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「ひっ、みゅう──っ、ふみぁあ──」
引っ切りなしに嬌声が零れる。
身体の中を走り回る快感が、勝手に身体を動かした。
浅ましくも身悶え、ペニスから淫液をだらだらと流し、腰を振り立てる。
今、ミーヤのアナルには自分の尻尾が深々と突き刺さっていた。
外では柔らかく自在にくねるくせに、体内に入ったとたん剛直と変わりない硬度で、肉を穿つ。狭いアナルに締め付けられ、敏感な尻尾が感じると、腰が跳ねて、アナルが絞まる。剛直と化した尻尾も跳ねて、さらに奥深くに入り込んだ。
目の前が白く弾け、ぴゅっ、ぴゅっと、鈴口が淫液を吐き出した。
身を襲う歓喜は、素直な尻尾をさらに踊らせる。
くねくねと動くそれが、体内深くでも締め付けを無視して踊り、前立腺をも激しく叩く。
叩きつけられた前立腺は、さっきから悲鳴を上げっ放しだ。
「あっ、あむぅ──くみゅうっ」
もう達きたい。
射精の衝動は激しくミーヤを襲う。
けれど早々に戒められたペニスは、どう足掻いても陰嚢に蓄えた精液を吐き出させてはくれなかった。
はあはあと大きく喘ぎ、せめて熱を吐き出したいと願うけれど、熱は体内奥深くからいくらでも沸いて来て、すべての器官を煮えたぎらせた。
苦しい、と喘ぐミーヤの朦朧とした視界に、ぴんと腹を打つほどに反り返った己のペニスが見える
それに触れる無骨な手。
ぐりと先端の形が変わるほどに指が食い込む。
なのに、何も感じない。
「お前のペニスはいくら表面を刺激されても、感じない」
ペニスの根元を色が変わるほどにきつく戒められても、確かに痛みは無かった。
「だが、それ以上にお前の尻尾は感じるようにできている。しかも、感じれば、んんっ、感じるほどそいつは、良く動く──っ」
「あ、あああっ、ひぎゃあ──っ、みゃああ」
「ん、くふ」
足を固定されて、腰をくゆらせることしかできないミーヤに、たくさんの白濁が降り注ぐ。
さっきから、ミーヤの痴態を見ながら、キバがずっと自慰を繰り返しているのだ。もう何度も達って、ミーヤの下腹部はねっとりと白く汚れているのに、キバのペニスはまだまだ硬度を保っていた。
「こんだけ出しゃあ、正気も何とか保つか。こっちもだいぶ蕩けてきたな」
尻尾の脇から指が滑り込む。とたんに、ぞくりと背筋を快感が這い上がる。
「は、あああ」
緩く指が動くのを確認したキバが、ぬぷりと尻尾が抜き取った。
それだけでぴゅると淫液が噴き出した。
肌が総気立つ。
ほんの少し吐き出しただけなのに、射精の時の快感に襲われる。
もっと、もっと。
思いっきり吐き出したら、きっともっと気持ち良い。
「ふみゃ、みゃあ……、ああみゃ」
欲しくて強請る。
達かして、と訴える。
「み、みやあ、みゃっ──みいぃぃぃ」
けれど、猫の鳴き声にしかならない声は、意味を相手に使えない。
否──キバの顔に浮かぶ酷薄な笑みを見れば、何を欲しているか理解している。
だがキバは、ミーヤを喜ばせる気はないようだ。
それに、ミーヤの悩ましげな動きがキバの我慢を吹き飛ばす。
荒々しい動きで、のしかかってきたキバから逃れる間など無かった。
「ふぎゃああああああっ」
限界を越えて広げられる激しい痛み。
ぶちっと何かが切れる感触。
吐き出した息を、肺に取り入れることができない。
間髪を容れず抽挿が始まり、悲鳴が迸る。
巨大な剛直に容赦なく突き上げられ、狭い肉をこじ開けられる。
容赦ない突き上げに、腸壁が破られそうな痛みが走る。
「ははっ、どうだ、旨いだろう? これも、訳の判らない薬を入れられて、珠を植えられてこんなになっちまった。しかも四六時中勃起させられて──出せるのは、ショーに出された時だけだ」
自嘲と深い恨みの乗る声音。
「溜まりに溜まった上に、薬まで盛られて狂った俺に犯されて、何人もの年端の行かぬ奴隷が尻穴を裂かれて死んだ。悲鳴を上げて、助けを求めて、泣き喚いて、悪魔と罵りながら──。忌み子の子は、まだ14歳で保った方だったが……。俺の、俺が助け出される直前のショーでっ、くそぉっ!」
感情に煽られて、キバの動きが激しくなる。
がつがつと打ち付けられて、引っ切りなしに叫んだ。
「助けたかったっ、助けて、やりたかったっ! ちゃんと両親に愛されてっ、普通に暮らしてた奴を色が変だからって、いきなり奴隷にしてっ!」
声音に含まれる感情は、あまりにもきつく、ミーヤを狂わせる。
そんなことをしたのはミーヤではない。
だが、ミーヤは知っている。
混血に生まれた子供達の末路を。
忌み子に生まれた者達の不幸を。
ミーヤ自身、自分が忌み子でも特異な方だというのは知っていた。色味がかろうじて良かった、と言うのも貴族だから贔屓されたのかも知れない。キバが出会った子のように、奴隷商に目をつけられれば、あっと言う間に奴隷になっていただろう。
それでも、あの親に感謝しようとは思わない。
こんな薄汚れた血を持ったことが一番の忌むべきことなのだから。
混血ではなくても他所の民の子だというだけで、まだ庇護がいる子らを保護の対象から外し、奴隷にしてしまう。
そんな民なのだ、この身体に流れる血の一族は。
何よりもミーヤはこの血を忌む。
その思いが、キバの感情に同調する。
恨まれて当然。
痛め付けられて、当然。
「ふむぅ。あみゃあぁ、はふっ、あん」
揺すられる度に激痛に襲われる。
だが、突き上げられれば身体が痙攣するほどの快感も感じる。
目の前が弾け、意識が奪われる。
「んあっ、はああぁっ──、みやああぁ」
声音に甘いものが混っていた。
「あ、はあっ、くうっ……。てめっ、尻から血ぃ流して、感じてんのか? この淫乱野郎がっ」
揶揄の言葉に閉じていた目を開ける。
涙でぼやけた視界の中、たくましい男が映った。
「み、みぃあ……」
黒い肌ではなかったし、まだ幼さの残る細い身体だったけれど。
「ぐふぅっ、このっ、くそっ」
キバの嘆きがみぃあと重なり、みぃあが目の前にいるような気がする。
今度こそみぃあを助けられるのだろうか?
「は、ああん、くあっ──み、あ……、ああっ、──みいあぁ」
「なんてぇ、声で鳴くっ」
上擦った声でキバが喚く。
それに重なるミーヤのみいあを呼ぶ声。
鳴き声と大差ないその名に、キバは気づかない。
「お前は、なんでこんなに」
「ああん、みいあぁ──、みぃあぁぁ、ふみゃああ」
揺さぶられて、感じて。気が狂う。
「吸い取られるようっ。うくっ、俺のをずっぽり銜え込んでる」
褒められて、うっとりと笑う。
みいあ、僕は君を喜ばせられる?
「ああん、み、あぁ、ふみぃ、ふぎゃあ──」
「うおっ、おおおっ」
どくん、と体内で大きく膨れ上がったものが、いきなり弾けた。
「ひやああぁぁ──」
奥深くを抉るように、叩きつけてくる何か。
全身が激しく痙攣する。
真っ白に弾けた意識のなか、黒と緑が交錯していた。
み、いあ……。
闇の中からみいあが手を伸ばしてくる。
蔓のように伸びたそれが、ミーヤを絡め取り、引きずり込む。
深い闇の中、何も見えない奥底に。
振り返れば、光の渦が見えた。
けれど、悲しいとは思わなかった。
だって、光の中に楽しいことなんてなかった。
みぃあがいた時だけが、幸いだった。
この先、このまま闇に進んだとしても、それはきっと変わらない。
「ん、みゃぁ──」
体内の剛直がまた動き出す。
挿れる前から散々出しているそれは、まだまだ硬度を保っていた。
僅かに動きが遅くなったはずの抽挿が、また激しくなる。
グチュグチュと水音が股間から鳴り響いていた。
切れた痛みはもう麻痺していた。
なのに前立腺を強く穿たれる快感は、いつまでも感じる。
溢れた体液が、大腿の柔らな内側を伝って、滴り落ちた。その感触に肌が粟立ち、甘い嬌声が零れる。
「あ、みゃぁあ──っ、みあ──っ」
二人の肌がぶつかり合う音。
荒い呼吸音。
濡れた音が、さらに激しくなる。
うつろなミーヤの視界に、正気を失い昏い欲だけに捕らわれたキバの瞳が、映った。
体内の剛直も、萎える気配など微塵も感じられなかった。
「みぃやぁぁ──っ」
もう止めて。
願って力強い腕に縋り付く。
終わりが読めない快楽の時。
その腕に指がかかる。
腰を掴まれて、身体を起こされて、抜ける寸前まで真上に引き上げられた。
もう、終わる──。
ほっと身体の力を抜いた、その刹那。
いきなり支えが無くなった。
「ぎゃぁぁぁぁぁ────っ」
自重だけでなかった。腰から脇に滑った手が勢いよく身体を掴み、真下に向かって叩きつけられたのだ。
ミーヤの背がのけ反り、顔が天を向く。
見開かれた目が、白目を剥く。
閉じられない口の端から舌がだらりとはみ出した。
ようやく形を覚えたはずのアナルが、新たな鮮血を吹き出した。
びくんびくんと痙攣する身体に、歪で巨大なペニスが杭のように深々と突き刺さっている。
それはもうアナルの限界を越えるほどに。
裂けた傷から、鮮血が流れ落ちる。
その腰に手をやったキバが、ニヤリと口角を上げたのと、放心していたミーヤの瞳がいきなり焦点を取り戻したのが同時だった。
「みぃ──────っ!」
キバの腕がミーアの腰をさらに下に押し下げ、キバの腰がぐいぐいと上に押し上げられる。
亀頭が鈴口を塞ぐように腸壁に食い込んでいた。
その痛みに、覚醒してしまったのだ。
しかも腸壁が激しく振動して、射精されているのが判る。
噴き出す精液が、塞いだ腸壁を押し上げ振動させていた。
まるで身体の奥底から揺さぶられているような──振動。
「みやぁぁ──っ」
痛みが快感に覆い隠されて。
ミーヤはアナルだけで絶頂を迎えていた。
「みゃ──、みぁ──、ぁぁ──」
いつまでも絶頂が止まらない。
「まだだ……まだ終わらねぇ」
放心して虚ろなミーヤの耳に、その言葉はもう届かなかった。
キバの理性が戻ったのは、それから数時間は経った後だった。
失神しては起こされて、いつまでも嬲られたミーヤの意識はひどく朧だ。
ようやく訪れた安らぎに、意識がすうっと引き込まれそうになる。その瞬間、感覚の薄れたミーヤの手が、暖かな温もりに包まれた。
「ミーヤ、お前なら……保つか……?」
そのまま体全体も包まれて。
優しい温もりに、ミーヤは縋った。
「壊さねぇように、か……。壊さすつもりなんかもとより無い……」
自嘲に、覚えず手を握って返す。
「お前なら、俺を助けられるか?」
そうして欲しいのなら……。
頷く代わりに頭をたくましい胸に擦り寄せる。
そのまま睡魔に身を委ねた。
ずっと欲しくて仕方がなかったものがここにあった。
しっかりと握られた手の温もりと誰かに頼りにされるということ。
この世に一人だけでないと認識させてくれること。
それがミーヤのずっと欲しくて堪らなかったものだった。