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貴樹の腕に、足に、人の手足が絡みつく。
舌を動かせば、絡めているペニスがびくりと動いた。先から滲む慣れた味をじゅるじゅるとすすり、もっとと唇で扱く。
両手の指は、それぞれが違うペニスに絡みつく。
ぬるぬると滑るから掴みにくいけれど、決して離すことはしない。
「あ、ああっ。ま、待、て……」
急に強く突き上げられて、仰け反ったせいで口からペニスが外れてしまった。慌てて追いかける様を、周りの男達が嗤う。
「淫乱」
「ダメじゃねぇか、離しちゃな」
「お仕置き、追加かあ?」
一人がげらげらと下卑た笑い声をあげて、貴樹のペニスに入りこんだ棒を弾いてきた。
「ひ、ひいっんっ!」
鈴口を丸く広げるほどに太く固い棒だ。尿道をぎちぎちに広げて、先走りすら零させない。
何をされても悦ぶ体だと知れ渡っているから、男達は何をするにしても遠慮会釈がない。
地面に転がされた貴樹の肌に小石が食い込む。
おざなりにシートが広げられて雑草は避けられたけれど、それだけだ。固い地面の上で男にのしかかられ、背中が痛んだ。苦痛に呻き声が上がるが、誰もそれに頓着しない。
誰にも邪魔されない場所で朝まで貴樹を犯すのだと、一本目のペニスの男が言っていた。
満月の明るい初夏の夜だった。
車の中で犯されながら連れてこられた場所は、雑草が生い茂った山間の場所だった。
崩れ落ちた家屋がかいま見えたけれど、それだけだ。
すぐに地面に転がされて突っ込まれて、どこかなどと気にする余裕などなくなった。
そんな貴樹を取り巻いているのは、15人ほどか。
それを見て取った貴樹の口元に笑みが浮かんだのを見て取った輩が嗤っていた。
「嬉しいか? この場所をネットに公開しといたから、暇な奴らがみんな来るぜ」
手にバイブや鎖を持った男が近づいてくる。
「いろんな道具を用意した、好きだろうからな」
「痛いのも好きだったな。ムチがいいか、それとも、ロウソクがいいか? ああ、それとも全身にピアスをしてやろうか」
そんな言葉に、熱く火照った身体が僅かながらに冷えた。
何をしても悦ぶ体はもう隠すつもりはなかった。けれど、早くに傷が治ってしまう回復力は、誰にも知られたくなかった。
淫乱な体までは人として通用するだろう。だが、あの異常な回復力がばれたら、人ではなくなる。
アナルを深く抉られて快感に嬌声を上げながら、会話が気になったが、幸いにも男達の会話はそれ以上深くはならず、どんな道具を使うかの相談になったようだ。
「んあぁぁ、もっとぉ」
ペニスが肉壺の壁を擦り上げる。ぬめる先端が肉を押し開く。
繰り返された陵辱の間に一度や二度は関わった男だろうが、記憶に残っていない相手だ。
だが、そんなことはどうでも良かった。
理性を解放してしまえば、感じる快感はさらに激しくなる。
腰を抱えられ、上体を起こされた。上向きになったペニスに厳つい手が伸びる。
「んひぃっ!、い、いたぁっ!」
鈴口の棒を弾かれたのだ。
「あっ、それっ、痛いっ!」
「痛い? イイんだろ? 萎えるどころか、さっきよりビンビンになってるぜ」
「ひんっ」
鈴口をつま弾かれて、嬌声が上がった。
ひくひくと震えるペニスは、確かにさっきより敏感に立ち上がっている。
射精はできなくても先走りはふんだんに流れる。けれど、先端が塞がれてしまうとそれが出なくて、ひどく苦しい。
「あ──っ」
淡い快感が、尻穴から全身に滲んでいった。
勢いの良い精液が、体内に解放されていたのだ。肉壁に染みこんでいく快感に、ぶるりと身震いして歓喜の声を上げる。
この瞬間が一番良い。
男達の体液が──特に、精液がこの身に染みこんでいく瞬間がたまらなく感じる。
「あぁ……もっとぉ」
感極まった声を上げて強請るのは、この瞬間がもっと欲しいから。
吐き出せない熱がほほんの少しだけ治まる気がするから。
「今日こそはおまえも満足するかもな」
新しい男達にはばれている。今までの行為で、貴樹が満足していないことに。
口の中、喉の奥までペニスが入り込む。
じわりと唾液が溢れてくる。
飢えた体が、男を求める。
手を伸ばして、ペニスにむしゃぶりついた。その手が掴まれ引っ張れる。
萎びた肉が手の中でむくむくと大きくなるのを楽しむ間もなく、別のペニスがアナルに入ってくる。
「むあぁ──ぁっ、あ──」
ペニスが口の中にあると声を上げるのには邪魔だ。けれども離せない。
ジュパジュパと口全体を使って、ペニスをしごき上げる。滲み出る前立腺液を粘膜全てになしりつけた。
好きなのだ、これが。
汚される感覚が身震いするほどの快感を呼び起こす。
精液があれば、快感は段違いに大きくなる。だから欲しい。たくさんの精液が、たまらなく欲しい。
敏感になった肌が汚されるのも好きだ。どろどろの肌に泥が貼り付くその感触にすら感じた。
「あ、んあ──ぁ、はあぁぁっ」
ペニスの精液を絞り出すように体内に銜え込み、次が欲しいと尻を振る。
あぶれた男のペニスが、乳首を嬲っていた。ぷくりと膨れた熟した実は、男達の鈴口の刺激にはちょうど良いらしい。潰され、こねくり回されて、全身に痺れるような快感が走る。
「うわあっ、あぁ」
口の中のペニスが入れ替わった。今度は太い。
引き出されると白く濁った唾液が溢れる。
瞳から溢れた涙は随喜の涙で、顎に至るまでに精液混じりになっていた。
「あふっ、ふあっ!」
張り詰めたペニスに刺さった棒が急に震え出した。小刻みな振動は、達けない苦しみを助長させるのだが、それもまた貴樹には快感だ。
「こいつはバイブ機能もあるんだ、イイだろう?」
耳の中に舌で嬲られながら囁かれ、潤んだ視線で頷く。
もっと犯してくれ。
気が狂うほどの快感の渦に突き落としてくれ。
痛いのもかまわない。苦しいのももっと良い。
前後のペニスが同時に達って、同時に離れた。その隙にと体がひっくり返される。
両足が高く掲げられ、間に男の体が割り込んできた。
顔の上にまたがった男のペニスが口に付き入れられる。
「あ、むあぁぁ──ぁぁっ」
空気に晒された乳首に、ぎりりと潰されるような痛みが走った。
瞳だけを動かして見やれば、きつい締め付けのクリップに挟まれていた。
「つぶしやしねえよ」
貴樹の視線が抗議に見えたのか、言い訳のように付けた男が宣う。
もっとも、貴樹の視線は別の意味だ。
「おお、締まる締まるっ」
「こいつ乳首苛められると感じるんだ。もう一方もしてやれよ」
「了解っ」
すぐに走った痛みに、全身が痙攣する。痛みと共に走る快感が、アナルを収縮させ、ペニスを締め付ける。
しかも。
チャリと微かな音が胸元からしていた。貴樹の裸体を浮かび上がらせる照明が教えたのは、細い黒い鎖だ。
「あ、うあ……あ……」
あの、鎖……。
ぞくりと全身に疼きが走った。
音が記憶を呼び覚ます。鎖は、貴樹にとっても快感を増す道具になっていた。
目の前を鎖が横切る。乳首の反対側を握る手が、鎖を引っ張っていた。
「この鎖は、こっち側もクリップなんだよ」
ニヤニヤと嗤いながら、そのクリップが貴樹の左右の耳朶に取り付けられた。
調節された鎖の長さはかなり短い。
「ううっ」
貴樹は目を見開いて、付けた男に視線を送った。
これでは、頭を動かせない。快感に頭を振りたくれば、乳首がきつく引っ張られる。
さっきのように四つん這いになったら、一体どうなるだろうか? 鎖がちぎれるわけはない。だったらちぎれるのは……。
「自分で苛めな。こうやってよ」
「ぎぃ、ゃあああっ」
がくがくと頭を揺さぶられて、激痛が乳首から走った。
クリップが柔らかな乳首に食い込み、限界まで引き延ばす。
「あ、ひあっ……」
がくがくと全身が痙攣していた。
痛みではなく、視界が弾けるほどの快感でだ。
「良く伸びるなあ」
「女みてぇな乳首だ。こいつ、どこまででかくなるんだろうな」
「いいねぇ、淫乱にはふさわしい」
ぬぷりと抜け出たペニスを舌が追いかけようとするのを、制止され、顎を掴まれる。
「ほら、いいもん貰ったんだ、礼は当然だろ?」
「は、あ──ありが……と……ござい、す……」
だが、周りの全てのペニスが動きを止めていた。あまつさえ、抜けようとする。
「や、あ……」
「欲しいんだったら、頭を振るんだよ」
男達の意思を感じ取った。そのとたんがくがくと頷いていた。
乳首が引っ張られ、激しい痛みが走る。
それでも、欲しかった。
「もっと、欲しい……やめないで……」
とたんに歓声が上がり、下卑た嗤いが辺りに木霊した。