【Animal House 迷子のクマ】 1

【Animal House 迷子のクマ】 1

癒やしのペットを提供するAnimal House。そこに似てない双子の兄弟が入荷した。
訳ありな双子のうちの大きい一匹「クマ」が敏腕調教師ゲイルで、小さい方はその仲間が担当とすることになり。
その「クマ」とゲイルのラブ入りストーリーですが、拷問系調教ですので過程はひどいです。

中短編にあるAnimal Houseの舞台を使用した鞭シリーズの1つ。
調教師二人による拷問系鞭打ちもありますので、血、痛み等苦手な方は読まれない方が賢明です。
15話ぐらいになりますが、できあがっていますので続けてアップしていきます。

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Animal House 迷子のクマ

1

 この世界の一角にあるコンパニオン・ハウスという施設は古い城郭を利用していて、その周辺の広大な土地も私有地として保有している。
 そこを管理する者が誰なのか、雇用されている俺も子細は知らない。
 知る必要も無い。
 きちんと働ければそれ相応の給金がもらえるここでは、そんなことはどうでも良いことなのだ。
 そんな俺の仕事は、客に癒やしを与えるコンパニオンペットを躾けること。
 ペットと言ってもただの動物ではない。客に出しても恥ずかしくないように、元は人であったものを、礼儀作法、技術、対応方法を身につけたペットに仕立て上げるのだ。
 そのペットを作るために俺は雇われていて、そしてこの仕事に俺、ゲイルはたいそう満足していた。
 
 
 大きい身体の赤茶色の毛並みとその後ろに隠れているつもりらしい白っぽい金毛。
 部屋に入ったとたんに視界に入ったそれを一瞥し、プルプルと震えながらも見上げてくる姿に肩を竦めて、一緒に入ってきた同僚達を振り返る。
「二匹か?」
「データによると兄弟で、双子、だな」
 俺の補佐でもあるディモンが、手元の書類に視線を落としたままに答えた。
 体格だけなら俺と似ているが、ディモンのほうが少し背が低い。もっとも力が強く、吊るしをしたり拘束した身体を運ぶときはディモンがいるとたいそう楽だ。
「似てないね」
「ああ、まあ顔形がどことなく似てるって程度か」
 ぽつりと呟くマーカスの言葉に、俺も頷く。
 そんな俺たちにディモンがさらに情報を教えてくれた。
「双子と言っても二卵性だと似てない兄弟なみにも似てないこともある。ちなみに、24歳、そのごついほうが兄、細くて白いほうが弟。例のコードネイル家の御曹子だな」
「ああ……あれか」
 ちらりと過ぎったニュース記事の内容に、俺は二匹に視線をやりながら頷いた。
 確か、某国の負け戦での損害と連鎖倒産に巻き込まれ何百億という負債を背負ったとかで、経営責任を取った社長夫妻が自殺したっていう。まあ世間に疎い俺がそんなことを知っていたのは、きな臭い噂話やら、代替わりした先が叔父で裏には何たらかんたら、とかっていうスキャンダラスで下世話なゴシップが賑わっていたのがついこの前のことだったというわけで。
「借金返済のために身売り、健気なもんだと思うけどさ。それが自分の意志ならな」
 くすりとからかい混じりの笑みを孕んで落とされたディモンの言葉に、がたいのでかいほうが眉間に深いしわを刻んで睨み付けてきた。
 と言っても、俺たちよりは小さいし、高さが1メートルの檻越しでは、負け犬の遠吠えにも等しい威力しかない。
 まあ、この館に来たアニマル素材は、まずは館の中で先輩たちの仕事ぶりをその目でしっかりと見せられるのが常だから、自分たちの運命に戦々恐々しているのだろうけれど。
 現にその顔色は悪く、顔が引きつっている。
「おい、寄こせ」
 後ろ手に伸ばした手に渡された資料を一瞥し、二匹のデータを自身の目でも確認する。そんな俺の横からマーカスも覗き込んできて、「ゲイル好みの体格だ」と楽しそうに俺に視線を向けた。
「それを言ったらおまえもだろうが」
 似ていない兄弟は、兄のほうが身長体重共に大きく筋肉質な身体で色合いも全体に暗い。書類によれば性格も地味でおとなしいし、しかも、マジメで堅物っぽいとこもあると書かれていた。
 実際、一瞬合った強気を見せた視線も、その瞳の奥に浮かぶ怯えまでは隠せていない。
 弟のほうは、長身ではあるが兄と比べると細い。やせぎすではないのだが、色合いが白っぽいせいか、若干ひ弱な感じが垣間見えた。まあ、性格ははるかに社交的らしいが。
 そんなデータをさらりと読み取って、マーカスへ、それからディモンへと視線を向けた。
「俺がでかいほうだな」
「だったら俺が白いほう、可愛い色だからバニー、うん、ファック・バニーの数が足りないからちょうどいいな」
 複数の客や輪姦用の淫乱ウサギは壊れやすいから、いつも数が足りないと言ってたことを思い出す。
 これのように毛並みの良いきれいなタイプは、確かにファック・バニーとして引っ張りだこになるはずだ。
「ディモン、管理は任せる」
「あ、俺のもね」
「はいはい、いつもの通りに。っていうか、俺はゲイルの補佐は引き受けてるけど、マーカスにはロドニーがいるだろうが。つうか今日はあいつどこに行ったんだ? 呼んでも出てこなかったけどさ」
 俺には頷き、マーカスには不承不承唇をとがらして抗議するディモンに、にこりと返されるのはいつもの言葉だ。
「ロドニーは可愛いバニーちゃんたちのお世話で忙しくてね。それにディモンが世話してくれると、調教も楽だしね」
 俺と違いマーカスが担当しているバニーは数が多いから、複数匹小屋に入れてまとめて世話はしているもののけっこう大変らしく、ロドニー一人では手が回らないこともある。
 その点、俺が担当しているのはそんなに数は多くない。
 まあ扱いが難しいのは多いが、言うことを聞かせる手段はいくらでもあった。それに、調教済みの奴らはディモンに絶対服従しているか、拘束されているかどちらかだ。
「それはわかってるけどな」
 まあ文句は言っても口だけなのはいつものことだ。依頼されると言うことは買われているということで、ディモン自身もまんざらではないのだから。まだ経験が少ないころには俺の専属補佐だったが、今では独り立ちもして、調教師としてのランキングも俺たちに迫る勢いだ。もっとも本人は暇さえあれば俺の補佐をしにきてて、一緒にするほうが楽しいと宣まっている。
 もっとも勘が良くてアニマルの扱いも上手いから、俺も重宝しているのだが。
「で、ゲイル?」
 呼びかけられ、聞かなくてもわかるその問いに、俺は腕組みをしてそれを見下ろしながら考えた。
 その視線に煽られたようにびくりと震え、戸惑い、けれど背後の弟を庇うように、無駄なあがきで歯を食いしばっているそれ。
 最近こんな筋肉質な奴は入荷していなかったなとも考えながら、首を傾げ。
「……そうだなあ、クマ、なんてのはどうだ?」
 不意に浮かんだその考えをそのまま口にして、マーカスとディモンを見やった。
「熊?」
「くま?」
 ピンと来ないのか、二人揃って疑問符付きで返してきたが、俺は「ああ」と頷いた。
「えーと……、なんていうか、熊だったらどう猛さっていうか……そういうのが無いことないか?」
「んー、マーカスに同意。こいつ、こんな図体のくせしてビクビク怯える草食動物っぽいところがあるし」
 二人とも調教師ランキング上位にいるだけあって、すぐさまこれの本質を見抜いていた。
 確かにこれはどんなに虚勢をはっても、どう猛さというものは感じられない。
 首根っこ捕まえて引きずり回せば、ピイピイ泣いて平服するしかできないタイプだ。だが。
「熊はそれほどどう猛ではないさ。まあ、どう猛なはずの熊を従わせる優越感ってのを味わってもらうのも良いし。どうせクマと言っても、その爪も牙も抜かれてしまうしかないんだからな」
「ゲイルにかかればどんな奴もおとなしくなるしな」
「つうことで、俺はこいつをクマに仕立てる。蜂蜜ならぬザーメン大好きな、冬眠し損ねたクマってのがコンセプトだ」
 その言葉に、「ああ」とディモンが頷き、ニヤリと口角を上げた。
「飢えたクマは冬眠できずに餌をもとめて彷徨うしかないってやつか、これは楽しみだ」
 そんな俺たちの会話を聞いても訳が判らないのだろう。自分のことを言ってるのはわかっているのだろうが、クマの眉間のしわがいよいよ深くなる。
 そのクマをじっくりと観察してみれば、Tシャツの袖から覗く腕にはほどよい筋肉がついていた。
 まあ、マッチョとかいうたぐいに近いものがあるが、さりとてボディビルダーのようなこれみよがしの筋肉でもない。無駄な脂肪がないアスリートの筋肉だが、どこか一つが突出しているわけではなさそうだ。
 まあ、上流階級では身体作りが日常的に行われているから、その程度でも若い分しっかりと筋肉がついているのだろう。
 今も片膝をつき、背に弟を庇う姿勢はピンと伸びていて、揺らぎがない。
 さて、これをどう躾けていくか、考えるのが一番楽しい時間でもあるが。
「ディモン」
「はいよ」
「マスターから何か要望が来ているか?」
 基本俺たちは素材を与えられたら自由に調教しているが、時々リクエスト付きを与えられることもある。
 それは客からであったり、俺たち調教師を司るマスターからであったり、館の各部署からだったりといろいろなのだが。
「あー、1件だけ。二週間後予定のレースの余興に出すのが欲しい。良さそうなのを見繕って欲しいってきてる」
 データの書かれた書類とは別に、タブレットに表示されたメッセージを読み上げたディモンに、俺とマーカスは同時に視線を向けた。
「……二週間後のレースって、宵月祭のことか?」
 俺が何か言うより先に、マーカスが呆れたふうに問いかける。
「ああ」
 ディモンが頷き、補足する。
「その余興用ってことで、中古でもいいみたいだ。前回のは壊れたから、次が欲しいようだな」
「宵月祭ねえ……」
 思わずマーカスと顔を見あせて、肩を竦めた。
 宵月祭の主たる催しはダービーだ。アニマルのウマたちの中から選抜されたウマがレースをし、勝敗を競うもの。
 客はどれが勝つか賭けをする。
 まあレースと言っても、広い敷地を利用したダートな木立の中を淫具をつけて駆け抜けるそれは、障害物もたっぷりとあるせいで四時間もかかる。実際に完走できるウマが皆無の年もあるほどの過酷なレースだが、館の催しでもかなり盛り上がるものだ。
 その宵月祭で余興といったら、レース後の宴のステージで開かれるあれしかない。
 それを自分の担当から出したら一応特別報奨はもらえるが、そんなものに俺自身はあまり触手はそそられなかった。
 けれど。
「ああ、ちょうどいいや」
 不意に浮かんだ考えに、俺はにやりと口角を上げるとマーカスとディモンに視線を向け、それからおもむろに二匹を見下ろした。
「おい、おまえら」
 笑みと低い声に、二匹の身体がぴくりと跳ねる。
「おまえらはこれから俺たちに調教される。この館で働くためにな」
 とたんに蒼白になっていく二匹に、俺は檻越しに顔を近づけた。
「デカいのは俺だ。細いのは、そっちが担当する。で、どっちが先に堕ちるか賭けをしようじゃないか」
「え?」
「「賭け?」」
 クマのいぶかしげな反応に、後ろの二人も素っ頓狂な声を上げた。
「賭けって?」
 マーカスがぽつりと呟くそれに、俺は肩越しに頷いた。
「俺とおまえ、ヨーイドンで始めた調教で身も心もアニマルに陥るのが早いか遅いか」
「はあ……、まあ良いけどさ。だが、賭けっていうなら、何を賭けるのさ?」
「もちろん、堕ちなかったほうが勝ち。そして、勝ったほうに宵月祭の余興の出演権」
 口角を上げたまま、少し昂揚した声音で返したそれに、パチクリと瞠目したマーカスとディモンだったけれど。
「あ、ああ……つまりは快楽堕ちしなかったほうを余興に出すってことか」
 先にディモンがピンときたと頷いて、ついでマーカスが顔を顰める。
「おいおい、快楽堕ちしていないのをあんなに出したら一発で壊れるじゃないか……。まあ堕ちてても壊れるけどさ」
 あまり好きでない余興だと、顔を顰めたマーカスが不服げに鼻を鳴らす。
 それに笑いかけ、意味のわかっていない二匹へと視線を戻し、説明してやる。
「調教して、その身も心も……這いつくばって人に喜んで従うようになるのを堕ちたと定義して、それが遅い方が勝ちだ。そして勝ったほうはこの館の一大イベントである宵月祭っつう祭りの余興に出ることになる」
「……よ、きょー?」
 始めて、掠れた声がクマから零れた。
 やや低い、体格にみあった声音はなかなかの好みだ。
「そうだ」
 頷き、ちらりと肩越しに見えたバニーに視線をやる。
 細くて白っぽい金髪。好みじゃないそれに加えて、軽薄そうな性格と庇護されることに慣れた態度が鼻につく。
 同時に母の腹で育ったくせに、まあ体格とともに性格まで真反対っぽい。
 マーカス好みのそれは、俺の鞭に晒されればすぐに壊れてしまうだろう。
 だがクマのほうなら多少はひどくしても体力は大丈夫そうだ。
 痛みに精神が先に屈することは多くて、だからこそ鞭は最適なんだが、あまりに早く堕ちるとそれはそれでおもしろくない。
 せっかくだから、長く楽しみたい、そのためには。
「余興は、レースが終わった式典の舞台でモノホンの馬との種付けショーだ。牡馬の巨大なペニスを腹に入れて、膨れるほどにザーメンを注がれて、最後には噴水のごとく吹き上げる」
「え……えっ、ひいっ!」
 ガチャッン!
 クマが驚愕に仰け反った拍子に、二匹が反対側の檻まで後ずさった。
「どうやら馬のペニスの巨大さをしっているようだな」
 まあ、御曹子ともなれば、乗馬なんて高尚なこともやったことあるのだろうが。
「そ、そんなの……入るわけないっ、無理だよっ、ね、兄さんっ、ねっ」
 怯えたバニーがクマの腕に縋り、蒼白な面持ちでガクガクと震えるのを、クマが守るように抱きしめて。
「大丈夫だ、大丈夫から」
 そんな根拠のない慰めに、俺の肩が震える。
「何、反抗して逆らって、堕ちなかったら勝てる。まあ余興は大変だが、その代わり余興でちゃんと客を楽しませたら、その褒美に兄弟揃って俺が責任持って素性の良い客に与えてやる。外に連れ出してもらえるような優しい客にな」
 まあその辺りは口から出任せだけど。
 それにその頃には負けたほうは快楽堕ちしてチンポ無しではいられなくなってるはずだし。
 そんな俺の内心の苦笑など気付く様子もなく、クマのほうが縋るように俺を見てくる。
「ほ、本当に……? 堪えたら……、本当に?」
 なかなか良い面構えのクマが縋るように見上げてくるのは、なんとも言えぬ優越感がある。
 まあ、それもすぐにグチャグチャに汚れて、ヒイヒイ悲鳴を上げることになるんだろうけれど。
「……もっとも俺たちもあんまり長く時間をかけるとペナルティがあるからな。手は抜かないぜ」
 どうせ調教するのなら、簡単に堕ちてしまうのもおもしろくない。
 どんな奴でも一週間ともたない俺の調教の腕に、どこまで堪えられるか。
 けれど、弟を守りたいクマは、絶対に堪えようとするはずだ。
 俺の真意に気が付いたように、マーカスの顔から不満の色は消えていて。
「さすがゲイル、なかなか楽しいことを思いつくじゃないか。じゃ、俺も全力でやらなきゃね」
 ぺろりと舌なめずりをして、好色そうにバニーを見やるその瞳は、すでに調教の算段がすっかりと立っているように燃えていた。