良い子-5

良い子-5

 結局ココはいつまでも動くこともせずに。
 しばらくしてベイルーフが戻ってき、二人が程なく戻ってくる旨を男に伝えた。
 その間もココは唇を噛みしめて、苦痛の表情で俯いたままだ。
 そんな表情をさせたまま、激しく犯すのも面白そうだと、ぺろりと舌なめずりまでしてみたが。
 だが。
 と、思い直して、男は肩をすくめて「タイムリミットだ」と言い放った。
 もとより、ココを手放すつもりなどなく、もしここから去ったとしても、それはそれ。再度捕まえて、今度は牢にでも閉じ込めて飼うのも一興だと思っていたのだから。
 男の真の嗜虐性がどんなものか、まだココは知らない。
 逃げを選択する愚かな真似は、それより先に自分の身体が普通に生きていくことに支障があるほどに調教されていることに気付いたことで、免れたようだけど。
 逃げなかったけれど、逃げたかったのだろう。
 男の言葉とともに、がくりとソファから崩れ落ち、床にへたり込んだのが良い証拠だ。
 むろん、男とてその心情は判る。
 人が、他人に人でないものとして扱われ支配され続けるのは辛いことくらい判る。
 だが。
 そんな姿を面白いと思ってしまうのが男なのだ。
 だからこそ、五年間もの間徹底的に調教し続けてきたのだ。
 その身体がもう簡単には元に戻らなくなるようになるまで、決して手を休めずに。
 元に戻すには、一人ではどうしようもないことに、ココもようやく気付いたようだ。
 そんなココの頬に、ぽろりと一筋の涙が溢れ落ちて、床に滴り墜ちた。
 その滴だまりの傍らに落ちたままだった鍵を、ベイルーフが拾い男へと手渡した。
 小さな鍵だ。
 けれどそれは、どんなに頑強で高性能な鍵よりも、確かにココを縛り付けるものだ。
 それを手の中で幾度か弄んだ男は、ニヤリと口角を上げて嗤い。
 けれど、ことさらに優しい声音で、そっと囁いた。
 ココをもっと陥れるために。
「おまえは、本当に……良い子、だね」
「あっ……」
 とたん、ココがびくりと顔を上げた。
 呆然とわずかに開いた口の端から、溢れた涎がたらりと流れる。
 まるで痴呆になったかとのように、その瞳が所在なげに揺らぎ、床に付いた足がもぞもぞと踊り出す。
「ココは、良い子だ」
「……あぁ……か、らだ……あつっ……ぅ」
 はあっと吐かれた息は、触れなくても十分な熱を持っているのが見て取れた。
 血の気を失い白かった肌に、赤みが差している。
 小刻みに痙攣する腕を抱きしめるようにココが腕を回し、とたんにはあっと、ひどく甘く妖艶な吐息を頭上に向かって吐き出した。
 しどけなく開いた股間の布地が、はっきりと盛り上がっている。
 いずれ、その布地が淫らに色を変え、苦しげに突っ張るのは容易に想像できるほどだ。
 男は昨夜から明け方までココを一晩中責め立てて、激しい絶頂のさなかに一回だけ射精を許した。
 溜まりにたまった精液は、広がりきった尿道からそれほど勢いよくは出ていかない。だが、増えた量だけ。ひどく敏感に躾けられただけ。それは最高の快感をココに与えて。
 そのまま失神したココのペニスは、その一度だけで再び戒めた。
 そんなたった一度きりの射精では、ココの欲は消え去りはしない。そんな物足りなくくすぶっていた身体に、男はたった一言でその熾火を燃え立たせたのだ。
 その熱に浮かされ始めたココは知らず顔が緩んでいて、うっとりと男を見つめていた。
 先までの悲壮さを忘れたように。
 腹の奥底からこみ上げる確かな兆しに、頭がなし崩しに考えることを放棄し始めているのが、男にはよく判った。
 苦しくて辛い罰のとき、ココはいつも僅かな快感に縋り付いて。それが唯一の救いかのように溺れる姿を何度も見てきたからこそ、今のココの心情の変化はあまりに容易く気がついた。
「良い子だよ、ココ」
 だからこそ繰り返す。
 射精という快感を許すときに囁く言葉は、ココの脳裏に甘い多幸感の訪れを予測させ、与えてくれるものだ。
 籠もった熱を吐き出そうと呼吸が忙しなく続き、力の抜けた腕がぺたりと床に落ちていた。
 言葉が、男が放ったたった一つの言葉が、ココの身体を欲情させていた。
 いつもいつも。
 射精の許可として与えられた言葉に身体が条件反射で反応した。
「良い子には褒美を与えねばな」
 動けぬままにココが、近づく男を見上げる。
 その手にある鍵が、窓から注ぎ込む陽光に反射していた。
「服を脱ぎなさい、ココ。ご褒美を上げよう。達かせてあげるからね」
 優しく、甘く。
 毒を孕んだ言葉を耳朶に注ぎ込んでいく。
 優しく、良い子だ、と、長い間に何度も重ねられた言葉は、男の緻密な計算のもとに与えられていて。
 それは、目に見えぬけれど確かな支配力を持っていて、けれど砂糖よりも甘く、だが、麻薬よりもさらに強く激しく、逃れ得ぬほどに強い中毒性を持ってココを捕らえていたから。
 ココが、服を脱いでペニスバンドを外してもらったのは、それからすぐのことだった。


「あ、んんっ、ああ、イイっ、そこぉぉっ、イイっ、ひあぁんっ、奥ぅもっとぉ」
 ソファに浅く腰を下ろした男に背を向けて、大きく足を広げて膝裏を肘掛けにかけて。
 広がった股間の奥で、太く逞しい一物が、深く色づいた肉色の穴を深く激しくえぐっていた。
 そのたびに、甘く熱い嬌声が、そこら辺りいっぱいに響き渡る。
「すっげ」
 部屋に戻ってきたテンが、呆れたように背後にいたリイドを振り返った。
「すっごいと聞いてたげと、あれ反則だよ。あんなすごいって……あれこそウマナミって言うんだよな」
 テンが指摘したウマナミのペニスの持ち主は、華奢な奴隷の腰を両腕で抱え上げては手を離す。
 そのたびにぶちゅっと激しい音とけたたましい嬌声が響き、びくびくと痙攣した身体が、だらりと薄くなった白い粘液をその鈴口かから垂れ流した。
 そのソファの下は、垂れ落ちた幾筋もの白い精液が、いくつも液だまりを作っている。
 もう滲み出るような射精でしか無くても、貫かれて射精できる快感にココの理性は完全に飛んでいて、弟たちが帰ってきたというのに、ヒイヒイと喜んでいるばかりだ。
「まあ、あんなのに可愛がられたら、そりゃ、並のチンポなんて目じゃないだろうし。ていうか、あれしか欲しくなくなるってのも判るかも」
 ぺろりと肉色の舌が覗き、美味しそうに唇を舐める。
「なんか……俺も疼いてきた」
「ん、調教師としての血が騒ぐんだろう?」
 リイドが笑みとともに愛撫するかのように耳朶に唇で触れ、囁く。
「テンは根っからの調教師だからな。あんな淫乱なメスブタ奴隷を見て、疼かない訳がない」
 その強い断言に、つられるようにテンが頷く。
「んっ、俺も……虐めたい……犯したい、なあ、俺も……駄目かなあ」
 そのめらめらと欲に滲んだ瞳は、ココから離れない。
 男を虐げ、陥れ。
 足元にひれ伏せさせるだけの技を持つ、持たされた青年は、心底羨ましげに目の前の奴隷の痴態を見つめていた。
「んくっ、いああぁぁっ、ふかぁぁっ、イイのぉ、マンコが壊れるぅぅぅっ、ああ、またぁぁぁ、また達けるぅぅぅっ、チンポ汁がぁぁ、またぁぁぁ」
 一段と激しい嬌声に、ごくりと響いたテンの喉の音と。
 そんなテンをボスが見やって嗤い頷いたのは同時で。
「ボスの許可が出たよ、ほら」
 リイドがぽんと肩を叩き、渡してきたのはスパンキング用のサシのようなプラスチックの板だ。
「あんなにだらだらと零したお仕置きを、ボスはテンにして欲しいようだよ」
 それはよくあるお仕置きで。
 リイドはボスの視線からそれに気付き。
 板を渡されたテンは、一瞬逡巡するかのように視線を巡らしたけれど。
 次の瞬間、その瞳に剣呑な光が差し込んで。
 ビシッ!!
「ひぎぃぃぃっ!!!」
 鋭い音と呆けて揺さぶられるだけだったココのけたたましい悲鳴とが重なった。
「いやらしいメスブタが、ご主人様のお召し物を汚すなんて、どういう了見なんだよっ」
「はぎっ! いああっ!!」
 ぴし、ぱしっと大きく振りかぶっては打ち付ける、その板が狙うのは、締まりの無くなったココのペニスで。
 ボスの手は止まらずに上下を繰り返すココの腹で揺れるペニスを右へ左へと打ち付けて、瞬く間に真っ赤に腫れ上がったそれに、さらに板が叩き付けられる。
「痛ぁぁぁぁっ!!、やあぁぁっ!」
 快楽のさなかに与えられた痛みに、ココの瞳が涙を溢れさせながら、光をともす。
 朧気だった焦点が点を結び、与えた痛みの主を知って。
「あ、あぁっ……やあ……なんでぁ、ああっ!! 止めてっぇぇっ、ぐっうっ」
 慌てて痛むそれを庇おうとした両手は、リイドとベイルーフによって捕らえられ、動きを止めたボスが嗤いながらココの太股を固定して。
「おまえはっ、ご主人様が許したのは射精だけだろっ、なんでっ、お召し物まで汚してっ、んだよっ」
「ひぐっ、ああっ、ぎぁぁっ、ああっ、ひぎっ」
 息が弾むほどに叩き付ける板に、逃れられないココが悲鳴を上げ続ける。
「あ、許し、てぇぇ……いやっ、ああっ」
「はん、さすがに萎えたか。ここまでしないと萎えないとは、叩かれるのも大好きだなんて、なんて淫乱なチンポだよ」
 力無く垂れ下がったそれに、叩いた拍子に飛び散った体液が付いた板を擦りつける。
 赤く、いつもより一回りは明らかに腫れた陰茎を板の上にのせて持ち上げて。
「浅ましいこいつにはもっと罰が必要だな」
 にたりと口角を上げ、ご主人様と、恭しく伺う。
「浅はかで愚かな奴隷にどのような罰を与えましょうか?」
 わざとらしい芝居がかった言葉遣いに、男もまたおもしろがって応えた。
「今宵は客人であるそなたの望むとおりに。このログハウスにあるものを自由に使って良い」
 それは、ココにとって死の宣告に等しいもので。
「あ、ひっ、ゆ、許してっ、やっ、お願い、ですっ、許してくださっい」
 弟であるはずの目の前のテンに、ひれ伏すように頭を下げる。
「ご主人様の服、きれいにしますっ、あ、だからっ」
 いつものように、舌で舐めて吸い取って。
 己の精液は、いつものように自分の腹に納めるから。
「はん」
 けれど、苛烈な調教師は——後でベイルーフがしみじみと「ボスより激しい気性のようで」と語ったと言われるほどの彼は、鼻で笑い、兄であったはずの奴隷の顔に体液で汚れた板をなすりつけながら、言い放った。
「おまえのその締まりの無い穴を、塞いでやるよ」
 その言葉ともに傍らの机の上から取り上げたのは、あの小さな鍵だった。


 準備に時間がかかる、と30分ほど経ってから戻ってきたテンを待って、お仕置きは再開された。
 その間に、射精防止リングを取り付けられたココは、再びボスに貫かれた。さらに、調教師テンの言いつけ通り、乳首とペニスを強震動のバイブでいたぶられ続けたココは、今はもう、ひくひくと泡を吹いて白目を剥いていたけれど。
 再び、打ち据えられ、覚醒させられる。
「い、いやっ、ぁぁぁっ、やめっ、許してっ」
 暴れる四肢を机の四隅の足に縛り付けて。
 大きく割り広げた足の間に陣取ったテンは、念入りに陰茎全体を消毒して。
 すでに穴の空いてある場所を探り、射精防止用のブジーを差し込み、まずはそちらのリングを固定した。
 それから、用意してきたものをその傍らに並べた。
「おや、それは」
 何をするつもりか男は知らず、けれど、自由にさせて、その行為を興味津々に見ている。
「寝室にあったものを拝借しました」
 太い楕円に近い四角のカラビナは、線直径が5mm近くあり、長い方で50mm近くあった。留め具部分はネジ式の輪がついているタイプだ。一見しただけでもひどく丈夫なもので、それは身体を縛り固定する拘束具の継ぎ手であったはずだ。
「キーホルダーにします」
 同時に手にした鋭い針は、ピアッサーというにはあまりにも太い。
 けれど、その手はためらいなく。
「ぎゃーぁぁぁぁぁぁっ」
 腫れ上がった陰茎の鈴口の中から亀頭の下の根元へと、一気に突き刺して。
 暴れる身体は屈強な側近達ですらはね飛ばしそうになったけれど、慣れた男達はすぐさまにまた押さえつける。
 慣れた手つきのテンは、その穴へ先ほどのカラビナを差し込んで。
「ひっ、ぐっ」
 下から出てきた端から、別の細い線経のリングを通す。その丈夫なリングにはあの鍵がぶら下がっているのだが、鍵を通した継ぎ目は溶接でもしたかのような変色した痕だけが残っていて、継ぎ目はなくなっていた。その鍵がぶらりと垂れ下がった状態で、テンはカラビナのネジを固定してしまう。
 さらに。
「ねえ、ココ? これをこうすると外れなくなるって知ってた?」
 にこりと微笑むその笑みは、ココにとっては懐かしい弟の笑みと変わらなかったけれど。
「あうっ!」
 ぎりぎりと傷ついた亀頭の傍でネジ式の輪を工具で何カ所もきつく締め付け、徹底的に潰していく。
「これでもう、道具で切り開かないと開かないんだよ」
 自慢げに言ったその言葉通り、手で回すことが出来るはずのネジははつぶされ、手ではびくりともしないほどになっていた。
 その外せなくなったカラビナに、射精防止ベルトを止める鍵がぶら下がっていて。
「いた……あっ……なんでぇ……ひくっ」
 ちゃりと鍵を揺さぶられていその振動が傷口に響くことよりも。
 そんなところに鍵を付けられてしまったことに衝撃を受ける。
「ああ、心配しなくても鍵は届くよ、こうやって」
「ぎぁぁぁっ」
 傷がある場所を無理に引張られて、悲鳴を上げる。さらにプジーが入ったままの陰茎を無理に下ろされて、その痛みにも苦しみながら。
「ほら、届くだろう?」
 それは、ほんとうにかろうじて、だった。
「や、ぁぁっ、離してぇぇっ、痛いっ、ひぎぃぃ」
 けれど、その安堵より傷口がひどく痛む。
「まあ、穴が落ち着くまで無理はしない方がいいと思うよ」
 何でもないことのように言うけれど。
 前にピアスを穿たれたとき、月日など数えていなかったけれど、それでも痛みが無くなるまで数ヶ月以上かかったのだと、ココは朧気ながら覚えていた。
「それにこれなら鍵をなくさなくて良いだろう?」
「ブジーも入ったままだな」
 男が愉しそうに追随する。
「でも、出せるでしょ、すぐに」
「や、やめてぇぇぇっ」
 狭い鈴口を貫くカラビナを押しのけながら取り出そうとされて、その拡張の痛みに必死になって止めるココの瞳が恐怖に震えている。
 その目は、もう目の前の彼を弟として見ていない。
「これくらいすると」
 そしてテンも。
「締まりの無い穴も少しはちゃんと締めとこうって思うだろ」
 その瞳に映っているのは兄では無く、躾がいのあるマゾ奴隷のココだった。




 闇の世界に一大勢力を築くある組織のボスは、ここ長らく一匹の奴隷を飼っている。
 もう10年ばかり飼われ続けたそれは、見事な調教の果てに、呆れるほどに卑猥な身体を持ち、欲に縋って生きていくしかない淫魔のごとく淫乱になり果てたモノだという。
 最近では闇に沈む店の一つで時折見世物として出されることもあり、たいそう人気があるとのことだ。
 ボスが特別に選んだ客の前にだけ出される奴隷は、いつも不気味な悪魔の可動式の彫像と絡んでいて。
 のけぞった胸に目立つ見たことも無いほどに大きな乳首は、四方から伸び縮みするワイヤに引っ張られて歪に歪み、穿たれたたくさんのピアス穴を大きく開いてる。
 その両手は4つの顔を持つ悪魔の、そのうち2つの顔の喉の奥深くに飲み込まれて、上へ後ろへと固定されていて。
 足は鞭のようにのたうつタコの吸盤を持つ触手が絡まって、限界まで割り広げられて、股間を上へと向けられていた。
 その中心にあるペニスは、悪魔の6本の手の内の一つに伸びる細く長いゴツゴツと節くれ立った指に先端から貫かれ、その指は小刻みな振動とともにひっきりなしに上下左右に動いている。
 そして、見る者の目をひきつけてやまないのは、その後ろにある排泄口であるアナルだ。
 悪魔の巨大で禍々しい歪なペニスは、逞しい男の腕より太く、それを銜え込んだアナルはしわが無いほどに伸びきっている。しかも、腕と同じように、否——それ以上に激しく振動すらしながら動いているそれに、奴隷はいつも甘い嬌声を上げて悶えていて。
 けれど、そのペニスはきつく戒められていて。
「鍵がかかっておりますので」
 外せないのかと問うた客に、最近さらに貫禄が出てきたと言われる敏腕調教師はさらりと答えた。
「こちらがその鍵でして」
 勃起しきった先端で、きらきらと光るリングにぶら下がる小さな鍵がそれだという。
「届かないのでは?」
 不思議そうに問われて、調教師は首を振った。
「届きますよ、萎えているときはね」
 萎えれば届くその距離は、今は遠い。
「ではこれに犯されている時は外せないな」
 ひいひいと喜び悶える奴隷が、いつもどんなに射精を請うているか、客ならば誰でも知っている。
 この奴隷は、アナルを激しく犯されながら射精をするのが大好きなのだ。
「そうですね。といっても、最近では勃起していない方が珍しいですし。これのご主人様は、勃起していない時に、射精を許可するほど寛容な方ではございませんから」
 巨大な組織を支配する絶対者であるボスが自分の持ち物に決して甘くないことは誰でも知っていることだ。
 さらに。
「勝手な射精は許されておりませんから、こうやって戒めておかないとこれは良い子ではいられないのです」
 にこにこと応対しながら、その手が操作盤をランダムに叩く。
 とたんに悪魔の顔が動いて口から出てきた長い舌が、固定された奴隷の口に入り込み喉の奥まで犯して。
 触手はさらに足を広げさせ、一度抜けたペニスが、今度は別の触手を巻き付けたたまに入り込んで。
 ボス以上に苛烈な調教師は、過去何人も色情狂に仕立て上げ、この装置にかけては狂い死にさせたと言われている。
 それでも、この奴隷が死なないのは、やはりボスのお気に入りだからだろう。
 客はひとしきり奴隷の痴態を愉しんだ後、空になったグラスを換えに立ち去った。
 不意に訪れた静寂に、調教師はふっと頭を上げて、姿勢を変えられ降りてきた、口腔深くペニス型の張り型に犯され歪んだ顔に笑いかける。
「今日も良い子でお客様を喜ばせたら、ご主人様がご褒美をくれる、かもしれないよ。良い子だったらね」
 繰り返される言葉に、うつろに喘いでいた奴隷が、ふわりと笑う。
「あ、ああっ、んっ、ぁぁっ」
 弱々しくなってきた声が大きくなったのはその直後。
 離れていた客達がまた戻ってきて。
 夜明けが来るまで続けられる宴の間中、奴隷は「良い子」と呼ばれながら、その痴態を晒し続けていた。


【了】