中短編【獲物】のその後になりますので、先に【獲物】をご覧ください。主人公は違います。
*弁護士の私は、行方不明の甥の捜索にあたり、一人の男に出会った。
一人称、エロ少なめ。叔父×甥シーン有り
資産家の両親の二人目の息子として産まれ、潤沢な財を注がれた英才教育と何より持ち得ていた天性の才の結果、難なく弁護士としての資格を得たのは10年以上前。
親の息のかかった事務所に勤務し、それにあぐらをかくことなく人より多くの実績を作った後に、今は独立して某企業集団の顧問弁護士として働いている。
働きやすい会社の世界ランキングで毎年50位に入るその企業集団は、その多種多様な職種故に特異な問題も孕んでいて日々たいそう忙しいが、外では得られぬそれらはやりがいも大きい。
兄も会社を経営しているが、唯我独尊で選民意識がたいそう強いせいで折り合いはあまり──どころかかなり悪く、ほとんど連絡を取っていなかった。
そんな私の元に珍しくかかってきた兄からの電話の内容は、そんな関係を差し置いて、大事な仕事をキャンセルさせるべきほどのことで。
駆けつけた実家の屋敷の中で、泣き崩れる義姉を見なければ、いつまでも信じなかっただろう。
兄夫婦の三番目の息子──私にとり甥にあたるジュリアンが行方不明になったなどと。
ジュリアンは、兄の子とは思えぬほどに慈悲深く、しかも聡明であるのに可愛らしさも持ったままに育ったから、私は実家の誰よりも気に入っている。
兄と会うことはなくとも、ジュリアンにはイベントの度にプレゼントを贈っていたし、彼が携帯を手にしてからは、メールでいつも他愛ないやり取りをしていたから、彼が自分からいなくなるような子では無いのは判っていた。
そのジュリアンが高校の時の友人達と街で遊んだ帰りに消息が途絶えたのだ。友人達の話ではいつもと変わらなかったというのに。
本来ならば迎えの車がピックアップするはずだったのだが、そのあたりの道は車を止められないために少し離れた場所で待機していて、その待ち合わせまでの50メートルの間で姿が消えたのだという。
そうなれば、資産家の息子という立場からしても、誘拐──という最悪の事態を想像してしまう。
半狂乱になった義姉を宥め、電話で唾を飛ばしながらあちらこちらに指示を出す兄の怒りに染まった顔を眺め、不甲斐ない報告しかしてこない警察の動向を眇めた視線で追う。
1日、2日──と時間が経っても、見つからない。
誰からも、情報提供者だけで無く、犯人からも連絡が来ない。家出の疑いを捨てきれない警察の態度もおざなりで、信用できるものでも無く。
疲れ果てて寝込んだ義姉を置いて、もとより次の日には仕事に戻った兄に呆れ果てながらも実家から出たのは行方不明になってから3日目の朝。
いつまでも放置できない自分の会社に顔を出し、信頼のおける部下達に事情を話し、プライベートなことではあるがと協力をあおって。
私は独自に調査を始めた。
私は弁護士であるけれど、その心根は正義だけでは無い。金さえ出せばたとえ悪人でも弁護し、無罪を勝ち取る。そのためにはどんな手段でも講じてきた。
前の会社でもそういう輩の弁護もしたことがあり、今でも彼らと繋ぎを取る事は可能だ。
もっとも今顧問している会社も裏ではろいろとあって──蛇の道は蛇、というか、その手のことを担当する部下達は、警察よりもよっぽど頼りになった。そんな彼らの協力を仰ぎつつ、濃密で価値のある情報が入り始めたのは、私自身で集め出してから数日後のことだったが。
その情報を分析していくと、甥の現状が楽観視できるものでないことばかりが判明する。
あの近くの店で、あの日いたらしいある男。
我が家と同じように名家の出ながらも裏で伝わる素行の悪さは犯罪者と大差ない。だが、狡猾なそいつは今まで決して尻尾を掴まれるようなヘマをしていない。
私にそれが判ったのは、ひとえにその裏の情報に通じることができたからだが。
その情報からすると、過去にその男の周囲でジュリアンに似た背格好の青年が三人も行方不明になっていた。
男の背景を鑑みて、十中八九間違いないという確証を得るのはたいそう難しく、巧妙に隠された隠れ家群を気取られないように探っていく作業はたいそう根気がいったけれど。
それでも1ヶ月後、ようやく突き止めた場所に向かった先で。
私はやっと。
やっと、ジュリアンを見つけることができたのだ。
ジュリアンと再会した兄と義姉は激しいヒステリーを起こし、手当たり次第に調度品を壊し、目の前の者を罵り、泣き喚いた。
見つけてきた私にすら感謝の言葉など一言も無く、責め立てる始末だ。
一ヶ月足らずの間、ジュリアンに何があったか私は2人には伝えていなかったから、だからこそ再会したときの2人の衝撃は大きかったのだろう。
ジュリアンを一目見れば、彼の身に何が起こったかは明らかだ。
呆けたように床に座り込むジュリアンに、前のような利発さはなくなっていて、とろりとした視線が宙を舞い、男を見つけたとたんにへにゃっと物欲しそうに笑う。
もとから持つ可愛らしい顔立ちは変わらぬのに、薄桃色に染まった肌から濃厚で淫靡な匂いが周囲へと溢れ出て、何か妖しい存在のように見えてしまう。
服を着せようとすると喘いで悶えるので、かろうじて着せられたのはガウンだけだ。人前にいるというのにその裾を分け入った手が掴んでいるのが何かなんて、誰でも判ってしまう。その指が、もうずっと蠢いていて、はあはあと熱く喘ぐ口から覗く舌先には紅玉の玉が煌めき、飲み込むことを忘れたかのようにその口角からつうっと銀糸のような唾液が糸を引く。
細い首に巻かれた皮の無骨な首輪とガウンの胸元から除く乳首を貫く太いリングは金鎖で繋がり、外そうにも機械的に強固に止められていたために工具が無ければ外せない。
その姿は、色欲に狂った淫魔そのもので。
見つけた時は、男に犯されながら歓喜の声を上げて腰を振りたくり、飲み込んだ雄の逸物を味わい続けることを止めようとしなかった。
その状態から引き剥がすのも大変で、口からはペニスを離そうとしないから、精液が溢れるアナルから直接睡眠薬をねじ込み眠らせ、なんとか連れ出すことに成功したのだ。
そのまま2人に見せればどうなるかは判っていたが、早く連れてこいと息巻く兄に逆らっても良い事は無く、私は仕方なく彼を医師に診せることはおろか、身体を洗う術も無いままに屋敷に連れてきたのだが。
なぜもっと早くに助けなかった、と私にまで罵倒を浴びせる2人に、私は肩を竦めることしかできない。
それよりも、いますぐに優秀な医師や精神科医に診せる必要があると訴えたのだが、兄は即答しないどころか難色すらして見せたのだ。
何より、息子の姿を最初に目にした時から、兄は彼にまともに視線を向けていない。それどころか穢らわしさを隠せない表情は、兄が過去にもある人々に向けた見せたものと一緒だった。
その姿に、私は嘆息を隠せない。
こういう兄が嫌いだったのだと──今更ながらに思い出してしまうほどに。
そんな兄で、しかも兄の立場からすれば、息子がこんな状態なのだと誰にも知られたくないのだろうが。それでも、早めに処置すれば直る見込みがあるだろうに、そこで躊躇うとは思わなかったのだ。
けれどそれ以上に驚いたことに、義姉ですら兄に同調していたことだった。
ジュリアンの姿を見た途端に絶句し、立ち尽くしたのはまだ判る。だが、何故優しく抱きしめてやらないのだろう。
私ですら救い出した時にはこの腕で抱きしめてやったというのに。
狂気の中で自慰を貪る息子を見る瞳に浮かぶ嫌悪は、ジュリアンの母というより、やはりこの兄の妻なのだと再認識させられるものだった。
だが、病院に入れることに難色を示すのはまだしも、この屋敷は人の出入りが多いから──と、受け容れることすら躊躇うとはさすがに思いもしなかった。
結局ジュリアンは私が引き取り、私の部屋で治療を受けさせることで決着がついた時、初めて兄は私に感謝の言葉を述べたのだが、その頃には私は完全にこの兄に対して醒めた感情しか浮かばなかった。
実際、兄には優秀だという——私にとってはいけ好かない息子が他にも2人いて、ジュリアンがいなくてもやっていけるのは間違いなく。
己の息子を蔑みを隠そうとしない目でしか見られない兄に、私は慣れた作り笑いを返すだけだった。
ジュリアンにかまけていたせいで溜まった仕事は半端なく多く、また、手伝ってくれた部下達のフォローもしなければならなくて、しばらくは家に帰ることができなかった。
ジュリアンを預かった以上毎日早く帰りたかったのは山々だったが、さすがにそれは無理で、仮眠室で寝泊まりする日々が一週間ばかり続いたが。
明日は休みが取れたのもあって、クタクタの身体ではあっても、疲れ切った身体に鞭打つように家に帰った。
最初の三日は一緒にいて信頼の置ける医者に見せ、ジュリアンの世話とカウンセリングをしてもらうために雇った者と打ち合わせをし、そのまま仕事に出て初めての帰宅だ。
「おかえり、デイブ」
「ただいま」
世話役に雇ったケインがにこやかに迎えてくれるのに頷き返す。
ケインは、あの日あの時、乗り込んだ先で私と相対した相手で、ジュリアンを男狂いにした張本人だったが、今では彼を戻すために尽力を尽くしてもらっている。
ケインはまだ若いが、たいそう優秀で、頭の回転も良い。
私も弁護士として、己に有利に運ぶためにも相手を早く見極める力は十分あると自負しているが、その私の目をして、彼は若くとも決して侮れないと判断できた。
下手に警察を使えばジュリアンのためにならないことは調査の段階で気が付いてたし、それが得策では無いこともこの相手を前にして気が付いていた。
私としては、どんなことをしてでもジュリアンを取り戻し元の生活に戻す必要があって。
兄夫婦が世間体を気にしたのは自分たちのためだが、ジュリアンのためにもハイエナのようなマスコミにこの状況を知られたくないと思ったのだ。
そしてケインは彼の友人ともども、警察に捕まることだけは避けなければならなかった。例え捕まったとしても、彼らの親は多額の保釈金を払って取り戻してしまうだろうが、同時に家に閉じこめてしまう。
彼らは、自由を失いたくないのだ。
それに張本人のレイドという男は色情狂となったジュリアンに飽きていたし、ケインの調教も終わりかけていたから、危険を孕んだままのジュリアンを手元に置く必要にはなく。
後は、どう取引するか、ということだったのだ。
賢い相手との交渉は油断は決して許されない。
だが、私は、あんな状態のジュリアンを前にして、私は……欲しくなってしまったのだ。
可愛い甥であったはずのジュリアンの浅ましい姿を目にして、その身体を穿っていたものが己のモノでないことに激しい嫉妬を抱いて。
それをケインに見透かされたあの時から、私は、彼に投げかけられた提案から、逃れる事はできなかった。
そして、私たちはあろうことか、ジュリアンをどうするかの取引の間に、次第に意気投合してしまったのだ。
いまだにどちらが誘ったか判らない。
あの時、ジュリアンの淫気に煽られてしまったのか、気がつけば、私のペニスをケインが舐めしゃぶり、そして私は、ケインの熱く熟れた肉を貫き犯していたのだから。
自分がこんなにも貪欲だとは知らなかったけれど、私はジュリアンだけでなく、ケインも手元に欲しいと思ってしまっていた。
それに、調教を施した彼自身であれば、ジュリアンの何がどうなっているか把握しやすいということもあった。
その点からすれば、兄夫婦がジュリアンを手放したことは私にとり幸いとしか言いようが無い。
実はあの時、どうにかしてジュリアンの世話を私が行えるように仕向ける算段ばかりを考えていたのだから。
おかげで、私はジュリアンとケインとともにこの部屋に住んでいるというわけで。
「どうだ?」
とケインに様子を問いかければ、肩を竦めて返される。
「変わらず、だね。まあ、少しは落ち着いたように見えると思うけど」
毎日、定時に報告は動画付きメールで上がってきてはいるが、それでも聞かずにはいられない問いかけに、返された言葉は想像したとおり。
「ルールを守ることはできるようになってきたけど。日常生活となるとまだかな」
「そうか」
医師による診察では身体には問題なく、施されたピアス穴はキレイで化膿もしていないから、外してしまえば穴は塞がるだろうということだった。だからこそ治療は精神面を優先することになったのだが。
日常生活を送ることすら今のジュリアンには難しい。
朝起きて、食事をし、衣服を整え……といったことが、放っておいてもできないのだ。
性奴隷のように調教されていたとはいえ、元は普通に暮らしていたからその辺りは早くに戻れると思ったのだけが、これが意外に手間取る代物だった。
厳しい調教に精神が楽な方向に逃げてしまったのだと、そう仕向けたケインは言う。
「起きてるとずっとオナってんすよ。しょうがないんで後ろ手に縛っても、貞操帯をつけても、床や柱にチンポ擦り付けるみたいにぶつけるし。そんな振動でも愉しんでてさ。ずっと猿みたいに腰振ってるよ」
「ああ、動画でも確認した」
聞こえていたのは、粘着質な水音と浅ましく強請る声に嬌声ばかりだった。
「いつ撮っても絵が変わらないんで、おんなじのを送ろうかと思ったくらいなんだ」
クスクスと押し殺した嘲笑を返されて、私は口元を歪めた。
笑うつもりなどなかったけど、それでも私の顔は嗤っているのは自覚していた。
私のお気に入りだったジュリアンは、今は男であれば誰でも良いのだ。ペニスを持ち、己を犯してしてくれる者を欲している。だが、ここではそんな相手はいない。いないのに強請り欲しがるその哀れさに、嗤うしか無い。
一ヶ月間ずっと、嫌がっても与えられたペニスは、本物どころか玩具すら今は与えられないのだから、今のジュリアンは麻薬の禁断症状が出ている状況と変わらない。
実際は常習性の薬は使われていなかったのだが、理性が崩壊するほどの調教の成果は、なかなか抜けないようだ。
「チンポが与える快感に縋るしか無い状況に追い込んだ効果ってことなんだけど。ちょっと効き過ぎたみたいだなあ。でもここまで調教がうまくいくのもそう無いけど。まあ、もともとあいつに淫乱な気があったからだと思うけどね」
「スパンキングでもイッてたって?」
「ん、二週間ばっか経った頃かなあ。尻をぶったたいてやったら、ヒイヒイ嫌がるくせにぎんぎんに勃起させて、ぶっ放してさ。あれは、面白かったなよ。おもろくて、尻が真っ赤になるまで叩いちまったぜ」
一度そうなってしまうと、後は転がり落ちていくように、痛みすら悦ぶ身体になっていったのだという。
「けど、君たちに捕まる前は女の子ともしたことのない純情な子だったけど」
「あははっ、見た目は純情でもさあ、中身はどうかなんて犯ってみないとわかんないぜ。俺もレイドが捕まえた奴何人も調教したけど、大人しそうに見えてもばりばりのマゾ淫乱だった奴は他にもいたし」
「そうなのか」
ケインの苦笑交じりの話を聞きながらドアを開けた途端に、甲高い嬌声に迎えられた。
何度も動画で見た光景が、今目の前にも広がっている。
「あひっぃぃっ、イぃよぉ、ああぁっんんっ、もっとぉぉ」
絹糸のような髪がパサパサと宙を舞い、白い肌がひくひくと痙攣していた。
後ろ手に縛られて不自由な身体で、ジュリアンがその股間を床に押しつけて、無様な自慰を繰り返しているのだ。もとよりどんな服を着せても脱いでしまうから、今も何一つ身に纏っていない。ただあるのは、身体を彩る淫らなピアスと拘束具だけだった。
その身体が芋虫のように蠢き、冷たい無機質なものを相手に快感を貪っている。カチカチと音を立てているのは、乳首の金環が床を弾く音で。
今のジュリアンの身体は、そんな自慰でも絶頂を繰り返す。
放っとけば勝手に自慰を続けるからと、陰茎に枷をつけ、両手をきつく後ろ手に縛っているけれど、結局は意味が無かったようだった。
ピアスは外せば穴は塞がるが、ジュリアンが嫌がったので残している。
「カウパーだけで床を汚しまくりなんで、汚したところは舐めさせてキレイにさせてんですけどねぇ。それすらも悦ぶんですよ。って、あぁあ、──そこ汚れたよっ、いい加減にしろよな、チンポ狂いのメスブタが」
震われた鞭が床を打つ音に、ジュリアンがぴくっと震えて、蕩けた視線で床を見渡して。
「あ……う、ご、めんなさい……ごめんなさい」
不自由な姿勢で向きを変えて、ぺちゃぺちゃと床を舐め始める。それがイヤイヤでないのは明らかで、勃起した陰茎は変わらず新しい涎を垂らしていた。
鞭打ちは肌に痕が残るから禁止しているが、その音だけでもジュリアンに言うことを聞かすことができるから、身体以外に使うことは許している。
「それでも、すぐに欲しがらなくなっただけでもマシだね」
男がいればそれが誰でもあからさまに欲しがっていた最初に比べれば、まあマシだと言えよう。
「自分で欲しがったらダメだと、徹底的に躾けてっから。欲しがらなければしょうがないってことでオナるのは許して、欲しがったら柱に拘束して何もできないようにさせてるから、さすがに学習はしているようで、そのあたりは頭が良い子なんだけどなあ。オナニー禁止──となるとまだ先だねぇ」
「それでイイよ。私以外の男を求めなくなるのならね。あのジュリアンがこんなイヤらしい子になるなんて思いもしなかったけど」
やんちゃだけど優しい振る舞いをする愛すべき少年だった頃を思い出す。
長じても、その心根は変わらなくて、彼とともにいることは、私の悦びでもあったのだ。
そんなジュリアンが私を、私だけを求めてくれるとなれば、それはどんな極上の美酒よりも私を酔わせてくれるだろう。
結局私は、そういう目でずっとジュリアンを見ていたのだろう。だからこそ、あの時、あんなにも悔しかったのだ。
「ジュリアン」
呼びかければ、私の声を探すようにくるくるとその瞳が動いて。
私を目にした途端に、にっこりと微笑む様は、前と変わらない。
「デイブ、お、じ……さん……」
「ジュリアン、おいで」
ドアの横のソファに腰掛けて彼を呼べば、うっとりと顔を綻ばせて。移動は四つん這いで行うジュリアンは、両手が使えない今は膝でにじりよることしかできない。四つん這いを強制している訳では無いが、ジュリアンはその姿勢を好んでいる。
ケイン曰く「大好きなペニスと同じ高さになりやすいから」だと言うけれど。
犬猫のようなその姿は存外可愛くて、私は好きにさせていた。
今もなんとか上体を起こして、膝だけで腰を左右に振りながら私に向かう姿勢は大変そうだが、そのたびに左右に揺れるペニスが心地よいのか、嬉しそうに顔を緩めるジュリアンは、ほんとうに可愛い。
「お、じさん……どうか……デイブおじさんのおチンポ、に、ご奉仕させて、ください……」
目の前で、その瞳に欲を滲ませて懇願するジュリアンは、一時もじっとしていられないようで、モジモジと足を擦り寄せ、はあはあと吐息を零している。
ちらりちらりと視線が向かう先は、明らかに私の股間であって。
その期待に満ちた視線は強く、まるで服の上からでも嬲られているように感じてしまう。純情であったからこそ、今のジュリアンが放つ色香とのギャップは凄まじい。
「ジュリアン」
こくりと頷き返してやれば、嬉々として膝でいざない、その口を私の股間へと寄せてくる。
ジジッとごく僅かな振動が、どうしてここまでぞくぞくと全身を震わせるのか。
「あ、ああ、おじさん……の臭い……素敵…だ…」
官能的な陶酔に耽る言葉を零して私の性欲を煽るジュリアンは、前よりもはるかに素晴らしい。
「何をしてくれるんだい?」
伸ばした指で、ジュリアンのさらさらの髪を掬い指先で嬲る。
一ヶ月の淫らな生活に荒れていた髪も肌も、この二週間で元に戻り、本来のきめ細かさを取り戻していた。
「おじさんの、おチンポ……ぼくの舌で舐めて……おしゃぶりさせて……もらって」
言葉にするだけで溢れた唾液をごくりと飲み込む音がした。
ちろりと覗いた舌先のピアスは、前の安物のガラス玉では無くて、ブリリアンカットの本物のダイヤだ。
「この舌で、ご奉仕したい……」
言葉だけで、私の脳裏に前にして貰った時の快感がまざまざと呼び起こされた。
その舌が陰茎を舐め上げる度に、柔らかな舌が絡みつき、ダイヤの甘い角が私の敏感な部分を刺激して。
一度でやみつきになったほどのその技と細工を仕込んだケインは、本当に素晴らしい技を持っていると視線をやれば、彼はにこりと微笑み返してきた。
「言葉が足りないよジュリアン。そんなんじゃ、ご褒美は上げられないね」
ジュリアンを男狂いの性奴隷に仕立て上げたケインは、私が見込んだその技で私が望むがさまにジュリアンを躾けようと冷たい言葉を浴びせ、その尻を爪先でぐりぐりと抉る。
「ひっ、あっ、ご、ごめんなさ、っい!」
相変わらず容赦の無い躾けに、ジュリアンが慌てて言葉を継いだ。
「お、おじさんが飽きるまで、どうかジュリアンの口をお使い下さい。チンポ、ああ、チンポが大好きな浅ましい、ジュリアンを……おじさんの精液便所として……お使い下さいませ」
ああ、なんて……。
なんて卑猥な言葉を放つようになったのだろう。
あのジュリアンが。
「……そう、ジュリアンが望むのなら、使わせてもらおうかな、その口を」
望むなら、いくらでも上げよう、と、前より可愛くなったジュリアンに、込み上げる激情が押さえきれない。
「は、い……おじさん、どうぞ」
小さな口が開き、ちろりと覗く赤い舌先が触れるだけで、脊椎から脳天まで突き上げるような快感が迸った。
ダイヤが亀頭の窪みに触れ、ぐるりとエラ下を這う様に全身が総毛立ってしまう。
さすがに無様にイクわけにはいかないと、大人の矜持だけで堪えるのは、ここ数日の禁欲生活にはきつかったようで。
「んくっ……」
呆気なく数分も持たずに一発目を放ってしまった。
「あ、ああ……おひぃさあのセーエぃ……ああ……」
けれど、嬉しそうにちゅうちゅうと啜るジュリアンに、私のそれは呆気なくすぐに固さを取り戻した。
「まだ出るよ。デイブのが欲しいなら、もっとがんばって出して貰え。デイブも頑張れるよな?」
冷たい調教師の面を被ったケインは、私にも容赦はしない。
だが、その冷たい笑顔の影で、私を見る食い入るような眼差しの意味を気付かないほど私は鈍感ではなくて。
私は伸ばした手で引き寄せた彼と、甘いキスをしながら。
「待っていてくれたら、ずっと頑張っていてくれるご褒美はちゃんと上げるから」
どちらが本命と聞かれても、私は答えられない。
可愛いジュリアンか、お気に入りの調教師か。
「はっ、ジュリアンのフェラは極上品だぜ。そんなんで、俺の分まであるのかよ」
悪態を吐き、利かん気の強い態度で嗤うケインの瞳の奥が、茹だっているのが判っていた。その熱は、弱い者などあっという間に喰らい尽くしてしまうだろうけれど。
「あるよ、だって君のためだからね」
甘い声でその耳朶を食めば、その頬がうっすらと朱色に染まっていく。
ジュリアンを調教した技で私をも籠絡しようとするケインは、意外にも純情だ。
そのギャップもまた堪らないとやっぱり興奮してしまう私は、この二人をどうしてやろうかと、頭の中で今日の予定をいろいろと考えている。
二人が手元に来る前は、自分がこんなにも性欲過多であるとは露とも知らなかったけれど。
結局、私とジュリアンとは、性欲に関して言えば確かに血が繋がっているのだと、こんなところで確信してしまったのだった。
【了】