生け贄

生け贄

 結わえられた紐は手首から外れることなく、けれど、立ち尽くすも疲れて膝をつく。
 街の一角でさらわれて、何も分からぬままにここに連れてこられて、「贄」だと言われた。
 いったい何のためなのか、何の説明もなく一人にされて。叫ぶのも泣くのももう疲れて、力なく首を垂れる。
 ただ、背後の湖に落ちる滝の音だけが響く空間はひどく静かだった。
9-1.jpg 原寸大
 不意に水音が途切れた。
 それが何かと考えるまもなく、目の前に異形の輩が立っていて。
「……あっ……ひっ……」
 恐れおののく彼の前で、それはニヤリと口角をあげた。
「これはまた……」
 それが、この一帯の水を支配する化身であると彼は知らない。それが暴走すれば、この国一帯が湖の底になると言うことも。
 知らないが、その身から放たれる力に、圧倒されて動けない。
「火の気を持つ贄——よう、こんな珍しいものを」
 彼は知らないが、この水の化身が暴走するのを防ぐには、その暴れる水の力を鎮める必要があるのだ。そのために、もっとも適しているのが相反する気である火の気。けれど、通常はその力を持つ人間などいないのだ。
 けれど。
 化身の手が頬に触れる。
 とたんにちりちりとした痛みと——そして、えもいわれぬ疼きにも似た衝動に襲われる。
「ひっ、やっあっ」
「火の気を持つ贄は我の力を押さえ込み、我に理性を保たせる。我は暴れたくはないのだよ」
「や、やめっ……あつっ、うぅっ」
 冷たい手、体内から負けじと熱がほとばしる。身体の熱が、奥底にたまって暴れ出す。
 それは、男として覚えのある欲求に似ていて。
「い、嫌だっ、なんで……ひっ」
 立ち上がる己の股間に恐れおののく。
「相反する水の気に触れて火の気が暴れているだけよ。ふふっ、我が興奮すればするほど暴れてくるだろう。これを鎮めるには、我の興奮を鎮めるしかないぞ」
「し、ずめ……る?」
 下腹部の奥がどくどくとざわめていてる。
 完全に勃起した先端から、たらりと粘液が溢れ伝った。それにすら、ざわざわと肌がざわめいた。
「鎮めろ、我を。そなたの身体で」
「え……あ、あぁぁっ!」
 背後からいきなり何かに突き上げられた。
 体内に入ったそれが、奥深くをえぐり、かき乱す。
「ひっ、な、中にっ、い、いたっ、ああぁぁっ!」
「ふふ、良い心地よ。我の冷たい身体がほどよく温もるわ」
「ひっ、あっ——つめた……ああ、い、くっ、いやっ、イキたっ」
 二本の性器と長い結合を好む水の化身。
 その一本目の性器をくわえ込み、それだけで弾け狂い。
 その化身が飽きるまで続く行為に、贄の彼はただ喘ぎ嬌声をあげるだけだった。

【完】





写真.PNG 写真を加工するサイトで試したので、アップ。
photofuniaで検索してみてください。
appliもあります。
自分の顔写真があれば、変わったこともできそうです。