【TATTOO-1】 2009年04月15日
異世界に迷い込んだラウンの言葉は、誰も聞き取ってくれなかった。
相手の言葉はすべて聞き取ることができ、意味さえ理解できるというのに。
オウム返しに同じ発音で返したはずの言葉すら、まるで動物の鳴き声のように聞こえるのだという。
『まるで発情期の雌(めん)タムの声だ』
何も判らぬままに呆然としていた時にラウンを拾った男が言う。
タムは、この世界の四つ足の肉食獣で月に一度発情する。しかも、1週間近い発情期間に雌タムは、ひたすらオスを探し、見つけると交尾をねだり、日がな一日交尾をし続けるのだという。
そのため、淫魔の使い魔とも言われ、多淫な質を持つものはこのタムの名を冠してあざ笑われた。
『タム』
ラウンが発する声は、そのタムに似ていると男は繰り返し、名を伝えられないラウンをタムと名付けた。
『まったく、お前はタムそのものよ』
この世界の異形の力で、ラウンを支配する男。
無から有を生みだし、存在するものの形すら変えてみせる力は、ラウンの体すら変えてしまう。
『素敵な舞衣だろう。その姿で踊って見せよ』
素肌に浮かび上がる淫らな形の舞衣。
この世界に来たときに耳を飾っていたピアスは、今は乳首に。
指にしていた指輪は、ペニスにはめられて。
好色な客たちの前で、欲情した鳴き声を上げながら、淫らな踊りを踊らされるのだ。
原寸大
(2)
ラウンの体は、男のもの。
「タム、食べなさい」
餌だと与えられるそれに、もう慣れてしまった。
繰り返される食事の前の儀式は、日に三度。
淫獣タウの名を冠するのは、この男こそふさわしいと思うのに。
「タム、そんなによだれを垂らさなくても」
くつくつとあざ笑らわれて、羞恥に顔がゆがむ。
見なくても判る。
己のペニスから、よだれのように淫らな粘液がたれ落ちていることを。
「今宵は、ひさしぶりに腹から溢れるほど喰わしてやろう」
その言葉に、びくりと体が震えた。
それは今夜、淫らな宴が行われるということ。
この体に群がる獣とかした男たちが、今日はいったい何人来るというのか。
「何をさぼっている。もういらないのか?」
きつく髪を掴まれて、あわてて口腔いっぱいに男のペニスを含んだ。
男を射精させなければ、この後の食事はもらえない。
一度きりではないその仕置きは、ラウンが飢えて飢えて、目に入るすべてが食べ物に見えてしまうほど飢えても、許されない。
男が出した汚物すら、口に入れてしまうほどに狂ってしまって——そこでようやく許されるのだった。
原寸大