棒で……お仕置き、してください……」
 言ったこととところどころ違うけれど、それでも似た言葉を最後まで言い切って、クマの尻が目の前に来る。
 一時間もバイブを味わったそこは、まだ閉じきらず緩んでいて、中から潤滑剤が流れ落ちていた。
 そこに誘われるようにぷつりと指を差し入れてみれば、痙攣のような震えとともに尻穴がきゅっと窄まって締め付けてくる。
 今は見えぬ顔のほうから、小さなうなり声のような音が響くが、それを無視して続けて二本目を入れてみた。
 中は熱くて柔らかくうねっていて、指に肉が絡みつくような感じだ。
 ずるりと辺りを探りながら、検討を付けた場所まで進めれば、目的地の独特な感触を味わって。
「くひっ」
 軽くその場所を押しただけで、弧を描いていた背中がぴくと震え、離さないとばかりに尻タブが指を締め付けてきた。
「はは、おまえの穴はもう銜え込むのを悦んでいるな。ぐちょぐちょに濡れてオスを欲しがって泣いているぞ」
「あ、……やっ」
 熱く波打つその肉壁を指先で擦り、感じる場所を探してはぐいっと押し込む。
 入り口近くに、前立腺、指の届かぬ奥も感じるモノはいるから、それらを丹念にさぐっていって。
 狙い違わず、鼻から抜ける甘い声音に、クマが感じまくっていることがよく判った。
「ああ、すごいな。こんなに感じるとは、おまえは生来のメス淫売だったというわけか、銜え込んだら離さない、たいした穴だ」
 クツクツと笑いながら指摘してやれば、さすがに怒りを孕んだ視線が向けられたが、それも内壁を押してやれば、すぐに力無く伏せられた。その耳が赤いのは快感に晒されているか、それとも屈辱か──両方だろう。
「おい、淫乱クマ、尻穴を締めてみろ」
「くっ、は、はい……」
 指に加わる圧力に、プルプルと震える尻タブが良くを誘う。
 指を増やしてみても、バイブで広げたそこは十分柔らかく、少し狭いがこれなら十分だろう。
「よし、さすが淫売は覚えが早いな。これなら、すぐに男を悦ばせられる」
「んんっ」
 勢いよく抜いた拍子に、ぴくんと背筋を振るわせたその身体の尻を叩き、おもむろにスラックスの前を緩めた。
「バニーなんかだと処女が売りだったりするが、俺はそこまで言われてないんでね」
「え……あっ」
 何を言っているのかと、少し涙のにじんだ視線が俺の股間を捕らえ、一瞬で強張った目前で、さらに扱いて見せつけた。
 快感にむくりと立ち上がる俺のペニスは、クマのよりはデカい処女アニマル泣かせの代物だ。
「うれしいだろう? 最初から、こんなに美味そうなデカいチンポをもらえるなんてなあ。アニマル冥利に尽きるもんだろう、ん?」
「い、あ……そ、んな……」
 十一番のバイブですら手こずっていたクマにとっては、さらに大きなそれに、顔が引きつり、身体が逃れようと動き出す。だが、それを許すはずもなく。
「なあ、淫乱なメスグマは、こいつが大好きなはずだろう? なあ? 涎垂らしてまで、欲しいんだよなあ?」
 その背に手を置いて、ゆっくりと言い聞かせる。
「このぶっといので、尻穴がグッチャグチャになるまで乱暴に突いて欲しいんだよなあ?」
 俺が何を言いたいか、即座に理解するほどに、このクマは賢い。それだけは俺も認めてやる。
 俺に逆らえば何が起こるかが明確な、そんな愚かな守りたいものがあるクマは、逆らえない。
「あ……。く……、は、はい……、い、んらんなクマは……欲しい、です……」
 僅かな逡巡の後、今にも泣きそうなほどに顔を歪めて、か細い声で答えた。
「おい、何が欲しいって?」
 足りぬ言葉を促せば、羞恥に全身の肌が朱に染まる。その美味そうな色合いに気付かれぬようにごくりと息を飲み、舌なめずりしたくなるのを我慢して促した。
「え……あ、あの……淫乱なクマは……大きな、チンポ……欲しい……」
「はあ、何だって?」
 畳みかけるたびに、でかい身体が小さく縮こまる。ついでに尻が下がりそうになるのを、靴の裏で止めて小突いた。
「だから何が欲しいって? さっさと言わないか? はん、尻穴は正直だなあ、ヒクヒク、物欲しそうに早く銜えたいって言ってるのに、今更お上品ぶってもしようがないんだよ」
 グリグリと靴先を尻タブに食い込ませれば、くぐもった声が言葉を追加して繰り返してきた。
「お、お願い、します……っ、淫乱なクマの……ケツマンコに……、あのっ、いやらしいケツマンコに、くださっ……い……、大きくておいしぃ……チンポ、……チンポを、ひくっ、うっ、入れてくださいっ、お、お願いしますっ」
 最後にはしゃくりを上げてお願いされて、やる気は俄然湧いてくる。
「へえ、ケツマンコふりふりしてイヤらしいメスクマは、交尾して欲しいのかぁ? なあ、そうなんだろう?」
「はっ、はいっ、ク、クマは、チンポ欲しくて、あ、メスで……えっと、交尾して欲しくて……ああ、お願いしますっ……ケツマンコ、欲しくて……お願いしますっ、大きい、の……入れてっ、あ、っ、チンポを……、欲しいですっ」
 切羽詰まったたせいか、それとも羞恥で訳が判らなくなっているのか、思いつくままに言い放ってる言葉に煽られる。
 じゅるりと溢れそうになった涎を吸い込んで、腰に付けていた短いサイズの鞭を外すとそれで軽く尻を叩いた。
「ひうっ」
 後も残らぬ程度の軽い鞭に、けれどクマは怯えたように続けようとした言葉を飲み込んだ。
「尻を上げろ。その物欲しそうにひくついてるやらしい穴を広げてな」
「ひ、ひゃいっ」
 恐れのあまりか舌っ足らずな返事に口角が上がる。よろよろと床に付いていた膝を伸ばして、足を広げ気味にして、ぱくりと開いた尻の狭間で他より色の濃い穴が、濡れてテカりながら上がってきた。
 さすがに時間が経ったせいか、今では閉じているそこは、けれど期待しているかのようにひくついているのは変わらない。
「欲しいか?」
 端的に問えば。
「は、はいっ、欲しいです、大きくておいしいチンポ、欲しいですっ」
 肘も伸ばして状態も上げた状態で、肩越しに俺を見ながら、泣き濡れた顔でコクコクと頷く。
 もっとも、俺としてはその恐怖に引きつったような表情にもたいそうそそられていて、苦しい姿勢でフルフルと震える姿にも、いたずら心が湧き起こる。何もせずに無言で待っていれば、賢いクマはすぐに反応した。
「あ……、く、クマの……あ、淫乱なクマの、ケツマンコです、ケツ……マンコに大きくてぇ……おいしいチンポが欲しい、です」
「そうだな」
 遊ばせた鞭の先でべしべしと軽く叩きながら、俺は大きく頷いた。
「おまえは淫乱なメスグマだ。いつも極太のチンポを欲しがってケツマンコを無茶苦茶に犯して欲しくて堪らない淫乱グマなんだよ。お客さまに会ったら必ずアピールしろ。そうやって尻穴見せて、自分がどんなに淫乱でチンポ好きなのか見せつけてるんだ、判ったな」
「は、はい……」
「ほら、やってみろ」
「はいっ、あ、お、俺は淫乱な……淫乱なメスグマで、極太のチンポ……欲しい、あ、……めちゃくちゃに犯して、欲しい、ですっ。ど、どうか……チンポ、犯して……くださ……いっ……、メスグマの穴、使ってくださいっ……」
「もっとだ、もっと大きな声で言え、十回言え」
「は、いっ……メスグマ……淫乱なメスグマぁ……のケツマンコ、極太のチンポ……」
  苦しい姿勢で息苦しそうに喘ぎ、それでも繰り返し繰り返しイヤらしい言葉を言わせていく。
「涎が垂れてるケツマンコだ」
「はいっ、メスグマの涎が垂れてるケツマンコ……チンポが好きだから……あ……」
 頭が下がっているせいか、羞恥以上に赤くなった顔からぽたりと汗が流れ落ちていた。
 上がった尻を戯れにバシン、バシンと叩きながら、その拍子に尻穴がひくつく様子を楽しむ。
 恥ずかしいはずの言葉が、まるで慣れた言葉のようにクマの口から出るようになったころ、プチュッと泡立つ粘液が溢れ、たらりと太股に流れ落ちていくのに、誘われた。
 短鞭を傍らの棚に置き、小刻みに震える尻タブに手を置いて、すでに期待に膨らみきっていた自身のペニスの位置を固定して。
「そんなに欲しいなら、くれてやるよ」
 狙い違わず、ぐっと腰を突き出せば、緩んだ穴はゴプリと鬼頭部分を飲み込んだ。
「ひぐうっ!」
 いきなりの衝撃に、クマの身体が仰け反り、尻が逃げそうになるのを、指を食い込ませて捕らえる。
 がくりと崩れる上体を無視して腰の高さだけを固定して、グイグイと己の腰を全身させれば、ずりずりと深く飲み込んでいく。
「やっ、ああぁぁっ、痛っ、あっ」
 特に太い陰茎部がさしかかると、クマがイヤだとばかりに身体を捩り、逃げようと浅ましく藻掻いた。
 けれど、そんな抵抗など些細なことで。
「はっ、せっかく欲しがった美味いチンポをくれてやってるんだ、お礼ぐらい言いな」
 けれど、突っ伏した顔から聞こえるのは意味不明な呻き声と、床をひっかくカリカリという音だけだ。
「おいっ」
 ペシンと平手で、強張った尻タブを叩き、鋭く言葉をかける。
「おまえはこのチンポが大好物だ。当然注がれるザーメンもな。ほら、言って見ろよ。淫乱なメスグマは、チンポおいしいって。もっと欲しいって、ほら、言うんだよっ」
 けれど、べしべしと手のひらで叩くぐらいでは、クマが逃げるのが止まらない。
 しようがないので、再度鞭を手に取ると、今度は勢いよく、その背に振り下ろした。
「ぎゃんっ」
 犬の悲鳴のような声を上げたクマが、我に返ったように動きを止める。その身体に、俺は一気に腰を進めて。
「ひぎぃぃっ!!」
 長さも太さもクマが経験しなかった十二番並みのサイズのチンポが、ずっぽりと奥まで入り込む。
 入り口だけはしっかりと開いていたけれど、中は結構狭くてきつく、まるで搾り取られるような刺激に、ぶるりと背が震えた。
「ははっ、イヤだイヤだって言いながら、ずいぶんと美味そうに銜えてるじゃないか。最初っからこんなに一気に入るやつなんて初めてだぜ」
 柔らかく、けれどきつく、熱く波打つ蠕動運動に、むくりとワンサイズでかくなったような気がする。
「おまえ……こりゃあ、名器って言っていいかもな。動いてねえのに、もっていかれそうな感じだ。なんてえ、やらしいケツマンコだよ、そんじゃそこらの本物のメスより具合が良いぞ」
 堪らず思いつくままの賛辞を口にしてしまっていた。
 そのぐらい、クマの中は心地よく、まるで勝手に搾り取られるような締め付けで、慣れぬ者であったら今すぐにでも達ってしまいそうな快感をもたらしてくれているのだ。
「良かったなっ、これぐらい具合が良いとリピーターがついて、いくらでも大好物のチンポをもらえるぜ」
 手の中の鞭で、こちらに意識を向けさせるようにその背を叩く。
 クマは、未だ床に額をすり寄せて、頭を抱えるようにしていたけれど、俺の言葉は理解しているのだろう。
 力無く左右に首を振り、堪えられないとばかりに嗚咽を零していた。
 そんなクマの様子に、長年の経験から、どうやら、男に犯された衝撃が意外にも強かったのだとすぐに気が付いた。
 そういえば、婚約者とも滅多にしたことがない、今時珍しい堅物だったと思い出す。
「どうした、弟を守るとかなんとか言ってたくせに、自分がどんなに淫乱か判っただけで、そのざまか」
 ははっ、と嘲笑して腰を掴み、ゴリゴリと自信の腰を押しつけて。深く激しく、体内を抉り上げる。
「ひっ、く、苦しっ、いぐぅっ」
 慣れぬ行為に腹が痛むのか、まなじりからボロボロと涙を零して喘ぐクマをじっくりと堪能して。
 少し抜き気味にして、動きを止めた。
「で、どうして欲しいんだ、ん?」
 きゅうきゅうと締め付ける肉は、じっとしていても快感をもたらしてきて、情けなくも上擦りそうになる声音を抑え気味にして問う。
 クマにとって初めての姦淫に、どうやら立場すら吹っ飛んでいるようなのを、思い出させるように言葉を継ぐ。
「淫乱メスグマちゃんは、苦しいままならお薬注射してやろうか? 尻穴から溢れるぐらい注いだら、気持ちよく全部忘れて狂えるお薬だがな」
 クツクツと喉の奥から零れる笑みを隠さない言葉に、けれどクマは確かに反応して。
 強張った肩の向こうの赤茶けた髪で覆われた頭を見据えつつ、もう一つの案を提示する。
「それとも、このまま俺ので淫乱メスグマの肉穴全部をたっぷりと虐め犯して、大好物のザーメンを注いでもらうのと、どっちが良い?」
 そう言いながら少しだけ、腰を前後に動かせば、ビクビクッと震えて小さな呻き声が聞こえてきた。
 初めての身体にはきつい太さの陰茎は、内臓をこねくり回されているようなものだ。
 わざと快感を感じる部分を無視しての抽挿に、クマは苦しいだけに違いない。
 それでも、クマの返事はすでに判っていた。
「んく……う……お、願い、します……っ、あ、あなた、の……ゲイル、さまの、チンポ……くださいっ、淫乱グマのメス、穴……犯して……虐めてぇ…さい……」
 泣きじゃくりながら、それでも必死に言いつのるその言葉に、ぞわりと背筋に何かが這い上がった。
 快感のように思えて、けれど快感だけで無い何か。
 かあっと頭の片隅が熱くなり、怒りにも似た衝動と性に対する欲望が絡み合う。
 腰を掴む指がアザになるほどに食い込み、どくりと陰茎が脈打って、かつてないほどに大きさを持ったように感じてしまう。
 それは、今までのアニマルの調教ではなかったものだ。
 それがどうしてか、は判らない。判らないけれど、クマが乞うままに犯し尽くしたい、と、調教の術など忘れてしまうほどの衝動に駆られていた。
 弟をそんなに守りたいのか?
 そんな思いなどに縋ってどうなる、と内心で激しく嘲りながら、それでこそクマだと讃える己もそこにいた。
 どうしてか判らない。
 今までもアニマルの弱点を巧みに責めて、従属を強いたものもいたというのに、このクマ相手ではそれに妙に苛立ち、けれど相反して讃えていて。
 どこかグチャグチャの思考のままに、身体が勝手に動いていた。
 もっと、もっと、言葉を言わせて、這いつくばらせて。
 客の欲を解消するためだけの性道具としての存在だとその身に覚えさせなければならないのに。
「こ、のっ、ド淫乱やろうがっ、こんぶっとい肉棒を美味そうに銜え込みやがってっ、美味いか? 美味いんだろうっ?」
 怒りのような衝動のままに、クマの身体を揺さぶり続ける。
「ひぐっ、やあっ、ああっ、ひいっ」
 前立腺の場所を抉れば、甘い悲鳴が心地よく響く。
 入り口ぎりぎりまで抜いて、一気に押し込めば、眼下の筋肉がびくりと動き、甲高い悲鳴が迸る。
 激しい運動に、互いの汗が湯気となって立ち上り、蒸し暑さだけでな熱い吐息が室温を上げていた。
 ガツガツと貪る音に合わせて、荒い二つの吐息が交互に響く。
 クマの肉穴は、驚くほどにや柔らかく俺のペニスを包み込み、きつく絞り、激しく扱き上げていて。
 それだけでなく熱い熱に、こちらの熱まで高められて。
「う、くっ」
 もっと虐めたいと思っていたのに、背筋を駆け上る激しい快感に、我慢などする余裕もなく。
 ドクドクッと射精管を走る刺激に、全身が硬直して、末梢神経までもが痺れていった。
「んあっ、ああっ……」
 熱い迸りに感じたように、クマも和えかな声を上げて、ぐたりとその緊張を解いていく。
 知らず力の抜けた指からクマの腰が外れて、くっきりとしたアザを残したままにその身体が床へと崩れ落ちた。
 ぱたりと伏せた身体が荒い吐息のままに揺れる。その動きに合わせて、尻の狭間から潤滑剤だけてない白く色づいた液がプチュリプチュリと溢れた。
「すげ……」
 堪らずの賞賛は、けれどどこか薄く霞がかかったような世界の中、ひどく他人事に聞こえて。
 数度首を振り、瞬きした後にクマを見やったら、先ほどより僅かに萎えた陰茎が、ぴくりと跳ねるのが視界に入った。
 まだ、足りない……。
 犯すには不足しない世界にいて、こんなにも良かったのは初めてでは、と思うほどに、クマの身体が美味かった。
 美味いものはもっと喰らいたいと思うのは世の常で、俺は倒れたクマへと知らず手を伸ばしていて。
「よお、どうやらおまえは、淫魔なみに男を狂わす名器持ちだったようだなあ……」 
 でなければ、この俺がここまで欲に囚われることはない。
「ひっ、ま、待って……」
「お、い……それは?」
 しかも、力無く抗う身体をひっくり返せば、その腹にべったりと付いているのは少なくとも俺のものではない白い液体。
「ほお……初めての交尾で射精したか」
「あ……うっ」
「とんだ淫乱だ……」
 極太の痛みすら与えるペニスで犯される初めての肛門交合で、尻だけで射精できる玉はそういない。
 しかも、媚薬すら使っていないうえに、自身のほうまで搾り取られてたような感じなのだから。
「どうやら、淫乱淫魔なメスグマって売り出したほうが良いかもしれねえな」
 そう言いながら、俺はクマの両足を抱え上げ。
「ひ、っ、まっ、待ってっ!」
 クマの悲鳴を聞きながら、一気に腰を進めて。
 その日一日、俺のペニスの形を覚えてしまうほどに、クマに男に犯される味を覚えさせた。