【披露宴】(4)

【披露宴】(4)

 あれからもう一度お色直しだと外に出されて、スカートの重なっていたレースを取り払われて、再び戻って、今度はダンスのお披露目だ。
 前より剥き出しになったアナルに入っている張り型はバイブ機能も持っていて、さっきから新郎の手の中でスイッチが切り替わる度に、縦横無尽に暴れ回る。
「ああぁっ、はあぁぁ……」
 ワルツではくるくると回され、チークダンスでは抱き込まれ、尻を揉まれながら深い口づけをして。
 暴れる張り型を外から押さえられて、呆気なく絶頂を迎えた。
 もう足はガクガクと痙攣し、一人で立っていることはできないのに。
 疲れ知らずの来生は、軽々と陽一郎を振り回し、踊らせた。
 もうそれで限界だったのに。
 それでも続いたダンスのお披露目は、12時前になってようやく司会が終わりを告げて。
「これより新婦が三度目のお色直しのために退席いたしますが、その前に各席へとご挨拶に参ります」
 高らかな司会者の宣言に、場がしーんと静まりかえり、皆の視線がいっせいに陽一郎へと集まった。
「どうかみなさまふるって「ザーメンシャワーの儀」にご参加くださいませ」
 連続絶頂の衝撃にぼんやりとしていた陽一郎の身体を、来生と二人の仲人が持ち上げた。
 ぽとりぽたりとそのペニスの先から滲み出る粘液が糸を引く。黒いレースや下腹にはたくさんの精液が付着し、汗みどろになったドレスはべたりと貼り付いていた。
 そのままM字開脚の状態でワゴンに尻を置かれても、ぴくとり身体が震えただけだ。
 網タイツの足首が台下の柱に括り付けられても、上体を倒されて二の腕を広げた上体で括り付けられても、何の反応もできなかった。
 アナルに突き刺さる張り型を挿し直された時には、さすがにびくりと震えたけれど、それだけだ。
 けれど。
「いっ、やだっ、ひっ!」
 ごろごろと新郎の手により運ばれた台車が近くの席に辿り着き、目の前に何本ものグロテスクなペニスが突きつけられた途端に、我に返った。
 悲鳴は、けれど、その鈴口から垂れ落ちてきた粘液に塞がれる。
 それらはもう完全に勃起していて、たらりとたらりと先走りの液から垂らしていたのだ。
「どうぞ、思う存分にみなさまの熱いシャワーを」
 来生の信じられない言葉に、唯一自由になる首を横に振る。
 だが、どんなに拒絶されても、見下ろす男達の欲情に捕らわれた視線は変わらない。
 無骨な手が、それぞれのペニスを数度擦り上げただけで、精液がすぐに振り注ぐ。
「可愛いお嫁さんで羨ましいよ、おめでとう」
「ひっ」
「おめでとう、あんまり可愛い声で鳴くから、俺の息子が暴れてててね」
「やあっ」
 祝いの言葉ともに与えられるそれは、顔に身体にかけられていく。
 最初の席だけで、いくつもの液溜まりを作った台車は、さらに進んで。
「や、……だ……」
 口を開ければ、たらりと生臭い精液が流れ落ちてくる。
 しかも、それを狙ったように突き刺して射精する者もいて、口の中まで白く染まった。
 そんな陽一郎の耳元で、来生が囁く。
「可愛いよ、私のヨウ。君の射精する表情はとても可愛くて私は参っているんだよ。でも、この世の中にはもっと気持ちよいことがあってね、それは、精液をたくさんもらうことだ」
「や……ゆ、るし……て」
 その言葉に、身体が小刻みに震える。何を言いたいのか判らないのに、それがろくでもないことだということは判った。
 けれど、震える懇願は、彼の耳には入らないようで。
「さっき祝い酒として、強壮成分がたっぷりと含まれた物を皆に振る舞った。きっとたくさんシャワー浴びせて貰えるよ」
 まずは顔に。
 そして。
 身体に。
 たらりと台の上に流れ落ちたそれを掬い取って、まだ乾いた肌に擦り付ける指が、淫猥に乳首を辿る。
「ヨウが可愛いから、皆こんなにもザーメンをくれる」
「ひっ、痛っ、くうっ!」
 腫れ上がり血を滲ませた乳首を伸ばし、伸びきった拍子に金環が取れる。
 痛がる陽一郎の右と左の乳首が無様に伸ばされ、場の空気の流れにすらひりひりと痛んでいた。
 手の中に転がる小さな金の輪を来生が引っ張って、テグスで繋がったドレスがずれて上半身が露わになった。
「ヨウ、可愛いヨウ。愛しているよ」
 さらけ出された肌に、新しい精液が振ってくる。
 その中で、粘つく口内から精液を吐き出そうとしていた口が塞がれた。
 頭部を固定され、ねとりと絡みつく舌がたっぷりの精液を、喉の奥へと導いていく。
 上あごを嬲られ、それでなくても溢れる唾液は吐き出すことすら許されずに溜まっていって。
 絶望に苛まれながら、ごくり、と、精液混じりのそれを飲み込んでしまう。
「愛しているよ、ヨウ」
 うっとりと愛の言葉を紡ぐ来生は自分に酔っているように、陽一郎の髪を撫で、その頬に精液を伸ばした。
「皆の祝福のザーメンは、お前を幸せにしてくれるだろう。こんなにも皆に愛される新婦は、そうそういないからね」
 狂っている。
 愛を囁く男の本気が判ってしまって。
 恐怖と悪寒に苛まれてしまいフルフルと震えるけれど、再び口内を犯す舌に身体は感じてしまう。
 そんな身体に心が悲鳴を上げて、ボロボロと涙を零し続けた。



 退出してすぐにお色直しから帰ってきた陽一郎は、身体にかけられた精液はそのままだった。
 ただそのオーガンジーのドレスが変わっていて、薄衣のように薄くて軽い布きれだけを羽衣のように羽織らされていた。帯どころか腰紐も無いので、何もかもさらけ出して、乳首もペニスも丸見えだ。
 その乳首は、噛むタイプの金具で挟まれていて、シャンシャンと音を立てる鈴なりの鈴がそれぞれぶら下がっている。さらにペニスは、陰嚢の根元から真紅の革の枷できつく戒められ、勃起させられたまま前方へと突き出されている。その先端にも鈴がたくさんぶら下がっていた。
 良く見れば、それが鈴口から差し込まれた棒の先に付いているのが判るだろう。
 さらに陽一郎は長い丈の布の下、足に花魁が履くような高い三枚歯の下駄を履かされていた。それだけでもたいそう歩きにくいのだが、一歩を踏み出す度に着替えの際に挿れ直された時に薬も挿入されたせいか、むず痒くて仕方が無いのだ。掻きむしりたい衝動を癒してくれるのは張り型だが、ごりごり擦るその刺激は、アナルから脳髄まで駆け上がるような激しい快感付きだった。
 あれだけ達ったのに、陽一郎の前立腺はさらなる快楽を生み出してた。
 それが、実は敏腕調教師としての腕を持つ来生の技だとは知らなくて。
 知らないけれど、来生の望むままに、その身体は作り替えられていく。
 鈴は豊かな振動で乳首を刺激し甘い疼きを迸らせ、ペニスは鈴の振動がペニスの中、前立腺近くまで伝わるのだ。
 痛みはもう無い。
 ただ歩くだけで快感に襲われる格好に、その歩みは非常に遅い。
「あっ、はぁ……かゆ、ぃ、はぅ……かきたいっ」
 一歩ごとにその足は痙攣し、明らかに熱が籠もった荒い吐息を吐き続ける。
「これよりキャンドルサービスをはじめさせて頂きます」
 快感ばかりに脳が支配され視界が濁る世界の中、妙にクリアに司会の声が響く。
 それは、15分も時間がかかってようやく高砂の席に着いた頃だろうか。
 座る間も無く、長い棒の先に火の点いたキャンドルが持ってこられた。
 けれど、その棒の手元はやけに細くて。
「それでは来生様、ご準備を」
「判った」
 来生が傍らに膝まづき、ふらつく身体が仲人に支えられる。
 しゃりんっと涼やかな音が鳴り響き、ペニスから圧迫感が伝わって。
「ひあっ……やぁっ」
 鈴が外され、代わりにその器具が鈴口に刺さっていた棒の穴に深く差し込まれた。
「こんなものかな」
「やっ、おもっ、痛ぅ」
 とんとんと手の中で弄ばれ、その拍子にペニスが揺れる。50cmはある棒は重く、ペニスで支えられる物ではなくて引きずられるのだ。
「後はこっちもね。切れているかちょっと痛いかもしれないけど……でもこの痛みも気持ちよくなるよ」
 にこりと笑みを浮かべて、陽一郎の乳首にその棒から伸びた二本の細い鎖が付けられた。
「ひっ!! やあっ、止めてっ」
 ぎしっと食い込むクリップの歯も痛い。けれど、乳首と尿道の三点で支えることになった棒は、あまりにも重くて、乳首の根元が千切れそうなほどに痛んだ。
 それなのに。
「さあ、行こうか」
 来生が腕を引っ張って、揺らいだ拍子に棒が踊って、乳首と尿道が振り回される。
「い、いやぁ、動けないっ、こんなのっ」
 さすがにこれは無理、と、いやいやと首を振って座り込もうとするけれど、その身体を支えるのは来生だ。
「我が侭を言わない。これはお祝いをくれた皆様へのサービスなんだから」
 宥められてもできるモノでは無くて、ヒクヒクと泣きじゃくり、しがみつく。
「許して、他のことなら何でもするから……許して」
 乳首が千切れたら、尿道が裂けたら。
 恐怖も相まって、震えながら訴えて。
「しょうがないね」
 来生が溜息とともに肩を竦めたときには、僅かな希望の灯火が見えた、ような気がしたけれど。
「手伝うよ、確かにこれは重いから、ヨウだけでは無理だったね」
 がしっと掴まれたのは、陽一郎のペニスだった。


「ほら、もっと腰を突き出して」
 ペニスを握る力強い手に促されて、ふらつく腰を何とか前方に突き出す。
 三枚歯の下駄は安定が悪くて、両隣を仲人達に支えられてだ。
 来生はというと、握ったペニスを動かして、悪友達の悪戯に濡れそぼったキャンドルに火を移そうと必死だ。
 時折その位置すら動かされて、ペニスが前後左右に動き回される。
「おい、いい加減にしろよ」
「ひっ、いっ、くうっ……」
 さすがにいつまでも点かないそれに苛立つ来生の手が乱暴にペニスを振り回す。
「しゃあないさ、お前を取られた恋敵どもの涙がキャンドルを濡らしてしまっているだから。幸せの灯火を付けるには、苦労がつきものってな」
 けらけらと笑う友達に来生が不満げに顔を顰める。
 仕方が無いとまたペニスを引き寄せて、遠いそれにキャンドルの火を移そうと近づけた。
「や、あっ、……ああぁぁ」
 思うさまに操作されるペニスの持ち主は、その間ずっと悩ましい喘ぎ声を出し続けていた。
 陽一郎の手は自由だ。
 このサービスが始まってから自由になった手は、今は後ろ手に自分の尻の穴に埋もれていた。
 とにかく痒いのだ。
 届きにくいそこに指先を埋めて、ごりごりと肉壁を擦ると堪らなく気持ちよい。けれど、止めるとまた痒くなって、止められない。
「よし、点いた」
 嬉しげな声に、残念そうな声が重なる。
「せっかくヨウちゃんの可愛いマンコオナニー見ていたのになぁ」
「うるさい、まったくいい加減にしろよ」
「でもさ、あっちの席はもっと凄いけど」
 指さされた席は、なぜか仏壇用のロウソクが無数に立っていた。しかも、肝心のキャンドルは深いビールのグラス中で水没している。
「来生ぃ、これ全部だぜ」
 悪友達の中でも最たる男に、指さされて。
「こんなに点けたら火事になる……」
「点いたらOKってことで消すからな」
 芯が黒くなればOKと言われてるやり取りを、陽一郎は聞かされるだけだ。
「おいでヨウ」
 誘う言葉は優しいけれど。
「ほら、手前からだ」
 押して、引いて、曲げて、引っ張って。
 ペニスを物のように使われて、刺さった棒の最奥が、心地よい快感を生み出す場所を刺激する。
「あ、あんっ、くふぅっ、うっ」
 身体が馴染んでより深く入った指が、前立腺を引っ掻いた。
 前からと後ろからと、二カ所から責め立てられて、腰が踊って止まらない。
「ヨウ、動くなって、点かないじゃねえか」
 来生に叱責されても、淫らなオナニーダンスが止められない。
「ひぃっ、いっ、イイィ、もっとお、掻き回してぇ、ああ、ああぁ」
 もう出る物も無い陰嚢はぴくぴくと震えるだけで。
 暴れ回る快感は、ただ身体を尽きぬ欲に満たし、脳を焼き尽くす。
 痒みだけの薬だよ、と言われて挿れられた薬は、理性は飛ばさない。
 けれど、貪る快楽と自覚を隠せない惨めさは、どんどんと陽一郎の理性を突き崩していった。




 キャンドルサービスが終わるのにかかった時間は1時間。
 最後には、何度も何度もドライで達しまくった陽一郎の意識はもう完全に無かった。
 たくさんのキャンドルで灯る会場で、記念写真が撮られたことも記憶に残っていない。
 それなのに。
「は……あ、もっと……もっとぉ……」
 甘えて強請る可愛い譫言はずっと続いていて、その度に来生は意識の無い愛すべき新婦の棒の入ったままのペニスを扱き、指の代わりに極太のキャンドルで貫いて、痒みを癒してやった。



 そして。
 長いようで短かったと客達に言わしめた深夜の披露宴は終わりを告げて。



 帰る客を見送るための金襴屏風の前で、強制的に覚醒させられた陽一郎は焦点の合わない視線を彷徨わせ、全裸で四つん這いにされていた。
 その姿で、客に尻を向け、客達はそのアナルにテーブルから取ってきた生花を生けていく。
「おめでとう、可愛かったよ」
「はうっ、……アリガト、ゴザイマス」
「また君の可愛い姿を見たいね」
「ハイ、マタ……」
 抑揚の無い返事をオウム返しする陽一郎の姿を、客達は愉しそうに見つめていた。だが、細いとは言え、25本の茎が束になれば、かなりの太さになる。
「やあ……痛っ、さけるぅ……」
 最後近くになると譫言のように泣きじゃくりだした陽一郎の顔を上げさせ、しようが無いと来生はその横にあぐらをかいた。
「お前の大好きなチンポだ、これで気を紛らわしなさい。せっかくお客様がお前を飾ってくださっているんだから」
 言葉とともに出されたのは、人も羨む大きさの来生のペニスだ。
 それを指し示され「味わいなさい、美味しいから」と言われて。
 陽一郎は条件反射のようにそれに唇を寄せ、舌を出した。
 ぴちゃり……と多量の涎が溢れ、流れ落ちていく。
 フェラチオは経験の無い陽一郎だが、来生の言葉に麻痺した脳が勝手に解釈して、そのペニスがたいそう美味しいモノだと認識してしまったのだ。
 ぴちゃ、ぴちゃと、幸せそうに味わう顔に、たくさんのフラッシュがたかれる。
「愛しているよ、ヨウ。一生私の物にしてあげるから」
 来生が優しく囁きながら、その淫らに歪む頬を撫でてやると。
「俺も、愛しています。だから、絶対に……離れません……」
 嬉しそうにはにかむ、どこか焦点の合っていない瞳で来生を見つめる陽一郎の姿はたいそう可愛らしくて、最後にもう一度、たくさんのザーメンシャワーが降り注いだのだった。



 ちなみに、この披露宴の一部始終は商売物のアダルトビデオも撮るプロによって撮影されていて、何度も上映会が催されたが、その席に必ず来生と陽一郎は同席している。
 あれだけ愛し合ったのに時折陽一郎はイヤだと逆らうらしいのだが、この上映会を開けば二人はまた再び愛を確かめ合うい、陽一郎はとても素直になるのだ。
 いつもいつも、その上映会の最中来生とともに客達を接待して。
 客が帰るときには、ビデオの中の金屏風で挨拶した時と同じ飾り付けと格好でお見送りをし、来生に言われるがままに美味しいとペニスを頬張って、その可愛らしさをアピールする陽一郎は、まこと来生に似合いの相手だと、友人達から言われ続けていた。


【了】