蟻地獄の甘い餌6

蟻地獄の甘い餌6

「すげぇな、この淫乱野郎が。深く抉れば抉るだけ締め付けてくるし」
 邪魔だと足の枷も外してしまい、両手で膝裏を抱えて大股を広げさせ、鏡に向けて俺の上に座らせた。
 四十八手でいう乱れ牡丹っていう体位だ。
 結構きつい姿勢なのだが、存外に柔らかな身体はしっかりと股間を広げ、余すこと無く俺のペニスを銜え込んでいた。
 これの身体は何もかもがセックス向きだと、本当に感心してしまう。
 いつか四十八手も全部挑戦してみたいもんだ、なんて思いながら、ずんずんと突き上げてやると、さすがにここまで銜えさせると、結腸の入り口が邪魔をしている。
 気持ちよさげなんだが、時折苦しげに呻くのはやはり苦痛があるからだろうけれど。
 そんなときにも、これのチンポは元気に勃起して涎をたらたらと垂らしている。
 いくら達っていないとはいえ、いつまでも元気なこれに、結構マゾッ気があるんじゃないかと、さっきから疑っていた。
 たとえば。
「あ、ぁ」
 よいしょっとばかりに身体を少し上げて、どすんとそのまま落としてやれば。
「ひ、ぃぃぃ、あああんんっ」
 結構な衝撃で苦痛もあるのだろうに、絶頂を感じてるのか、惚けたように口をだらしなく開けて、そっからもだらだらと涎を垂らすのだ。もちろん勃起チンポが萎えるわけも無い。
 昨日始めて男を知って、この淫乱ぶりと来たら、マジでどのくらいの域まで到達できるのかやってみたくなる。
 そのまま結腸もご開帳させたいと、ものすごい願望に突き動かされそうになるが、うっかり壊してしまいそうでやばかったりもする。さすがに予定外のそんなところまで一気に進んだら、ゴルドンの怒りは拳どころで済まなくて、俺が鞭打ちの刑になってしまうのだ。
 まあいつか、これが俺の物になった暁には、快楽地獄の中でしっかりとご開帳してやろう。
 と言っても、そんなことを考えたのは一瞬で。
 すぐにリアンの身体に没頭してしまう。
 もっともそんな中でも、あれもこれもやらなきゃいけないという理性が残っているのが不思議なくらいだが、これはもう習い性なのだ。
 作戦中とかでも集中しているようで、他の気配も探っている。戦時下では複数のことが常に同時進行で、それを無意識でやっているのだ。
 そんなことをして生き延びてきた名残は、すっかりとこんな時にも身についていて、腕と腰でリアンを突き上げながら、次のタイミングを計っていた、はずなんだが。
 俺は、いつしか完全に没頭していたらしい。
 乱れ牡丹で一発出して、それからすぐに体位を変えて、今はいわゆるつばめ返し。
 いや、その間に何かもう一つしたような。
 ともかく、涼しいはずの部屋で二人とも汗で全身を濡らして、蒸気となった汗が立ち上る。
 そんな中、今は横向きに熱転がしたリアンの足の間で太股をまたぎ、貫く体位でやっていた。やや中腰で膝を突くのでちょっと負担がかかるが、つながった場所もリアンの顔もよく見えるこの体位は、実は結構お気に入りなのだ。
 しかも奥へ奥へと腰を擦り入れ、上になった太股を引き寄せて、下になった太股がうまく陰嚢も刺激してくれるから、結構快感が強い。
 ついでにリアンの腕を後ろでなるように引っ張ってやれば、可愛い乳首もよく見える。
 ああ、そういえば、乳首につけたクリップはどうしたっけ、と、血が滲んで固まった傷を見やって思い出した。
 外した覚えの無いそれが、視界の片隅に入って、やっぱり外れたか、と腰を動かしながら考える。
「てめぇ、勝手に外したな」
 動かすたびにグチャグチャと泡立つ精液が溢れる尻穴に、ぶっとい俺のペニスを押し込みながら、低く責める。
「んあ、あっ、あっ、はふっ、達きた……射精……しゃ、……さし、あっ」
 けれど、さっきからリアンは突かれる拍子に吐息のように喘いでいるか、射精を請うものか、どちらかで、こっちが何言ってもたいした反応はない。
 半分白目を剥いて、口なんか開きっぱなし、舌もだらりと垂れている。
 この姿勢だと、これの会陰も俺の大腿の筋肉で刺激できるから、もう堪らないのだろう。
 乾いた絶頂もひっきりなしで、その瞳の焦点はもう合っていない。
 たらたらと先走りの粘液まみれのチンポも、さっきから鈴口がずっとぱくついていた。
 身体のほうの亀甲縛りは、吊ったり、引っ張り寄せたりと活躍したせいかさすがに緩み気味だが、ペニスのそれはまだまだしっかりと締め付けている。
 可愛い口を開けたチンポを見ていると、ついつい、そこからプジーを突っ込みたくなった。
 そんな様子を想像して。
「んんっ」
 想像のリアンの色っぽさに、背筋を快感が一気に駆け上がる。
 その身体に、三度目か四度目か、もう覚えてない精液を流し込んだ。
「んあ……あ……」
 弾けた感覚でも判るのか、リアンがぞわぞわっと震えて締め付けてきた。
 それが残滓を絞れ取るような動きとして伝わって、どくりと残りを吐き出す。
 さすがに少ない量に早々に衝動は落ち着いたが、奥から絞るような妙なる動きの肉筒に、抜いてしまうのが惜しくて堪らない。
 本当に、なんて俺好みの身体なんだろう。
 抜かずの連発を堪能して、溢れるほどに注ぎ込んだ心地よい疲労感が堪らない。
 いつもの拷問だったら、一回堪能したらもう十分だと、早々に他の連中に代わるのだが。
 やはり一目惚れしただけの相手は違うのだろうか、いや、こんなに相性が良いから一目惚れなんて似合わぬことになったのか。
 マジでこのまま離したくないほど、すばらしい。
 ああ、もう、やっぱりこれは俺のものなんだなあ、と実感する。
 というか、していたのだが。
 そういやあ、そろそろ……と脳裏の片隅で思っていたら、まさしくそのタイミングで、ギイィィと耳障りな音を立てて扉が開いた。
 ……この音は萎えるな、と、若干の不愉快を感じながら、それでも惜しみつつもリアンの身体の上から立ち上がる。
 ついでにさっさと己の息子をしまい込んだ。
「はえぇよ、こら。まだこれの口で舐めさせて、きれいにさせようと思ってたのに」
 濡れたままの不快さに演技無く顔を顰めながら、入ってきた二人に文句を言えば、隊長を隊長と思わぬ二人組がうすら嗤いを浮かべながらも、きれいに無視してくれた。
 これはそうとう怒っていると、互いによく知った相手の感情を悟って、しかたなく場所を譲るように下がった。
 そこに割り込んできた相変わらずの体格が影をつくったのに気が付いたリアンがうっすらと目を開き、見知らぬ男にぎょっとしたように目を見開く。
「よお」
 身体に合わせて声もだみ声で低い。普段でも怒っているようなその声が、リアンに畳みかける。
「まぁだ、喋ってねぇってなあ、たいしたタマだ。ただの男娼風情にしちゃあ根性あるじゃねえか」
 さらにドスの利かせ方は部隊一のゴルドンに、リアンのどこかまだ茫洋としてた顔に怯えが走る。
 その横では、俺より頭一個分小さいこの部屋の担当官であるマーマニーが、倒れた台車を起こして、ガラガラと引きずってきた。
 少し歪んだそれに、そいつの顔も渋く、睨み付けてくる。
 もっともすぐにゴルドンの隣に立って、リアンを上から覗きこんだ。
「昨夜の薬はよっく効いてみたいだから、今度は別の薬試してみようね。いろいろあるんだよ、そうだなあ、痒くなる奴がいい? それとも、ああこっち、この青いのは快感を倍増してくれるんだよ、ついでに痛みも倍増なんだけどぉ」
 引出の中でしっかりと固定されていて壊れていなかったいくつかの瓶を取り出して、リアンの目の前で振っている。
 すでに亀甲縛りをされた時に会っているからか、ますますリアンの顔色が悪くなり、縋るように俺へと視線を走らせた。
 仰向けのままだった身体を手を起こそうとして、けれど近づいてきたゴルドンに止められる。
「あいつはちょおっと甘いからなあ、そろそろ俺たちの出番ってことで、な。なあ?」
「そうそ、そろそろかなあってずっと待ってたのに、なかなか終わらないから待ちくたびれてねえ。もう頭の中にやりたいことリストがこーんなに並んだよ」
 と言いながら、ヒョイヒョイヒョイと台車から取り出したいろいろな薬瓶に、ディルドにスパンキングの板。当然鞭も並ぶそれらを、こーんなに、と言いながら並べていく。
 それはもう、両手の幅より広い。
「……おまっ、それだけやったら死ぬぞ」
 相変わらずな言動ではあるけれど、さすがにいつもより多いようなそんな気がして注意すれば、小さいくせに気だけは強い瞳がぎろっと睨んできた。
「だいたい隊長が好き勝手に時間伸ばすのが悪いんだよ。つまりは隊長がそうなるまで誘惑したこいつが悪いんだから、しっかりとお仕置きするのは当然だろ?」
「同意だな」
 二人揃って剣呑に頷くそれに、思わず背筋に悪寒が走る。
 やべ、とは思ったが、確かにリアンの身体に嵌まってしまった覚えはあるので、反論はできない。
 それに、普段とか戦闘時ならばきちんと隊長として扱ってくれる二人だが、拷問、もとい尋問時は別なのだ。
 専門の担当官であるマーマニーがリーダーで、俺すらも下っ端。
 まあ、俺の担当が適任だとしたら呼び出されて、そうでなければ、どんなに好みの相手でも指を銜えて待っているしかないという。
 さすがにリアンは俺のものだと知れ渡っていたから、最初を取れたけど。
 けれど、こういう時のこいつらの正論に、俺も反論はできない。
 時計を見れば、確かに予定時間を大幅にオーバーしていて、一体俺はどれだけこれの身体に嵌まっていたんだろうと、自身呆れ果てたぐらいだったのだ。
 リアンも普通ならぶっ倒れていただろうけれど、実は朝飲ませた水は、高濃度の栄養剤入りだったのだ。
 しっかりそれが効いているらしいリアンは、だからこそ、チンポが萎えることもなく、今も意識が保っていられるのだけど。
 それがリアンにとって幸いかどうかは──誰だって、考えなくても否定するだろうけれど。
 
 
 
「い、いやぁあ、ぁぁっ、ひぃぃっ」
 上半身は水平で、両足はまっすぐ天井に向けてVに開いて吊されていた。
 緩みかけていた亀甲縛りは、ペニスのそれを除いて外されて、今は革ベルトでできたハーネスで拘束されている。
 その開かれたアナルは、ちょうどゴルドンの腰の高さになっていて、今は彼の極太のチンポが突き刺さっていた。
 ガツガツと俺なんかよりよほど激しいそれは、まるでハンマーでぶっとい杭を打ち込んでいるようだ、と、いつ見ても思う。
 俺がたっぷりと注いだ精液にまみれたそれは、本当に黒くていびつで、長い。
 俺の長さで奥まで届いていたから、かなり奥はきついことになってんじゃ無いだろうか。
 宙ぶらりんのリアンの頭が時折仰け反って、反対に腹は庇うように丸められ、苦しげな呻きが零れている。
 明らかに快感だけでない状況に、与えているゴルドンは実に楽しげに目元を細め、口は弧を描いていた。
 そんなゴルドンは別に、マーマニーがリアンの胸の横に立っていて、せっせせっせと傷の治療を施していた。
 あれは、この取調室の担当官だが、実は医者でもあるのだ。というか、医者が本業なのだけど。
「ほおら、傷口がきれいになったよ」
 今は乳首の傷にたっぷりの軟膏を施しているところだ。
 と言っても、あれが用意する軟膏がただの薬のわけがなく、ピンク色のそれが覆ったとたんに、リアンの口が長い問吐息を零した。もっとも何か言いたげにアウアウと口だけが動いているけれど、声すら出ないようだ。
 硬直したように固まった表情に、そこだけが別の生き物のように涙が溢れて落ちていく。
「気持ち良いよね。これ、すっごく良く効くからすぐに塞がるよ、と言っても、ムッチャクチャ、しかも、すっごく長い時間染みるのが難点でねぇ、ちょっとだけ我慢してね。これ、ほんと効くのに、みんななかなか使ってくれないんだよ」
 ニコニコと笑いながら今度は鞭打ちの傷にも塗ろうとして、リアンが必死になって身体を捻るけれど。
「駄目だよ、動いたら……そうだ、手のひら出してよ、この杭打ち込んで、鎖で吊してあげるから、そしたら動けないよね」
 本当にニコニコと邪気の無い笑みを浮かべて、杭と槌を──しかも壁に飾りの槌をずるずると引っ張ってくる。
 その様子に、わなわなと痙攣するかのごとく震えている身体は、相も変わらず犯されているというのにさすがにそれどころではないようで。
「い、いやっ、あっ、ゆ、許して……」
 逃れるようにぎゅっと握った拳を胸の上で抱き込んでいた。
「すぐ済むから、はい、出して」
 それなのに、はいっと自分も手を出して待っているのだから質が悪い。
 マーマニーが入る拷問は、実際のところ仲間内でも同席を嫌がることが多いのだ。
 だが。
「あんまり脅すな、こっちが萎える」
 心底うんざりしたようにゴルドンが言ったものだから、マーマニーも肩を竦めてそれらを引っ込めた。
 もっとも、その辺りも計算づくなのだろうけれど。
 俺は隅っこでおとなしく見ていることと厳命されているので、部屋の角で椅子に座って見ているだけだ。
 そんな俺の前で、ゴルドンの腰の動きが再開する。
「いっ、やっ、深っ、あぁっ、やぁ、苦し──ぃっ」
 少し意識がそれていたせいか、再開されたとたんにより苦痛を感じてしまったようで高い悲鳴が上がる。
「んじゃ、これね」
 マーマニーはマーマニーで軟膏を塗って。
「い、痛っ、痛い、ひぁっ、ぐる、あっう、つっ」
 2種類の悲鳴が入り交じる。
 この二人は、どちらも相手が苦痛を感じることに悦びを見いだす真性サドだ。
 俺もそうだけど、それよりひどい。
 って前に言ったら、その場にいた全員から満場一致でぼろくそに否定されたが。
「ひどいねぇ、バージルってば。こんなにも傷つけて、放置なんてさあ」
 こっちをチラ見しながら嗤っているが、俺はきちんと使ったぞ、消毒薬を、ぶっかけただけだけど。
「初心者に抜かずの三発やら四発やら。普通はしねぇよなあ」
「ほんとほんと。だからこんなに疲れて苦しいのよねえ。みんなするって判ってたはずなのに」
 にやつく笑みのゴルドンの尻を蹴りつけたいが、じっと我慢するしかない。
 ほんの少しは自責の念が、あるといえばあるからだが。
「でも、苦しいばっかりだと辛いよなぁ」
 クスクスと楽しげにマーマニーが一本の薬瓶をリアンの目の前に差しだした。
「だから、これ使ってあげても良いんだけどなあ。苦しいのが楽になるよ。ゴルドンのはおっきいからお尻はきついし、お腹の奥、突かれて苦しいんでしょ。この薬だったら、苦しいのだけ良くなるんだ、他のみたく、副作用もないし、どう?」
 目の前でゆらゆらと揺れるその薬液は完全に透明で、水のようだ。
 その透明な水の揺れに、リアンの視線が吸い寄せられる。
「これね、痛くなくなるお薬。気持ちよくなるお薬。欲しいよね、リアン、あなたはとってもこれが欲しいよね」
 穏やかな笑みを乗せて、優しく、囁く。
 それはさっきまでの狂気にも似た表情とは違う、医師としての表情。
 マーマニーは元々の専門は外科だったが、軍に入ってから整形外科や内科、麻酔科等々。前線にいるせいで必要に迫られたのもあるが、もろもろの専門を学び自分のものにしていている。そんなマーマニーがここに配属されたとたんに、いきなり拷問に目覚めてしまったのは……絶対に俺のせいとは思っていないのだが、みんなが俺のせいにする。
 それはともかく、医師の表情のマーマニーの言葉は、不思議なことにまるで心に染みいるように響くのだ。
 従えば良いんだ、従うほうが良いんだ。
 そんなふうに、思ってしまうものが多い中、リアンも苦しげに眉根を寄せて喘ぎながら、じっと薬瓶を見つめている。
「だから言って、名前と、所属はどこかな?」
 医師の診察の時のように、カルテに書くのに必要だから。
 まるで目の前にそんなシーンが現れる。
「ん、んあっ、……り、リア、ン、モリ、エール……、うっ、くっ、ト、トリエン前線、基地ぃ、ぁ、カマスぅ、司令ぇーっ、あぅっ付、ひ、秘書官ぁ、んんっ」
 パンパンと激しい音に、呻き声を混ぜながら、リアンのか細い声が素性を告げる。
「そう、だったらいろいろ知ってそうだねえ、リアン・モリエール。ねえ、補給ルートは? 武器庫の位置は?」
「い、苦っ、うぅっ、や、やぁ……っ、まだ、まだぁ、知らなっ、うぐぅ、知らされて、ないっ、あうっ」
「えー、そうなの。そっか……まあ、でもとりあえず話してくれたからご褒美をちょっと上げるから。ほら、待望のお薬だよお」
 そう言うと、にこりと笑ったその笑みが、すうっと悪魔のように変わっていった。
 いつ見ても器用なことだと思うけど。
 こいつは、天使と悪魔を両方その身に抱えている。
 その様子を口出しせずに見ていたら、マーマニーはシリンジにそれをたっぷりと吸い込んでから、極細のカテーテルを手に取った。
「ちょっと止まって」
と、ゴルドンを静止ながら移動する。
 吊らされたまま、ゴルドンの巨根に固定されたリアンの腰の真ん中で腹を打っていた勃起チンポを手にして、ニヤリと楽しげに嗤ったそれに、誰もがぞくりと総毛立った。
 冷たい、部屋の温度よりさらに低い空気がねっとりと漂っている。
 リアンなど、直にその温度に触れてしまったかのように、恐怖に顔が引きつっていた。
 たとえ素性など知らなくても、あれが醸し出す雰囲気は一種独特で、その恐怖は間違いない。
 しかも手にしているそれが、彼の視線が、何を目指しているのかは明白なのだ。
「やっ!」
 小さな悲鳴は、けれどじろりと睨まれて止まる。
 拷問中、一回限りのマーマニーの優しさは、もれなくより以上の苦痛付きなのは判っていたけれど。
「リアンが欲しいって言ったんだからねえ……。あ、きちん言えたご褒美に、ここも外してあげるし」
 と、ペニスの根元にあったクリップを外すと、するすると紐が外れて床に落ちる、その前にマーマニーの手がしっかりとペニスの根元を握っているから射精はできない、というか、今の状況では射精感も薄れていたことだろう。
 平時でも、怒らせて肝っ玉縮ませている連中はよくいるが、あれを怒らせると文字通りタマが縮むほどの恐怖なのだ。
 そんなマーマニーは、リアンの顔を見つめつつも、その手はためらいなく鈴口にカテーテルをぷつりと差し込んだ。
「ひぃぃぃっ」
 ああ、痛そう。
 というか、俺がやりたかったぜ、あれ。
 グイグイと、柔らかいとはいえコシがあるカテーテルがどんどん奥に入っていく。
「い、痛っ、いた……や、」
 上がった太股の筋肉が緊張に筋張って引き付っている。
 仰け反った胸が荒く呼吸を繰り返している。
「うん、入った」
 すぐにチョロチョロと黄色い液体が床に置かれていたバケツの中に入っていって。細い故に時間がかかっているのに業を煮やしたせいか、ゴルドンが焦れて声をかけてきた。
「動いて良いか?」
「いいよ」
 軽くマーマニーが答えたとたんに、抽挿が再開される。
「あ、やだっ、あぁっ、んあっ」
 固く目を瞑って、再び襲ってきた苦痛に耐え始めた。
 その間にもチョロチョロと落ち続けるそれが、数分後にようやく落ち着いたら、今度はそこにシリンジが付けられる。
 そのまま、一気にプランジャーを押し込めば、透明な液はすぐさまさっきまで尿が入っていた内臓へと送られた。
 さらにもう一度。
 多いんじゃね?
 と言いかけた言葉は寸前で飲み込んだが、確かにいつもより多いと、その容赦なさに首を傾げる。
 あれはその使用量分長く続く代物だからだ。少なくともマーマニー達が遊ぶ時間以上に続くのではないかと思う。
「OK、五分かな」
 小さく頷き、誰にともなく合図して、カテーテルからシリンジを外すと先端をコックでしっかりと止めた。それから台車の上にシリンジを置いたマーマニーが手に取ったのは、複数のベルトで締め付けるタイプのコックリングだ。
「紐が外れて寂しいだろ? だから今度はこれを付けてあげるよ」
 相も変わらず選択がひどい。
 パチパチと取り付けたのは、陰茎を戒める四本のベルトの内側にごつごつとした刺激を与えるためのこぶ付きのものだし、しかもカテーテル入りのままだから、それで締め付けられてしまえば尿道に隙間などない。
 射精の衝動の動きは可能になったが、今度は出す隙間が無いという状態で。
 本当にたった一度限定の優しさを解放したあとの、マーマニーはひどい、と思うのだけど。
「バージル、暇なんだから、リフトをちょっと下げて」
 いきなり声をかけられて、座っていろと言ったのはどこのどいつだと睨み付けながら、それでも立ち上がって制御盤のスイッチを押した。
 とたんにガラガラと下がるのは、リアンの上半身だ。
 腰より少しだけ下がったところで、マーマニーが己のペニスを取り出した。
「舐めて」
 顔を横に向けさせて、その口元に持っていく。とたんにイヤやそうに顔を顰めたリアンに、ゴルドンが気が付いた。
「舐めんかったらどうかなるか、まぁだ判らないのか?」
 肩を竦めたゴルドンが、俺に向かってチョイチョイと指で招く。
 何なんだ、こいつらは。座っていろと言ったのは誰だ。
 と口に出して言えない俺は、黙ってゴルドンの無言の指示に従う。
 しかも言葉にされなくても判るほどに、こいつの考えが判ってしまうのも少し気持ち悪かったりはするのだが。
 片頬がぴくぴく痙攣するのをなんとか押さえて、ロッカーの奥にしまわれていたゴルドンの鞭を取り出した。
 俺が持つには少し太い柄のそれは、結構長い。
「ほい」
「サンキュ」
 投げるように渡してやれば、突っ込んだままに巧みに受け取り、軽く振るって宙に浮いた鞭先を器用に片手で受け止めた。
「バージルの鞭は好きみたいだが、俺のはどうかなあ?」
 短く持って、ひゅんと鋭く振るえば。
バシィッ!
「ぎぁぁぁ、んぐっ」
 ひどい悲鳴を上げて、リアンの身体が激しく仰け反る。
 束ねた鞭の先端で、激しく打ったのは右の大腿の内側だ。皮膚の柔らかいそこは、他より痛みがひどい。
 しかも、至近距離で手前に引くように打ったのだろう、肌が切れて血が出始めていた。
 俺は打って痕を残したり、骨を砕いたりするほうが好きなのだが、ゴルドンはああやって滑らすように打ち付けて、皮膚や肉を裂くことを好むのだ。
 同じような道具を使っても、みんなそれぞれに好みが違う。
 マーマニーは短く軽い鞭を使い、傷をつけないままに延々打ち続けるのが好きだったりする。しかも、いろんな薬付きだ。
 たらりと一筋流れる血液をゴルドンは満足げに舌で舐め取って、「美味い」と呟いた。
「ひ、あぁ……ぅぅ」
 痛みと恐怖は相当なようで、ガクガクと痙攣して少しでも逃れようと暴れるけれど、尻はゴルドンに突っ込まれ、頭はマーマニーに固定されていて、ほとんど動けない。
 まして、悲鳴に開けた口に、これ幸いとマーマニーがペニスを突っ込んでいた。
「噛まないでよ、噛んだら、痒くなるお薬を全身に塗ってあげるから」
 あやうく噛まれかけた俺を知っているせいか、そんなふうに脅してさらに怯えさせる。
「ほぉら、舐めて舐めて。舐めたら大好きなザーメン、いっぱい出てくるからねぇ」
「うぁ、ぅぁぁ……あう゛ぁ」
「ケツもしっかり締めろ」
 グボグフと口いっぱいのペニスが涎まみれて、出入りする。
 グジュクジュと尻穴いっぱいのペニスがザーメンまみれで、ピストンする。
 そのたびにリアンが苦しげに呻いていたけれど、マーマニーが宣言した五分が経てば、それも変わってきた。
「うあぁ、あ、おぇ、ぉぉ」
 喉の奥で喘ぎ、鼻をすんすん鳴らして、恐怖に青ざめていたはずの全身がうっすらと桃色になっていく。
 苦しげに顰められてた顔が緩み、その頬は上気して耳まで赤くなっていた。
「うーん、口の中、熱くて気持ち良いよお」
「ああ、尻ん中もぐねぐねうねりまくって暴れてやがる。すっげえ、誘い込もうとしているぜ」
 ゴルドンにぐいっと奥まで付かれて、声なき嬌声を発したのがその白目を剥いた表情で判った。
 喉の奥まで犯されているのに、その恍惚とした表情でさらに口をすぼめようとしている。
 マーマニー曰く、気持ちよくなる薬が効いてきたのだ。
 あいつの薬は良く効くが、その効き方が半端ないのだ。
 昨日使った薬もこいつ特製品で、他の代物もたいていそうだ。そのためだけに基地の裏庭にはこいつ専用の薬草園が広がっているし、実験室には得体の知れない薬瓶やら合成装置が並んでいる。
 動物実験もそこそこに、狂気の薬の犠牲になった者は捕虜だけで無く基地内にも数知れず。
 彼が気持ちよくなる副作用のない薬と言ったなら、それは事実なのだけど。
 膀胱から締め付けられた陰茎の間までの尿道やら精巣管やらに流れ出した薬が染みこめば、淫乱雌豚のできあがりというわけで、今のリアンは何をされてもよがるようになっていた。
「良い子にはご褒美だ、ほれっ」
 悶えるリアンに俄然やる気が出てきたのか、ゴルドンが尻を振りながら、鞭も振るう。
 バシッ、ビシッ!
 マーマニーがいるのもあるが、短い鞭だからこそ太股ばかりを交互に打ち、くぐもった悲鳴に酔いしれながら、流れる血を舐めていた。
 そんな中でもリアンの勃起は前よりはっきりといきりたっている。
「噛むなって言ってんのにぃ」
 マーマニーはマーマニーで、痛みに堪らず口を閉じけたリアンの口の端に口枷を噛ませている。
 キリキリとねじで広げるタイプのそれで、裂ける寸前まで広げてしまえば、もう噛まれる心配はないと、今度は遠慮呵責無く、ズボズボと喉を突きまくっている。
「う、ぇ、が、あ、おっ、あ゛っ、」
 もうそうなれば、リアンは単なる道具だった。
 尻穴も口も単なる性欲処理の場所となり、できることと言えばかろうじて息をすることだけだ。
「あ、今度はこのお薬あげるよ。痒くなる薬ぃ」
 ぐっと口の中に突っ込んだまま手を伸ばして赤い薬液を落としたのは、一対の乳首だ。
 軟膏を拭い落としてすぐに落とされたそれは、真紅の液でたらりと肌を濡らして。
「あ、びゃっ、や゛ぁっ」
 ビクンと跳ねた身体から、流れた痕が赤く残る。
 それがもたらす堪らない痒みは、経験者しか知らないだろう。リアンもじっとしていられない痒みに、暴れようとするだけど、己の快楽を貪る彼らが許すはずも無く。
「じっとしてろっ」
 ビシィッ!!
「じゃあ、こっちもぉ」
 しっかりと振られる短い鞭が、強い痒みに苛まれる乳首を打つ。
「う゛、ぐぅぅ」
 とたんに、ほわっと表情を緩めたのだけど、すぐにまた顔を顰めて、今度は胸を突き出して、もっととばかりにマーマニーを見つめ始めた。
「欲しいの?、いいよぉ、ちゃんと舐めたらね」
 その言葉に、頬が凹んでもぐもぐと口の中が動き始めたのが判った。
「うん、いいこぉ」
 にこりと微笑むマーマニーの鞭がピシペシと両方の乳首を叩く。
 軽いとはいえ、何度も叩かれれば痛みが響くのだが、今は痒みのせいでそんな刺激も堪らなく良いのだろう。
 そのうちに、太股のほうも麻痺してきたのか、悲鳴どころか、足のつま先まで突っ張りながら快感に蕩けている。
「そろそろ、ご褒美をやるぞぉっ」
 ゴルドンはゴルドンでクライマックスらしく、その動きがどんどん激しくなって。
「ん、ん」
 ゴツンと互いの尻と腰の骨が打つ音とともにググッと押しつけて。
 しばらくそうしていた身体が離れたときには、ずぼっと抜ける音がして、ゴルドンのいつ見てもでかいペニスがこぼれ落ちた。
 その湯気を纏った先端からぼたっと精液が床へと落ちていく。
「おい、代わるか?」
 ふうっと一息きついたゴルドンが、口の中を堪能しているマーマニーへと呼びかけた。
「んー、ちょい待って、とっ、うっ」
 マーマニーもまた射精したようで、たっぷりと口の中へ吐き出してから、おもむろに取り出すと、口角から涎と共に精液がたらたらと流れ落ちていく。
「ね、今度は穴の中にもお薬入れて良いかなあ」
「そんなことしたら、もう突っ込めねぇだろうが」
「大丈夫、こっちのお薬は五分ほど待ったら浸透して、痒くなるのは本人だけ。外に残ったのは中和剤入れちゃえば効果が消えるんだ。だから、じゃじゃーん、中和剤付き超薄コンドーム。このゴムでこっちは大丈夫だし、薬でうねる中を十分堪能できるほどにうすうす」
「そうか、それは良いな」
「あ、ああっ、やあ」
 身体の上で交わされる勝手な会話に、リアンが性懲りも無く拒絶しようとしていたけれど。
「うるせえってっ!!!」
ピシイッ!!
「ぎやぁぁぁぁ──、痛っぁぁ!! あっ、ぁぁ、もっ、やめっ、許し、て……ああ、あ……」
 二の腕の内側に、胸に、乳首に、走る赤い痕が増えていくうちに、おとなしくなる。
 マーマニーより強い打撃に肌は裂け、俺の痕の上にくっきりとした傷をつけていき、そのたびに揺れる身体は、けれど腰を突き上げ、マーマニーのペニスを深く銜え込み、勃起の先から覗くカテーテルが誘うように踊っていた。
 それからずっと、悲鳴と嬌声と嗚咽と懇願と、それ以上に二人の楽しげな会話と濡れた卑猥な音ばかりが響いていて。
 
 
 することもなく退屈で、しかも朝も早かった俺はだんだんと眠くなってきて、いつの間にか椅子に座ったまま壁にもたれて爆睡してしまっていた。